小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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それから龍児が帰り着いたのは11時過ぎ。
家の戸を開けると丁度母親が風呂から上がっていた。
「おかえり、遅かったね」
「ああ、ちょっと色々話してて」
龍児は靴を脱ぎ、靴箱に入れる。
龍児の部屋は玄関を上がってすぐ左。
扉の前に機材を置き、ドアを開けようとした時
「龍児」
母親から呼ばれた。
「何?」
「龍児のコンサート?っていうのは今度はいつあるの?」
コンサート?
「ライブのこと?」
「そう、演奏する奴」
龍児はくすっと笑った。
「コンサートって。ライブなら2週間後、土曜日だけど?」
「そう、龍児がどんなことしてるか見てみたいんだけど・・」
「え、うーん・・」
正直Minelでのライブのような姿は見せたくなかった。
もちろん明日香にも見せたくないが、母親には何故か特に。
楽しんでるバンドを楽しくないものに思われてしまうからだろうか。
しょうもないことで高校に行ってないのかと、思われそうだからだろうか。
「この前のライブは失敗してさ、もうちょっとうまくなってからがいいなあ」
「うまいとかそんなの、母さんわかんないし」
母親はくすくす笑いながら言った。
「仕事は大丈夫なの?」
「うん、お仕事休みいれるから」
手を見るとやはり荒れていた。
「そっか、じゃチケット渡すよ。金は俺が払う」
龍児は笑顔で言った。

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