小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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マチダ楽器。
商店街の片隅にある小さな楽器屋。
店長のおいちゃんとは顔なじみで行きつけの楽器屋。
1階は弦楽器関係で2階にドラム関係がそろえられている。
この町では一番ドラム用品はしっかり揃っている。

「こんにちはー」
「おう、龍児。どした?」
おっちゃんは接客中だった。
身長は自分より少し低めの男がベースを試奏していた。
「シールドが壊れちゃって、新しい奴を」
「ああ、電ドラに繋いでたって奴か。安モンでいいな」
店の人が安モンを薦めるのもどうかと思う。
「はい、一番安い適当な奴で」
話していると、ベース音が少し大きくなり、歪んだ。

こんなベースラインを生で聴いたのは初めてかも知れない。
指の運びも滑らかで、なによりパワフルで、ぐんぐんと引き込まれた。
スラップも一粒一粒の音がしっかりしていて安定感もあった。
ベースのOverDriveを選んでいるみたいだった。

「おっちゃん、あの人何者?すげーうまいね」
おっちゃんは安っぽい袋に安物シールドを入れながら
「あいつは高校中退しててな、お前の一つ上じゃないかな」
「へえ・・・」

ステッカーだらけのベースはBacchusの2万ちょいの安物ベース。
愛機と実力が合ってない人だった。

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