小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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「御影君」
「なんだ?」
「もしかして怒ってる?」
「……というか、ようやく冷静になったというか」
「ホントに嫌いなのね」
「嫌いで済むなら、俺が改善するさ」

 はぁ、と一つだけ溜め息を吐いた御影君は眉間を指でムニムニとマッサージしている。
 なのはちゃん達がどうしてか忘れ物を取りに行ってから数秒後、一気に雰囲気が変わった御影君。

「お人好しね」
「月村だろ」
「アンタもよ」

 頭に思いっきり【?】を浮かべている御影君に苦笑する。
 彼は自分で気付いていないのだが、心底お人好しだ。というより、彼に嫌われている皇君がすごいのだろうか。

 嫌いどころの話じゃないから、今は仲が悪いけど。もしも彼が御影君に嫌われているのなら、恐らくスグに改善されるはずだ。御影君が合わせるだろう。

「ダメだよ、アリサちゃん。気づいてないんだから」
「早く気付かせとかないと、コイツとんでもない失敗するわよ」
「うーん、多分大丈夫じゃないかな」
「……その根拠がさっぱりわからないわ」
「こっちは何の話かさっぱりなワケなんだが」
「アンタって馬鹿よね」
「バニングスさんと比べられると、困る」

 本当に困ったように肩を竦める彼と思わずため息を吐いてしまったアリサちゃん。私はその様子に苦笑しているわけだけど。

「ホントに、コレのどこがいいんだか」
「イイ所もいっぱいあるんだよ?」
「あーはいはい。ノロケは勘弁して」
「ア、アリサちゃん!?ノロケじゃないよ!!」

 思わず叫んでしまう。ノロケじゃない。惚気てなんかない。
 そう、第一彼には名前で呼び合うはやてちゃんがいるわけで、でもそのはやてちゃんは『親友』と言っていて、まだチャンスはあるわけで。

「落ち着きなさい」
「……はい」
「?」

 アリサちゃんの声で落ち着いて、バレてないか確認するために御影君の方を向けば首を傾げていた。
 本当に鈍感だ。今は鈍感さに感謝しよう。

「さて、二人は今から習い事だろ?急がなくていいいのか?」
「と言っても、迎えの車で行くんだけどね」
「その車が見えたから言った訳だよ」

 御影君の言うとおりアリサちゃんのお迎えの車が見える。
 これに乗ってしまえば、御影君と少しの間お別れなのだ。いつもの事ながら、少し嫌になる。

「じゃぁね、副委員長」
「おうさ、成績優秀者」

 当然の様に別れを告げるアリサちゃん。
 私も言わなくてはいけないのだ。また、また会うために。

「またね、御影君」

 寂しさを隠していつもの様に笑んで、私は御影君に手を振る。
 御影君は少しだけ困った様に手を振り返して

「さよなら、月村」

 そう言った。

 私とアリサちゃんは車に乗って、御影君はそれを見送ったのだけど。

「どうしたの?」

 そんなアリサちゃんの声に、私は自分の中の疑問も含めて答えた。

「御影君。何かおかしかった……」
「そう?いつも通りじゃない?」
「違うの、なんて言えばいいんだろう」

 上手く言葉にできない。出来たとしても、あまり言いたくない。
 まるで小説に出てくる死を覚悟した誰かのようだ。なんて恥ずかしくて言えないし、彼が死ぬなんて、あんまり想像したくない。






◆◆

 二人が乗る車が見えなくなる程度まで見て、少し後悔する。
‐もう少しいつも通りには出来なかったか?
‐否だ
‐次があるなら、全て切り落としてからだな
‐応
 深呼吸して思考を入れ替える。

‐空間解析開始
‐人はいない
‐痛覚遮断
‐身体強化魔法行使
‐変身魔法行使、モデル<セネター>
 コキリ、と首を回して息を吐く。

「さぁって、ご主人様の為に今日も頑張るッスよ!!」

 ビルの上まで跳躍して、騎士達が居るであろう方を向く。
 連続で移動し続ければスグにつくだろう。
‐しかし、バカにバレそうだ
‐バレたところで、バカ相手だ
‐否、問題はフェイトにもバレるということだ
‐公開セクハラができなくなる
‐つまり、下着制作を急がなくてはいけないわけだ
 カット。今も後もどうでもいい。








