小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第六十八話 エドラス



「…どうしたカイル?」


会話の最中、急に窓の外に目を向けたカイルにエルザが首を傾げる。
その視線の先には黒い雲。


「いや、なんつーか……雨が降るなって…」


「そうですね…空気の匂いが変わりました…」

「雨か…あんなに晴れていたのにな」

「シャルルとハッピーも帰って来ないしねー…」

「あの…私探しに行ってきます!」


そう言って立ち上がり、急ぎ足で出口へと向かうウェンディ。
「傘はー?」というルーシィの言葉はどうやら届かなかったようだ。








「傘持って来ればよかったかな…」


感のいいカイルと空気の流れを読めるウェンディの予想通り、マグノリアは雷雨に見舞われていた。
激しく降り注ぐ雨に濡れない様、人々は家屋に入り、街には人影が一切ない。ただ、ザーザーという雨音だけが響き渡る。


「シャルルー!どこー?」


大きな声を出しながら辺りをキョロキョロと見回すウェンディ。
…と、前方から此方に歩いて来る小さなシルエットが目に飛び込んだ。その正体は、やや俯き、雨に打たれるままでいる白い猫…シャルルだ。
ウェンディはパシャパシャと跳ねると水に構わず、急いでシャルルの元へ駆け寄る。


「シャルル!やっと見つけた、…」

「…ウェンディ、アンタ傘も差さずに…風邪ひくわよ」

「シャルルもでしょ?」


そう言って頬を少し膨らませ、シャルルの目線に合わせる様にその場に屈む。


「シャルル、私たちはギルドに入ってそんなに経ってないんだから、もっと皆と仲良くしなきゃダメだと思うの」

「必要ないわよ」

「むー…」

「…アンタがいれば私は良いの」


ムスッとした表情でそう告げるシャルルにウェンディが「もう、…」と項垂れていたその時、遠くの方からパシャパシャと濡れた地を歩く音が聞こえてきた。
「こんな雨の中に?」と二人は訝しげに首を傾げ、音の聞こえてくる方に目を向ける。


