小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第五十四話 その男…魔王である



「?何ですかこれ?」


ギルド内の空間に描かれている絵を見、ルーシィが首を傾げる。


「闇ギルドの組織図を描いてみたの」


「あ、描いたの俺」


ミラの言葉に訂正を入れるリーダス。


カイルはリーダスの絵を見上げる。
エルザもカイルの隣に並んで同じように見上げ、固い面持ちで口を開いた。



「改めてみると凄い数だな…」


「コレでも結構減らしたんだがな…俺ら二人で」


「二人でギルド潰すって…………」


青ざめるルーシィ。まあ無理もない。


「でも、どうしてまた?」


「近頃、動きが活性化しているみたいだからね…」


?を浮かべるルーシィに、ミラがギルド同士の連携を強固にしないといけないのだと説明する。



「この大きい括りは何だよ?」


「ジュビア知ってます。闇ギルドのバラム同盟」

「え?」


グレイの問いに、今度はジュビアが説明しだす。


バラム同盟。
それは、六魔将軍(オラシオンセイス)、冥府の門(タルタロス)、悪魔の心臓(グリモアハート)の三つの闇ギルドで構成されている闇の最大勢力だ。
そしてそれぞれがいくつかの直属ギルドを持ち、闇の世界を動かしている。

直属ギルドの中には、エルザたちと闘ったことのある鉄の森(アイゼンヴァルト)や、シルバリオ・ティターニア。雷神衆が潰したギルド、幽鬼にいたときにジュビアやガジルが潰したギルドなどがある。
それのほとんどが六魔将軍の傘下のギルドだった。




「うわぁ…どうしようー…怒ってなきゃいいけど…」


怖がるルーシィにワカバが大丈夫だって、と言う。


「こいつら噂じゃ、たった六人しかいないらしいぜ」


「どんだけ小せぇギルドだ、ってよ」


「馬鹿どもめ。よく考えろ。たった六人で三大勢力の一角となってるんだぞ」


カイルの言葉にどうしよう、と頭を抱えて怖がるルーシィ。
そんなギルド内に声が響いた。



「────その六魔将軍じゃがな…」


全員の視線の先には重々しい表情を浮かべたマカロフの姿。



「わしらが…討つことになった」


「「「「「えぇえええええええ!!!!」」」」」


「オイオイ……マジかよ」


「っマスター!どういうことですか?」


「先日の定例会で、何やら六魔将軍が動きを見せていることが議題に上がった。…無視はできんということになり、どこかのギルドが奴らを叩くことになったのじゃ」


エルザの問いに答えたマカロフ。
ギルド内は一気に重々しい雰囲気に包まれた。



「また貧乏くじ引いたな…じーさん」


「妖精の尻尾がその役目を…?」


「いや…今回ばかりは敵が強大すぎる。わしらだけで戦をしては、後々バラム同盟にここだけが狙われることになる」


「だろうな」


「そこでじゃ、我々は連合を組むことになった」


「「「連合!?」」」


マカロフの言葉に目を見開く皆。



「妖精の尻尾、青い天馬(ブルーペガサス)、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、化猫の宿(ケットシェルター)。四つのギルドが各々メンバーを選出し、力を合わせ奴らを討つ!」


マカロフの力強い宣言を聞き、ナツがわくわくした表情を浮かべる。


「ヘヘッ、俺たちだけで十分だろー!ってか、俺一人で十分だ────…ごふっ」

「馬鹿者!マスターは後々のことを考えてだな───…」



「っていうか…ちょっと待ってよ!相手はたった六人なんでしょ!?何者なのよそいつら…!ねぇ?カイル…」


「……………また厄介だな……マジで」


険しい表情を浮かべるカイルにルーシィはなにも言えなかった。














「──────…っていうか、何でこんな作戦にあたしが参加することになったのー!?」


「ここまで来といて何を今更…」


「俺だって面倒くせーんだ。ぶーぶー言うな」


「ぶー」

「ぶー」

「ぶぅおぇー…」


例の如く乗り物酔いの真っ最中のナツ。


今カイルたちが向かっている場所は、それぞれのギルドから選出された魔導士と顔合わせをするために設けられた集合場所だ。

妖精の尻尾から連合に選出されたのは、ナツにグレイ、エルザ、ルーシィ、ハッピー、そしてカイルの六人。
他のギルドとの合同作戦は今回が初めてなので、まず同じギルド内で連携がとれていないと話にならない。
なので、ほぼいつも行動を共にし、戦力も大体揃っているこの六人、つまり最強チームが選出されたのだ。



