小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第二十九話 カイルVSジョゼ!!死すら貴様にはもったいない





「クソ、どこにいやがる。ジョゼ」



乗り込んだはいいが、自分が一体どの部分にいるのかわからないが、中は全体的に暗い雰囲気で、何やらゴチャゴチャしている。
魔力を辿ろうにも、目の前には悪趣味な装飾が施された灰色の壁。


「ぶっ壊すか…」


フェアリーテイルお得意の破壊により道を切り開く作戦。道がないなら作れば良いじゃん、ホトトギス精神を発揮し、カイルが強行突破をしようと壁に手を翳した時だった。




[――――妖精の尻尾の皆さーん、この声を良く聞きなさーい]


[っ、きゃあぁあッ]


陽気でふざけた放送の後に聞こえたのは悲痛なルーシィの叫び。
カイルは大きく目を見開き、息を飲む。


[我々はルーシィを捕獲しました。…そう、一つ目の目的は達成されたのです。我々に残された目的はあと一つ…]


「遅かったか…」


思わず唇を噛みしめる。少しだが鉄の味がした。


[…それは貴様等の殲滅だクソガキ共!]


それを聞くと同時に目の前の壁を跡形もなく吹き飛ばした。


「……させるものかよ」


カイルはその瓦礫をバキバキと踏み締め、一歩一歩ゆっくりと進んで行く。





一方外では、あの放送後シェイドが急に増え、妖精の尻尾側は圧され始めていた。



「くっ…せっかくカイルが減らしてくれたのによ…」

「勘弁しろよ…」




皆の願いを更に裏切るように、シェイドは一ヶ所に集まってどんどん巨大化した。




「冗談じゃないわ…!」




巨大化したシェイドは皆を無視し、既にボロボロの妖精の尻尾のギルドに攻撃を加え始める。




「私達のギルドに何すんのよー!」




「撃ち落とせ!」


「何としてでも持ちこたえるんだ…!」


必死に抵抗するが、ギルドは全て崩れ去ってしまった……








「───はあぁぁ!」



斬撃がジョゼを掠める、が当たらない。破壊音だけが虚しく響く。



周りにはグレイ、エルフマンが気を失って倒れている。


今エルザとジョゼが闘いを始めていた。
実力差がある相手に対して必死に渡り合っている。しかし彼女にはすでに大きなダメージが見られた。





「…貴様、何故立っていられる」


「……仲間が、私の心を強くする。愛する者たちのためなら…この体などいらぬ!」


凜として剣を構えるエルザ。
それを見、ジョゼは口元を歪める。





「強くて気丈で美しい…なんて壊しがいのある娘でしょう…」











またこちらではナツとガジルの戦いが終わろうとしていた。
機械の破壊により生じた炎をナツが喰らい、力を取り戻したのだ。


「調子に乗ってんじゃねえ!!コレで互角だという事を忘れんなぁあぁああぁああ!!!!!」


襲いかかるガジル。しかしフルパワーのナツにその突撃は無謀だった。


「レビィ、ジェット、ドロイ、ジッちゃん、カイル、そしてフェアリーテイル…」


続けざまにブレスを放つガジル、しかしナツはそれを両手で弾き返した。


「お、俺のブレスを!!素手で!!」


「一体どれだけの物を壊せば気が済むんだ!!お前らは!!」


両手に炎を宿し振りかぶる。ブレスを放ち隙ができたガジルによける術はなかった。


「今までの借りまとめて返してやる!!フェアリーテイルに手を出したのが間違いだったな!!」


「お、俺は!!最強の!!」


「紅蓮火竜拳!!!」


炎の拳のラッシュがガジルを襲う。同時にファントムの移動型ギルドも崩壊した。


大の字になり横たわるガジル。ボロボロになりながらも見下ろし、言い放つ。


「コレで…………おあいこな」













ガガッと再び大きな揺れがギルドを襲い、壁や天井が崩れ始める。




「…よく暴れるドラゴンだ」


「ナツ…」



ガジルとの闘いはナツが勝利したようだ。
残るはマスター・ジョゼ、ただ一人。


「ナツの戦闘力を計算違いしていたようだな。私と同等、それ以上の力がある事を!!」


それを聞くと小馬鹿にしたように笑った。


「謙遜はよしたまえ、ティターニア。君の魔力は素晴らしい。これ程持ちこたえたのは貴方が初めてだ…
もうに、三年修行すればもっといい勝負になったかもしれない」


「…………」


