小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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相変わらず続いているランニングと軽い想像による理想の予備動作が皆無の瞬間的移動訓練。
‐向いてる方向以外に移動出来れば
‐その先は連続的な移動
‐普通に走りながらの別方向への急加速
‐直線距離の延長
‐やる事が大量にあるようで何よりだ
‐身体強化魔法も安定してきた
‐やはりオッパイを触るために柔術にすべきだ
‐体内の攻撃は疲れるさ
‐サブミッションでの寝技とか
‐相手を無力化するのには使えそうだが
‐魔導士なら気絶させるか思考を停止させるしかない
‐首折ればいいじゃない
‐オッパイには夢と浪漫が詰まってるんだ!
‐チッパイは希望と夢を抱いてるんだ!
‐痛感を復元、鈍化
‐疑似回復魔法を展開
‐いっそ中国系拳法でも
‐避け中心、一撃無力化を狙うなら混ぜるしかない
‐島津の剣も魅力的だがな
‐あのなだらかな流線型を見てみろ!水の抵抗を一切感じないんだぞ!
‐愚かだな俺…全てを包み込むオッパイこそ正義だ!
‐やはり解り合えないんだな…
‐仕方がないさ…
‐疑似回復魔法行使完了
‐魔力還元を考えると効率的か
‐痛感通常
‐さぁ殺し合おう、俺よ!
カット。
身体強化による筋肉断裂さえ抑えれば、この魔法も随分と効率的になるんだけど。
‐疑似回復魔法と同時使用なら今現在が優秀
‐構築式も簡単
‐但し脳処理の強化もしなければ画像処理が追い付かない
‐考えものだな

運動が止まった体から汗が溢れる。
今日は帰ろう。明日は八神の誕生日だ。
‐はやてがまた一つ老いるのか
‐成長するのさ
‐胸の成長はしなさそうだけどな




6月4日。だいたい昼ちょっと後。
八神宅へ到着。
‐留守電では早く来いと言われたが
‐さぁ食材の準備は出来たか?
‐作る料理の選択は?
‐盛り付けの仕方は?
‐ケーキの準備は?
‐安心しろ、全て完全に完璧に完了している
‐むしろ多すぎるな
‐はやての困った顔を拝めるのか
‐よろしい、ならば戦争だっ!

ピンポーンと間抜けなチャイムが鳴る。
‐勿論、押したのは俺なのだが
‐当然、出てくるのははやての筈だ


ガチャリ、そんな音が鳴って現れたのは濃い桃色の髪に黒い服。
‐誰だこいつは
‐はやては?
‐危険と判断
‐解析魔法展開
‐八神はやて生存確認
‐防音認識阻害結界展開
‐痛感遮断
‐スフィア展開
‐身体強化及び回復魔法行使開始
‐魔力反応5
‐内一つは八神はやて

「っ!?」

桃色が剣を取りだし構える。
‐魔力弾射出
同時に荷物を捨てるように置き、駆ける。
‐魔力弾防御確認
‐バインド準備完了
桃色の肩を手で払い、奥へ向かう。

「クソッバインドか!?ヴィータ!」

廊下を抜けてキッチンに入れば同じく黒服の三人と八神。
‐褐色が気付いたぞ
‐先に無力化しろ
‐スフィア
‐はやてに当たるぞ!
‐バインドを

「ウォオオ!」
「チッ!」

褐色の男からの拳を回避する。
‐赤髪から魔力反応増幅
‐廊下から桃色接敵
‐金髪がはやてを押さえている
‐金髪は攻撃に参加しないのか
‐往け!守れなくなるぞ!
‐後悔はもう沢山だ!
足に力を入れて自分の斜め前に瞬間的移動を行使する。
‐こちらを確認しているのは褐色
‐廊下からの視野で桃色のみ
窓の桟を足場にはやてに向け移動する。
‐バインド行使
‐金髪捕獲完了
‐触れて常に魔力を流せ
‐はやて救出完了

「お前!主をどうする気だよ!」
「俺が聞きたい。お前らなんだよ…はやてに何用だ?」
「貴様、どういう心算だ」
「動くなよ。うっかりバインドが滑って仲間が死ぬぞ?」

睨み合い、ピリピリとした空気が空間を制圧する。

「………あー、なんや……ええかな?」


そんなピリピリした空間ではやてはようやく口を開き、手を上げた。




◆◆

「あー……なんだ…つまり、コイツらは件の本から現れたと?」
「イエス。なんや私を主と勘違いしてるみたいでなぁ」

粗方の説明が終わって、数秒後に御影君は口を開いた。正しく理解していたようや。

「主。貴女は主の他の何者でもない」
「ウルセェなロリータ。卵アイスを口に突っ込むぞ」
「ア゛ァ?」
「おいおい、勝手に動くなよ。うっかり手が滑りそうになる」
「卑怯者め…」
「卑怯上等。誰かを守れるなら罵詈雑言も食ってやるさ」
「喧嘩、やめ!」

私は声を上げて制止させる。
それで二人とも黙ってくれるから楽で助かるねんけど。なんで喧嘩するかな。
御影君が焦ってる感じも気になるし。一向にこっち向かんし、むしろ御影君が家に突入してきたスピードがおかしかったし、とにかく何もかもが知ってる御影君ではない。

