「まったく、人の見舞いに来て迷惑を掛けるとは…」
「ごめんなさい」
「俺は構わんが、近所迷惑だ。はしゃぐな、騒ぐな、身を弁えろ。わかった人間から部屋に入れ」
「【はさみ】か!」
「はやて、入ってよし」
「え?そういうことだったの?」
「言葉遊びだよ。とにかく近所迷惑だ。全員部屋に入ってくれ」
肩を竦めて三人娘を部屋に招く。
‐ククク、ここが魔窟とは知らずに…
‐いいのかい?ホイホイ着いてきて
‐まったく、無用心だな
カット。無用心なのは俺もさ。
「おじゃまします」
「邪魔をするなら帰ってくれ」
「あー…見舞いします」
「そういうことじゃねぇよ」
「え、帰ったほうがいいの?」
「フェイトちゃん、大丈夫だと思うよ?」
ちょっと落ち込んだ顔になってるフェイトに溜め息を吐いて冷蔵庫の近くに袋を置く。
‐フェイトたんぺろぺろ
‐フフーフ、こんな時の為にここにはサーチャーが張り巡らせてあるのだ!!
‐な、なんだってー!?
‐360°全てから!来客を観察するためにな!!
‐まぁ人が来ないとかでこの前撤去したけどな
‐泣いた、全俺が泣いた
残念、撤去したのも俺だ。
「で、体調不良って聞いたけど?」
「いいか悪いか、どちらかと言えば絶不調だ」
「寝てなくていいの?」
「生憎、一人暮らしでね。自分で動かないと栄養も取れないのさ」
「?…学校を休んでたのって家庭事情じゃなかったっけ?」
月村からの言葉に思わずキョトンとしてしまう。
‐珍しいな
‐ふむ、意識でも変化したのか
‐イイ傾向だと思いたいね
「あ、えっと。その」
「いや、いいさ。どうせいつかは言うんだ。残念な事に月末だけどな」
「五日に言うにしても結構近いけどなぁ」
「まったくだ」
冷蔵庫の中に食材を入れてお茶を取り出す。
人数分のグラスを持って三人の前に置いて、ようやく一息。
「まぁそれほど隠す物でもないし、俺の生い立ちなんてどうでもいいんだけど」
「それでも聞くよ」
「うん」
「私たちが聞きたいんだ」
「ふむ…どこから説明しようか」
自分の生い立ちを思い出して、なるべく話せそうな内容を選んでいく。
‐無いよ!
‐無いな!
‐よかった…いや、悪かったのか
◆◆
「そうだな、とりあえず。遅くなったが、俺は魔法使いだ」
「うん」
「そんなん知ってるよ」
「月村に言ってるんだ魔法少女共」
「あはは…」
「さてさて、どこから話すべきか。俺に親がいない理由なんて在り来たりだからなぁ」
「え?」
「親が…いない?」
思わず言葉につまる。御影君を悩んだように顎に手を置いて唸る。
あぁ、踏み込んだ事を聞いてしまったかもしれない。
知りたいからといって、迷惑に…彼に嫌われるのは嫌だ。
「、ごめんなさい」
「何がだ?」
「嫌な事思い出させたと思って」
「そんな事を気にするのならまだ雲の行き先でも考える方が有意義だ」
カラカラ笑いながら御影君はお茶を飲み干す。
空っぽになったグラスが机に置かれて、御影君は口を開く。
「俺は親に捨てられてるんだ」
私以外に息を飲む音が聞こえた。二つ程。
「結構小さい時…確か生まれてから、多分五ヶ月程度だったかな。ゴミ捨て場にポイだ。今思うと中々にシャレがきいてる」
「なんでそんな笑って喋ってんねん!!」
「笑い事だからな」
「そんなん…」
「まぁ落ち着け、ステイ、はやて」
御影君はいつもの調子で喋る。
顔は少し笑っていて、貼り付けているのか、それとも本当に笑っているのか。
私にはわからない。
「そこからは、まぁ生きるために必死で……んー、この辺りは省く。教育に悪いわ」
「…どんな事、いや、なんか想像ついた」
「なら問題なし」
「えっと、いい?」
「どぞー」
フェイトちゃんがおずおずと手を上げて、それに対して御影君が気の抜けた返事をする。
「ユウの夢に出てきた女の人は?」
「女…?」
「緑髪で、眼鏡の」
「あー、アレか…アレはちょっと説明が面倒なんだが、簡単に言えば俺の師匠だな」
「魔法の?」
「イエス。天才と言われた人間だそうだ。本人は自分の事を一つの事しか出来ない無能様と言ってたがね」
そんな師匠を思い出したのか、御影君はクスクスと楽しそうに笑う。
笑い方が柔らかい。さっきの親の話をしてる時よりも。
「大切な人なんだね」
「そう、大切だった。大切なモノだった」
「……」
「まぁ紆余曲折、山ナシ、谷ナシ、楽ナシな【やたら】な人生を送って今に至る」
過去形、という事は。その魔法の師匠さん、御影君にとって大切な人はもういない。
少しだけ、悲しそうな顔をして、すぐにいつもの調子に戻す御影君。本当は悲しいのだろう。それでも、隠している。私たちが居るから。
まぁコレも全部私の考えた事で御影君がどう思ってるかわからないけど。
「ふむ、少し口が軽かったな。ツマらん人生を話してしまった」
「いや…ありがとう」
「感謝なんてするなよ、恥ずかしい」
「ありがとう」
「あー、もう、やめてくれ」
手をパタパタと振ってこれ以上言葉を言わせない。
少し顔が赤い、本当に口が軽かったと自覚したのだろう。可愛い
「さてさて、会話は最初に、本当の最初に戻ろうか」
「【はさみ】の話?」
「いや、ご飯な話だ。今日は一人鍋のつもりだったんだが、食べていくか?」
そんな御影君の質問に否と答える人間は居なかった。
*******************************
〜【はさみ】
鳩 サブレ みたい
〜【やたら】
夜天 タチ 雷撃 の三人娘
〜ゴミ捨て場にはイラナイモノを
イラナイなら産むんじゃない
〜生きる為に
神様には許されていた行為
〜アトガキ
ユウの幸せを考えるとバッドエンドに直行しました。どうも猫毛布です。
更新遅くなって申し訳ございません。
ユウの過去に関しては、空白期夕編の終盤で全部出し切ります。ご了承ください。あの気持ちのいい変態共が公然と出てくるのは終盤です。私が…私たちが、ガ○ダムだ!!
そういえば、IF√をここに乗せるとか言ってたような気がするんですが、すっかり忘れてます。
まぁ私のサイトに飛べば見れますが、「見にくいよ、毛布。@でIFはよ」という方がいるなら…というといそうなので、ちょうどキリが良くなった次話で投稿しときます。
IFな話なのですが、雷は裸Yシャツ、堕天使はノーマルパジャマ。吸血姫どうしようか悩んでたら、ラップドレスという素敵服を見つけました。さすがにベビードールはやり過ぎなので、妄想の膨れ上がるそちらに移行します。
ハッ!?私はいったいナニヲ・・・!!