「…誰?」


ゆっくりと二人に近づいて来る、幾本もの杖を背負い、目元以外を隠した男…ミストガンはウェンディたちの目の前でその足を止めた。


「…ウェンディ、」

「え、…その声…?」


懐かしむように己の名を呼ぶその声には聞き覚えがあった。


「まさか君がこのギルドに来るとは…」

「、っジェラール…!?」


その覆われた顔が露わになった時、ウェンディとシャルルは大きく目を見開いた。
碧い髪に左頬の独特な紋章…

雷鳴がマグノリアに鳴り響く。


「ど、…どういうこと…!?だってアンタ捕まって…!」

「それは私とは別の人物だ」

「そんな…!」
「どうみたって…アンタ、ジェラールじゃない…!?」

「…私は、妖精の尻尾のミストガン。…七年前はこの世界の事はよく知らず、君にはジェラールと名乗ってしまった、」


その言葉に二人はそれぞれの理由で息を呑む。
そして、まさか、と呟きを溢すウェンディにミストガンが静かに頷く。


「あなたが…七年前の、あの時の…ジェラール…?…っ、ずっと…ずっと会いたかったんだよ…ッ?」

「会いに行けなくて、すまなかった…」


ポロポロと大粒の涙を溢すウェンディを見、ミストガンは申し訳なさそうに目を伏せる。

肩を震わせ、しゃくりを上げて涙を流すウェンディに比例し、雨は一向に止む気配がない。

…そして、無言の状態が数秒続いた時、ミストガンがスッと目を開けた。


「…だが、今は再会を喜ぶ時間はない」

「「、…?」」

「今すぐ、…っ…」


言葉の途中、苦痛な表情を浮かべてぐらりと揺らいだミストガンに二人は目を見開く。


「今すぐ…この街を離れるんだ…ッ、…」

「ぁ、…!」


遂に、倒れ込むかのように膝をつくミストガン。
その顔には苦痛の色。息も少し乱れている。


「っ、私の任務は失敗した…ッ…」

「、…」

「大きくなり過ぎたアニマは…もはや、私一人の手では抑えられない…ッ」



ゴォ…と音を立て、空で雨雲が渦を巻き始めた。
ミストガンは絞り出すように言葉を紡ぐ。


「まもなく…っ、マグノリアは消滅する…ッ…」


「、どういうこと…?、…っ全然意味わかんない…!」

「…終わるんだ、…消滅は既に確定している、…」

「…!」

「せめて、…君だけでも…ッ」


悔しげにそう言葉を発するミストガンに、ウェンディはカッとなり声を荒げる。


「妖精の尻尾は…!?」

「、」

「ギルドの皆はどうなるの!?」


ウェンディの瞳からは、まるでこの雨の様に止めどなく涙が零れ落ちる。
反対に、シャルルは眉を寄せ、何かに耐えているかの様に拳を握って俯く。


「全員…死ぬ、ということだ…」

「、っ!」

「ウェンディ!」


ミストガンの言葉を聞くなり、踵を返して走り出すウェンディ。
シャルルの呼び掛けに振り返ったその目には強い意志が宿っている。


「皆に知らせなきゃ!」

「っ、行ってはいけない…!君だけでも街を出るんだ!」

「…私だけなんてありえない…っ!私はもう…妖精の尻尾の一員なんだから…っ!」


そう言い放ち、ウェンディはギルドへと駆けて行く。
その姿にミストガンは目を見開き、呆気に取られている。

あの泣いてばかりだったウェンディが…と。

そしてふと、ウェンディが走り去って行った方向を無言で見つめているシャルルを見、あることに気付いた。


「…、もしかして…君ならウェンディを救えるか?…っ、く…」

「…どうかしら、」


シャルルは意味深な言葉と共に一度だけミストガンを振り返り、そして己もギルドへと走り出した。

強い意志を持ち、たくさんの雨粒の中に消えて行った二人。その背中を見ながらぼそりとつぶやいた。



「………………兄上……」










誰かに名を呼ばれたような気がし、ペンを動かす手を止めるカイル。
それを見、同じくペンを握っているグレイが訝しげに首を傾げた。


「どうした?」

「いや、何か誰かに呼ばれた気がして…」

「えぇ…!それ幽霊とか…!?」

「おいおい、マジかよ!」

「うーん…カイルさん幽霊の類はあんまり信じてない人なんだけど…」


ルーシィの発言にん〜、という顔をする。
確かに、恨みなら何かと買ってそうだが…雨が降り始めたころから何やら悪寒を感じていた。それが一体何を意味するのかはわからない。


「何だか嫌な予感がする」

例によってカンだが…

「まぁ、ナツが起きたらその予感は的中ね」


そう苦笑を溢すルーシィの視線の先には、顔中に黒のペンで落書きが施されたナツの姿。
いたずらをされていても気が付かない程、深く寝入っているようだ。
中々見事なパンダだ。


「っ、喧嘩かぁあァァ!?俺も混ぜろー!」


周りの騒々しさに、パチッと目を覚ますナツ。そして起きた途端、寝惚けているのか、大きな叫びを上げた。


「もう…、寝惚けてんのー?――――はい、」

「…っなァ!?誰だ!こんなことしやがったのはーっ!?」
「…そんなことするの限られてるでしょー」


呆れた表情を浮かべながらルーシィがナツに手鏡を見せる。
すると、その鏡に映った自分の姿に驚き、犯人への怒りの炎を燃やす。そして数秒後に発覚した犯人の一人であるグレイと、いつものよう熱く冷たく火花を散らした。


