小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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夏休み半ば。
まるで使命のように騒がしく鳴く蝉と人を蒸し殺そうとしてるんじゃないかと錯覚する程に地球を熱する太陽。
‐熱された地面から立ち上る熱でスカート捲りは出来るのか?
‐熱気球を考えれば出来ない事はない
‐空気は流動してるし無理じゃないか?
‐暑い
‐暑いと言うから暑いのだ
‐心頭を滅却すれば、火もまた涼し
‐火だるまにでもなれば涼しくなるさ
カット。冷たくなる。

これだけ暑い外を早足で歩きようやく図書館に着く。
扉を開けば、先ほどの世界とは別の世界のように冷たい空気が体を包んだ。
‐ここが異世界か
‐エターナルフォース…ブリザァアアアアアド!
‐え?
カット。何もなかった。

「む、来たか」
「来てやったぞ」

柱に凭れるようにして待っていたのは烈火の将。
‐この暑い時期にまた熱い称号を関するヤツに…

「はやては?」
「向こうにシャマルと共にいる」
「そうか、で要件は?」

珍しく八神家から連絡が来たと思えば、家主である八神では無くてシグナムからの電話だったのだ。
‐あれだろ?裸を見られたから責任トレヨ的な?
‐裸程度で何を言ってるんだか
‐フッ、あんなデカイ脂肪の塊なんぞに興味すらないわ
‐イヤーまったくだわ
‐全然見てナイシ
‐でもさ、よく考えろ
‐何をだよ
‐あなたと合体したい的な事を言われればどうするよ
‐即決即断即答ではやてに報告だな
‐『オッパイもらいますね!』

「おまえと戦いたい」
「カット」
「む…?」
「え?……あー、ちょっとタイム、思考を纏めさせてくれ」

えっと、うん。戦いたい?誰と?誰が?
‐俺とシグナムが?
‐なんでさ
‐あなたと合体したい
‐あなたと合戦したい
‐惜しかったな
カット。意味は百八十度以上違う。

「……えーと、なんで?」
「お前に負けていては、主はやてを守れないだろう」
「いや、お前は既に八神にとって大切な存在であってだな」
「安心しろ。胸を壊すつもりでいく」
「そこは借りろよ!お前の武器で胸を壊されたら死ぬんだけど!?刺さるんですけど!?貫かれるんですけど!?」

思わず荒げてしまった声に気付き、口を抑える。
‐落ち着けよ
‐ほらヒッヒッフー
‐ヒッヒッフー
‐フッハーッ!

「あれか、初対面のアレなのか」
「そうだ」
「アレは奇襲だったのと、ちょっとしたズルだよ。今現在でお前と戦っても負けるね」
「……ダメか?」
「なんでそんなに残念そうなんだよ」
「主の為に剣を振るわなくなってどうも鈍ったような気がするんだ。斬らせろ」
「オイ。前半を大きく覆す本音が漏れたぞ…もっと、こうオブラートか何かに包め」
「なら、そうだな…………お前の血が見たい」
「………わかった。お前の頭がハッピー過ぎるのが悪いんだ」
「確かに今は幸せだが」
「脳内にお花畑よろしく首塚でも並んでるのかね、お前は」
「なんや、夕君来てたんか」

シャマルに車椅子を押されながら登場した八神。
後ろにいるシャマルは今回の話を知っていたのか苦笑している。

「八神からも何か言ってくれ」
「なんやどないかしたんか?」
「シグナムの脳内にお花畑が広がってるのさ」
「………それは、また」
「主はやて、そいつは私のちぶ」
「ヨシ!シグナムサン!キミノネガイタシカニキイタヨ!」

シグナムの口を塞ぎ、片言ながら口を開く。
‐チクショウ!バレてやがった!
‐あれか!あれはこの為の伏線だったの!?
‐あの時点で計画練ってたのか!
‐シット!素敵服の開発を急がねば!
カットカットカット。落ち着きたまへ。まだそうと決まった訳ではない。
‐ヒッヒッフー
‐ヒッヒッフー
‐ヒッヒッフー
‐こんな事なら触ればよかったな!
‐さわった瞬間に生首一つ出来てたんじゃね?
‐とにかく、問題は今だ
‐そう今なんだ
‐このシグナムの口を押さえている左手の事だな!
‐ウッ!オレノ左手ニ封印サレタ触手ガ!
カットカットカットカットカットカットカット。
もう少し落ち着け、マジで。

「感謝するぞ」
「………是非とも忘れてくれ」
「なんや、どないしたんや?」
「八神は気にするな。お前には無いものだ」
「……あれ?関係ないって言われたんよな?なんやろ馬鹿にされたような気がするんやけど?」
「大丈夫だ、問題ない」

