小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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「アナタには囮になって貰うわ」
「化け物だからか」
「漢字は苦手なのよ」

管理局の人間達がここへと来る間にそんな軽口を叩く。
‐苦手だといいつつ答えてくれるプレシア様カッケー
‐脚気だったのか
‐足を隠してる訳はむくんでるから?
カット。

「私が非道に成れば成る程、フェイトの心証は良くなるわ」
「こんなガキを素体にこんな化け物を作り上げるなんて…なんて非道」
「全てはアルハザードへ行くためよ…!そしてアリシアを……!」
「そんな感じか」
「こんな感じよ」


‐本当に大丈夫だろうか?
‐母の望みがフェイトの望みならば、正しい
‐善し悪しがあろうが
‐心は死ぬが未来は守れる
‐未来を殺し心を守るか?
‐生きれば心は治るだろう?
‐生きてて心は直ってないけどな
カット。

「ん…アルハザード?」
「知らないの?」
「魔法の知識はあっても、魔法界の知識はないんだよ」
「難儀ね」
「そんな無知なガキに教えはしないのか」
「しないわ。自分で調べなさい」
「はいはい」

‐複数の転移確認
‐せめて上着は脱ごうぜ
‐下は普通のシャツだもんな

「何をしてるの?」
「来る連中の仲間におそらく同じ学校の人間がいるんだよ」
「……あぁ、あの白い子ね」
「クラスに化け物が居たら、常に警戒するだろ?」
「それが触手の塊なら精神的外傷になってもおかしくないわね」
「そういう事だから顔を隠せる何かない?」
「焼く?」
「それも一つの案だな」

いっそ触手でカバーしようか。
‐馬鹿だ
‐展開拡げたら侵食早まるぞ
‐それもまたいいかもな
‐いっそ素で出てソックリさんとか?
‐会わないのが一番いいんだけど
それは無理だ。囮をする以上、確実に接触する。

「あの子は通して構わないわ」
「それは有難いけど…いいのか?」
「次元震を起こして情報を送った段階で私の勝ちよ」
「足止めが俺の役割か…死ねるな」
「ダメよ。アナタが死んだらフェイトが悲しむわよ」
「アンタが死んでもフェイトは泣くさ」
「その為に、壊すのよ」

‐まるで自暴自棄
‐慈母?自棄
フェイトを悲しませない為にフェイトの心を殺す。なかなかに、なかなかだ。

「いたぞ!」
「子供…!」

眼鏡は外して置こう。たぶんバレないだろう。
‐人間は特徴的なモノに目がいくからな
‐例えば眼鏡
‐例えば包帯
‐例えば触手
ここで捕まれば、フェイトにも罪が及ぶ…それも母と同じ程度に。
‐プレシアが思案した結果だ
‐フェイトの未来を守る為だ


「プレシア・テスタロッサ、武装を解除して投降しろ!」
「言われてますよ」
「面倒だわ、無視しましょう」

局員達を鼻で軽く笑いながら深く椅子にもたれ掛かるプレシア。
‐本当に色っぽいな
‐セクシーな服着てるからとかじゃないよな
‐フェイトの未来もこんなのになるのか
‐楽しみだ
‐こう、鞭を使って女王様とお呼び!的な?
‐でも見た限りフェイトってMじゃね?
‐痛い、でも感じちゃう!ビクンビクン
‐イタイ
カット。イタイタしいわ。

「あんな所に扉があったのか」
「えぇ………さて、始めましょうか」
「御命令があればいつでも」
「じゃあ、やりなさい」

小さく喋れば、少し冷めた目で命令された。
左腕を扉の近くにいる局員に向ける。
甲に埋まった宝石の端から赤黒い触手が勢いよく伸びて局員を掴んだ。
‐男など掴んでもつまらん
‐捨てろ
‐ポイだ
‐金魚掬うヤツな
‐それはポイだ
‐ポイだ!
カット。
そのまま掴んでいるのも嫌なので彼には仲間の所に戻ってもらう。

