小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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「ほい、980円ね」
「あ、ありがとうございます」
ベースを弾いている人に声を掛けようか迷っていた。
龍児は人付き合いは苦手なほう。

「おっちゃん、あの人バンド組んでるの?」
「組もうって話になってるみたいだぞ?」
まだ組んでないのか、もったいないなあ。

まだ組んでない?

俺は勝手に声が大きくなっていた。
「そのバンドってメンバー揃ってる!?」
おっちゃんは少しのけぞり、
「詳しくは知らん、俺も最近知り合ったモンだから」

俺はその人のもとに歩み寄った。
迷いはなかった。

「あの・・」
店内のベース音が止まり、静かになる。
「はい?」
きりっと剃った眉毛に白いキャップ。右耳にはピアス。
「バンドとか組んでるんですか?」
「これから組もうとしてるんだけどね」
「足りないパートがあるんですか?」
龍児は期待に胸を膨らませた。

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