小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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「ユウ!?」
「よう、久しぶりだなアルフ」
「ミカゲ……」
「そう訝しげな表情をするなスクライア、今は敵じゃない」

 非常に不本意ながらな、そう付け加えたユウに呆れる。
 どうやら飛べないらしいユウは赤黒い棒をビルに刺して私達と同じ高度にいる。

「で、コイツ本当に大丈夫なのか?」
「さてね、一応お前さんには負けない程度には強いさ」
「ハッ、じゃぁ試してやろうか?」
「ライト君、今は闇の書さんだよ!」
「ユウも、今は味方なんでしょ?」

 舌打ちをしたライトに比べ、ユウは本当に面倒そうに溜め息を吐いた。
 ユウが左手の指を弾き、同時に朱色の壁が私達を囲む。

「え!?」
「テメェ!何をしやがった!」
「煩い、ちょっと黙ってろ……結界系か、探知機能付きとか是非学びたいわ」
「ユウ、どういうことだい?」
「結界が張られた、それも探知機能付き。だからデコイを数個とここの隠蔽をした」

 満足か?というように自身の魔法陣に触れて瞼を閉じる彼。
 こういった時に彼はとても冷静だ。不思議なぐらい、冷静だ。
 それに相変わらずオカシナ数の魔法展開をしている。普通じゃ出来ないからね、ソレ。

「ここからどうしよう」
「今、クロノが解決法を探してる。援護も向かってるんだけど、まだ時間が」
「それまで、私たちでなんとかするしかないかな?」
「クロノがデュランダルを持ってくるまで、頑張るしかないな」
「デュランダル?」
「あ、えっと」
「おい、話は終わったか?一応言うが、無駄話に付き合える程俺の魔力はないんだぞ」

 ライトの言葉を遮り、ユウが苛々したように声を出した。
 実際多重展開をしているユウの魔力消費はかなり多い事になる。
 しかし、私は知っている。まだ朱色の魔力光であり、その先の黒い魔力光になるまで、ユウは余裕があるのだと。

「そうだね、早く決めよう」

 でも、あの魔力はダメだ。ユウに必ず悪影響を及ぼす。こんな綺麗な魔力のユウがあんな黒色を出せるわけがない。つまり、どこか別の場所から使用しているのだ。ユウのことだから、それこそ命を燃やしてるのかもしれない。
 何故かホッとしているライトを横目で見ながら、私たちは簡単に作戦を立てる。

「そういえば御影君は何が出来るの?」
「セネターに出来ることは粗方。でもあんまり俺を戦力に入れてくれるな」
「役たたずなんだろ」
「……これだけ魔力消費してる人間に戦力になれるか考えてくれ」
「ハッ!オレなら出来るぜ」
「アァソウデスネー、スゴイネー」
「ようやくわかったのかよ!」

 あぁ、もうなんだろうここの空気ってどうしてこんなに混沌としてるんだろう。

「なのはとフェイトと俺は闇の書に攻撃、ユーノとアルフは牽制をしてくれ」
「うん、それでいいんじゃないかな?」
「あと、俺の行動なんだけど」
「戦力外は黙ってろ」
「……それでいい。俺が何をしでかそうと気にするな」

 え?
 それはつまり、どういうことなのだろう。

「俺がお前らの攻撃の射線上に立ってたとしても、気にするな」
「ダメだよ!御影君何考えてるの!!」
「一番安全且生存率の高い攻略法。別に餃子みたいなことはしないさ」
「どうしてココでギョウザの話が出てきたの!?」
「まぁとにかく、俺はお前らの敵ではないけどアイツの味方だ」
「……邪魔するの?」
「邪魔するつもりなら、さっさとこの結界解いてるさ」

 なのはの問いに呆れ気味に答えたユウ。
 今は、敵じゃない。それは、先に進むとどちらかがわからなくなる。

「ま、いいんじゃね?」
「ライト君!?」
「何かあったら、俺がこいつを止める。それで大丈夫だろ?」

 ニコッと笑いまるで問題が無いように話を進めようとするライト。
 ユウの方を見れば少しだけ驚いたような顔をして、溜め息を吐いた。

「決まったか?なら俺が囮になるから任せたぞ?」
「ちょ、!ユウ!!」
「ここの壁は保つようにしてるし、あとは勝手にしてくれ」

 ユウが壁に触れると歪な形の円が出来、赤黒い空間が先に広がっている。
 その中に何の躊躇もなくユウは飛び込んで、そして、円が収縮するように消えた。

「いっちゃった……」
「またあんな危険な事を……」







◆◆

「よぉ、はやて。随分成長したじゃねぇか」
「……」
「無視か。まぁどうでもいいけどよ」

 どうせコイツは八神はやてでさえないのだから。
‐身体は八神はやてだ
‐精神だけどこかに眠っている
‐はやての魔力反応と同じだ
‐つまり、はやては
‐童話の世界というわけだ
 こっちは時間を稼ぐ為のデコイだってのに。

「まったく、完全で瀟洒な従者だってお嬢様を救う事もなかったってのに、不善で洒落てさえない俺がお姫様を救うってか?」

 冗談はやめてくれ。
‐夜天へのアクセス経路不明
‐本、もしくは本体に触れる必要あり
‐つまりオッパイを触ればいいわけだ
‐必要なことだ、仕方ない
 常にかけている身体強化と解析魔法。
 処理はなんとか追いついているし、魔力の余剰もある。
 尤も、コレは先のわからない事象のために保険としてとっておいたほうがいい。

