誰か詳しいことを知る人間がいるなら是非私に教えてほしい。
もう自分ではなんやよく分からん事になってるんや。
どうして、夕君の膝の上に私が居るの?
膝枕とかじゃなくて、後ろから抱き締められてる訳なんやけど、今一どころの話じゃなくて、もうなんて言うか、さっぱりわからん。
「はやては守るよ」
そんな言葉が耳朶を叩き、抱き締める力が強くなる。
すごく安心するんやけど、やっぱりこう物足りない感があるわけで。
ソレに察したのか、夕君の顔が私に近づいてくる。
私は緊張しながら、自分の緊張を解くために軽口を準備する。
「もしかして、夢なんちゃう?」
「セェェェエエかいぃいぃぃぃぃ!」
「……………………」
目が覚めた。二重の意味で目が覚めてしまった。
当然のように私は横になって寝てる訳で、
隣には夕君どころか誰も居らん訳で、
こう、なんと言えばいいのだろうか……、
「……ぅぁぁぁぁぁぁぅぅぅぅぅ………」
珍しく、朝一番の言葉が寝惚けた【おはよう】などではなく、もうなんとも言えない恥ずかしさで飾られた唸り声だった事は誰も知らんでいいと思う。
妙に甲高い声だった夢の中のアイツがケタケタ嗤らっているような気がしてそれもまた私を唸らせる原因になった。
「夢とは人間の深層心理、あるいは心の記憶によって成り立っている。つまり、夢というのは少なからず現実であり、少しばかり自分が想像した映像であり感覚だ。強い印象があればソレに従い脳が処理を開始する。その断片を無理矢理物語のように纏めたモノが夢だ」
「……随分と真面目に応えてくれるんやね」
「だって真面目に答えないとお前が怒るだろ」
「まぁそやけど……こう、ちょっとは冗談を混ぜて欲しかったというか」
「夢なんて妄想だ」
「また実も蓋もない…」
「巳が二つもあれば再生の象徴さ」
確かに夢ってなんや、とは聞いたけどここまで真面目に応えられるとは思わへんかった。いや、冗談十割の返答も聴いたけど。
そんな軽口を叩いていた彼はヘラリと笑い、持ってきていた本に眼を落としている。なんでも、なかなかに考えさせられる本だそうで一文一文を噛み締めて読んでるらしい。
…………、夢なんてなかった。うん、今日は夢を見る事もなく起きた。深い眠りやった。
「…………病気みたいやなぁ」
「治療が必要なら応相談」
「結構です。というか処方箋もないやろし、セクハラされそうやし?」
「失礼だな。脚を撫で回すだけだ」
「ダウト!」
視線は本から動いてないのに、夕君はしっかりと応答する。
「……ちょっと本取りに行ってくるわ」
「付き添いは?」
「大丈夫、必要なら呼ぶわ」
「はいはい」
手をヒラヒラと振って再度本に没頭するコイツ。もう少し構ってくれてもいいんじゃないか?なんというか、最近冷たいような気もするし。
いや、そもそも夕君に好意を抱いてるのは私であって、夕君が私に好意……は抱いているだろうが、なんだろうか、こう……
「だぁ!むしゃくしゃする!」
「大丈夫か?本が取れないんだな」
「は?」
いつの間にか隣にいた少年。銀髪にオッドアイ、あらやだイケメン。
童話から出てきた王子様を絵に書いたような……。
「ほら」
「はぁ、どうも」
「気にするなよ!」
とにかく笑顔が素敵なイケメンである事はよくわかった。ただ、なんというか、笑いすぎ?何がそんなに楽しいのか……。
「図書館はよく利用するんですか?」
「いや、今日はたまたまかな」
「へぇ、因みにナッシーに進化するん?」
「?」
「いや、忘れて」
笑顔は素敵だ。顔も十全だといえる。
勿論、コレとアレの顔を並べられて、どちらがカッコいいですか?と問われれば当然のようにコレの方がカッコいい。
「車椅子は辛いだろ?俺が押してやろうか?」
「いや、結構です。付き添いも待ってるんで」
「気にするなよ」
気にするとか、せぇへんとかじゃない。必要があるなら頼むし、必要ないから頼まんわけで。
「なら、あの席までお願いします」
「はい、姫様」
かと言っても他人の好意を無駄に断る訳にもいかんし、とりあえず夕君に任そう。こういう人間の対処は得意そうやし。
そして、そういう役者みたいにするんやったら仰々しくやればええのに。変に羞恥心あるから微妙な感じに……。
「車椅子って辛そうだな」
「そうでもないです。周りの人も助けてくれるし、家族もいます」
「家族…ねぇ」
なんやろ、家族になんかあるんかな?人の家族に訝しげな声を出す程度に思い入れでもあるんか?