「…マスターの人選だ。私たちはその期待に応えるべきではないのか?」


「うぅー…」


不安げに唸るルーシィにエルザが頑張るように言うが、でも…と不満を言う。


「バトルだったら、ガジルやジュビアだっているじゃない…」


「二人とも別の仕事がはいっちゃったからねー…」



「う…ぷ、ってか…、まだ…つかね…の、か…?」


「じきに着くよ…我慢しろ」


「あ!見えてきたよ!」


ハッピーの声に全員外を覗く。
木々が生い茂っている森の中に、ポツンと浮かぶように立つ大きな建物。


「…趣味悪いところねー…」


「…青い天馬(ブルーペガサス)の、マスターボブの別荘だ」


「アイツかぁ…」


苦手だな…、と顔をしかめるグレイに、そう言うな、とやや苦笑気味にエルザが窘める。

マスターボブにはカイルも仕事で何回か会ったことがあるが、少し苦手に感じていた。

スキンシップがヤバいんだよな…あの人…



「あ、あれでもうちのマスターが手を焼いたほどの実力者だからな…」


「そ、そうなんだ…」


「う…まだ…、つか、ねぇの…か…?」

「着いてるよナツ」


未だに乗り物酔いに苦しんでいるナツに、ハッピーが素早いツッコみをいれる。


「ーーっ!!」


「?どうした?カイル」


「───────はい、到着!!」

「「到着!」」


バッと突然背後を振り返るカイルに、不思議に思ったエルザが声をかけようとしたとき、シャラララという鈴の音と共にどこからか若い三人の男の声が聞こえてきた。


なんだこのアホは?という顔をしているカイルの視線の先には、リズミカルに手を叩き、鈴を鳴らして近づいてくる三人の男。


「はいはいはいはい!ようこそ!」

「「ようこそ!」」

「フェアリー!」

「「フェアリー!」」

「テイルの!」

「「テイルの!」」

「「「皆さんー!!」」」



「「…」」

三人の独特な歓迎に呆気にとられる六人。

…おいおい、大丈夫かこの連合。



「お待ちしておりました。─────我ら、」

「青い天馬より、」

「選出されし、」


「「「トライメンズ」」」


絶妙なタイミングで次々に名乗っていく三人。
金髪の男が通称、白夜のヒビキ。
同じく金髪でやや童顔の男が通称、聖夜のイヴ。
そして、黒髪に褐色の肌をした男が通称、空夜のレン。


「青い天馬の…トライメンズ…!?か、カッコいい…!」


頬を赤く染め、目を輝かせるルーシィ。
エルザは腕を組み、呆れ顔で見つめている。
が、突然目つきを鋭くし、周りを睨みつける。

その視線の先には、いつの間に移動したのか、エルザを囲むように跪いている三人。



「…噂に違わぬ美しさ」

「初めまして、妖精女王?」


「さぁ、こちらへ」


そう言って、さり気無くエルザの肩を抱くレン。


だがビタンっ!!と凄まじくいい音が鳴り響く。エルザの張りてがレンの手を叩いたのだ。


「私の肩に触れていいのはカイルだけだ」


「ホスト崩れでも集めたのか?青い天馬は…」


睨みつけるエルザと頭を抱えるカイル。大丈夫か?この連合…


「いきなり叩いてすまなかったな。今回は宜しく頼む。皆で力を合わせて…─────」


頭を振って気を取り直すエルザ。だが途中で遮られる。


詫びを入れ、改めて挨拶をするエルザ。
しかし、その挨拶を頬を染めたイヴが遮る。


「その表情が素敵だよ…。僕、ずっと…憧れてたんだ…」


「は!?」


口説かれるエルザ。助けてくれと視線をカイルに向けるがカイルはニヤニヤ笑っている。


「良かったじゃねーか。仲良くしろよエルザ。俺の事は気にすんな。好きにしてイイぞ?俺も好きにするから」


「待ってくれカイル!!こんな奴知らん!私にはお前だけだ!カイルーー!!」


イヴを蹴り飛ばし、カイルに駆け寄るエルザ。だがカイルは相手にしない。涙目になって許してくれ…とカイルのマントを掴んで懇願するエルザ。青い天馬の奴らはまだエルザを口説こうとしている。


