小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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主人公以外に視点移動

◆◆←これで移動させます。


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高町が何やら長期に渡り休みを取っている。体調不良などではないらしい。
‐噂ではスメラギ君も休みらしいな
‐噂にしては声高々と女子達が騒いでたがな
‐ただしイケメンに限られるってか



「別に気にしてなんか無いわよ…」

そんなバニングスの呟きも噂になる程度に彼女が有名だという事を知ったある日。



「ん?フェイトは?」
「あ、えっと、フェイトは今ちょっと出掛けててね」
「…………夕飯前にか?」
「あ、ああ!大事な用事があって…」

このワンコは嘘が下手だ。
元来嘘を吐けるような性格にでもないだろう。

「そうか…そういえばアルフ」
「な、なんだい?」
「お前さんは嘘を吐くと耳がパタパタ動くんだが、知ってたか?」
「な!?なんだって!」

‐本気にしやがった
‐このままいじり倒そうぜ
カット。フェイトが気になる。

「嘘だ。でフェイトはどうした?はっきり言わないとお前が嘘を吐いている時に動く場所を触れ回るぞ」
「そんな所はない!」
「え…?気付いてないのか?いや、気付かない方がいいかもな」

慌ただしく体を確認するアルフ。もちろんこれも嘘なのだけど、言わない方が面白そうだ。
‐体を捻った時のオッパイがいいね
‐いいねボタンはきっと丘の上にあるはずだ!
カット。落ち着け、落ち着くんだ。

「で、肝心のフェイトは?」
「呼んだかな?」
「フェイト!」

我が家の玄関を開けたフェイト。
‐あれ?顔が赤くね?
‐ククク、惚れ薬がついに
‐顔赤いし息も荒いし…
‐つまり
‐発情期か!

「触るぞ?」
「あ、」

了解を得ずに彼女の額に右手を当てる。
少し熱いな…。

「ユウの手…冷たくて気持ちいい…」
「右手なら後で貸してやるから、横になってろ」
「うん……ごめんなさい」
「なんでだよ」
「心配…かけたから」
「気になるなら寝て、さっさと治せ」
「うん…ごめんな、」

気が抜けたように膝から崩れるフェイトを抱える。
‐いい臭いがする
‐弱ってる娘を見るとこうムラムラしないか?
‐しねぇよ
‐真面目に看病するぞ

「アルフ。フェイトをそこにあるソファーで寝かせといてくれ」
「あいよ…心配かけてわるいね」
「主従揃って『ごめんなさい』か」
「え?」
「こっちからありがとうって言いたいんだけどな」

ボソリと呟きながらフェイトをアルフに渡す。呟きが聞こえてたか聞こえてないかわからないがとりあえず布団を取りに行こう。
‐さよなら甘い臭い
‐布団に残り香が付きますように
‐汗かかせるし…うむ
‐看病の礼という事で
カット。当方はそのようなサービスを提供してません。




◆◆

頭がボーッとする。
あれ?私…寝たのかな?

布団がある。熱い…でも体を動かすのも億劫だ。
熱い。
まるで温かい泥に浸かっているような…浸かった事はないけど。

「起きたか?」

ユウの声が聞こえる。
聞こえた方に顔を少しだけずらしてみる。

「あぁ、そっちに行くから。変な体勢になるんじゃないよ」

ため息が聞こえた。
また心配を掛けてしまった。
でも、ごめんなさいって言うと怒るし。

「フェイト、少し触るぞ」

こちらにやって来たユウの冷たい手が額に置かれる。気持ちいい。

「ふむ、寝たら結構下がったな。正確な体温は解らんが」
「手、キモチイ」

置かれた手を掴み、頬に当てる。
ヒンヤリした手が私の体温を少しだけ奪っていく。

「食欲はあるか?」
「…少しだけ」
「ならよかったお粥持ってくるから」

あ、手が離れていく。
キッチンへ消えていくユウは視界の中に入らなかったので瞼を閉じる。

‐アルフ
‐起きたのかい?
‐うん。えっと、まだ調子は悪いけどすぐに戻るね?
‐今日はもう休もうよ
‐ダメ。母さんが待ってる

一方的に念話を切断して呼吸を調える。

「大丈夫。いける」
「何が『いける』だバカ娘」
「あ、ユウ…もう大丈夫だから」
「ほう、お前は心配をかけて悪いと思いつつも更に心配をかけると?」

小さなお鍋を机に置きながら少し怒ったように言うユウ。
だって急がないと。

「集めるにしても体調が悪ければ効率も下がる。何より、風邪のお前を外に出そうとは思わない」
「でも」
「心配をかけられたくないなら、黙って看病されてろ」

立ち上がろうとしていた私の上半身が軽く押され、またソファーの上に戻る。

「お前の母が何を思ってるかなんてわかったモノじゃないが、少なからずお前を想ってるのは確かなんだ」
「………うん」
「わかったならいい。自分で食べれるか?」
「大丈夫…だと思う」

レンゲでお粥を掬い、口に運ぼうとする。
こういう動作をしてようやく理解した。私は弱ってる。

「無理そうなら手伝うぞ」
「ごめんなさい」
「またごめんなさいか。罪を謝らずに感謝してくれ」
「……えっと」
「お前が甘えてきた所で疲れないし、むしろ頼ったり甘えてくれた方が嬉しいってこと」


そうなのだろうか?
本当に?私は彼に甘えていいのだろうか?

「……ホントに?」
「嘘だと思うならお願いしてみな?」
「………お粥が、食べたい」
「レンゲ貸して、少しずつ食べような」

彼は少しだけ苦笑をして私からレンゲを貰い、少しだけ掬ったお粥を口元へ持ってきた。

「ほら、アーン」
「アー……ン」

うっすらと塩味があり、薄いかなと思うけど美味しい。

「ゆっくりでいいからな」
「うん…ありがとう」
「こちらこそありがとう」

自然と漏れた言葉に少しだけ戸惑ったが、体の熱さとは別に胸がポカポカと温かくなってきた。







レンゲが何度か私の口と鍋を行き来した後、お腹が満たされたせいか先程までなかった眠気が私を襲う。

「眠いのか?」
「……うん」
「寝てもいいぞ、というか寝なさい」

頭を撫でられて、気持ちがいい。
私が横になるとその手は離れてしまった。

「…………」
「……あー、フェイトさん?」
「……いっちゃやだ」
「…………………」

咄嗟にでた言葉にユウは何かを耐えるように私の目を反らし、何度か深呼吸をして私に向きなおした。

「どこにもいかない。ここにいるよ」
「……うん。うん」

床に座って、顔を私と同じ高さにしたユウ。顔は嬉しそうに笑っていて、私も少しだけ嬉しくなる。

「手を握るだけでいいか?膝枕とか添い寝とか」
「大丈夫…ずっと握ってて」
「…極めて了解」

冷たかった手が少しだけ暖かくなった気がした。その分私が涼しくなったのかもしれない。
今寝れば、きっといい夢が見れそうだ。





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〜パタパタ動く耳
君は嘘を吐くと鼻が真っ赤になる癖があるんだよ

〜発情期フェイト
風邪。やらしい事はない

〜ありがとう
素晴らしい言葉

〜視点移動
主人公だけだと表現しにくかったので、フェイトの中を文章に。最後あたりで主人公の中はカオス化している筈なので書けるわけがない

〜膝枕
横よりも縦で両手で目を覆ってくれれば幸せに寝れる究極の秘技。ヒギィではない

〜当方はそのようなサービスを提供してません
甘い文章だからと言ってビターなコーヒーは用意できない

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