小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第十七話 バカ


サワァ……サワァ…


風がたなびく野原で俺は眠っている。

あれ?俺はさっきまで戦ってて、それで一応勝ったんだよな。て事はこいつは夢か……


「その通り。流石に理解が早いな。奏者よ」


「オーフィス。来てたのか」


「うむ、妾を使役するにあたって注意事項が少々あるのでの。まずはゴーストの時じゃが、その時そなたは全ての滅竜魔導士の力を得る。物体が魔力であるなら喰らえば己の力にする事が可能じゃ」


「へえ、今までは精霊王をそれぞれの相手で変えて戦ってたが今後はずいぶん楽が出来そうだな」


「むぅ。そういう考えはあまりよくはないのじゃが……それと精霊魔装じゃが、妾の形は恐らく青龍偃月刀じゃ。能力はゴースト時とほぼ同じ。妾を振れば、相手の魔力を力とし、あらゆる滅竜魔法が撃てるじゃろう。あ、あと銘を教えておく。知ってると知らんとでは威力が自然違ってくる。よいか、我が銘は


ニーズヘッグ(神をも食い殺す龍の牙)じゃ」


流石最後にして最強の精霊王だ。とんでもないチート能力をお持ちらしい。


「最後に、妾を取り込んだということは間違いなくそなたには試練が課せられる。世界の運命を握るほどの試練が。じゃが臆するな。そなたは誰より強い魔導士じゃ。己の信じた道を行け。その道がそなたの心の正義に従っている限り、妾達はそなたの力になる」


「わかってるよ。それに俺には仲間がいる。俺が道を踏み外すなんて事はあり得ねえさ」


「ふ、そうかもしれんな。なら起きろ。待っている者らがおるのじゃろ?早く帰ってやれ」


「ああ、そうする」


カイルが再び目を閉じると淡い光に囲まれ、消えて行った。野原にオーフィスのみが残る。


「………頑張るのじゃぞ。それがたとえ神が相手でも……」













……………






目を覚ますとまだ俺は森の中だった。旅館にぐらい運んでくれよと思ったが、俺が変な事はするなと言ったのだった。起きて、周りを見渡す。すると金髪に少し胸の空いた真っ白のワンピースを着た美女が俺に膝枕していた。目の前にある二つのでかい双丘が邪魔で顔は見えないが誰なのかはすぐわかった。

【起きたか?奏者】


「レムルスか…他の奴らは?」


先ほどから精霊王の力を感じない。どこか遠くへ行ったのだろうか……


【皆は昨日女将から依頼があった魔獣達に八つ当たりしてるわ】


お預け食らったからか……今確認してみても着衣は先の戦いでボロボロだが乱れてはいなかった。


「言いつけは守ったようだな。よし、んじゃちょっと遠回りして帰るか」


【殺されなきゃいいけどね。奏者の相棒に】


「それを言うな……今から憂鬱だ。帰りたくねえ」


途中、ふくれっ面した精霊王達を回収して旅館に向かった。その途中で魔獣共が騒いでいるのを発見する。どうやら人を襲ってるらしい。しかし襲われているのも中々の手練れ。たった一人で何とか凌いでいるが、限界は時間の問題だろう。


「助けるか……」


エクスカリバーを創造し、魔獣共を一刀のもと切り払う。


「おい、大丈夫……か……」


「すまない、たすかっ……た……」


そこで倒れていたのは見覚えがありまくる緋色だった。



〜エルザSIDE〜



カイルの眠りの魔法が解けたあと、私はすぐにカイルのあとを追った。評議会で盗み聴きしたおかげでカイルがどこへ向かうかは知っていた。


飛翔の鎧を換装し、寝る間もなくカイルを追いかけた。
近くにあった宿でカイルはもうアストラルの中に入ったと知らされ、私はすぐに突入した。とんでもない魔力が渦巻く山だがそんな事は気にしてられなかった。


カイルを探していると魔獣に襲われた。一匹一匹倒せないほどではないが強力な魔獣達だ。闘ってるうちに囲まれてしまった。


「どけ!私はカイルを守らなければならないんだ!!」


あいつは何でも一人で背負いこむ……今度という今度は思いっきりぶん殴ってやらなければならない。殴って、泣いて、抱きしめて、お前が死んだら私がどうなるか教えてやらなければならないんだ!!