「ぐはっ」
「大丈夫か…?!」
「あの部屋に近づかないでもらえるかしら?私の可愛い娘がいるのよ」

扉の先にいるのは円柱の硝子管に液体と一緒に入れられたフェイト…いや、アリシアなのだろう。
‐瓜二つだ
‐目の前に行けば違いもわかるだろうがな

「どうせ見ているのでしょう…フェイト」
‐見ているのでしょう、フェイト

「あなたはね、アリシアの代わりなのよ」
‐あなたは、アリシアの代わりだったの

「代わりにすらならなかって出来損ない」
‐代わりになれなかった、私の娘

「人間ですらない、出来損ないの人形」
‐愛しいもう一人の、人形のように可愛い娘

「もう要らないわ。必要がない。私の言うことを全う出来ない人形は必要ないわ」
‐もう私から離れなさい。貴女が汚名を被る必要はないわ

「さようなら、人形ですらないフェイト」
‐さようなら、私の最愛の娘


「お客様にはお帰り頂くわ」
「御意に」

短く返事をして一歩前に。
局員達は勇ましくも杖を此方に向けている。しかしながら、残念だ。
目に見える触手だけが展開してると考えてる時点で負けである。

彼らの足元から生える赤黒い触手。身体を縛り上げ、更に足元に転移魔法陣を形成していく。
‐地球のどこかへいってらっしゃいな
‐アディオス
‐アデュー
‐さようなら
‐バイバイ






「さて、時間稼ぎは任せるわ」
「なら、この兜を借りるぞ」
「お好きに」

兜の目を隠す部分だけをもぎ取り、触手で整えて、耳に掛ければほら簡易仮面の完成。
‐仮面バッターにこういう奴いたよな
‐平成バッターだな
‐しかも主人公じゃなくてサブな
カット。

宝石に触手を戻す。先ほどの転移陣を敷くお陰で脚を伝ってしまったわけだが、仕方ないだろう。
‐第一目的はフェイトの未来
‐その為に計画に乗ったのだ
‐使うべくして使った能力だ
カット。ならば自己弁護は止めるべきだ。

「知識がないのに【アンヘル】は使いこなせるのね」
「unhell?非地獄?」
「いいわ、気にしないで。かなり揺れるから気をつけて行きなさい」
「へいへい」

ヒラヒラと手を降って螺旋階段へ向かう。


吹き抜けとなっているここは城の外壁をぶち破らない限り確実に通るらしい。
‐さっきから起こってる振動が次元震によるものなのか
‐はたまた戦闘によるものなのか
後者なら絶望してもいいな。
‐絶望なんてもう出来ないだろ?
‐望みが絶たれる事などもうないのだから
カットカットカットカットカットカットカットカットカット。
どうもここに来てから思考が暗い。
‐母と子を見るから
‐やはり関わったのが間違いだった
‐否、間違いなどはない
‐人生の間違いは未来的正解だ
カット。過去の間違いは一つだけだ。


「そうは思わないかね。管理局?」
「さっきの子供…!?」
「気をつけろなのは…こいつは俺がやる!」
「ライト君…嫌!私も一緒に戦うよ!」
「なのは…!」

一気に死にたくなった。
‐お、おつちけ、おつちけんだ俺
‐俺よ落ち着け
‐素数を数えるんだ!
‐1、4、6、8、9、10
‐畜生!全部素数じゃないじゃないか!
‐あれ?1って自分でしか割り切れないから素数じゃねぇの?
‐1は除くんだよ
‐1があるならすべての整数は割り切れるさ
どうしてここにスメラギ君がいるのかね。
転生主人公は転生主人公らしく主人公勢に媚び売ればいいモノを…。
‐主人公が高町なのはなんじゃね?
‐………ぉぅ
‐納得の媚び
‐主人公なんていなかった
主人公なんていて堪るか。

