第三十五話 何だかんだ言ってもやっぱ男も女も顔に釣られる
────泊まった次の日の朝。
カイルたちは鳳仙花村を出発し、昼くらいにマグノリアに到着した。
「…何で枕投げでムキになんだよ」
「俺はいつでも全力なんだよ」
顔中に傷のできたナツとグレイがふくれっ面して言い争いをしている。
「…何だありゃ」
事情を知らないミラとエルフマンは呆れた顔をして眺めていた。
「仕事先で枕投げして怪我したんだって」
「…どうやったら枕投げであんな大怪我を…」
満身創痍の2人を何故か微笑ましげに見つめるミラと、呆れ返るエルフマン。
────あの後旅館に帰れば、ナツとグレイが屍と化しており、大量の枕に埋もれていた。
ついでに部屋はぐっちゃぐちゃ。
マジ何があった。
恐らく2人を屍に変えたであろうエルザは、もう一度俺と風呂に入り、そこで………まあ何があったかはご想像にお任せする。
ルーシィはかなり不機嫌だった。
「…うっさい」
「「ヒイィィ…!」」
……間違えた。
過去形じゃなくて現在進行形だった。
中々やるじゃないか、あの2人を大人しくさせるのが俺とエルザ以外にいるとは…
「ふふ、カイルは怪我しなかった?」
「ったりめーだ。舐めてんのか、ミラ」
「うむ!漢だ!!」
「ーーーーーさて、ナツとグレイのとこに行くか」
「慰めに?」
おー、と答えれば、ミラは嬉しそうに微笑んだ。
アイツら、身も心もボロボロだろうからな。
「ふふ、カイルはいいお父さんになるわね」
「相手がいないがな」
「あら?いるでしょ?目の前に。私だって可能性ゼロじゃないのよ?」
そうだった……俺的には避妊はしたいのにさせてくんないんだもんなこいつら……まあできたとしても育てる覚悟はあるが……
「ねぇ、ロキ来てる?」
いきなり話しかけられ、振り返ると、ぞろぞろと女が増え、ロキ、ロキとヒステリックに叫びだした。
何なのマジで。
「ロキは!?」
「酷いわ!」
「あんた誰よー!」
「あんたこそ!」
「ロキーどこぉー!」
「え、えっと…」
女たちは仮設カウンターを叩き、ミラに食って掛かる。
「えぇ…」
「誰?このうざい物体達…」
「街の女の子たちだよー。みんな自称、ロキの彼女みたいだね」
急に昨日別れ話をされたらしい。
「まさか!本命が現れたの!?」
「いやぁ…」
「誰ー!?このギルドにいるのぉ!?」
「……………助けてーー、カイルーーー」
「え!?俺!?」
女たちのあまりの勢いに負け、ミラはカイルに助けを求めた。
ちょ、いきなりそんなこと言われても!
「もう!何よあん、た…」
「ぁ…」
俺の顔を見るなり、ピタッと黙る女たち。
「か、カッコいい…!」
「あ、あああのっ、お名前教えてください…!」
「え、えっとだな」
キャーキャー騒ぎ立てる女達。
「顔見せてー!」
「素敵ー!」
「ちょっとあたしが先よ!」
………軽いな、こいつら。やっぱ人間所詮顔か……
「知るか、ロキは今留守だ。てめえらに教える名前もねえ。とっとと帰れ」
「ちょ、ちょっとー!」
「わ…っ」
「待ってよー!」
この場から逃げようとすると肩を掴まれる。
チッ、女相手に力使うのは主義に反するが、こいつらうざす……ぎ……
振り返るとそこには三人の修羅がいた。
「私のカイルに馴れ馴れしくしてんじゃねーよ、ぶっ殺すよ?」
「人の男に手を出すというなら剣の錆びにするぞ、貴様ら…」
「ふふふふ、調子のってると殺すわよ?」
カナ、エルザ、ミラの順で尋常ならざる殺気を飛ばす。
ミーハー女達は一目散に逃げて行った…
「わ、悪い。お前ら、助かっ……ぐはっ!!」
エルザ達に首根っこをひっつかまれる。
「カイル、ちょっとこっち来い」
「OHANASIがある」
「ち、ち、ちょっと待て!!俺が悪いかコレ!?」
「問答無用よ」
カイルが助けてーーと、叫ぶが先程まで楽しそうにこっちを見ていた野次馬共が一斉に顔を反らした。
…覚えてろよお前ら!
「い、いやマジで待てお前ら!!俺は攻められるより攻める方が好きで、え、アーーーーー!!!」
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ーーーーーーーーー
そして、夜になり、服を引き裂かれたカイルがげっそりしながら帰ってきた…
「だ、大丈夫か……?」
「いや、あんまり……なんかデジャヴだ…」
「ま、まあ今日はもうゆっくり寝ろ」
そうさせてもらうか、と自宅へ帰ろうとすると、ナツに飛びつかれた。
「うぉっ!!ナツ!?どうした?」
「大変だ!!カイル!!ロキの奴、フェアリーテイルからいなくなっちまったんだよ!!」
「なに!?」
ナツの話によれば、ロキは突然ギルドを抜けるとだけ告げ、姿を消したそうだ。
まさかそこまでやるとは……ギルドを抜けるなんて…
「見つからないのか!?」
「どこ探してもいねぇんだ!」
ロキがよく行っていた場所、行きそうな場所。
全て回ったが、どこにも見当たらない。
クソッ、とナツが頭を抱えて唸る。
「…そうだ!カイルなら居場所がわかるんじゃないか!?」
何時の間にか戻ってきたエルザが問いかける。
「すぐシルフに探らせるが、今のロキの魔力はかなり小さい。んな簡単に見つかるとは思えない…」
「く…っ、とにかく手分けして捜すぞ!」
「おう!」
エルザとナツがロキを見付けるべく走り出し、あっという間に二人の姿は見えなくなった。
カイルだけは動いてなかった。闇雲に探しても無駄だと思ったからだ。
(考えろ……奴ならどう動く?)
考えを張り巡らせると、一つの答えに繋がった…
「ルーシィ……」
そうだ!あいつならきっと近くにいるはずだ!!ルーシィの魔力を探る。
マグノリア一帯にシルフを飛ばさせる。
………………………まだか…………………まだか………………
【 奏者!!見つけた!!】
でかした!!シルフ!!
シルフを憑依し、駆け抜けるカイル。
(ルーシィ、ロキ!!俺が行くまで生きてろよ!!)
あとがきコーナー。ハロウィンという事でハロウィンネタ書きたかったんですがアイディアが特に浮かばず断念しました。
今回もカイルは襲われましたね……とっても強いんですがやはり女の子に乱暴はできないようです。
それでは次回【空に戻れない星……獅子が背負いし咎】 でお会いしましょう。
コメントよろしくお願いします。