「──────君たち、その辺にしておきたまえ」


聞こえたのはやたらあまい声。カイルに鳥肌が立った…


「い、一夜様…!」


「い、一夜?」


「うわ、出た」


レンが呟いたその名前を聞くなり、思いっきり顔をしかめるエルザにうんざりした顔をするカイル。


レンが呟いたその名前を聞くなり、思いっきり顔をしかめるエルザ。


「久しぶりだね、エルザさん」


「ま、まさか…お前が参加しているとは…っ!」


珍しく体を震わせて怯えるエルザに、カイルはやれやれと言った顔をする。


「会いたかったよ、マイハニー。あなたのための一夜でーす!」


そこにいたのは、甘い声に全く合わぬ風貌をした男。
青い天馬の一夜=ヴァンダレイ=寿だ。


「「ま、マイハニー!?」」

「まだ言ってんのか、こいつ…」


トライメンズといい、コイツといい……頭痛がしてきた。


「まさかの再会……キラメキッ」


「「「一夜様の彼女さんでしたかー」」」


ポーズを決め、再開を喜ぶ一夜に、トライメンズがクラッカーを鳴らして称える。


「「「それは大変失礼を!」」」

「全力で否定するっ!!」


変な勘違いをし、エルザに詫びを入れるトライメンズ。
それをエルザは凄い勢いで否定した。


「お前こんなのが趣味なのか……口を出すつもりはないが……マジでコンビ解消を検討させて「誤解なんだ!カイル!!」


カイルに縋り付くエルザ。


さて、と一夜が一息をつき、輝かしいほどの笑顔を向けてきた。


「君たちのことは聞いてるよ?エルザさんに、ルーシィさん。我が生涯のライバルカイルさん。他」


「なぁ!?」

「うぷ」

「ほかぁ!?」


女性陣への丁寧な扱いから一変し、どうでもよさそうに男陣指差し、カイルに明らかな対抗心を漲らせる一夜。


「──────くんくん」


「ひゃ!?」


しかし、そんな男陣を全く眼中にいれず、突然鼻を澄ませ、ルーシィに近づく一夜。


「ううーん、いいーパルファム(香り)だ」


「き、きもいんですけど…!」


「すまん…私もコイツは苦手なんだ…!」


そう言って後ずさりするエルザ。
一夜はこれでも凄い魔導士なんだがな……色々あれだから…




「っ、青い天馬のクソイケメン共!あまりうちの姫様方にちょっかい出さねぇでくれねぇか?」


ややキレ気味のグレイの一言で、顔をしかめる一夜たち。


「…帰っていいよ男は」

「なっ…」


「お疲れ様っしたー」

「「お疲れ様っしたー」」

一夜たちの対応に、遂にグレイがキレた。


「ったく、こんな色モンよこしやがって!お前らわかってるのか?エルザとルーシィは俺たちの仲間なんだ!それを人の目の前で…!やる気あんのかよ!?」



「…試してみるか?」

「僕たちは強いよ?」


そう言って睨み合う両者。
先程まで賑やかだった屋敷は一気に一触即発な雰囲気に包まれた。


「っ喧嘩かー!?俺も混ぜてくれー!!」


「やめないかお前たち!…っ、うぅ…!?」


喧嘩を始めようとしているグレイたちの仲裁に入るエルザ。
しかし、突然体を震わせ、小さな悲鳴を上げた。


「エルザさん、相変わらず素敵なパルファムだね。ん〜」


「うわぁっ!もうやめろ一夜!カイルが、カイルが〜!!」


いつの間にかエルザの背後に回り込んだ一夜は、くんくんと鼻を澄ませ、エルザの香りを嗅ぐ。
エルザは体をビクッと跳ねさせ、近くにいたカイルの肩を掴んで引っ張り、盾にするように背に隠れた。