「――――エルフマン、行くわよ?」

「おう、姉ちゃん」

喧騒に負けぬよう、声を張り上げてエルフマンを呼ぶのはコートを羽織ったミラ。
その手には傘が握られており、どこかへ出掛けるようだ。

「墓参りか?」

「ええ、ちょっと教会までね」

「そうか。…気ぃつけてな」

「心配すんな!姉ちゃんは俺が守る!漢として!」

「頼りにしてるわ、エルフマン」


そう言ってミラはニコッと微笑み、気合十分のエルフマンと共に雨の中出掛けて行った。


「…ミラさんとエルフマン、こんな日にわざわざ教会に何だろ?」

「…あ、そっか…、」

「もうすぐリサーナの命日だったね…」

「リサーナ、って…」

「ミラとエルフマンの妹なのよ。仕事中の事故で二年前に、ね…」


ミラとエルフマンはリサーナの命日が近付くとこうして教会へと通い出す。

カイルは二人の気持ちを痛い程感じながら、何気なく窓の外に目を向けた。
相変わらず弱まることなく降り続けている雨。黒い雨雲は生き物の様に蠢いている。


【晴れにする事は出来なくはないわよ、奏者】


ーーー自然の摂理を歪める事はなるだけしないって言ってるだろ?晴れるよう祈っておくだけでいいさ。









「っ、ハァ…ハァ…ハ、…きゃっ…!?」


ギルドへと急ぎ向かう途中、水溜りに足を取られ転倒するウェンディ。
ジンと痛む手足に顔を歪めながら、何とかゆっくり身体を起き上がらせる。
…と、先程まで自身が浸かっていた水溜りに映る黒い空。


「、…」


渦巻く雲の中心は稲光なのか何なのか、何度も何度も光を発している。
――――もう、時間がない。


「…っ!」


ウェンディは目前に迫ったギルドへと再び駆け出す。
それと同時に空の雲が速度を上げて渦を巻き、そして遂にマグノリアを覆う程までに巨大化し、その中心から街へと光が降り注いだ。


「ぁ…っ、皆ー!大変なの…っ空がー…!」


声を張り上げ、ギルドに駆け寄るウェンディ。
しかし、あと数歩というところでギルドはグニャリと歪み、まるで吸い込まれるかのように空に出現した渦へと消えて行った。


「何これ…っ皆…!…、きゃっ」


唖然とするウェンディを激しい暴風が吹き飛ばす。黒い煙に視界を奪われ、何も見えない。
だが、一瞬だけ視界が戻ったとき、その目に飛び込んで来たのは黒く禍々しい巨大な竜巻。
それは天を貫くかのように高く伸び、そして徐々に渦の中へと消えて行った。

一気に静まり返るマグノリア。


「、っ……う、そ…」


煙が晴れた時、そこにはウェンディ以外、何も、誰もいなかった。
先程までたくさんあった建物は一つも残っておらず、代わりに白い砂が残されている。…それは妖精の尻尾のギルドも同じであった。


「一体何が起きたの…?…、っ誰かいないのー!?誰かぁぁあァァー…!」


ウェンディの悲痛な叫びがマグノリアであった場所に響き渡る。


目に涙を浮かべ、ペタンとその場に座り込むウェンディ。そして、徐に己の両の手を見つめた。


「あ、れ…?何で…何で、私だけ此処にいるの…?街もギルドも全部消えちゃったのに…」


何故、私だけ…?


