小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第三十一話 ツッコミが弱いとなんか物足りない



ファントムとの闘いから一週間程経ち、やっと落ち着きを取り戻してきた。


あの後、評議院の軍隊 ルーンナイトが来て全員あっという間に取り囲まれた。
どさくさ紛れにカイルは逃げだし、ナツも逃げだそうとしたが失敗、マスターのマカロフは泣き出す始末。
毎日の取り調べの結果、処分は評議会の後、後日下されるそうだ。

…まぁかなり大変だったわけだ。


ちなみに俺は、ほとぼりが冷めるまでマグノリアの東のトネリコの街に避難していた。



「ずりぃぞ!カイル!!一人だけ逃げるなんて!!」


「ふっ、相手は評議員。ガチ勝負出来ない相手にはサンキューオッケー逃げるにしかず、だ。」


「三十六計逃げるにしかず、だ。お前は博識なのかバカなのかわからん」










そして今はギルドを建て直すための木材を運んでいる。




「見ろよカイル!すげぇだろ!」


「あー、そうだな」


「う…っ、ぬぁぁー!!」


ナツがバカじゃねえのというぐらい沢山の木材を持っている。とっても辛そう。



「一度にそんなに持つからだ…バーカ」


「んだとコラァ!?てめえが出来ねえからひがんでんだろ?」


「は!?その気になればてめえの倍はイケるっての!!」


エルザ達に搾り取られてガンガンする頭に響く。
…頼むからやめてくれ。



「そこ!口よりも体を動かせ!一刻も早くギルドを修復するんだ」


「「あ、あい…」」



「エルザ気合い入ってんなー…」


作業服に身を包み、木材を肩に担いだエルザが現れた。



「っ〜…ってかカイルのそれ…、もしかしてエルザと…」


「ああ、何もいうな。まあ確かに動きやすいけどな」


何事もまず格好から、と言うエルザに無理矢理お揃いの作業服を着せられたカイル。
ヘルメットにはフェアリーテイルのマークが入っている。


「お前は何着ても似合うな〜。若頭って感じだ」


「はは、ありがと。」


「お前らーさっさとギルドを建て直すぞー」


巨大化したマカロフが促す。


「監督、この角材はどこへ」


「おーあっちじゃ」


「監督て……」


「ノリノリだなエルザ…」








「ど、どうよ……」


少し離れた所でグレイがアホだろという量の角材を持っている。
すぐにバランスを崩し下敷きになった。


「あーあ、バカだな。ホラ」


とんでもない量の角材をカイルが片手で持ち上げた。


「や、やっぱ化け物だ」


「あ、手が滑った」


持っていた角材すべてもう一度グレイの真上に落とす。


「ぎゃぁあぁあぁあぁああ!!!!すんませんすんませんすんませんでしたぁあぁあぁあぁああ!!!!」
















一段落ついたのか、伸びをするナツ。


「んあーぁ、腹減ったー」
「あい!」


「飯の時間かぁ…」


グレイがボソッと呟いた時だった。
突然大量の水がグレイの目の前を通過した。



「何だぁ?」


「うぁぁずぶ濡れだ…」

「弁当だ!」


いつの間にかグレイの手には大きな弁当箱。
開けてみれば、LOVEの文字と具材で作ったグレイと思われる顔。
所謂、キャラ弁というやつだ。



「おー!うまそうじゃねぇか!」


「こんな得体の知れないモン食えっかよー…何か汁出てるし…」


「じゃぁ俺にくれよ!」



「誰が食事していいと言ったー?」



まだ終わっていないぞ、と二人を叱るエルザ。


「…ん?それはキャラ弁というものか?」



「おお!よくできてんじゃねーか。」



「おい、笑うなよ!…ってえぇぇ!?」


興味深そうに弁当を眺めたエルザは、容赦なくグレイの顔にフォークをぶっ刺した。


「んーうまいじゃないか。もっと貰うぞ」


「マジか!?俺も食おー!」


「俺も食いたいな」


見た目は面白いことになってるけど、味とは関係ないからな。


…一番気になるのは、木材の陰に隠れている弁当の制作者だけど。


「よし。カイル、口を開けろ。食べさせてやる」


「やめろバカ。恥ずいだろ」


「今更何をいう。昨日は私に凄いもの食べさせただろ?今度は私の番だ」


「カイル?凄いものってなんだ?」


「あー!!ナツはまだ知らなくてよろしい。あとエルザ!!食べるから余計な事いうな」


「そうか、なら口開けろ。あーん」


「あ、あーん」


エルザはだし巻き玉子の刺さったフォークを口にいれる。
うん、うまい。


「よし、終わりな」


「何を言っている。まだまだこれからだ。次行くぞ。アーン」


いや、もう勘弁してくれ。ナツ達ニヤニヤしながら見てるし…


「───ナツ、グレイ、エルザ、カイル」


「「「ん?」」」


カイルが汗をかきながら後退りしていると、ロキが話しかけてきた。
マジ救世主!


