聖生side
気が付くと俺は布団の中にいた。夢だったのかと思い、ふと周りを見渡すと知らない部屋にいた。しかも、横には同じようにイッセーが布団で寝ていた。
「夢じゃなかったか。しかし、背中に黒い翼を生やして空を飛ぶ人間がいたとはな。」
まったくこの世界はどうなってるんだ。神のやつが転生していきなり原作に介入すれば死ぬと言っていたが、あながち間違いではないのかも。
この世界は、どうやら俺の生きていた世界とは違うらしいな。この世界に来て6年しか生きていないが別に変ったところはないと思っていたのだがね。
どうやら、ここからが俺の人生の転機、言わばターニングポイントになるってやつか。
この先、好転するか暗転するかどっちかだな。まず、間違いなく好転することはないだろうな。特に、今のんきに俺の隣で寝ている奴の近くにいれば確実に俺の人生は散々たるもになるだろう。
しかし、イリナにイッセーを更生させることを誓った以上逃げるわけにはいかないしな。まったく、どうしてこんな変態と出会ってしまったのだろう。
思えばイッセーと出会ったのは、幼稚園に行きだしたころだったがまともな思い出がないな。
もう考えるだけ無駄だ。今は状況を把握しなくては。
「なに唸ってるの?」
「う〜ん。うん?君は誰?」
確か、さっき夢だと思っていたやつに出てきた女の子だな
「私は朱乃だよ。姫島朱乃」
「そうか。朱乃ちゃんか、さっき唸っていたのは、俺の今までの人生と今後のことについて考えてたからだよ」
「そうなんだ。なんか難しそうだね」
「まあね。そんなことより、今はどんな状況なんだ」
あれが夢でなければ、翼の生えた人が逃げている男たちを殺したとこまでは覚えてるんだけどな。
「私と母様が襲われてる時に、そこの寝てる子が来て、勝手に男の人にぶつかって勝手に気絶して、そのあと君が来てヒーローみたいに助けてくれて男に刀で切られそうになったときに父さまが来て、悪い人たちを倒してくれて、気が付いたら君も気絶してたから父さまが布団に寝かせようって言って、今の状況だよ」
めっちゃ必死に説明してるな。見た目が可愛いだけに、必死なとこがさらに可愛い。いかんいかん。状況を整理しなくては。
にしても、さすが俺と変わらないぐらいの年齢だな説明が分かりずらい。見たまんまを自分の主観でダイレクトに説明してくれたな。
にしても、イッセー可哀想だな絶対この女の子と母親を助けるために、勇気を振り絞って飛び出していったんだよな。
それなのに、「勝手に男の人にぶつかって勝手に気絶して」って言われてるんだもんな。まあ、そんな残念なところもイッセーらしいがな。
しかし、俺がヒーローか。この女の子にはそう見えたんだろうな。
イリナとイッセーとヒーローごっこしてる時は、だいたいイリナにヒーロー役を取られていくんだけどな。ちなみにイッセーは敵の怪人役で、なぜか俺は怪人にとらえられたヒロイン役だ。
ヒーローも悪くないもんだな。
って、また思考が脱線してしまった。イッセーのことは擁護しておかなくてもいいだろ。
そうかそうか。あの黒い翼の人はこの子のお父さんだったのか。
「えぇ!?」
「どうしたの...えっと...」
「あぁ。俺の名前は聖生だ、黒夜聖生好きなように呼んでくれ。で、こっちに寝てんのが変態兵藤一誠だ。」
間違えた。最近イッセーのこと変態変態考えていたせいでフルネームをいう時に変態を付けてしまった。
「そうなんだ。聖生君だね。で、そっちが変態君だね。」
おい!ピンポイントに変態だけをチョイスしてきやがった。まさか狙ってやってないよな。見るからに純粋そうだから狙ってはないだろう。
こればかりは訂正しておいた方がいいな。
「朱乃ちゃん。イッセーは変態で間違いはないんだけど、みんなイッセーて読んでるからイッセーって読んであげた方がいいかな」
「そうなんだ。まあいいや。そっちの子には、興味ないし」
おいイッセー!ここでもか、ここでもお前は女の子に興味を示されないスキルを発動するのか。この先のイッセーの人生が心配になってくるな。
「そうだ。さっきの人が君のお父さんなんだよね」
「うん!そうだよ。かっこいいでしょ」
「そうだね。かっこいいと思うよ。ちょっとお話が聞きたいから読んできてくれるかな」
かっこいいも何も怖いよ!背中から黒い翼生えてんだぜ!