「御影君、ちょい落ち着き…なんやいつもの感じやないで?」
「俺はいつも通りさ。いつも通りに息をして、いつも通りに歩き、いつも通りにコイツらを捕縛し無力化した。オカシイ点なんて家の前に置いてきた割れた四個の卵ぐらいだ」
「あぁ…もう……なんでそうなるかな」

頭をグシャグシャと掻いて考える。
相変わらず思考回路が凄まじい事になってる御影君を見つめて考える。
あれか、普通に聞けばいいんか。

「わかった……御影君は何をしたいの?」
「コイツら消したい」
「なんで?」
「はやてを守る為に決まってるだろ」
「我らが主を危険に晒すと言うのか!?」
「現時点で危険と判断した結果だ桃色刀剣女。手前に意見する資格は与えてねぇよ」

………、なんや、あれ?空気が殺伐としすぎてヘリウムぐらい軽く流されてるけど、今普通に告白されてなかった?誰が?私が。

「顔が赤いな…風邪か?」
「ちゃうから、後ろに目でもついとんのか?」
「付いてても髪が邪魔で見えねぇよ」

落ち着け、落ち着くんや私。こんな反応してる人間が告白とかすると思うか?しかも相手は御影君やねんで?
確実に答えはノーや。
落ち着くにはどうするんやったっけ?手のひらに人?ラマーズ法?あかん、顔が熱い、耳たぶを触ろう。

一通りボケると落ち着いた。うん。落ち着いた事にしとく。

「あー、とりあえず……ゆ、夕君は私に言うことあるやろ?」
「………お邪魔します、誕生日おめでとう、プレゼントに生首四つ程いかが?」
「……生首四つよりいつもの夕君が欲しいね」
「コイツらに危険が無ければ、直ぐにでもいつもと一緒な俺とお前になるさ」
「………ハァ。わかった。今のままやからややこしいねんな」

早朝からずっと言われてきた事を認めるか、生首を四つプレゼントに貰うかなら断然前者の方がいい。

「私の従者やねんから、私に危険な筈ないやろ?」
「……本当に?絶対?嘘なら針千本は止めるけど夕飯がハンバーグになるぞ?」
「ホンマやから。何ならここで誓わせよか?」

私の前で私を守るように立っていた夕君から覗くようにしてシグナムと名乗っていた女性に声をかける。

「シグナムさん」
「敬称も敬語もいりません、主」
「さよか…なら

シグナム、守護騎士達よ。
私に誓え。信仰すべき私に誓え。
私に危害を加えるな、私に危険を与えるな。
当然ながら、誓えるな?」
「ハッ!」
「あと私の家族になって下さい」
「ハッ!…………え?」

返事はしたということで、これにて騎士の誓いは完了した。

「という事やから、私の家族がメンチカツになられると困るねんけど?」
「……わかった。わかったよ」

夕君はかなり呆れたように肩を竦めて、私の後ろにいるシャマルを解放した。
その瞬間に夕君に光の帯が巻き付き、シグナムの剣が首筋に当たり、ヴィータのハンマーが構えられた。

「おいおい、バインドと得物のヤバい方がこっちに向いてるぜ?」
「シグナム。剣を収め、ヴィータも、ザフィーラもな」
「しかし、」
「気にするなよはやて。コイツらにとっては当然の行動だ。むしろ安心しろ」
「……夕君に危険はないよ。剣をおろしてくれるよな?」
「……確証は?」
「腕の一本でもやろうか?足でもいいし、いっそ殺してくれても構わんよ」

シグナムと夕君の視線が合う。
シグナムは溜め息を吐いてから剣を下げた。それを切っ掛けにヴィータもハンマーを下げて、夕君に巻かれてた帯も消える。

「貴様…」
「ご理解感謝」
「夕君も冗談が過ぎるって!ほな、ご飯食べよか!夕君作ってくれるんやろ?」
「……任せろ。ハンバーグもメンチカツもソーセージもないけどな」

そう言いながら、夕君は玄関へとテクテク歩いて行った。
話を無理矢理止めさせた私も浮いているが、夕君の後ろ姿を見つめて眉間に皺を寄せているシグナムもなかなかに浮いていた。
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〜よろしい、ならば戦争だ!
諸君私は戦争が嫌いだ!

〜割れてしまった四つの卵
落として割れた卵達。夕君が知っている事は実は結構チートな証

〜手のひらに人
緊張を解すための民間医療。オカルト

〜ラマーズ法
子供を産むときにしていた呼吸法。今はそんなに重要視されてないらしい

〜耳たぶを触ろう
熱いモノを触り、反射的に耳たぶを触れば熱くなくなる。オカルト

〜生首四つ
新鮮で活きのいい生首。はやてのトラウマは確定

〜ハンバーグ
〜メンチカツ
両方ともミンチ肉が使われている

〜ロリータと卵アイス
夢の共演。少女が卵アイスを普通に食べているとおっきなお友達が歓喜する

〜騎士の誓い
騎士が守るべき法律。厳格なシグナムと主はやてによって結ばれた約束事。手前二つはなんとなく、最後の願いが本命

〜腕一本、足一本、心臓一つ
はやてに危害を加えない確証が無ければ、無力化させればいいじゃない


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