小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

龍児は前を歩いている女性をぼーっと見ていた。
ストレートパーマをかけたミディアムほどの長さの髪がゆらゆらと揺れる。
龍児は我に帰った。
やべ、俺ストーカーみたいじゃん・・・
気分を紛らわすためまた携帯を手にし、時間を確認した。

携帯から目を戻すと前の女性がこちらを向いていた。
女性を避けようと右にずれながら歩いた。
すると女性が口を開いた。
「あの・・・手伝いましょうか?」
「え・・」
龍児は気が動転した。
もともと女性と接するのが得意ではない。
「あ、その、いつも重そうにしてるので・・」
龍児はじっくりその女性を見たことはなかった。
全体的に小柄、目はくりっとしていて控えめな口。
きれいな足に白いミニスカートが可愛さを際立てていた。
「えと、いいですか・・?」
どちらかといえば軽い方であるスネアケースを差し出す。
小さな手がこちらに伸びてくる。
渡す際に少し手が触れ、龍児の鼓動が高鳴る。
渡された女性は少しよろつき体勢を立て直す。
「だ、大丈夫?」
「平気です」
少し恥ずかしげな女性。
「同じ方向ですよね」
女性はパタパタと横に並ぶ。
龍児は工業高校という男子の巣窟にしばらく慣れていた。
女性とは中学時代に慣れていた人としか接したことがない。
それにこの女性はすごく可愛かった。

-30-
Copyright ©Dissonance★ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える