他人の家族は興味ないけど、私の家族に文句をいいたいだけならやめてほしい。
「ん…先客?」
「いや、コレが付き添いです」
「……男?」
どこからどう見ても男だ。
彼が女に見えたなら……眼鏡外してカツラを被らせてしっかりと化粧もすれば、可愛くは見えそうだ。いや、どうせ拒否されるんやから、想像だけで抑えとこう。
「夕君?」
「…………」
あれ?反応せぇへん。……?
「ユッウリーン」
「…………」
「あれ?大丈夫?」
「…ん、はやて、か?」
「なんや、大丈夫か?」
「……大丈夫、…大丈夫。ただ寝てただけだ」
……。ふむ。
「あぁ、すいません。付き添いの気分が」
「なんでテメェがここに居やがる!」
「………ァ?」
「すずかと仲良くした後ははやてか!?お前もまさか転生者か!?」
「…………なんだ、またお前か」
「こっちの話を聞け!」
「転生者?意味がわからないけど……」
「嘘じゃないだろうな!」
「とにかく、静かにしてくれ、ここは図書館で今日は司書さんだ」
「チッ……行こうぜはやて」
「いや、なに言うとるん?」
「こんな根暗野郎ほっとけばいいだろ?」
「笑顔が素敵な人。私は付き添いが気分悪いのに放っていくような人間やないんよ……夕君大丈夫か?」
「大丈夫だ」
「ほら、コイツも大丈夫って」
「黙っとれド阿呆。押し売りやったら他掴まえてやっとき」
つい出てしまった言葉に少しだけ後悔する。もう少し毒を混ぜればよかった。
微妙にフラついている夕君を支えながら図書館を出る。後ろには笑顔が素敵な人が固まっている。
第一、自分の名前を明かさずに他人を名前で呼ぶとはどういう教育を受けたのだろうか。
「悪い、八神」
「ん、気にせんとき」
「いや、ちょっと、落ちる」
「え、うわ!?」
私に凭れるように倒れた夕君。寝息が聞こえるという事は、眠ってしまったんだろう。
微妙に体が熱い……風邪なのだろうか。えっとこういうときはシャマル?いやシグナムに連絡して迎えに来てもらった方がいいんやろか。
微妙に寝息が耳に当たってくすぐったい。落ち着け、彼は病人かも知らんのや。だから自分の欲求の為にシャマル達を呼ぶんを遅らせるなんて、していい訳があるのか?いや、ない!
「……んぅ…」
やっぱりもうちょっとだけこの現状を楽しむ事にする。うん、シャマルを呼ぶんはそれからにしよう。夕君が微妙にエロい声を出すのが悪い。夕君悪い、私悪くない。
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〜黙っとれド阿呆
関西弁でのスゴミはホントに怖い。発音は
「だぁっとれどあほう」
こういう事を言ってもはやてはマジ女神様
〜たまたま→ナッシー
葉っぱ石で進化するらいし。読者様に言われた
〜巳も二つなら再生の象徴
蛇が二匹、相手の尾を食べて円になったら再生と破壊を象徴してるとか聞いた覚えがあるようなないような。出事は八坂の戰神だったような。
もしかしたらウロボロスと間違えてるかもしれない
〜ウロボロス
蛇が一匹、自身の尾を食べて円になっている図。再生の象徴
〜ユッウリーン!
ハーイ!
今回の犠牲…というか体が強制的に落ちた結果。いま彼ははやての腕の中で睡眠中
〜八神はやて
極稀に一週間ほど野球の練習が出来なくなる病持ち。女神。
最近あざとくなってたり、妄想が駄々もれだったり、妙にませてるのは誕生日に現れた湖の騎士のお陰。
〜湖の騎士
だいたいコイツの所為。過激な事はまだ教えてない