小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第五十二話 はしゃいだ後はやっぱりお説教






「うおぉぉぉ!!」


「うおぉぉらぁぁ!!」


マグノリアの空で激しくぶつかる、炎と雷。
それを少し離れたところから見上げるカイル。


「おー、やっとるやっとる」




────あの後、少し動けるようになったカイルはエルザと別れ、カルディア大聖堂に向かった。


「まあ見届けるくらいはやってやらんとな」


【あいつ奏者傷つけた。ムカつく!】


カーバンクルがぶーぶーと不平を言ってる。あの後ナツを倒してでもラクサスを叩きのめそうと言って来てなだめるのに苦労した。


「まあまあ。それよりケリつきそうだぜ」


「うぅおぉぉ!!」


ラクサスに殴り飛ばされ、ナツが大聖堂の壁を突き破る。
痛む体に鞭を打ち、何とか体を起こそうとするナツに、ラクサスは更なる追い打ちをかける。


「てめェ如きが俺に勝てるわけ…、っ!?」


「っ…く…!」


どんなに攻撃を喰らっても立ち上がるナツに、ラクサスは目を見開く。



「ギルドは…お前のもんじゃ、ねぇ…!っ、よく考えろ…ラクサス…!」

「っ黙れぇ!!」


ラクサスの電撃が屋根を破壊し、ナツを襲う。



「雑魚が俺に説教とは…100年早ぇーよ、あぁ?」


「…」


ふらりとよろめきながらも、まだ立ち上がるナツ。



「────…っと、」


二人の闘いを下から不安げに見上げていた、レビィ、ガジル、フリードたちの横に、カイルが屋根から飛び降りる。


「、!カイル!?」


「パラディン…てめぇ…」


「お前は…」


「カイルでいいぞ、ガジル」


突然のカイルの登場に驚く三人だが、すぐにハッ、と我に帰り、平然と立っているカイルをまじまじと見つめる。



「………何だよ、お化けでも見たようなツラしやがって」


「カイル…神鳴殿を壊したんでしょ…?怪我は大丈夫なの…?」


「あれ1個で生死に関わるって聞いたぜ…?」


「フフーフ。俺は天才だから」



「「「…」」」


信じられないものを見たような顔をする三人。
…………ちょっと傷ついた。


「ガキがァ…!跡形もなく消えろー!!」


何度も立ち上がるナツに苛立ち、止めのつもりか、今まで以上の高圧の電撃を手に集めるラクサス。

あんなものを今のナツが喰らえば、本当に命を落としかねない。



「っよせ…!ラクサス!」


焦ったフリードが声を上げるが、ラクサスには届かない。


「ラクサス!今のナツにそんな魔法を使ったら…!」


「雷竜方天戟!!」


フリードの静止の声を無視し、方天戟の形をした雷をラクサスがナツに投げつける。


「…っく、」


これはヤバい、と目を見開き、避けようとするナツだが、蓄積されたダメージのせいで膝をついてしまう。


「いやぁぁぁ!!」

「やめろぉぉぉ!!」


レビィとフリードの叫びも虚しく、方天戟はナツに真っ直ぐ向かっていく。




──────…が、





「なっ!?」


奉天戟が方向を変える。向かった先には腕を鉄に変えたガジル。

「鉄…、っまさか、避雷針に…!?」


雷がガジルに届く直前、カイルが雷切で奉天戟を真二つに斬る。


「ほら、後は決めろよ。主人公」


「へへ…さっすがカイル。最高だぜ、…!う、おおぉぉぉ!!」


ニッと笑ったカイルとガジルを見、ナツが残りの魔力を振り絞り、体から炎を放出する。



「火竜の…」


「っ…!おのれ…おのれェェェ!!」


怒りに顔を歪めたラクサスがナツに向かっていくが、ナツの方が速い。


「鉄拳!!」


「完璧に入った!!」


レビィが叫ぶ。


「バーカ。この機会を逃すわけないだろ?続くぞ」


「鉤爪!翼撃!劍角!炎肘!!」


「がァぁ…っ!」



あのラクサスを圧倒しているナツに、レビィとフリードが呆気にとられている。



「…その魔法…竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し…その魂を刈り取る…」


「滅竜奥義…」


炎を纏った両腕をナツが螺旋状に振るう。