そう小さく呟いた時、突然近くの白い砂がボコッと盛り上がった。
驚きに目を見開くウェンディ。そして、砂を舞い上げ、何者かが姿を現した。


「…な、何だ…?」

「ナツさん…!」

「あれ?ウェンディ?ん、此処どこだ?」


姿を現したのは、頭に白い砂を乗せ、キョトンとした表情のナツ。
その言動から状況が全く読み込めていないらしい。


「何も…覚えてないんですか…っ?」

「寝てたからなー」

「…ここ、ギルドですよ、…」
「はぁ!?」

「突然空に穴が開いて…ギルドも街も皆吸い込まれちゃったんです…!」

「、…」

「っ本当です!残ったのは私たちだけみたいなんですよ…!」


目に涙を浮かべながら必死に説明するウェンディだが、理解できていないナツは冷や汗を流し、ただ呆気に取られている。
…と、ウェンディがハッと息を呑んだ。


「もしかして…滅竜魔導士だけが残された…?」

「――――そうよ、」

「「、!」」


その呟きに答える者がいた。
二人が声のした方を振り返れば、そこにいたのは翼(エーラ)で近寄って来るシャルルの姿。
どうやら無事だったようだ。


「シャルル…!よかった…無事だったんだね…!」

「まぁね。…滅竜魔導士の持つ特殊な魔力が幸いしたようね…良かったわ、あなたたちだけでも無事で…」
「っ、そりゃ聞き捨てならねェな!他の皆はどうでも…って、本当に消えちまったのかー!?」

「うん…あ、でも!滅竜魔導士だけが残されたのなら、カイルさんやガジルさんも私たちみたいにどこかにいるかも…!」

「っそうか!――――カイル!どこだー!?ガジルー!出て来ーいっ!」


ウェンディの言葉を受け、ナツは大声でカイルとガジルの名を呼び始める。
だが、その呼び掛けに応える者は他にいない。


「二人はどうだかわからないけど、他の皆は消えたわ。…正確に言えば、アニマに吸い込まれて消滅した、…」

「、アニマ…!」

「さっきの空の穴よ。…あれは向こう側の世界…エドラスへの門」


シャルルの言葉を聞き、ウェンディはあることを思い出す。
それは幼い頃ミストガンと旅をしていた時のことだ。

時たま彼は、“アニマ”という言葉を呟いていた。その時は何を言っているのか理解できなかったが、恐らく先程のことを言っていたのだろう。
だが、何故彼か…?


「っお前!さっきから何言ってんだよ!皆はどこだよ…!」

「ナツさん!――――…ねぇ、シャルル…何か知ってるの?…そういえば、何でシャルルは無事だったの?」


「ナツー!!何これー!街がぁぁー!?」

「ハッピー!」
「無事だったのね…!」


同じく翼(エーラ)で空を飛び、混乱を露わにしたハッピーがナツたちの前に現れた。
素直に無事を喜ぶ二人だが、その喜びを遮る様にシャルルが口を開く。


「私は向こう側の世界、エドラスから来たの。…そこの雄猫もね」
「え、?」


突然話を振られ、驚きと困惑が入れ混じった様な表情を浮かべるハッピー。
それはナツとウェンディも同じであった。


「私は向こう側の世界、エドラスから来たの。…そこの雄猫もね」


「どういう、こと…?」

「…この街が消えたのは、私と雄猫のせいってことよ…」











その後、ナツ達はハッピー達に連れていかれ、エドラスへと飛んで行った。それからしばらくした後…


突然妖精の尻尾のギルドがあった場所の砂がボコッと盛り上がった。パラパラと崩れる白い砂。
そして次の瞬間、まるで地中で何かが爆発したかの様にある一部分の砂が一気に空へと舞い上がった。

白い砂煙に包まれる辺り一帯。そこに、ケホケホ、と咳込む声が聞こえてきた。


「あ〜!びっくりした…死ぬかと思った」


砂煙が晴れ、視界がクリアになった時、そこには口元を押さえる一人の男の姿があった。
特徴的な銀の髪は白い砂を被り、所々がキラキラと輝いている。…そう、カイルだ。
ウェンディの予想通り、この世界では特殊な魔力を持つ、滅竜魔導士。それに加え、カイルはまた一風変わった魔力を持っている。
なので、今回のアニマによる魔力吸収にも巻き込まれずに済んだのだ。


「さて…また面白い事になってきたなオイ」


そう呟きながら、カイルはやや乱れた息を整えるべく呼吸を何度も繰り返す。
口の中に入った砂がじゃりじゃり煩わしい。


「にしても、さっきの何だ…?皆はどこだよ…」


突然起きた予想外の出来事に全く状況が読み込めない。先程まで一緒に会話していた仲間がどこにもいないのだ。
取り敢えず、髪に付いた砂を振り払うついでに辺りを見回してみる。