「カイル、聞いてくれ!私はコレらなんかどうでもいいんだ!むしろつきまとわれてるんだ!わかってくれカイル!」


「む、相変わらずだね、カイルさん。君は…私とエルザさんの愛の語らいを邪魔しないでもらえるかな?」


はぁ…と一つため息をつくと光の精霊王を呼び出し、滅びの閃光を地面に叩きつけた。


大爆発を起こす集会所。森林に囲まれてた大地は跡形もなく更地に返った。


「まあ貴様らのアホな行いでエルザをからかうのも面白いが←(ドS)そろそろ弁えてもらおうか?温厚な俺でもキレるぞ」


手に再び先ほどの閃光をやどす。


「ああ、今から言うのはただの独り言だ。聞き流しても構わんぞ?俺はローレライという魔法の他にあらゆるものを創造出来る【千の顔を持つ英雄】ってのがある。無論人体も例外じゃない。コレがどういう事かはご想像にお任せするが、賢明な判断をしてくれる事を望む。剣の扱いってのは素人が考えてるよりはるかに難しいんでな。切り損ねて死んだ方がましと思える怪我をする事もザラにある。………………俺に剣を抜かせるな」


この男。非道である。これ以上喚くなら手足出来るだけ痛い切り方で切り刻むぞ?手足なくなったところで俺の魔法でまた作ってやりゃあ問題ないんだからな、と言っているのだ。
一瞬で彼らの中で階級分けがされる。間違いなく彼が王……いや、魔王だ。
味方含め、全員一斉に冷や汗をかく。彼だけは敵にまわしてはいけないと心底から感じいっている。


「はっはっは!相変わらずですな、カイル殿」


「ようやくまともなのが来たか……久しいな。ジュラ」


この男、蛇姫の鱗のエース 岩鉄のジュラ。
その実力は聖十大魔道に認められるほどで、ギルド外でも有名な人物だ。


「いきなり辺り一面が荒野に変わったので何事かと思いましたよ。貴方ならなっとくだ」


「悪かったな。この手のバカ共を止めるには実力行使が一番手っ取り早い」


カイルが指をパチンと鳴らすと荒野が瞬く間に元に戻った。カイルの魔法で直したのだ。


「これで先程の言葉は嘘でないと証明出来ただろう。もう一度いうぜ?俺に剣を抜かせるな…」


ゴクリとツバを呑み込む。


その後、デリオラ戦でやりあったリオン達と再会し、リオンがギルドに入ったことを自身のことのように喜んだが、当の本人はそれを鼻で笑った。また喧嘩になりそうになったがカイルが背中の剣をわざとらしくカチリと鳴らすと一瞬で静かになった。


「これで三つのギルドが揃った。残るは化猫の宿(ケットシェルター)の連中のみだ」


「連中というか…一人だけだと聞いてまーす」

「…一人だと?」


一夜の言葉にエルザが驚く。

あのバラム同盟の一角と戦闘を交えるのだ、人数は多いに越したことはない。
現に、妖精はハッピーを入れ六人。天馬は四人。蛇姫は三人、しかも聖十の称号を持つジュラとカイルがいる。
しかし、残り一つのギルド、化猫の宿からはたった一人しか選出していないという。



「こんな危ねぇ作戦にたった一人だけをよこすってか…!?」


「ちょ、ちょっと…!どんだけヤバイ奴が来るのよー!?」


草木をかき分け、こちらに向かって駆けてくる小さな足音が聞こえ、カイルが入り口に目を向けたその時、



「──────うわぁっ!」


何もないところで何故か躓き、短い悲鳴を上げながら思いっきり床にダイブする女の子がタイミング良く目に入った。



「あの…遅れてごめんなさい…化猫の宿から来ました、ウェンディです。よろしくお願いします!」


「これはこれは……可愛らしいお嬢さんだ」


「なっ…子供…!?」

「女…?」


てだけじゃねえな…オーフィス。こいつは


【滅竜魔導士……それも天竜だな】


さーて、面白くなってきやがった…
















あとがきです。なんと四十万ヒット突破!!ビックリすぎです。ありがとうございます。
次回はカイル無双が発動します。それでは次回【強者の意味】でお会いしましょう。コメントよろしくお願いします。


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