小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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もちろん付き合っていない2人は駅に到着した。
「じゃあ次のライブも見に行きますね」
「まじで気をつけてね、危ないから」
母親が被害を受けていることもあり、念入りに注意を呼びかけた。
「あ、あの・・えっと・・」
明日香の声が小さくなっていく。
「え、な、何?」
何故か龍児のほうが緊張する。
「今度の日曜にある、お祭り・・一緒に行きませんか?」
明日香はそう言うと、顔を下へ向けた。
今度の日曜っつったら明々後日か。
「夜だよね、大丈夫だよ」
「ホントですか?じゃ、じゃあ・・楽しみにしときますね!」
龍児は恥ずかしそうに笑う。

無人のバスで出発を待っている2人。
前までは前後の席に乗っていた2人だが、気づいたら隣同士で座っている。
「あ、私、ギター始めたんです。影響受けちゃって」
そういって、左手で何かのコードを作っている。
「え、影響て・・俺達の?」
「は、はい」
「そっか・・すっげーうれしいな」
自分たちがきっかけで楽器を始めるなんて。
「ホントにあの時は、皆さんかっこよかったので・・」
龍児と明日香は目が合い、互いにそらしあった。
「何か進歩したら、また教えてよ」
「毎日がんばってます」
明日香は両手を握り、脇をしめる。
なんとも可愛い仕草だった。

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