第十一話 閉じ込められた妖精達
駅の中から出てきたカイルをエルザが見つけ、叫んだ。
「エリゴールはいたか!!」
「いや、シルフに駅内を探らせたが見つからない。多分もうオシバナにはいねえな」
右腕を一振りすると風がカイルを包む。
「とりあえず、外の野次馬共を避難させる。エルザ、ついて来い」
「わかった。ルーシィは引き続きエリゴールの捜索を頼む」
「ええ!?あ、あたし!?」
「た・の・む!」ギロ!
「は、はぃいぃいいい!!!」
一目散に駅内に入って行くルーシィ。ハッピーもそれに続いた。
ざわめく群衆の前にカイルとエルザが現れた。駅員から拡声器をひったくる。
「とっとと逃げろ!!野次馬共ぉおぉおお!!間もなく死の魔法が放送される!聴いたらみんな死ぬぞぉおぉおお!!」
三秒ほど沈黙に包まれた後、群衆達はパニックになり逃げ惑った。
「あ、あんたなんて事を!!」
「残念だが事実だ。あんたもとっとと逃げろ。エルザ、俺たちはクローバーへ向かうぞ」
「クローバー?何でそんなところへ?今関係ないだろう」
「え!?お前気づいてなかったのか!?」
驚愕の表情を浮かべるカイル。その背後に死神が現れた。
「ほう、気づいたか。流石はパラディン様だ」
「エリゴール!!どういう意味だ!!」
「おっと、ティターニア様は気づいてなかったか。あんたとは一度戦ってみたかったがな」
風の魔法を発動させ、エルザとカイルを吹き飛ばした。衝撃だけでまったくダメージはなかったが風の檻の中にいれられてしまった。
「クソ!やられた!」
「な、なんだコレは……まさか、魔風壁!!」
「計画外の妖精を閉じ込める鳥かごってところだ。そこでおとなしくしてな」
「この間に定例会に行く気か!!エリゴール!!」
定例会?!とまだわかってないエルザがカイルに問いかける。
「まだわからないのか!?奴の狙いは大量無差別殺人なんかじゃない!定例会に集まったギルドマスター達だ!!」
「ハハハハハ!その通り!!俺たちから権利を奪ったジジイ共に鉄槌をくだしてやるのさ!」
エリゴール!と叫んだ後、外に出ようとエリゴールに飛びかかろうとするが、魔風壁に吹き飛ばされた。
「無駄だ。魔風壁に囲まれちゃ力づくじゃ出れねえ」
「そ、そんな…カイル!きづいてたんだろう!?なぜ教えてくれなかった!!」
「大量無差別殺人の可能性もゼロじゃなかった。それにな………ナツやグレイはともかく、お前は気づいてると思ったんだよ!!」
「そ、それは私が思ったよりバカだったという事か!!」
「ハッキリ言っちまえばな!!」
「ははははは!そこで一生夫婦ゲンカしてろ。あばよ!!」
「「クソぉおぉおお!!」」
一通り言い争いをした後、死屍累々の鉄の森の連中を尋問していた。
「お前らの中に魔風壁を解除できる奴はいねえのか!!」
「で、できるわけねえよそんな事!」
「クソ!こうしてる間にもマスター達の命が!」
焦っているとグレイが二階から降りてきた。
「グレイ!状況はわかってるか!」
「ああ、さっき見てきた!下手に出ようとすればミンチになるぜ!こいつら何とか出来ねえのか?!」
倒れている奴を蹴飛ばす。
「よせ、グレイ。彼らには出来ない」
「……まてよ。確かララバイは封印されたモンだったよな。なら解除できる魔導士がいるはずだ」
カイルが状況を分析し、希望を見つけ出した。
「ディスペラーか!」
「封印を解いたのは確かカゲだ!この中にいるはずだ!」
チッと舌打ちする雑魚。どうやらあたりのようだ。
「カゲの場所ならもうシルフの使い魔が見つけている。ナツと戦闘中だ。急げ!!」
カイルに従ってエルザとグレイが走り出す。一刻も早く解除させなければ!!
