小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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大島工業高校(以下:大工)は一般的に学力が低い学生(ほぼ男子)に人気があった。
科は機械科、電子科、電気科、工業学科、土木科と五つに分かれている。
俺は受験はそれなりに勉強してたし、成績も真ん中よりは良かった。
恐らく大工にもトップクラスで受かっただろう。

だが俺は工業に関する技術がほしかったわけじゃない。
中学の頃から夢見てたこと。

高校で気の会う奴らとバンドを組み、いずれバンドで食っていくこと。
生きてきて、初めて本気で望んだ夢だった。

週1でスタジオに入り、課題にした曲やオリジナルを各々の家で練習し、スタジオで音を合わせる。
極一般的なバンドマンの生活。
それを望んでいた。

高校に入って愕然とした。
バンドなんて興味ない人ばかり。
楽器やってるっていう人たちもたかが知れていた。

ただかっこつけたい、出会いを求めたいバンドが二つ三つあるだけだった。
本気で上を目指したかった。

日が経つにつれてあんな夢は無理だなと思い始めた。
もっと積極的に動けば、町にはバンドメンバーを募集してるバンドはいくらでもある。
だけど、動く気になれないままでいた。
ただ、なんとなく。

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