小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


「助けて副委員長!」
「帰る」
「ちょ、頼むって!今回の宿題難しいんだって!」
「アレを難しいと言うなら、教科書とにらめっこでもしとけ」
「頼むって!一生のお願い!」
「お前は何回来世に迷惑をかけるつもりだよ」

鞄を席に置いて座る。
‐すでに放課後で帰る生徒もいるというのに
‐まったく

「おぉ副委員長教室やるのか、タイム俺も参加する」
「私の席もあるよね?」

わらわらと集まる生徒を鬱陶しく思いながら、筆記用具とノートを取り出す。
‐あぁ鬱陶しい
‐いぃ鬱陶しい
‐うぅ鬱陶しい
‐えぇ鬱陶しい
‐ビィヤァァウマ゛イ゛ィィィ
カット。

「何がわからない?」
「全部」
「帰るわ」
「落ち着けって、マジだから!」
「お前は冗談と書いてマジと読むんだな?絶対にそうだろ?」
「本気と書いてマジと読む」
「おいおい副委員長、そんな事も知らないのかよ」
「やっぱ帰るわ」
「マジでごめんって、謝るから、ごめんって」

まったく、こいつらは何がしたいんだ。
‐理解したくない
‐子供特有だからな

「で、今回の宿題だが……5、98、45°」
「ちょっと待って!」
「なんだよ」
「どうして解答だけなのよ!」
「解答さえあれば式は導けるだろ。頑張れ」
「あなたの感覚で教えないで」
「俺の感覚で教えられたくなかったら、他に頼め。俺は別の人間の感覚なんてわからないぞ」
「ここまでテンプレ」

ご苦労。さてわからないところを明確にしよう。
‐まったく子供はこれだから楽しい
‐すぐに伸びるしな
‐すぐに落ちもするけどな
カット。









「こんなモノか?」
「さすが副委員長。頼りになるわ」
「手紙として出す気か」
「意味が解らないよ」

‐僕と契約して、
‐カット
カット。

「それじゃ俺は帰るぞ」
「サンキュー、解らないトコでたらまた頼むわ」
「是非とも先生の話をよく聞きなさい」
「ハイ先生」

誰が先生だ。誰が。




「御影君」
「……月村か。帰ってなかったのか?」
「うん、本を貸したくて待ってた」

別に普通に貸してくれればいいものを。
‐机に置いとくとか
‐休憩時間に渡すとか
‐勉強に食い込んでとか

「御影君って頭よかったんだね」
「……聞き方によっては結構失礼な事言ってるぞ」
「御影君ならわかるからいいよ」
「…他はわからんだろ」
「今喋ってるのは御影君でしょ?」

それはそうだ。
‐一本取られたな
‐ついでに座布団でもプレゼントするか?
‐すずかたんの座布団になりたい
‐素足とスベスベな肌が
カット。

「この前…言い損なった言葉を言わなくてよかったよ」
「この前……?」
「思い出さなくていいよ。忘れてるなら、うん」
「?」

この前…月村と話したのは結構限られてるから思いだそうと思えばすぐに思い出せそうだけど。
‐小説引用?
‐図書室?
‐世間話?
思い付かない。ならいいか。

「で、これが本なんだけど」
「…伝記?」
「この前の図書室でこういう本も読んでたのを見たから」
「よく見てるな」
「えへへ……あ、それでね、この本なんだけど、ゆっくり読んでほしいんだ」
「ゆっくり?あれか、一分一文字ペースとか?」
「そういう事じゃなくて…ちゃんと読んでほしいの」
「本を読むのにちゃんともちゃんこもないだろ、おーけー睨むな。頼むから睨まないでくれ」
「感想も聞くからね?」
「おーけー、大丈夫だ。御注文通りゆっくり読むさ」

その後再三注意を促した月村は重ねて注意をしながら帰路についた。
‐なんだったんだ?
‐わからん
‐俺はすずかじゃないし
‐今すずかたんに成れるなら
カット!その思考ダメ!絶対!












「………、ザフィーラか」
「起こしたか?」
「いや、少し考えてた」
「…何を?」
「はやてを完全に救う方法」

パンパンと砂を叩き落として立ち上がり、後ろにいるであろう青い獣に応答する。
ポケットに入った錠剤を取り出して噛み砕く。
‐原生生物沈黙
‐リンカーコア露出

「いい方法は思い付いたか?」
「いんや。情報が少なくてなんとも言えん。闇の書本体に解析魔法を掛けたらどうにかなるかもだが」

左手を本に伸ばせば、ふわりと遠ざかる。
‐本に拒絶されるなんて
‐本中毒者としては嘆かわしいな
噛み砕いた錠剤を喉に通して、再度ポケットを漁る。

「ん…シャマルに栄養剤が切れたって言っといてくれ」
「またか…消費が早くないか?」
「気のせいさ。用法用量は守ってるつもりだ」
「……嘘だな」
「本当さ。俺が算出した結果の用法用量だ」

‐間違ってる訳がない
溜め込んだ数個のリンカーコアを闇の書が蒐集し、一段落。

「今ので何頁だ?」
「……8ページだ」
「先は長いなぁ。もう一踏ん張りしますか」
「少しは休め」
「休んでるさ」
「……主が悲しむ」
「悲しむはやても永遠に見られなくなるぞ」
「…無理はするな」
「させたくなけりゃ、シャマルに伝言よろしく」

新しく転移陣を敷く。赤黒い縁に淀んだ黒の中身。

「んじゃ、リンカーコア溜めたらまた呼ぶわ」
「おい!」

ザフィーラの声など聞かずにズブリッと転移陣に入り、新しい世界へ移動する。


「おーけー、ムカデもどきども。手前らの天敵が来てやったぞ。その命、はやての為に使われろ!」

黒い魔力弾と同色のバインドが彼らを覆い、そして…

「…半分は食べろ………アンヘル」

赤黒い触手が彼らの半数を消滅させた。




************************************************
〜ビィヤァァウマ゛ヒィィィイイ
卵割り機は神回らしい。ちなみに、「ビールうまい」をしっかりと発音するとこうなるらしい。作者は未確認

〜副委員長教室
面倒な宿題やテストがあると半強制で開かれる放課後の勉強会。御影君の周りにいるクラスメイトがよく参加する。御影君自身もそれほど嫌という訳ではなさそう


〜モブとモブ娘
ABCの三人組。Aが馬鹿、Bが普通、Cは幼女の御影君の友人。いろいろと副委員長に頼ってたらいつの間にか御影先生に変わってたらしい

〜栄養剤
錠剤。
御影君がビニール袋に入れて持ち歩いてる最低限の栄養素。現在の御影君の主食。
もう少し味にバリエーションがだな…
とは御影君談。用法用量さえ守っていれば悪影響はない

〜ムカデさん達
彼らは犠牲になったのだ

-27-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st<初回限定版> [Blu-ray]
新品 \6600
中古 \3500
(参考価格:\8800)