小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

あれから、母親にも紹介した。
そして、よく家に来ては、母親の話し相手になってくれたり、家事をしてくれたりしている。
明日香の料理は結構おいしい。

「ただいま」
龍児は居間に入り、イスに腰掛ける。
「あ、龍児、おかえり」
母親はテレビを見ていた。
「どうだ、腕は」
「もう大丈夫。一時期はハサミもろくにもてなかったよ」
「そっか、良かったな」
龍児は一安心した。
「龍児、ライブ楽しみだね」
「そうだな、でも気をつけろよ。今回は箱が狭いから客席はイモ洗い状態の可能性が高いぞ」
龍児はコップに水を注ぎながら言う。
「うん、わかった。後ろのほうで見とくね」
明日香は龍児がテーブルの上に置いた水の入ったペットボトルを冷蔵庫に戻す。

「龍児、明日香ちゃんが言ってたよ」
「え、なんて?」
「龍児はドラム叩いてるときが一番かっこいいって」
「お、おかあさんっ!」
明日香は真っ赤になりながら母親に駆け寄る。
母親はくすくすと笑っている。
「ったく、お袋・・。ちゃかすなよ」
龍児は赤くなりながらも、笑いながら言った。
「で、普段は少し控えめでおっとりしてるところが可愛いんだって」
「も、もう、おかあさーんっ!!」
明日香は母親の口をふさぐ。
龍児は頭を掻きながら恥ずかしそうに下を向いた。

-64-
Copyright ©Dissonance★ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える