小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第三十話 妖精の法律。家族を護る聖なる光





ジョゼが倒れたのを確認すると、カイルも膝から崩れ落ちる。治癒の為のレムルス、索敵の為のシルフ、そして今のレスティアの召喚ですでにボロボロだったカイルはとっくに限界だった、


地面に衝突する寸前でエルザが受け止める。


「まったく……無茶がすぎる。お前は……」


「へへ、すまんな」


「でも……やっぱりお前は………すごい奴だ」


カイルの顔を胸元に抱え込むエルザ。
色々気持ちいいが、呼吸困難に陥った為、バンバンとエルザの腕を叩く。


「ん?どうした?カイル」


「ーーーーーブハッ!!息ができなかったんだよ、バカ」


ああ、すまんな、と一言謝罪した後、外へ出ようとエルザがカイルに肩を貸し、歩いて行くと、突如先程とは比べ物にならない数のシェイドが生まれた。


「そんな!!ジョゼは倒したのに!!」


「しまった……多分じーさんにもし倒された時の為にジョゼが用意していたトラップだ。ファントムの敗北が確認されると発動するようになってたんだろう。」


もうすでに皆疲労困憊だ。これに加えてこれ程の数のシェイド。耐えられる訳がない。


「お、俺がレスティアを召喚して……」「無理だ!!そんな体で何ができる!!」


「だがこのままでは!!」


突如カイルが黙った……温かく、強大な魔力を感じたからだ。


「こ、これは……」


シェイドたちの前に立ちふさがったのは光を背に堂々と立つ聖十大魔導の一人。俺らの親。
復活したマカロフだった。


「フェアリーテイル審判の責務として……貴様らに三秒の猶予をくれてやる……3……2……1……


…………………………そこまで。【妖精の法律】発動」



マカロフの妖精の法律(フェアリーロウ)により、辺りは光に包まれ幽兵は消え去った。




「………こ、これは……?」


「フェアリーロウだ…」


妖精の法律は、術者が敵と認識した者のみを聖なる光で攻撃する超上級魔法。
誰にでも習得できるものではない、もはや伝説になる程の魔法だ。


「ははは、流石はじーさん」


「まだまだ遠いな、あの背中は……」


見下ろしている二人の背後にエルザにやられたアリアが忍びよる。


(今ならやれる…スキだらけ……か、悲しい!!)


飛びかかってくる直前にカイルとエルザの鉄拳がアリアを捉え、遥か彼方へ吹き飛ばした。


「よせ、もう終わったんだ……これ以上続けるなら跡形もなく殲滅すんぞ。
これだけ派手にやらかしたんだ。お互いタダじゃすまんだろう。追って沙汰が出るはずだ……ジョゼを連れてとっとと帰りやがれ」

















「勝ったぞー!」

「ファントムに勝ったー!」


沸き上がる皆。
長い闘いは終結した。



「みんな嬉しそうだねルーシィ!」

「うん」






「カイルよくやったぞ!」

「お、おぉ」


エルザの元に戻ると抱き寄せられた。
ちょ、黒羽の鎧での抱擁は……しかも壊れてるし…
む、胸が…!!


