小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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目の前に坂本明日香が立っていた。
龍児はイヤホンを外す。
「何かすごい難しいこと考えてる顔してましたよ?」
「そ、そう?別に何も」

あの時乗り過ごしたときも明日香はいた。
いつもこの時間のバスに乗っているのだろうか。
その時は会話はなかった。

「いつもこの時間なの?」
「はい。私、あのスタジオをもうちょっと奥にいったとこのコンビニでバイトしてるんです」
明日香は可愛いジェスチャーをしながら言った。
「そうなんだ」
会話が詰まる。
「ライブとかやってるんですか?」
「うん、今からちょうど2週間後かな」
「えーっ!すごいですね!」
一般人から見てライブをやってるのはすごいのか。
「そ、そうかな」
少し顔が赤くなってるのが自分でもわかった。
また会話が詰まった。

「私、見に行ってもいいですか?」
明日香の突然の発言に龍児は動揺した。
「あ、う、うん・・いいけど・・」
ライブハウスというのは慣れてない人にはちょっと居心地が悪いものである。
あとで行かなかったらよかったと思われたくない。
「ライブハウスはちょっと怖い人とかいて空気も慣れてないと居心地悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫です!友達も一緒について来てもらうので」
参ったなあ。

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