黒羽の鎧の剣を構え、睨みつける。が、反論はしない。概ね事実であるからだ。



まったく、とため息をつき肩を竦めるジョゼ。


「……ティターニアにしても、これ程強大な魔道士がマカロフのギルドにいたとあっては…」


「…………気に食わんのですよ」


放たれる闇の波動。よけきれずもろに喰らい吹き飛ばされるエルザ。


「…っぐぁ!!」


「何故私がマカロフに止めを差さなかったかお分かりです?」



再び波動を放つ。
何とかかわすが限界は時間の問題だった。


「絶望を与えるためです」


再びエルザを捉える波動。
剣で切り飛ばしたが、それが限界。膝から崩れ落ちた。


「幽鬼の支配者はずっと一番のギルドだった。この国で一番の魔力と、一番の人材と、一番の金があった。……だが、ここ数年で妖精の尻尾は急激に力をつけてきた。エルザやラクサス、ミストガン、カイルディア……その名は我が街まで届き、火竜の噂は国中に広がった。何時しか幽鬼の支配者と妖精の尻尾はこの国を代表する二つのギルドとなった。────気に入らんのだよ」


エルザが剣を一閃するが避けられる。
その表情は信じられないと言った顔をしていた。


「この戦争はその下らん妬みが引き起こしたというのか!」


「妬み?ハハハッ違うな。我々は物の優劣をはっきりさせたいのだよ」


「そんな…そんな下らん理由で…!」




キレたエルザが目にも止まらぬ速さの斬撃を無数にジョゼ繰り出す。


「ふん!」


「ぐぁぁあぁああぁああ!!!!!」


弾き飛ばされ、闇の魔力がエルザにまとわりつく。


「うぁぁぁあぁああぁああ!!!!!」


ジョゼが魔力を強め、エルザを締め上げた。堪らず叫びごえを上げた。


「戦争の引き金は些細なことだった。ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼だ。「その資産家の娘が妖精の尻尾にいるでしょう?貴様等…どこまで大きくなれば気がすむんだ!」


「ぐぁあぁああぁああ!!!!!」


「ハートフィリアの金を自由に使えたとしたら、間違いなく我々よりも強大な力を手に入れる…。それだけは許しておけんのだ!」


それを聞いたエルザは苦しみながらも笑みを浮かべた。


「何がおかしい…」


「……ふん、どっちが上だ下だと騒いでいること事態が嘆かわしい…!…が、貴様等の情報収集力のなさにも呆れるな」


「…何だと?」


挑発的な笑みを浮かべるエルザにジョゼが眉を寄せる。


「ルーシィは家出してきたんだ…家の金など使えるか…!」


「な!」


驚き、目を丸くするジョゼ。



「家賃7万の家に住み、私たちと同じように仕事をして共に闘い…共に笑い…共に泣く、同じギルドの魔道士だ……戦争の引き金だと?……貴様にルーシィの何がわかる!!」


驚いていたジョゼだが、今度は不敵に笑う。



「……これから知っていくさ」


「何?」


「私があの小娘をタダで父親に引き渡すと思うかぁ?金がなくなるまで飼い続けてやる…。ハートフィリアの財産全ては私の手に渡るのだぁ」


「おのれェ…!」


エルザが自力で巻き付いた魔力を破ろうとするが、さらに強い魔力でエルザを締め上げた。


「うぁあぁああぁああ!!!!!」


「さぁて、残酷ショーを始めようかぁ!君の姿を妖精の尻尾の連中にも見せてやろう!不様な姿を見れば残りのクズ共も降参するだろう!」


エルザの鎧が砕け、悲鳴が辺りに響き渡る。




(……仲間の足を引っ張るくらいなら…)



何を思ったのか、エルザは落ちていた剣を遠隔操作し自分に向ける。




次の瞬間、閃光が一筋走ったと思ったら、エルザが闇の魔力ごと蹴飛ばされた。


「な!?」


動きが見えなかった事に驚愕するジョゼ。
エルザは何が起こったのかまるでわからずキョロキョロしている。


先ほどまでエルザがいた場所には黒を纏った騎士がいた。


「………貴様は…!」


ジョゼを一瞥した後、その騎士はエルザが吹っ飛んだ方向へスタスタと歩く。


「…………カ、カイル……!!ば、バカ者!!なぜ来た!?そんな体でってうわわ!!」


倒れているエルザを締め上げるカイル。その瞳には怒りの激情が渦巻いていた。


「人の事非難できる立場かアンこら。てめえ今なにするつもりだった?足枷になるくらいなら死をってか。ふざけんなよ。
てめえが死んだら俺は泣くぞ?泣いて、泣いて、二度と黒の騎士王なんざ呼ばれねえぐらい泣くぞ?」