「皆を守ったカイル、お前は漢(おとこ)だー!」


「カイル、ありがとうね」


「……おう。って、エルザ!もう放してくれ!」

「遠慮するな」


えー、というと、さっき蹴飛ばされた仕返しだ、と更に強く押しつけて抱きしめてくる。


かろうじて脱出すると、今度はカナに後ろから抱きしめられる。


「か、カナ!!」


「さんっざん心配かけたんだ。これぐらいの事はやってもらうよ〜〜。ほーれうりうり」


カイルの背中にグリグリと胸を押し付けるカナ。
ちょ、マジいい加減にしろよ!?カイルさんだって男なんだから理性がヤバい。


「だーーー!!いいかげんにしろ!!まったく、ナツ探しに行ってくる!!」


振りほどくと空とんでナツを探しに行く。


「あ、コラ!!待てーーー!!!」


「へっ!だーれがーー」









「なぁお前、滅竜魔法どこで覚えた?」

「聞こえねぇー」



仰向けに寝転がりながらナツとガジルが会話を交わす。



「俺は!同じ魔法を使える奴に初めて会ったんだぞ。それくらい教えてくれても…」


「うるせー」

「なぁ!!」


ムカッとし、ナツが起き上がる。



「…メタリカーナ。鋼鉄のドラゴン メタリカーナだ」


「何ぃ!っうわぁ」


勢いをつけすぎて落下するナツ。


「っ…やっぱりドラゴンに教えてもらったのか!?」

「…お前もか」


「なあ!今そいつどうしてる!?」


「さぁな」


ナツの問いにガジルは面倒くさそうに流す。



「そいつ今どーしてるー!!」


「知らねーつってんだろー!」



先程まで殺し合いをしていたとは思えぬ程、仲良く見える。


ガジルの話では、メタリカーナは777年7月7日に姿を消したそうだ。
それはイグニールも同様だ。


「何で7ばっかなんだー!!」


「知るかーーー!!!」


「んー。オーフィス、何か知ってるか?」


話を聞いていたカイルがそらから降ってきた。


「おわ!カイル!!」


「よ、ナツ。お疲れ。あ、あと、オーフィスも妾の口からは語れないだってさ」


「オーフィス?誰それ」


「ああ、教えてなかったか…龍の精霊王だよ。俺の新しい眷属」


「竜!?で、そいつは何か知ってんのか?!」


「いや、何か知ってるそうだがまだ話せないんだとよ。少なくとも竜王祭まではってさ」


「竜王祭?」


「あと七年後に行われる何からしい。詳しくはわからん」


「………フン、どうでもいいぜ…」


はぁ、とため息をつき、ガジルが立ち上がる。



「行くのか?」


「あぁ。次会ったらぶっ殺す!首洗って待ってな」


「物騒な奴だなーこれでおあいこだから仲直りしてやろうと思ったのに」







少し歩いたところでガジルが停止する。


「「行けよ」」


「ここが俺のギルドなんだよ!!派手にぶっ壊しやがって!!」


「お互い様だろうが!!あ!やっぱ仲直りやめた!!」


「………仲いいな、お前ら…」










ーーーーーーーーーーーーーーーー















「こりゃまた、派手にやられたもんじゃなぁ…」


壊れたギルドを見てマカロフがため息をはく。



「あの…マスター…」


「んー?お前も随分大変な目にあったなぁ」



俯くルーシィに、マカロフを筆頭に労いの言葉をかける皆。
その中には病院にいたはずのレビィたちの姿もあった。



「もう、ルーちゃんのせいじゃないんだから!」



「でもあたし…」


「───ルーシィ。楽しいことも悲しいことも全てとはいかんが、ある程度は共有できる。それがギルドじゃ」


自分を責めるルーシィにマカロフが優しく話しかける。



「一人の幸せは皆の幸せ。一人の怒りは皆の怒り。そして一人の涙は皆の涙。自責の念かられる必要はない」


「…っ」



「君には皆の心が届いているはずじゃ。…顔を上げなさい。君は妖精の尻尾の仲間なんだから」




顔を上げれば笑顔の皆。




「う、…うぁぁぁん!」




何かが切れたように大声で泣きじゃくるルーシィ。

それにつられて泣き出す者もいれば、笑う者もいる。


ギルドは壊れてしまったが、妖精の尻尾の絆はより強固なものとなった。





ファントムとの長い激闘は
ここに幕を閉じた──────……


(しかしこれからどうなるんじゃろ〜。ワシら……何か色々壊したし、請求費とか全部こっちに回ってくるんじゃ………)


「えーーーーん!!」


あんたが泣くなよ、じーさん。

















「さーーてと、心配かけてくれたお礼をしなきゃね〜」


「普段なら嫌だが、今日は共同戦線を組むぞ、カナ、ミラ」


「みっちりしっぽりお礼しなきゃね……」


「ち、ちょっと待て。エ、エルザ。ミラ、カナ……な、何をするつもりだ。て…アーーーーー!!!」








その夜、カイルの部屋から断末魔が聞こえたとか聞こえなかったとか……
翌日カイルはげっそりしていて、エルザとミラとカナはやたらツヤツヤしていたのは余談だ……





















どもども、あとがきです。ファントム篇しゅーりょー。最後カイルが襲われて終わりです。いかがでしたでしょうか?それでは次回【ツッコミが弱いと何か物足りない】でお会いしましょう。コメントよろしくお願いします!

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