お前にも未来はあるさ。












「で、わざわざ管理外惑星に連れて来られた訳だな」

俺はため息を吐きたい気持ちを精一杯抑えたのだが、出てしまう。
‐帰りたいよ!
騎士の鎧…というより服に似た鎧を着たシグナムは剣を構える。
‐変身シーンとかなかった
‐裸とか一切なかった
カット。

「安心しろ。痛みを感じる前に……………………止めるさ」
「間が開きすぎだ」
「止めるように努力する」
「確定させろ」
「止めない」
「否定された!?」

もうヤだよこの騎士。相手をデュラハンにする気しかないよ。
‐痛覚遮断
‐身体強化及び治癒魔法行使
‐格上相手だ
‐死にはしないだろうが油断するな

「では、行くぞ」
「あい、」

口を開いた瞬間にその口に鋒が飛んでくれば、誰もが驚くと思う。俺もその一人だったらしい。
必死で横に転がり、次の攻撃がこないか確認してから漸く恐れながら口を開く。

「殺す気かっ!」
「あぁ」
「否定してくれよ!」
「一度負けた相手に手加減など出来んさ!」
「うぉっ!」

シグナムが剣を振るえば、横から鋒が俺を狙う。
‐鋒が横から来たぞ!?
‐…連結刃か!
‐吼えろ!猿!
‐中範囲解析魔法構築、行使
‐周辺情報整理
‐左から側頭部に向け鋒接近
‐距離をとるか?
‐取ったところでジリ貧だ
‐痛覚は切ってるんだ、突っ込め!
‐いざ、オッパイを触りに!

左からきた鋒を前屈みで避け、目の前を通り過ぎていく刃達を見送る。足に力を込めて、魔力を詰め込み、魔力を破裂させ強制的に前へのベクトルを増加させ刃の網を抜ける。

「レヴァンティン!」
「魔剣かよ!」

炎の魔剣を冠する剣が左上から迫る。
‐回避不可
‐防御不可
‐ならば止めればいい

シグナムの前で踏み込み、足を軸に反転し剣を持つ右腕を右手で掴む。
が、

「ウォオオオ!」

止まらない!
‐左腕で右腕を支えろ!
‐体を後ろに倒せ!
‐僅かに遅らせれるならば前へずらして投げろ
‐一本背負いの要領だ
‐そう!オッパイが背中に付くようにな!

「ウァァアアアア」

シグナムを中空に飛ばし、体勢を立て直す。
‐おぅけー、感覚は覚えた
‐うむ、敢えて言おう柔らかかった!
‐シグナム中空にて停止
‐飛行魔法か
‐スカートでない事が悔やまれる
‐まぁ今も非常に目のやり場が困るのだが

「ふむ…準備運動はこの程度で十分だろう」
「は?」

今までが準備運動?
‐今からは?
‐悪いな…今からが本気だ!

「では、本気でいくぞ!」

直進してきたシグナム。
当たり前のように【目】が追い付くはずもなく、腹部と宣言通り胸部を刻まれて俺の意識は落ちる事になる。











「だから言っただろ」
「……すまない」
「びっくりしたわ。突然シグナムから慌てて呼び出されるもの」
「……………すまない」

シャマルの回復魔法に包まれながら愚痴を垂れる。シグナムもシグナムで少し落ち込んでいる。
‐むぅ回復魔法はこういう式なのか
‐やはり我流で組み上げると乱雑になるからな
‐非常に助かる

「えっと、夕くん?回復魔法が変な形になるから解析魔法を上乗せしないでね」
「あ、うん。ごめん」
「あぁ、大丈夫なんだけどね。うん…」
「魔法で思い出したが、何故魔法を使わなかった?」
「身体強化は使ってたけど?」
「魔力弾は使ってなかっただろう」
「あー……純粋に身体の動かし方を知りたかっただけなんだ」
「……ふむ、ならそういう事にしておこう」


そういう事にしておいてくれ。


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〜エターナルフォースブリザード
詠唱は様々で、長いほど力も増すがこの単語だけでも結構な効力を放つ。絶対零度を相手に叩きつけ、身体と精神を一気に凍らせる事が可能。相手は死ぬ


〜私のちぶゲフン
バレていた

〜吠えろ!猿!
真っ赤な髪の刺青元副長、現隊長が使ってた刀

〜下ネタ
次からは多少控えようと思う。きっと思うだけで結果は散々

〜夏休み
御影君の生活上関わるのははやてと近所の商店街の方々、プレシアからくる愛娘観察記ぐらいしか書く内容がない。
作者はもうなんか、はやてさん有利過ぎて笑う、とかなんとか

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