…………コレが本当の竜の子の力か……


「紅蓮爆炎刃!!」


「っぐァあぁぁぁ!!」


螺旋の炎がラクサスを天へと巻き上げる。


屋根に落下するラクサスを見、レビィとフリードが目を見開く。



「ラクサスが…負けた…」


「手こずったな。まあ当たり前か」


「…うぅおおぉぉぉぉぉ!!!」


ナツの勝利の咆哮がマグノリアの街に響き渡った。


「……………コレで終幕だ。フリード。よかったな」


手を上げるカイル。フリードは苦笑しながら答えた。


「………少し複雑だが今はうんと言わせてもらおう」


パンっとハイタッチがかわされた。











バトルオブフェアリーテイルで続出したたくさんの怪我人。
そして、マカロフの不調。

重なるハプニングにより、楽しみにしていてくれた人たちには申し訳ないが、ファンタジアを1日延期することになった。


危篤とまで言われたマカロフの容体は、ポーリュシカのおかげで一命を取り留め、無事だという。


「────よかったー…。一時はどうなるかと思ったけど…」

「あのじいさんがそう簡単にくたばるわけねぇんだ」


マカロフの無事を喜び、安堵に包まれるギルド。


「しかし、マスターもお歳だ。これ以上心労を重ねれば、またお体を悪くする。皆もそのことを忘れるな」


そのセリフを聞いたカイルは頬杖をつきながら笑った。


「発信源が良く言うぜ」


「何か言ったか?カイル」


「いや、何でも」


クルリと顔を背けるカイル。


「でも、こんな状況で本当にファンタジアをやるつもりなの?」


「マスターの意向だし、こんな状況だからこそ、って考えた方もあるわよ?」


「ジュビアもファンタジア見るの楽しみです!」


「あんたは参加する側よ」


「まぁ、怪我人が多いからねー。まともに動ける人は全員参加だってー」


「えー、俺やだ」


「諦めろ。私達シルバリオ・ティターニアはパレードの目玉だぞ?」


きいてねーぞこら。どうやらじーさんとエルザが触れ回ったらしい。


「ってことは、やっぱあたしも…」


「困ってんのか、喜んでんのか…。ま、あんなの参加できねぇからな」


そう言ってグレイが指差した先には、包帯をぐるぐるに巻かれたガジルとナツの姿が。


「あんなのとか言うなよ…」


「ほべふもも!」


「何言ってるかわかんないし」


口まで包帯を巻かれたナツは、何を言っているか全くわからない。


笑い声が響き、ギルド内がいつもの賑やかさを取り戻し、明日のファンタジアの準備を始めようとした、その時だった。


開かれた扉の前にいる人物を見、ざわつくギルド。


「ラクサス…!」

「お前…!」


「よう、待ってたぜ」


「…ジジィは?」


ざわつく周りを気にせず、マカロフの居場所を聞いてきたのは、ナツたち並みに包帯でぐるぐる巻きにされたラクサスだった。

「てめぇ…!」

「どのツラさげてマスターに会いに来やがった!」


「よせ!バカども!!」
「そうだ!よさないか!!」


ラクサスに浴びせられる罵声を止めるカイルとエルザ。
皆は納得がいかないという表情を浮かべるが、エルザの睨みにぐっ、と押し黙る。


「奥の医務室だ」


「最悪殺されるかもよ?覚悟しとけ」


カイルとエルザの言葉を聞き、無言で足を進めるラクサス。
しかし、その行く手を遮るようにナツが立ち塞がった。



「ナツ…」


「ふんぐぁぐむー!むーむー!!」


何を言っているかはわからないが、息を切らしながらラクサスに向かって叫ぶナツ。


「通訳よろしく」


「…二対一でこの様じゃ、話にならねぇ。次こそは絶対負けねぇ。いつか勝負しろ、ラクサス。…だとよ」


何も答えずに再び歩みだすラクサス。
しかし、言葉の代わりに、スッと片手を挙げた。

今までのラクサスからは考えられぬ行動に、ナツや皆が目を丸くしている。



「…フ、────さぁ皆、ファンタジアの準備をするぞ!」


「出ると決まったら練習しなきゃ!」


「ジュビア頑張ります!」


「そうだカイル!剣舞の練習だ!」


「えー、やっぱり出なきゃダメ?」


「動ける奴は全員参加!」