「カラッカ。近くにいるんだろ?カゲに解除させるわけにはいかねえ。カゲを殺せ!!」
どごぉおおぉおん!!
派手な破壊音が鳴り響く。
「シルフの誘導がなくてもわかるな。見つけたぞ」
「おいナツ!!よくやった!そこまででいい!」
「でかした、クソ炎」
カイル達が駆けつける。ナツは少し呆れた顔をして
「何だよ、お前ら。こんな雑魚どってことねえよ」
カイルは背中の長剣を抜き、エルザは剣を換装して、カゲの首を締め上げた。
「今すぐ魔風壁を解除してもらおう」
「NOという度に切創が二つ増える事になるぞ?」
その様子を見た事情を知らないナツは怯えている。
「お、おい。もうそいつボロボロなんだ。そこまでしなくても……やっぱりエルザとカイルは怖え」
「黙ってろ!!」
顔をそらしながら絞り出すように一言わかったと言ったかと思うと突然血を吐き出した。
壁から短刀を持った男が現れる。こいつが刺したのだ。
「そんな…」「唯一の突破口が!」「ゆ、油断した!!」
次の瞬間ナツが壁に隠れた男を殴り飛ばす。だが遅過ぎた。
「倒れさせるわけにはいかん!やってもらう!!カイル!治療出来ないか!?」
「傷だけならレムルスで治せるが、コンディションまでは無理だ!」
「いくら傷が治せても肝心のこいつがこんな状態じゃ!」
「やってもらわねばならないんだ!!」
「てめえら……同じギルドの仲間じゃねえのかよ!!」
それぞれがヒートアップする中、完全に乗り遅れたルーシィが冷や汗を流しながらつぶやいた。
「お、お邪魔だったかしら……?」
「あい」
「ええ!?それじゃああいつらの狙いはマスター達の命なの!?」
「ああ、そうだ」
吐き捨てるようにカイルがぼやく。
「カイル。シルフで魔風壁を切れないのか?」
「無理だ。魔風壁を切るとなると魔風壁全てを切らなきゃならん。だがんなもん剣で駅全体切れって言ってるようなもんだ」
「あんた!凍らせたり出来ないの!?」
「出来りゃとっくにやってるよ」
「あ!思い出した!!バルゴの鍵渡されてたんだった!!」
ハッピーが叫んだ。続いてカイルも叫ぶ。
「そうか!あいつ確か穴ほれたな。地面の下からならいけるぞ」
「無理よ!勝手に星霊魔導士が星霊を使うのは重大なルール違反なの!それは出来ないわ!」
「バルゴ本人がルーシィにって言ってたんだけど…」
「それを早く言いなさいよ。鍵寄越して」
ルーシィが解錠するとあのゴリラメイドが現れるものと思ったが、可愛いメイドが現れた。
「痩せたな」「その節はご迷惑をおかけしました」
「いや痩せたってレベルじゃなくね?」「とゆーか完全に別人でしょ!!」
どうやら使用者の趣向に沿った姿になるらしい。早速穴を掘らせ、脱出した。
「ルーシィか…やはり流石だ」
脱出した後、カイルがルーシィの肩を掴んで見つめた。
(え、なに?も、もしかして私に何かご褒美!?)
「初めてお前を連れてきて良かったと思ったぞ」
「えぇえぇえええ!そ、そんなあぁああ」
「ところでナツは?」「ハッピーもいないが…」
全員ハッとした。先に行きやがったんだ!!
「エルザ!お前らは後で来い!魔道四輪で無茶な運転すんじゃねえぞ!俺は先行くから!」
シルフの力で飛ぶとクローバーへと飛んで行った。
あとがきです。カイルは鈍くなくていいという意見をいただいたのですが、物語の構成上ある程度鈍感でないと成り立たないのです。残念ながら鈍感を通させていただきますが、ありがたいコメントを尊重して、犯罪級の鈍感にするつもりでしたが、ある程度に変更します。これからもよろしくお願いします。コメント何でも大歓迎です。出来るだけ取り入れたいと思っているので遠慮なくやっちゃってください。よろしくお願いします。