小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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帰宅中のバス内。
他の客はまったく居なく、貸切状態だ。
新着メールが2件。
1つは雄大から次のライブの予定。
「8月半ばに入れる。詳しいことはまた今度。次の練習は来週の土曜」
もう1つは明日香から。
「おつかれさまです。またライブがあるときは誘ってください。友達もバンドに興味を持ったみたいです」
バンドに興味をもってくれるのはバンドマンにとってかなりうれしいものだ。
それも自分のバンドを見て。
龍児は各々に返信をしながら、家に帰宅した。

母親が居間でテレビを見ている。
龍児は機材を自分の部屋に置き、居間へ向かった。
「おかえり」
「ただいま」
龍児はコップに水を注いでいる。
母親は軽いものを作ろうと、キッチンへ向かう。
母親が口を開いた。
「龍児」
「ん」
「あんたはやれば出来る子。どんな状況になっても踏ん張ってくれる子だよね」
龍児は少し困ったように言う。
「そ、そうかな・・」
「学校は、どうなの?」
龍児は言葉に詰まった。
「どうって・・・」
「やりたいことを貫こうとするなら、何も言わないよ」
龍児は黙ってしまった。
キッチンの音以外の音が消えた。

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