小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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7月14日金曜日。
最後の調整を終え、いつものバスに乗り、家に帰りついた。
龍児はベットに寝転がった。

バスではいつも明日香と会い、会話の量も徐々に増え始めた。
本当にライブを楽しみにしてくれているようだ。
楽しみにしてくれてる人っていうのは本当に力になる。
海斗と雄大に女の子が何人か来ると言ったら
「おい、絶対に失敗できねえぞ」
と、海斗は張り切っていた。
雄大もまんざらではない様子。
女の子がライブを見に来るというのはもともと珍しいほうだ。
来る人といえば大体どこかのバンドの人の彼女さん。

母親もここ最近帰りは遅く、帰ってもものすごく疲れているようだ。
母親を見ると龍児はいつも心のどこかに罪悪感が生まれる。
高校のことだ。
龍児は大して行きたくない高校だが、母親は高校へ行かせるために毎日働いている。
そのため、学校なんて辞めたいなどとは切り出せないのだ。
中退して金を家に入れたいと言ったら、母親はなんというだろうか。
そんなことをすれば、龍児の将来は一気に危うくなる。
やはり、それは許さないだろうか。
だが、快く許してくれる母親の姿も想像できる。
龍児の夢はバンドで飯を食っていくこと。
母親にもうまいものを食べさせてあげたいと思っている。
明日のライブはその全てを話すきっかけにできると思っている。
もちろん成功させることが大前提だ。
Minelのような客の雰囲気を見せて、バンドで食っていくなんて言えない。
絶対成功して、説得して学校を辞め、母親に楽をさせてあげたい。

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