「だからどけぇぇぇえええええ!!!!」


叫びも虚しく数の圧力に押しつぶされる。


(すまない、カイル。最後にもう一度お前に……)


次の瞬間目の前の魔獣達が切り払われる。誰かが助けてくれたのだ。礼を言わねば。


「おい、大丈夫……か……」


「すまない、たすかっ……た……」


誰よりも愛する男がボロボロの姿で立っていた。


〜SIDEBACK〜


しまった……忘れてた。こいつ盗み聴きしてたから場所知ってたんだった…


後悔していると鉄拳に吹き飛ばされた。


「このバカァァァアアアア!!!!」


すでにボロボロのカイルはエルザの鉄拳の前になす術がなかった。モロに喰らい大の字になる。それにエルザが馬乗りになり、殴るのを続ける。


「バカ、バカ、バカ、バカァァァ」


泣きながら殴って来る。最初の一撃以外は肉体的にはもう痛くなかった。だがこれ程痛い拳をカイルは知らなかった。


「お前が死んだら私は泣くぞ!泣いて、泣いて、こんなもんじゃないぐらい。二度とティターニアだと呼ばれないぐらい思いっきり泣くぞ!そんな事は知ってるだろう?それなのに…それなのに…お前はぁぁぁあ!!」


「すまなかったよ、だが今回はお前を守りきれる自信がなかったんだ。ごめん…俺が弱いから悪りぃんだ。お前を失うのが怖かった。だからお前には安全な場所にいてもらいたかったんだ…」


「女の幸せは安全なところで男を待つ事ではない!愛する男のそばで支える事こそが幸せなんだ!!」


そこまで言うと上から俺に抱きついてくる。俺はそれを黙って受け入れる事しか出来なかった。


「愛している。カイル。お前は鈍いからこっちが言わないと気づかないだろう。だからもう一度言うぞ。お前を愛している」


そんな事はない。うすうすだが気づいていた。こいつとはもうガキの頃からの付き合いなんだ…他の奴のこころの機微はわからないが、こいつだけはなんとなくわかる。


「俺はお前が大事だけど、愛してないぞ」「知ってる」「腐る程罪を背負っている」「罪ごと愛する!!」


「そうか…ありがとう」


「いつか必ず振り向かせる。今はそれでいい。帰るぞ。もう終わったんだろ?」


「ああ、帰るか…」

エルザに肩を貸してもらい山の外に出る。宿の女将に依頼の完了を告げ、引き払ったあとテリーを呼び出した。


「テリー、帰るぞ。後ろにエルザが乗るが我慢してくれ」


「どういう意味だ?カイル」


「こいつプライド高いからよ。俺以外が乗るの嫌がるんだよな。まぁお前は俺とよく行動してるからまだましだけど」


ひらりと飛び乗る。エルザの手を引いて後ろに乗せる。


「めちゃ速えぞ、降り落とされんなよ」


次の瞬間超高速で駆け出すテリー。


「うわわ!」


必死に俺にすがりつくエルザ。先ほど魔獣にやられたせいか、鎧が壊れていてエルザの柔らかい部分がモロに背中に押し付けられる。


(ったく。ちったぁ意識しろっての)




一時間程で到着し、帰りを告げる。ナツ達にひととおり罵声を食らった後無事の帰還を祝ってパーティを開いてくれた。


「よう無事戻った……信じとったぞ、カイル」


「ありがとう、じーさん。だが当分は休ませてもらう。評議会にはじーさんが報告しといてくれ」


「うむ、わかった」


「カイル〜。うわ〜〜ん」


「ガイルー。おがえりなざい〜」


「あ〜。泣くな泣くなミラ、ルーシィ。美人の涙は嫌いじゃないがお前らに泣かれると辛い」


「だってだって〜」


「ルーシィなんか凄かったよ?カイルが死んだらあたし!」「うわわ!ハッピー!!やめてやめて!」


「私は信じてたよ!カイル。お前が死ぬわけないって!」


「よく言うぜ、カナ。泣きながら酒のんでたのは誰だ?」


うっさい!と酒樽を投げつけるカナ。そこからまた大げんかに発展する。


「ハハハハハ!」


屈託なく笑うカイル。


…………


強くなろう。こいつらをいつまでも守れるように……


人しれず誓いをたてるカイルだった。


















あとがきです。これからも頑張って更新していくことに決めました。皆様のおかげでこの小説を書くことが出来ます。これからもよろしくお願いします。コメント待ってます。酷評でも何でも大歓迎です。




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