小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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―少年、世界は好きかね

 少年と呼ばれた子供は無表情で首を振った。

―そうか、私は世界が大好きだ

 声の主は笑ってそう言った。

―世界が好きすぎて、ゴミを撤廃しようと思えば、自身がゴミ扱いだ

 声の主の笑い声が部屋の中に響く。

―いいかい、少年。君も私も、家族ではない。ゴミに家族などありはしない

―ならばだ。ゴミを何故拾ったのか?答えは簡単だ

 声の主は子供に顔を近づける。
 そして囁いた。

―私を利用しろ、少年。私は君を利用する







「―――ッ……」

 目覚めは最悪の一言だった。
 いや、最高に、最悪だ。これ以下などなかった。

 積まれていた本が辺りに散らばり、頭の中では声の主の爆笑が木霊し、そして今の部屋の中にはチャイムが鳴り響いている。
‐来客にしては早いな
‐まだ走る時間にも成ってない
 怠い体を鞭打ち、扉を開く。

「……ミカゲ」
「スクライアか。どうした?こんな早くに」
「助けて!!」
「だが断る」

 扉を閉めて、俺は何も見なかった。
‐チャイムが連打されとる
‐扉を叩くな
 一度だけ溜め息を吐いて、もう一度扉を開く。

「ミカゲ!ひどいじゃないか!!」
「こんな時間に来るお前は酷くないのか?」
「……ゴメンなさい」
「よろしい。とにかく部屋に入ってくれ」

 どうやら真面目な話らしい。
‐まぁ予想はつくが
‐まったく、面倒だな
‐ショタキタァアアアアア!!
‐誰かコイツを刻んで
 カット。







「で、どうした?」
「…………」
「……」

 顔を洗うとか、色々していて五分程度の待ち時間があったが…。
‐本を熟読してらっしゃる
‐部屋から溢れ出たものか

「スクライア!」
「は、はい!」
「よし気づいたな」
「あ、…ゴメン。つい本が面白くて」
「いや、いい」
「本当に本が多いんだね…見たところ伝記や神話が多いけど」
「正しく根源を理解するには必要なモノだ…で、要件は?」
「そうだ!!無限書庫の司書として働かないかって管理局の人から言われて、ソレを伝えに来たんだ!」
「オメデトウ」
「ありがとう、なんて素直に言えると思うかい?」
「思ったさ。今思わなくなったけどな」

‐謙虚だな
‐浄土真宗の僧か
‐顕如だな
 カット。

「僕は君の方が適役だと思った。というか、今も思ってる」
「残念ながら。管理局に務めるなんざ悪夢でしか無い」
「クロノに伝えたら、懇切丁寧に説明してくれたよ」
「だろうな」
「そこで僕は思った。この貸しを使って君を助けを借りれるのではないか?」
「だろう……スマン、つまり、えっと?」
「今から、とある管理世界の遺跡探索に行こうと思うんだ」
「すまない、昔膝に受けた矢がな」
「この探索で結果を出せないと僕じゃなく、君が無限書庫の司書になってしまうんだけど」
「何故に?」
「君の能力が優秀過ぎるのが悪い。僕だとある程度の結果を出せないと無理なんだって」
「本当に、管理局なんて潰れればいいのに」

 咄嗟に出てしまった言葉は飲み込む気が無くて、続くようにため息が出た。

「というか、俺が手伝ったら意味無いだろ?」
「何を言うんだい。僕が管理局に『助手を一人連れて行ってもいいか?』と聞いたら向こうは『別にいい』と答えたのだから、大丈夫さ」
「えー」
「ソレに、クロノに聞いたけど。まだ管理局は君の存在を知らないんだろ?なら、君を助手に使ったところで管理局には損得はないよ」
「なんか、スクライアが黒い」
「元を正せば君が悪い」

 そうなのだろうか?
‐管理局が悪い
‐そうだ、全部管理局のせいだ
‐これだから管理局は
 まったくだ。









「して、少年。本当にここは管理世界なのか?」
「もちろん。僕はそう聞いたけど?」
「ほぅ…」

 広がる砂漠。目の前にある石造りの遺跡。
 無限書庫で情報は粗方集めたが…なんだ、ここは。
‐情報一致なし
‐あれか、捨て駒程度に考えられたか
‐未開の遺跡の探索
‐死んでも価値なし、生きて情報を持って変えれば良し
‐まったくもって、クソめ

「本当に二人なのか」
「そうだね。サーチャーか何かで見てるんじゃないの?」
「いや、空間解析したがそういう類の反応はない」
「……まぁいいや」
「いいのか」

 案外打たれ強いのか。
‐ショタ可愛いよショタ
‐マント羽織ってるし
‐GパンとYシャツの俺の気持ちも考えてほしい
‐普段着乙

「第一、管理局みたいに都会に毒された人間にこれほど素晴らしい場所を荒らさるのは困る」
「…スクライア?」
「あぁ!ミカゲならわかると思うがこの遺跡は素晴らしい!」
「お、おぅ…」

 あれ?コイツってこんな性格だっけか?
‐少なくとも、今までは違ったな
‐今も延々と遺跡に関しての言葉が出てるし
‐まるで流れるような演説だ
‐流されてるのは俺か
 カット。

「―ということだよ!」
「スゲーヤッベーチョーカンドーシタワー」
「さぁ行こう!今すぐに!」

 もう本当に、大丈夫なのか?
‐ある意味大丈夫だ
‐末期すぎて手遅れだ
‐どちらかと言えば弟の方が
 カット。姉弟の話はどうでもいい。







「ふむ…なるほど」
「フフフ、アーッハッハッハッハ!!素晴らしい!素晴らしいぞ、この遺跡は!!」
「スクライア、そこに罠があるぞ」
「甘いよ、ユウ。僕は遺跡を愛している。つまりだ、遺跡に関与する罠もまた愛しているのだよ!!」
「いや、その理論は…罠が作動しない……だと」

 アンヘルでの解除余裕でした。
‐先に進むのはやめて欲しい
‐どうしてこうなった
‐どうしてもこうなった
‐もう諦めろよ

「古代ベルカの遺跡か、なるほど、なるほど」
「で、何かわかったのか?」
「素晴しいの一言に尽きる」
「もうお前、早く戻れよ」
「そんな君に返そう、慣れろ」
「アイコピー」

 壁に手を当てて文字を読むスクライア。
‐真面目な顔なんだけどなぁ
‐もう慣れた
‐普段はいじられてるクセに
‐動画にしてクロノに見せてやろうか
 カット。どうせこれが終われば弄るんだ。





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〜顕如
 安土桃山辺りの僧侶。お金が好きだったのはどのゲームだったか

〜本好き
 5分も空き時間があって、隣に本があれば読み始める

〜姉弟
 遺跡マニアの姉と妙にエロい声を出す弟のお話。弟の名前は天才、姉は水嫌い

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