「笑いも出ない感動的な喜劇をどうも」
「ハッ!感動的なら通せよ!」
「白い方だけでしたら、城主に呼ばれているので構いませんよ」
「え?」
「しかしながら、残念な事に貴方を通す訳には行きませんで」

スメラギ君の方を向きいい放つ。口元をニヤケさせて挑発する。

「……なのは、行け」
「でも!」
「お前が止めなきゃ!フェイトも、アリシアも、プレシアも、みんな傷付くんだ!」
‐知ったような口を…
「…うん、私行くよ…この城を止める」
「ご英断を感謝致します」

道を開けて高町だけを通す。
スメラギは浮いたままこちらを向いている。
‐武器は剣
‐輝かしい、装飾の美しい白刃の剣
‐両刃だ
‐さながらロングソードか

高町を見送り、スメラギ君に向けて頭を下げる。

「見送り感謝いたしましょう」
「別に、すぐに追い付くさ」
「果たしてそれはどうでしょうか」

首を傾たむけてニコリと笑ってやる。

「生憎と人ではないので、少しばかりは苦労するかと」

左腕と左足が触手に包まれる。
‐やはり侵食されていた
‐まぁ仕方ない
‐目的を果たそう

「原作より堕ちたのか…プレシア」
‐魔力循環
「何を存じてるかはわかりませんが、
‐痛覚遮断
‐増加
城主を馬鹿にする事は許しませんよ……
‐身体強化
‐増加
……餓鬼が」

魔力で補った肉体で地を蹴り、スメラギ君に近付き左足で蹴りを放つ。
慌てた様子で剣を使い防御したが、甘い。
蹴り足は触手の塊だぞ?

「チッ!」

剣が絡め取られ、自分の身体が触手に触れる前に剣を手放した。
使う気はないので、捨てる。

「なんだ、使わないのか?」
「確定している勝利に上乗せは卑怯でしょう?」
「確かに、俺の勝利は揺るがないがな!」

もうコイツ落として、帰りたい。
‐落ち着けって
‐帰って本を読みたい
‐そういえばコイツに本を

「失礼、私情で申し訳ありませんが非常に貴方を倒したくなりました」
「何言ってんだよ!」
「言葉も解しませんか。まるで獣ですね」
「化け物が何いってやがる!」
「バケモノにケモノ扱いされる貴方に何を言っても無駄ですか」

‐はやてなら上手く返してくれそうだ
‐非情に倒したいなら誌上にでも載るやろね
‐いない人間を考えたところで意味はないさ

「俺が勝つさ!俺を誰だと思ってるんだ?」
‐転生主人公
「俺は皇 光…世界を救う為に力を得た英雄なんだからな!」
「…………うわぁ」

‐おい!素が出てるぞ!
‐これをマトモに言えるだなんてスゴいな
‐スゴいよスメラギ君!
‐俺に出来ない事を平然とやってのけるソコに痺れる憧れない!

「ではこちらも…



アルハザードへの鍵のコピー、そのプロトタイプ人型触手系、
名称【アンヘル】です」



************************************************
〜プロトタイプ人型触手系
主人公が思い付いた名乗り。意味も意図も意思すらない

〜囮と化け物
化け物を囲った結果囮になる

〜漢字が苦手なプレシアちゃん
どうせフェイトがいる世界を知りたいとかで結構地球の本も持ってそう。漢字は苦手と言ってるが会話を見る限り日本人より出来そうで怖い

〜女王様とお呼び!
鞭の後には飴をあげましょう

〜仮面バッター
打者じゃなくて飛蝗【バッタ】。昔は敵に改造され人間と敵の間で頑張りながら敵である驚愕者達を倒していたが、現代では鏡の中に入ったり、メダルを子供に買わせたり、宇宙キター!とか言ってる

〜世界を救う為の英雄
スメラギ君。一応彼視点で書けばご都合主義の塊だが、格好よくは書ける筈…まぁダイジェストになるだろうけど、その辺りはしかたない

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