「しょうがねーな。んじゃまた女装を「せめてパレードの間だけはやめてくれ!!」
















〜ファンタジア〜


夜空に色取り取りの花火が何百発も打ち上げられる。
遂に迎えたファンタジア当日。

皆で一生懸命準備したおかげで、何とか間に合わせることができた。


たくさんの人の歓声を受け、ファンタジアのとりであるパレードが街道を進んで行く。
美しい踊り子たち、不思議な生き物、様々な魔法がより一層観客たちを盛り上げる。


「もうちょい地味な格好はなかったのか?」


カイルが着ているのはアラビアンナイトの王子がしているような格好。大胆に空いている胸元と腹筋がセクシーだ。


「ーーーー///////はっ!!い、いや!!見惚れてなんてないぞ!!」


エルザは露出がかなり多い、とゆーかほとんど裸だろといった宝石輝く踊り子の格好。スタイルのよさもあいまって非常に美しい。


「ハイハイ。ほら、行くぜ」


乗せた大きな台車が動き出す。


「踊り子可愛いー!」


「あ!エルフマンだ!」

「すげー迫力だな!」

「見て見てー!ミラジェーンだー!」

「え、蛇…!?」


ビーストソウルを発動したエルフマンに、薔薇の中から現れるミラジェーン。
まるで本当の妖精だ。
だが大蛇への変身が台無しにした…


ミラ…薔薇から出てきて、大蛇はないだろう。


「わー!綺麗!」

「氷のお城だよー!」


今度はグレイとジュビアが観客を魅せる番だ。
ジュビアが水を操って高く巻き上げ、その水をグレイが凍らせ、“FAIRY TAIL”の文字を造り出す。



「おい、あれ見ろ!エルザさんだぞー!」


「カイル様もいるわー!!」


次はカイルとエルザの番だ。

エルザはたくさんの声援に応えるように、無数の剣と共に舞い踊る。


カイルも光の精霊王を呼び出し、黄金に輝くエクスカリバーを換装し、エルザと共に剣舞を舞い踊る。一寸の乱れもない剣と剣の煌めき。最強のコンビの名に恥じぬ息のあった舞踊。
その煌びやかに輝く銀の髪と妖精はまさに銀の妖精王と呼ぶにふさわしい。


「「「「「「「「きゃぁああああああ!!!!カイル様ぁああああああ!!!」」」」」」」


黄色い歓声に向かってカイルがふっと微笑む。
エルザもカイルの花弁と共に舞い踊り、妖艶に微笑した。






次はナツとハッピーの出番で、ナツは背後に炎を背負い、自慢の炎の魔法を使って空に“FAIRY TAIL”の文字を書いてみせた。だがやはりダメージが大きいらしく途中でミスる。


「何だーー!!出来てねーぞ!!」


「てかなんでそんなボロボロ何だーー!!?」


「あ!マスターだ!」

「マスターが出てきたぞ!」

「妙にファンシーだ!」


最後に出てきたのは、マスター マカロフ。
猫らしき帽子を被り、周りの観客にかなりバカな笑顔で手を振っている。



ふと、今まで笑顔だったマカロフが顔をキッと引き締め、そして人差し指で星が輝く天を指差した。
…いや、マカロフだけでない。

カナ、マカオ、ワカバ、ビスカ、アルザック、レビィ、ルーシィ、グレイ、ジュビア、エルザ、カイル、ハッピー、ナツ。


妖精の尻尾の仲間全員が、高く天を指差していた。




「じーじのとこ見つけられなくても、俺はいつもじーじを見てるって証!」


「見ててなー?じーじ!」





たとえ姿が見えなくても、
たとえ遠く離れていようとも、
わしはいつでもお前を見ている。

お前をずっと、見守っている。



これはマカロフが、ギルドの皆が、ファンタジアをどこかで見ているであろうラクサスへ向けたメッセージ。




「うぉっし!!まだまだこれからだー!燃えてきたぞ!」

「あいさー!」


カイルが剣を振り上げ高らかに叫ぶ。


「俺達は、妖精の尻尾の魔導士だ!!」


「「「おおぉおおおおおおおおおお!!!!」」」


















あとがきです。バトルオブフェアリーテイル篇終了。いかがだったでしょうか?次回はクリスマス番外編。相手はまだ決まってないのでアンケートいきたいと思います。複数でも結構です。感想とともに宜しくお願いします。

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