「これ、ルーシィに渡しておいてくれないか?彼女の鍵だ」


ロキの手には、ルーシィが星霊を呼び出すために使う鍵があった。



「お前、しばらく見ねぇと思ってたら…」

「ずっとこれ探してたのか?」

「大丈夫ー?凄く顔色悪いよ?」


ハッピーの言う通りロキの顔色はかなり悪く、真っ青だ。



「ありがとう、大丈夫だ…。フェミニストはつらいね…」


魔力が尽きてきたのか…

俺はロキの正体をおぼろげではあるが知っているから、顔色が悪い原因がわかる。


ロキから感じる魔力が他の魔道士とは違うんだ。



「ルーシィ来てないみたいだよー怪我が痛くて動けないのかも…」


「様子見に行ってやっか。ロキも来いよ」


ナツの誘いにロキは困ったように笑い、断る。



「僕が星霊魔道士を苦手にしてるのを知ってるだろ…」


「そっかー?ルーシィはルーシィなのになー」



「……ロキよぉ」


「…?」


立ち去るロキを呼び止めると不思議そうに首を傾げた。



「…もう十分なんじゃないのか?」


「…!」



「自分を責めすぎるなよ」


一瞬驚きに目を見開いたロキだが、すぐに苦笑いをして立ち去った。


「カイル、何がだー?」


「何でもないよ、ナツ」


「またお前はそうやって背負いこむ…」


「そうじゃない。俺にもまだ確証がないだけだ」


不機嫌そうに言うエルザにカイルは焦る
うーむ、話題を変えねば…


「それよりルーシィの様子を見に行くぜ」















〜ルーシィ宅〜


「──おーい」

「ルーシィー!」

「元気してっかー!?」


「うーむ、いねえな」


様子を見に元気よくルーシィ宅を訪れるが、当の家主の姿がない。


「まさか、お約束の展開に申し訳ないが、風呂なんじゃ、」


「いねえ…!!」


「確認早えな!!」



「ルーシィ〜」


皆勝手に引き出しという引き出しを開けて行く。


「おまえらホント遠慮ねえな……」


半ば呆れながらグレイがツッコむ。


「ん〜。ルーシィがいねえとどうもしまんねえな」


「ああ、ツッコミが弱いな」


「だな」


「どこ行っちまったんだよ………あと、弱くて悪うござんしたね」


あ、グレイけっこー凹んでる。



「うわぁぁ!?」


余所見をしたハッピーが何かを落とした。
……凄い音がしたが大丈夫か?


「う〜…」

「何だこれは?」

「手紙、みたいだな」


落ちてきたのは沢山の手紙を入れた箱だった。
その手紙をナツが勝手に開封し、読み上げ始める。



「ママへ 、あたし遂に憧れの妖精の尻尾に入ることが…」


「おいおい、勝手に読むんじゃねーぞ」


グレイが注意するが、構わずナツは続ける。


「カイルってカッコ良くて強い人が助けてくれたんだ。あとね……」


「お、俺の事か…」


「今日はエルザさんって人にあったの。カッコよくて綺麗で、あのナツとグレイがね…」


ナツが読み上げる手紙には皆のことや、少しの愚痴が書かれていた。



「…これ全部、ママへの手紙か?」


「らしいな」


「それにしてもこんなに沢山…、何故送らないんだ?」


「理由はいくつか考えられるが……恐らくもう亡くなられたんじゃないか」


三人で首を傾げていると、エルザが何かを見つけた。


「書き置きだ…」


「書き置き?」


机の上に殴り書きされた紙が置いてあり、それをエルザが手を震わせながら読み上げる。


「…家に帰る、…だそうだ」


「な!?」


「なんでぇー!?」

「アイツ何考えてんだ!?」

「ルゥゥシィィィ!」


わあぁぁと皆で叫び慌てだす。
ど、どどどどうしよう…!



「ええい実家だ!実家に行くぞ!!カイル!シルフで大至急私たちをルーシィの実家に!」


「さらりと無茶言うな!限度は二人だ!!」


叱咤係りのエルザもテンパっているようだ。

ちょ、ナツにグレイしがみつくな!
無理だって言ってるだろうがぁぁ!













ルーシィ宅で大騒ぎしたあと、夕方になってしまったがカイルたちは何とかルーシィの実家に辿り着いた。

つ、疲れた…


【お疲れ、奏者】


「ああ、お前もな。助かったよ。シルフ」



「ルーシィー!どこだー!?」


「ナツ!あれ!」


ハッピーの指差す方に見慣れた金髪が見えた。


「「「ルーシィー!」」」


「な…、何でー!?」



いる筈がない面子が現れたことに驚き、目を見開くルーシィ。

ナツが凄い勢いで理由を聞くと、最初は困惑していたが苦笑いしながら話始めてくれた。


何でも、実家に帰ったのは母の墓参りのためと、決意を形にするためだったようだ。
まぁ、取り越し苦労だったみたいだ。


「はぁ、心配して損した」


「あはは、本当心配かけてごめん」


「気にするな。早合点した私たちにも非がある」


「エルザ、テンパりまくってたもんな」


「カイル?」「すみません」


「あはは!」


やっと笑ったよ、ルーシィ。よかったよかった。


「さーて帰るか。しっかしでかい庭だな。門まで遠っ!!」


「どこまであるんだ?」


「へ?あの門はまだ庭だよ?あの山までがウチの敷地!!」


遥か遠くにある山を笑顔で向かう指差すルーシィ。


驚愕に包まれる四人。


「さりげ自慢キターーーー!!」


「お嬢様キターーーーー!!」


「カイル騎士団長、エルザ副団長、ナツとグレイが壊れました!!」


「空が……青いな、エルザ」


「この空に比べれば……ちっぽけなモノだ……」


「団長ーーー!!!副団長ーーーー!!!」


「あはははは!!!」










天国のママへ

あたしは元気でやってます。

あのね、ママ。
あたしはね、皆と一緒でなきゃ生きていけないと思う。

だって妖精の尻尾は、もうあたしの一部なんだから!























あとがきです。いよいよ楽園の塔篇がせまって参りました。色々オリジナルも考えておりますのでお楽しみに。
次回は一話番外編を挟もうかと思います。R18にしようかやめておこうか迷ってます。皆さんのご意見で決めようとおもってますのでよろしくお願いします。

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