どこもかしこも、一面白い砂の海。

カイルは訝しげに眉を寄せ、空を仰ぐ。
目に映ったのは渦を巻く黒い雲、…そういえば、悪寒を感じ始めのは雨雲が集まりだした時だったな…

何故こんな状況になったのかはわからないが、原因は恐らくあの渦巻く雲にあるのだろう。


事の発端となったものがわかっていても状況が読み込めない今、シルフにでも空を探らせようかとした時…


「――――…良かった…お前は無事だったか、カイル…」

「あり?ミスト?」


突然背後から聞こえてきた声に少し驚きながらもゆっくりと後ろを振り返るカイル。
そこにいたのは案の定、ミストガン。珍しいことに顔を隠していない。


「で?説明は勿論あるんだろうな」

「…皆はアニマの魔力吸収によって消滅した…」

「アニマ、ってアレか?お前が塞いで回ってた…は?…消滅した?」


突拍子のないミストガンの言葉に開いた口が塞がらない。

“アニマ”というものがどんなものかは知らないが、世界中のアニマをミストガンが塞いで回っていたことは知っていた。何度か相談も受けていたし…が、それが魔力吸収をし、仲間たちを消滅させたとあっては…


「もう少し詳しく話せ」


ミストガンは言い難そうに重い口を開いた。


「エドラス、…知っているだろ?」

「…まぁね。で、それがどうしたんだ?」

「…今そこでは魔力が枯渇し始めている。それを防ぐためにエドラス王はアースランドから魔力を吸収する亜空間魔法 アニマを造り出した。…私はその魔力の吸収を止めるためにアニマを塞いでいたのだが…」

「今回のはお前でも塞ぎきれなかった、…ってことか」

「あぁ…」


つまりは、エドラス王は多くの魔導士たちがいる妖精の尻尾を吸収して魔力へと変換し、それをエドラスで使用しよう、というわけか。

「…それで?残ったのは俺だけなのか?」

「いや…、ナツやウェンディも無事だったようだ。…皆を助けるため、一足先にエドラスへ向かった」

「なるほど。滅竜魔導士は無事だったってわけね。で?道案内はしてくれんだろうな」

「無論私が送ろう。…だが、そのままで行くのは…」

「あ、やっぱ俺ってそっちでも有名?」

「ああ、顔は隠したほうがいいかもしれない」

「必要ねえな」


自分の顔に手をやると、銀髪が腰までのび、艶やかな顔立ちと、美しい漆黒のドレスに包まれた美女が現れる。
以前ミスフェアリーテイルコンテストで行った女装だ。


「どうだ、これで俺とはわかるまい」

「男に無駄に声をかけられるかもしれんぞ…」

「大丈夫大丈夫!この俺見るとあいつらドギマギしてうろたえまくるだけだから。でもそれ見るのが面白ぇんだよな。かかか!」


それを見届けると、ミストガンは懐から丸薬の様なものが入った小瓶を取り出し、カイルに渡す。


「…それと、これを飲んで行くと良い」

「何だこれ?」

「エクスボール。エドラスで魔法が使えるようになる」


簡潔な説明にへぇ、と溢し、カイルは一粒口に含み飲み込んだ。


「皆は恐らく王都にいるはずだ。…頼むぞ、カイル」

「あぁ。派手に暴れるだろうけど良いよな?」

「…当然だろう」

「オーライ…で、お前はどうするんだ?」

「私は他にも誰かいないか探してみる。頑張って探すさ。――――行け」


ミストガンが手に握った杖を高く振り翳す。
すると、カイルの体が光に包まれ始め、フワッと浮き上がった。


「……すまない、」

「なーに、気にすんな、絶対取り戻すから」


悔しそうに顔を歪めるミストガンにカイルはフッと笑みを浮かべて答える。
そして、その会話を最後に、カイルは吸い込まれる様にアニマへと消えて行った。

一人白い砂の海に残されたミストガンは、もう見えぬカイルへもう一度すまない、と小さく呟き、他の無事な者を探す為歩み出した。

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