小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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「今日は学校はもういいか・・・」
部屋の隅にある電子ドラムに目を向けた。
散らかっている部屋だが、その周りだけはきちんと片付いてあった。
バンドはしてないものの、毎日練習はしている。
電子ドラムに中古で買った20wのベースアンプ。
十分電子ドラムにも使えた。
俺はイスに座り、ドタドタと音を立て始めた。

家は町の中でも極めて山奥であり、10m先は山。
周りの家もかなり離れていて、騒音については問題ない。
ドラムの一番の問題である環境作りには恵まれた。

父は親が小さい頃に他界し、母は一人で俺を育ててくれた。
朝から家を出て夜遅くに帰ってくる毎日だった。
職は美容師、手はひび割れがひどかった。
俺には自分の好きなように生きてほしいと言ってくれた。
絶対にいつか恩返ししたいと思ってる。

ブツン!!

「え・・」
さっきまで鳴り響いていた騒音が止まり、棒がゴムパットを叩く虚しい音に変わった。
アンプは電源がついている。
どうやらシールドがいかれたみたいだった。
1000円ちょいの安シールドにしては2年はもったほうだと思う。

「今月厳しいけど、買わないとな・・・」
スティックを置き、身支度を始めた。

-4-
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