普通じゃねえよ!もう大概のことで驚けなくなりそうだな
「で、呼んだのはお前か。俺の名前はバラキエルだ。朱璃と朱乃から話は聞いた。お前のおかげで無事で済んだんだな。ありがとう」
意外と普通な感じだな。さっき生えてた翼とかないし、まあ一応聞いておくか。
「あの、俺は黒夜聖生といいます。気を失ってたところを助けてくださってありがとうございました。それで、いきなりなんですが背中に翼とか生えてませんでした?」
「そうだな。翼ならあるぞ。ほら」
バサッとご立派な翼が生えてらっしゃる
「あはは、そうですか。とてもご立派な翼ですね」
っか俺の誕生日パーティーどうなってんだよ、せっかくの6歳の誕生日なのになんでこんな奇想天外な展開なんだよ
「そうか。そう思うだろ。実際、下級堕天使たちとは比べもにならない翼だからな。」
堕天使!?なんだそれ!とんだファンタジーだな!
もういいや、突っ込むの疲れた。そろそろ家に帰らないとやばいな〜
「あの〜、そろそろ家に帰らないとまずいんですけど。今日俺の誕生日で誕生日パーティーがあって、迷子になったイッセー探してた途中でして、両親たちが俺の帰りを待ってるんです」
「それは、おめでとう。そうだな、じゃあ、そっちの子も寝ている様だし送って行こう。それぐらいしないと朱璃に怒られてしまうからな。それに帰りが遅くなった言い訳もしなくてはいけないだろう。俺の方でうまく説明しておく」
そうか確かにな。イッセーを探しに出て1時間近く経ってるしな。まあ、あの両親なら笑って許してくれるだろうが。何よりイッセーも寝たままだし、お願いするとするか。
「じゃお願いします」
「承った。あと、今日起こったことも、見たことも他の人たちには言わないでくれ。こっちの寝てるやつには夢ってことで通じるだろう」
本当なら記憶をいじって忘れさせたいところだが、朱璃と朱乃を助けてもらった恩もあるしな。何より、そんなことをしたら朱璃や朱乃に嫌われてしまいそうだ。
子供だし、意外としっかりしている。約束を破るようなことはしないだろう
「では、行くか」
「はい」
「あれ、もういっちゃうの?」
「うん。もう帰らないと母さんも父さんも心配するから」
「行っちゃ、やだ。もっと一緒にいたい」
ギュッと抱き着きながら言ってくる
何言ってんだこの子は、さっき会ったばっかじゃないか!しかし、これはやばい誘惑に負けそうだ将来ぜったいかなりの美人になるだろうな。
しかも、こっちを見ているバラキエルさんの目が確実に「早く離れないと殺すぞ」って物語っている
「ごめんね。もう帰らないといけないんだ...それにもう二度と会えないってわけじゃないし、またきっと会えるさ」
まあ、実際家からはあまり離れてないしな
「そうだぞ朱乃。聖生君も困っているし、何よりお父さんもお母さんも心配しているだろうから早く家に返してあげないと」
「わかりました。聖生君、バイバイ。またきっと会いに来てね!絶対だよ!約束だよ!」
ということ、自宅に帰ることになりました。
ちなみに、朱璃さんもしかり見送りには来てくれました。イッセーは相変わらずバラキエルさんの背中で寝たままです。
おい、イッセーお前はいいご身分だな!