小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第四十五話 張り切るヤツほど相手にされない





「おいエルザ…。そのドレスは一体…?」


目の前を慌ただしく駆け抜けるエルザ。
その姿はいつもの鎧ではなく、美しいドレスに身を包んでいた。

…あと、タキシードに身を包んだガジルが通った気がする。



「ん?なんだカイル、お前も早く着替えるといい」


「あのなぁ…じーさん言ってたろ?ありのままの俺たちを取材したいって記者が来るって」


それにカイルはあまり見せ物になるのが好きではない。今まで何度もカイル個人宛に取材の依頼はあったがすべて断っていた。


取材をどうやって回避するかカイルが悩んでいると、突然エルザがハッし、ドレスの裾を掴んで走り出した。



「む、急がねば!次はメイクだ!」


「やれやれ」


はぁ〜、と溜め息。フェアリーテイル最強コンビである俺とエルザは一緒に取材を受ける事になっていた。


緊迫した面持ちで前方を見つめるカイルと、そのカイルの背中を眉を寄せて見つめるエルザ。

先に口を開いたのはカイルだった。



「…エルザくん?放してくれない?」


「ダメだ」


現在、俺はエルザにマントを掴まれ、身動きが取れない状態にあります。

そうなった経緯は、俺がソーサラーの取材から逃げようとしたから。


「…お前は私の自慢の相棒なんだから堂々としていればいい」


「俺がこの手の嫌いなの知ってるだろ?じーさんもやなもん受けてくれたぜ」


エルザと言い争ってるとトボトボとルーシィが歩いて来た。やや落ち込み気味で…
少し前までは凄い元気がよかったのに…


「エルザにカイル、ただいま」


「おう。おかえり〜」


「カイルは取材だってのに全然張り切ってないね」


「見せ物になるのは嫌いなんだよ。だからルーシィも俺が黒の騎士王だって知らなかったろ?」


「あ〜」


名前は聞いた事があっても顔を表に出した事はない。まあ今回はギルド全体の取材なワケだからツラださんわけにはいかん。


「────おおぉう!妖精女王(ティターニア)!!」


背後から聞こえてきた大声に思わず肩が跳ね上がる。
恐る恐る振り返ってみれば、首にカメラを吊った、何やらふざけた男が興奮気味に立っていた。


「クール!本物のエルザちゃーん!クール!クール!!」


「だ、誰…?このテンションの高い人…」


唖然とする俺たちなど眼中にないように、クール、クールと連呼し続けるこの男こそ、週刊ソーサラーの記者、ジェイソンだ…


…ヤバイ、帰りてえ



悩んだ結果、カイルがやっぱり逃げようと決心したとき、記者の目がカイルの姿を捉えた。

カッと目を見開く記者。



「クール!クール!…、!?っもしかして!そこにいるのは…!」


「あ、それってあたし…─────」


「妖精の尻尾の天才S級魔導士 黒の騎士王カイル!?クール!クール!ベリークール!!」


記者はルーシィの言葉を遮り、クール、クール!と連呼しながらカイルの姿を360°目に焼き付けるかのように周りをくるくる回りだした。


……………吹っ飛ばしていいかな?いいよね?


「カイルー!クール!なんてクールな男なんだ!」


「…………………うぜえ」


「んー!そっけないところもクール!そしてそのハンサムな顔もベリークール!!」


カイルがはぁ、と溜め息をつく。











「ねぇ、あたしは!?」









「クール!ベリーベリークゥゥール!!」


腕を組み、ムスッとしているカイルと、やや不服そうにしているエルザをカメラに写す記者。


「これでは普段のままではないか…折角のドレスアップが…」


「ノープロブレム!こーゆー自然体を期待してたんですよ!」


「だから言った通りだろ。自分らしくしてた方が良いって」


そう落ち込むエルザはいつもの鎧を纏っていた。




「カイルさんとエルザさんのツーショット!!フェアリーテイル最強のコンビが今ここに!!クール!キュート!」



「……あたしぃールーシィって言いまーす。エルザちゃんとぉ、カイルくんとはお友達でぇー───…」


「2、3質問に答えてくれないかい?」


「構わないが?」「早くしてくれ」


「スルー!?」


何とか記者の気を引こうとするルーシィだが、記者はエルザとカイルにべっとりだ。
まあ無理もない。普段表に出ないカイルに取材出来る大チャンス。しかもエルザと二人でだ。話題性はかなりのものだろう。それに二人とも凄まじい美男美女。絵にならないワケがない。


「一番気に入ってる換装は?」


「バニーガールだな」


「あれかよ……マジか」


「あの耳がいいんだ」


「クーーーーール!!じゃぁ、換装できる鎧は全部でいくつあるんです!?」


「100種類以上だ」


「く、クール…!じゃ、じゃぁ…カイル!君はどれだけの魔法が使えるんだい!?」


「自然系の魔法は全部。あと滅竜魔法。換装もある程度は」


「ク、クールクール!!ベリーベリークール!!!」


「見つけたぞこのやろーーー!!!!」


取材中にナツが割って入ってくる。
正直助かった……


「ナツ!!サラマンダーナツ!!僕が今日一番取材したかったのは君だクール!!」


「お前らいつも俺がなんか壊したとか壊したとか壊したとか!!」


「あ、握手……してください!!」


その瞬間殴り飛ばすナツ。吹き飛ばされながらも彼は感激していた。


「エルフマン!君にとって男とは?」


「漢だな」


答えになってねえ。


「チームシャドウギア三角関係ってのは本当!?」


「ノーコメントだ!!」


「エルザ、ミラ、カナ、君たちにとってカイルとは?」


「「「世界一カッコいい男だ」」」


じーさんはなんか嘘くせえことガチガチになりながら答えてる。しっかりしろよマスター。


すると突然若干涙目になってたルーシィがバニーの格好で出てきた。


「皆ぁー、注もーく!あたし歌いま〜s「歌なら俺だ!シュビドゥバー!!」!?」


「「またお前かーーー!!?」」

折角のルーシィの出番がガジルによって遮られた。
当然記者はガジルに夢中になった。

『正しいモンが馬鹿を見るこの世界で、お前はいつも…馬鹿をみていたよな。それってつまり、バカは正しいって事だろ?おい相棒、聞こえるかい?俺の魂の歌が!』


「うっせーガジル!」

ガジルが歌い始める前にナツがぶっ飛ばした。


「テ…メェ…!」


「下手な歌唄ってんじゃねえ!俺はこいつに用があるんだよ!」

またもナツとガジルのケンカが始まった。
命知らずな事に取材をし続ける記者。
そしてナツとガジルにぶっ飛ばされる記者。

「と…突撃レポ…ダゼ…くぅ〜る…」


「プロだね…」


「ようやる……」


ちなみに、今週の週刊ソーサラーはかなり売れ行きが良かったと、ミラから報告を受けた。













〜???〜



ソーサラーを見ていた男が記事を握りつぶした…


「いつからウチのギルドはこんなに弱くなったぁ……」


派手にやってやらなきゃならねえ……











妖精達は共食いを始める………












あとがきです。なんと20万アクセスを超えました。やったぜ!!皆さんのおかげです。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。それでは次回【雷光の反逆】でお会いしましょう。コメント、感想よろしくお願いします。

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