「主の願い……ツキビトよ。お前もそれを願うのだろう?」
「その付き人ってのが俺なら、そうだろうよ」
「ならなぜ私の邪魔をする」
「……残念ながら、アイツが、はやてが俺に願ったことは全人類消去でも世界の破壊でもましてやギャルのパンティでもないんでな」

 グッと拳を作り、夜天を見上げる。
‐もう少しで、もう少しでパンティが見れる!!
‐ギャ、ギャルのパンティおくれ!!
‐目標、対象に接触
‐及び微細解析
‐その時点でのシステム解析と改変可能を予測
‐末端思考にて予測を繰り返し管理局どもより先に八神はやての救出
‐出来るならば【擬似夜天の書】の作成にて事件解決
 無理やりだが、プランの修正も可能か。

「主は、それでも絶望した」
「望みを絶って、オマエを望んだのか」
「全ては主の為。私は、全てを破壊しよう」

 危険思想だことで。
‐スフィア展開
‐擬似的な足場作成完了
‐三次元での移動可能

「ま、俺はオマエからはやてを奪うよ」
「……」
「残念な事に、アイツには来年の夏祭りに行ってもらわなきゃならないんでね!」

 地面を蹴り空中へ跳躍する。
‐足元に魔力弾展開
 出来た弾をさらに蹴り、夜天に直進する。
‐夜天の周囲に魔力壁生成反応
‐展開術式解析不可
 触れればいいんだろうが。

「リャァ!」

 左拳で魔力壁を殴る。
‐アンヘルでの吸収開始
‐魔力反応減少、破壊可能域
 バリン、とガラスが砕けた音が鳴り魔力の破片が飛び散る。
‐破片より魔力反応
‐接触可能領域に侵入
‐破片の術式変換確認
‐接触を危険と判断

「穿て、ブラッティダガー」

‐反応7
‐回避不可、防御推奨
‐接触不可、右手を防御に
‐左手にて刃を一つ破壊
‐同時に右足に魔力弾生成、空間より脱出
‐刃残り6、追尾確認
‐防御可能域
‐防御術式展開
‐術式前方に破裂型の魔法弾生成

「うわっぷ、煙多い」

‐刃の誘爆確認
 衝撃に押されて空中から地面に向かう。
‐身体と地面の距離、角度、体制確認
‐補正完了
‐初めての作成にしてはうまくいった
 ガリガリと音をたててようやく止まる。
 飛翔魔法が無いと、本当に辛い。
‐夜天より魔力反応
‐魔法式展開ミッド式
‐おいおい、相手はベルカの魔道書だぜ?
‐蒐集対象が顕著に出てくるなよ

「コレは、まずいんでね?」
「潰れろ」

‐魔力収縮
‐おいおい、直射型かと思ったら圧縮かよ
‐回避可能
‐防御可能
‐魔力消費比較
 回避か。
‐接近する魔力反応あり
‐速度判別、フェイト・テスタロッサと判断
 え?
‐フェイトたんキタァアアアアア
‐お、落ち着け落ち着くんだダダダダダdddd
‐フェイトより防御魔法展開確認
‐あ、これヤバイ
‐身代わりに入ろうとしてる?

「ユウゥウウウウウウウウウウウウウウウウ」
「マジか。コレは酷い」

‐夜天から魔法弾射出
‐速度計測
‐フェイトの方が早く着くな
‐あー、コレはあれか守って貰う方が楽なのか?
‐楽なんだろうなぁ

「あー、嫌になってきた」

 飛び出してきたフェイトをどけて、左手で防ぐ。
‐解析、術式破壊効果あり
‐なにこれ怖い
 甲に埋まっているアンヘルが鈍く光り魔力の束が徐々に収縮していく。
‐回復おいしいです
‐魔力還元開始

「ユウ!危険だよ!」
「お前の方が危険だって。ハァ……」

 どうやらデコイとして出てきたのに無駄になったらしい。
‐不意打ちとか出来る人間じゃないのかねぇ
‐ヒロイズムにでもおかされてるのか
‐英雄的行動を強いられてるんだ!
‐まぁ実際一人の方が動きやすいとかなんとか

「私達も、一緒に戦うよ」
「だから、ちゃっかり戦力に加えるなって」
「あれだけ色々してて戦力に加えるなって……」
「あれだけ色々して戦力に加えるだなんて……」

 端から見るといじめ以外の何モノでもないよ。
 将来ヒロイズムよりサディズムに目覚めるんじゃね?コイツ。



********************************

〜アァソウデスネー、スゴイネー
 エライネー、ナカナカッタネーとだいたい一緒

〜指弾き→結界展開
 わかりやすいように演出しただけ、いきなりだと色々勘違いされそうだったので

〜冷静なユウリン
 実際思考では挙動不審だったりテンションが高かったり素数を数えてたりで忙しい人間

〜餃子
 あえての料理名。無意味特攻という意味では飲茶でもよかった気がする

〜光「何かあったら俺が止める(ニコッ」
 評価上げ、オレってカッコイイし頼れるわー

〜完全で瀟洒な従者
 お嬢様を守ることがあっても救いに行くようなことはない。ただし忠誠心は鼻から出る

〜ツキビト
 追求禁止

〜夜天「潰れろ」
 直射型圧縮魔力砲撃。防壁破壊効果有り。ミッド式。管理局の誰かが使えたのかもしれない蒐集結果。魔力の束はそれほど太くもないが普通に撃つ魔法砲撃を圧縮している為。アンヘルの吸収対象内。
 9/17「砕けろ」→「潰れろ」に訂正


〜アトガキ
 戦闘描写難しすぎます。
 まぁここから先、戦闘なんて良くて二話、三話ぐらいでしょうがね!!

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