 騎士達が戦うビルが見える。 
 手前で止まっているのには理由がある。

「お互い、駆り出されて大変ッスね」
「……」
「いやぁ、返事して貰えないと辛いんスけど?」
「セネター、いや…お前は」
「落ち着けよ、双子」
「……なるほど、情報の改ざんから全てお前の手の上だったということか」
「そこまで解ってても俺の協力を止めなかったのは、情報提供力を信じてか?ざまぁみろ」
「目の前に腹を貫いた人間が居ても手を出せない気分は最悪だったろう?」
「趣味悪いな。まぁ、仕返しはさせて貰うさ」

 アンヘルに右手を当て、赤黒い繊維で出来た手袋を身につける。
 構えもなく、スグに動ける状態になる。

「先に言うけど、夜天の主はやらせない」
「お前に止めれると?」
「止めるさ。止めないとダメなんだ」
「なら、こんなところで何をしている。知っているんだろう?」
「ッ、」

 跳躍して、仮面の男の肩を踏み台にさらに跳躍する。
 目指すのは騎士達の戦うビル。
 そこにいるのは先ほど蹴った筈の仮面の男。
 バインドが高町にかけられる。
‐間に合うか
‐否、間に合わせる
 左手の甲から赤黒い棒を取り出し、仮面に向かって投擲する。
 完全に後ろからの不意打ち。

 しかし、彼はいとも容易く止める。

「チッ!!」
「まだ、甘いな」

 背後から聞こえた声にゾクリとする。
‐空間解析にエラー
‐隠蔽魔法が使われてる
 カット。スグに否定式を代入。
 目だけで仮面の男を確認して、腕を振るう。
 当然、そんな力のない攻撃が当たるわけもなく。掴まれた腕をキメる訳でもなく投げられた。

「ガッ」
「セネター!」

 受身さえも取れずに屋上に叩きつけられた。
 肺から空気が強制的に出される。
‐空間解析再行使
‐騎士達は、いない?
‐ヴィータだけがまだ残ってる
‐バカもバインドにかかってやがる

「二人!?クッ」
「ちょうどいい。セネター、お前の正体を暴いてやろう」

 仮面の男の片方はカードを取り出し、俺にバインドをかける。
‐バインドを解析
‐解析完了
‐魔力逆循環

「遅いな」

 新たにバインドが掛けられる。
‐バインドを再度解析
‐強化否定式?

「これが、虚空の正体だ」

 蒼い粒子が俺から剥がれていく。
‐強化魔法強制解除
‐エラーエラーエラー
 カット。

「ユ……ウ……」
「どうして、御影君が…」
「チッ、やっぱりバグか」

 言葉が出ない。出す気がない。
 
「お前は、既に蒐集されたのだったな」
「用済みなら離せよ、速攻で噛み付いてやっからよ」

 ガチンと歯を鳴らして意味の無い威嚇をする。
‐魔法行使不可
‐バインド解析完了
‐逆循環開始

「まだお前には価値がある」
「ウォオオオオオアアアアアアアアアア」

 空を飛んできたザフィーラが拳を仮面の男に叩きつける。
 が、シールドで防がれた。

「そうか、もう一匹いたな」
「ザフィーラ!!」
「奪え……」

 夜天の書が光、ザフィーラのリンカーコアが露出された。
‐逆循環完了
‐身体強化行使
 ベキンとバインドを破り、跳躍。

「ウォオオオオオオオ!!」
「黙って、倒れていろ」

 容易く腕を絡め取られ、ビルにまた叩きつけられる。

「ウガア゛ア゛アァ゛ア゛」
「ザフィーラ!!」
「黙ってろ」
「ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
「ユウ!」

 電気をまとったバインドが俺を縛り付ける。
‐クソ!フェイトにして欲しかった!!
‐軽度の火傷確認
‐治癒開始

「闇の書の主よ、目覚めの時だ」
「いいや、因縁の終焉の時だ」

 仮面の男は高町とフェイトに変わる。
 これは、些かまずいかもしれない。



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〜ガールズトーク
 男がその場にいたところでなにがなんだか…

〜ネタのぶち込めない戦闘回
 ここから数話戦闘とシリアスを行ったり来たりします。技量不足が浮き彫りになるよ!ごめんなさい

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