以前エルザにカイル自身が言われた言葉だった。


「ーーーーーー迷惑かけてこそ家族だろうがぁあぁああぁああ!!!!!」



耐えきれずポロリと涙をこぼすエルザ。壁に持たれかけさせ、レムルスに治癒を頼むとジョゼに向き直った。







「────いくつもの血が流れた。
……家族の血だ」



ゆっくりと近づいて行く……魔力をほとばしらせながら……



「出来の悪ぃアニキのせいで家族は傷み、涙を流した。互いにな。……もう充分だ。終わらせなきゃなんねぇ」



涙を拭うエルザに笑顔が戻る。


「カイル……!!」


その姿を確認したジョゼは、恐ろしいまでの魔力を放出させる。



「天変地異を望むというのか」


「それがギルドの為ならな」







「カイル……」


戦いが始まった。カイルは光を、ジョゼは闇の魔力をぶつけながら激しい動く。


「チッ。レムルスじゃキリがねえな」


手に精霊魔装クラウ・ソラス(神殺しの光剣)を展開し、振るうカイルだが、決定打を与えられないでいた。


「今更貴方が闘っても遅い。ギルドはすでに破壊されています」


「ギルドは形じゃねえ。人と人の輪だ」


クラウ・ソラスで星の輪を描くカイル。


「全ての家族達に告げる!!よくやった!!フェアリーテイルである事を誇れ!!!」


「くくく、誇ったところでなんになります?もはや貴方さえ倒せばフェアリーテイルは終わる……」


「………今から呼び出すのは最悪の精霊王……俺以外のローレライでは扱う事さえ出来なかった………こいつを使えばお前は間違いなく負ける……降参するなら今だぜ?ジョゼ……」


それを聞いたジョゼはブチ切れた。


「ふざけるな!!わたしはお前と互角に、いや、魔力だけなら互角かもしれないが、まだわたしの方が一日の長がある!!
非情になりきれる事を考えてもわたしの方が強い!!!降参するならお前だ!!地獄に落ちろ!!フェアリーテイルゥゥウウウゥウウウ!!!!」


「残念だ……」


刹那カイルの周りを漆黒の渦が包む。サモナルを唱え、レリーズを行い、手に精霊魔装を宿した。


「闇の精霊王レスティア……精霊魔装ヴォーパルソード(神の真実を貫く闇の魔剣)」


「それがどうしたぁあぁああぁああ!!!!!」


シェイドを放ち、闇の波動を構えるが、カイルが剣をひとなぎすると全て消え失せた。


「な、何!?」


「ダークネスチェーン」


剣のつかから漆黒の鎖が放たれる。ジョゼに巻きつき、動きを縛った。


「な、なんだコレは!!」


「アークブラスト(魔雷の業風)」


「ぐ、ぐぁあぁああぁああ!!!!!」


ジョゼを黒い魔力の嵐が覆い尽くす。ジョゼは叫び声を上げ続けた。


「カ、カイル……コレは?」


傷を抑えながらエルザが質問する。


「闇の精霊王レスティアは闇の魔力を食らうだけじゃない。相手の魔力そのものも喰らい尽くす。
俺たちの身体の中には魔力がカラになっても再び蓄積する機関がある。だが、レスティアはそれすらも食い尽くすんだ。この漆黒の嵐が止んだ時、それはジョゼが魔導士でなくなる時だ…」


青ざめるエルザ。全世界で魔導士はたった一割…しかし魔導士であった者が魔導士でなくなるというのは信じ難い事だろう。ジョゼのように力に酔ったものならば耐えきれないかもしれない。


「もちろん殺す事も出来たが貴様には生きて償ってもらう。ただの人間として……貴様には死すらもったいない」


嵐が止んだ時、ジョゼは真っ白になっていた……

























あとがきです。いかがだったでしょうか?この後、ジョゼの最後の魔法が発動します。しかし、そこに現れるのは……
次回、【妖精の法律。家族を守る聖なる光】でお会いしましょう。コメントよろしく!!

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