小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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「今日、楽しみですね」
明日香が楽しそうに話し始めた。
「そうだなあ。俺、女の子と一緒に歩いたりとかしたことないから緊張する・・」
「わ、私もですよ・・」
明日香も緊張しているようだ。

徐々に乗客が増えていく。
祭りに行く格好の人ばかりだ。
同い年くらいのカップルの男性は、甚平を着ていた。
「ご、ごめんな・・・俺、服とかよくわかんないからこんな格好で来ちゃって・・」
龍児は情けない声で言う。
明日香の格好が可愛いだけに、プレッシャーを感じているのだ。
「そ、そんなの全然大丈夫ですよ」
明日香は恥ずかしそうに続けた。
「龍児君が・・その・・ステージの上ではすごくかっこいいの・・知ってますから」
明日香はそう言うと、顔を赤くし、下に向けた。
龍児も恥ずかしそうに顔を下に向ける。
だが、それ以上にうれしかった。

10分ほど遅れをとっているバスはようやく駅についた。
龍児達はバスを降り、駅前を歩き出す。
たくさんの屋台が連なり、神社までつながっていた。
予想以上の人の多さに2人は戸惑った。
龍児は男らしく、明日香の左手を握る。
「はぐれないようにしないとな・・・」
明日香は恥ずかしそうに龍児の手を握り返す。
「そうですね・・」
2人はしっかりと手を繋ぎ、龍児が少し明日香を引っ張るような形で、人を掻き分けながら進む。
明日香は龍児のをずっと見つめていた。

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