第九話 死神は二度笑う
ララバイの正体がわかったカイル達は再び魔道四輪に乗り、鉄の森を追いかけた。
「エルザ!飛ばし過ぎだ!SEプラグが膨張してんぞ!このままじゃお前の魔力が!!」
車の屋根に手をかけ、落ちないようにしているカイルがエルザを心配して叫んだ。
「放っておけば何人もの命が奪われるかもしれんのだ。今は一秒でも惜しい。いざとなったら棒切れでも持って戦うさ。それに、頼れる相棒がいるからな」
カイルを見上げ、不敵に笑う。それを見たカイルは頭を二、三掻き
「わかった、もう何も言わん。だが限界だと思ったら殴ってでも止めるぞ」
「ああ」
飛ばした成果もあり、オシバナに短時間で到着したが、駅は騒然となっていた。
「こいつはヤバイな」
人ごみを掻き分け、役の中心へと入って行く。
「駅の様子は?」
ようやく到着し、エルザが駅員に中の様子を聞く。
「な、何だね?君は!」
突然の質問に慌てる駅員。
ゴッ!!
「ぐはっ!!」
即答しなかった駅員に強烈な頭突きをかます。
「駅の様子は?」
そしてその繰り返し………ひでぇな。
「そ、即答出来る人しかいらないってことね……」
「だんだんわかってきたろ?」
その様子を見たルーシィとグレイは冷や汗を流す。ナツは魔道四輪のおかげですっかりグロッキー。ルーシィに背負われていた。
「とゆーかなんであたしがナツを背負ってんのよ!!」
「状況は大体わかった。急ぐぞ」
ルーシィの不平を無視して駆け出す三人。
「………シカト……」
ようやく中に入るとそこには軍の小隊が全滅していた。
「ひぃいいい!!」
「相手は仮にも魔導師ギルドだ。軍の小隊では敵わんさ。死んでないのがせめてもの救いだな」
カイルとエルザはこの状況を予想していたらしく、あまり驚かず中心へと向かった。
ホーム内にたどり着くと、そこには鉄の森全メンバーが集結していた。
「やはり来たか、待ってたぜ?フェアリーテイル」
列車の上に座った鎌を持った男が下卑た笑いをもらす。奴がエリゴールだ。
「歓迎パーティにしては随分大家族での出迎えだな。エリゴール?」
「貴様らの目的は何だ?返答次第ではタダではすまさん」
「別に、遊びてえんだよ。暇だし、仕事もねえしよ〜」
それだけ言うと、空に飛び上がった。
「飛んだ?!」「風の魔法だ!!」
ルーシィの疑問に対し、ハッピーが答える。
「まだわかんねえのか、駅には何がある?」
スピーカーをコンコンと叩く。
「まさか、ララバイを放送するつもりか!!」
「何?」
「フハハハハ!今駅の周りには野次馬どもが山ほどいる。ここで死のメロディーを最大音量で流せば…フハハハハ!!」
「大量無差別殺人か!!」
「これは粛清だ。何も知らぬ愚か者共に死神が下す死の鉄槌!!」
「バカもここに極まったな。そんな事をしてもてめえら闇ギルドには何ももたらされん」
「そうでもないさ、人の死を操れるようになれば権力を操るのもそう難しくはない。未来をも支配できる」
我慢できなくなったルーシィがエリゴールに向かって叫ぶ。
「あんたバッカじゃないの!!」
「残念だったな、ハエ共」
カゲヤマが影を使ってルーシィを襲う。
「闇の時代を見る事なく死ぬとはなぁ!!」
「きゃ!!」
「しまったぁあぁあ!!」
悲鳴をあげるエルザとルーシィ。だがその影を黄金に輝く剣が悲鳴と共に切り払った。
「何!!」
「不意打ちとは実に闇ギルドらしい発想だな。だがそういうのは速さと破壊力を伴わないと意味ねえぜ、エリゴール?」
美しく煌めく剣を肩に担ぎ、ニヤリと笑うカイル。
「て、てめえはカイルディア!!なんでてめえがここにいる!?」
それを聞いた周りの雑魚も口々にあのカイルディア!?とざわめく。
「さてと、ケンカも売られた事だし、そろそろ開戦と行こうか」
「カイル!!」
助けられたルーシィは床にへたり込んでいるが、笑顔を浮かべてカイルを見た。
「一応聞くが、無事か?ルーシィ」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「どーいたしまして。だが今後はてめえの身はてめえで守れよ?それがウチのモットーだぜ?」
振り返り、ウィンクするカイル。その頼れる背中と優しい言葉、そして笑顔はルーシィにとって非常に魅力的だった。
「/////うん、ごめん///」
顔を真っ赤にするルーシィ。
その様子を見たエルザが黒いオーラを全身に纏っていた。
「お、おーい、エルザさーん」
真横にいたグレイがエルザに話しかける。
「……何だ?今虫のいどころが非常に悪いんだが」
「お、落ち着こうぜ?な?」
冷や汗を滝のようにながし、いつ爆発するかわからない爆弾を必死になだめようとする。
「何を言っている。不思議な事に今私は波風のない凪の海のように落ち着いている。今の私に斬れんものはない」
穏やかな口調だが、奥底に眠る怒りは否応なく感じてしまう。人間怒りの沸点を越えると逆に落ち着いてしまうものなのだ。
「ルーシィ、ナツを起こしておけ。行くぞエルザ!」
「ああ!私がカイルの真の相棒だという事を教えてやる!!」
カイル達VS鉄の森全メンバーの戦いがついに始まった。
「かかったな、フェアリーテイル。カイルディアの奴がいたのは想定外だが、概ね計画通り……
笛の音を聞かせなければならない奴らがいる。必ず殺さなきゃいけない奴らがな」
そして何処かへ飛んで行くエリゴール。その様子を目のはしで捉えた男がいた。
(あいつ、どこへ行くつもりだ?大体本当に奴らの目的は無差別殺人なのか?シロツメ、オシバナ、この隣は確か……クローバー、そうか、そういう事か…)
あとがきでーす。読んでいただきありがとうございます。コメントよろしくお願いします。