小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

〜ユウ編
 ここから本格的にユウ編を始めます。
 別に話題がなくなったとか、そんなこと一切ないんだからねッ!!

****************************

―ふむ、管理局の奴らか

 声の主は上を向いて呟く。
 瞬間に、剣が屋根を突き破り、斧が柱を折り、槍が床を貫いた。

―まったく、クソ共め

 声の主は目の前で誰かを庇うように立っていた。
 誰かは必死でその行動を止めるも、声の主は軽快に笑う。

―残念ながらやめれないね
―私は悪人だからな。お前のような子供を裏切る事も大切な事さ

 声の主は幾本の剣と槍に貫かれ、斧に片腕を切断されて、血濡れの片手を誰かの頬に当てて呟いた。
 

―私を殺したのは誰だった?













「よぉ!なのは!今年は同じクラスだな!!」
「やったね、ライト君!!」
「みんなも同じクラスでよかったな!!」
「えぇ、そうね」
「おいおい、アリサ嬉しくないのかよ」
「嬉しいわよ。ただ、少しね」
「どうかしたか?バニングスさん」
「別に、なんというか、何とも言えないわ」

‐さすがツンデレさんだ!!
‐キャーツンデレさーん!!
 デレ期の来ないバニングスさん。

「で、はやてはどうなのよ?」
「一応歩けるようになってる。編入届けとかも出してた、時期もいいから今日から来るんじゃないか?」
「いや、どこのクラスか聴いてるんだけど」
「さてね。運が良ければココのクラスじゃないだろ」
「ご尤もね」
「はァ?運が良ければこのクラスになるだろ」
「そうだな、悪かった」
「えぇ、悪かったわ」

 本当に悪かった。
‐言葉の話じゃなくて俺たちの運の話だがね
‐本当に悪い
‐なんか厄介な人間を固めただけじゃね?
‐±0にはなりそうだ
 俺もマイナス側だがな。

「はーい、席についてくださーい」

 担任になるだろう教師が来て、生徒達が自分の席に戻る。

「今日から新しい学年、クラスです。隣に知らない人が沢山いると思いますが、それはピンチではなくチャンスです。友達を増やし、是非とも楽しい一年にしてください。


 そんな新しく、楽しい一年の為に更に新しい子をこのクラスに入れます。入ってくださーい」

 入ってきたのは、背筋をピッシリと伸ばしてどこかギコチナイ、茶髪の女の子。
 黒板に自身の名前を書いて、くるりと振り向く。
 目があった。
‐やばい笑ってるのがバレる
‐落ち着いて対処しろ
 他にバレない程度で手を振ってみれば、どこかギコチナイ空気が和らぐ。

「皆さん、はじめまして。八神はやてと言います。今までは事情で学校に通えませんでしたが、ちょっとづつ、皆に教えて貰おうと思います。どうかよろしくおねがいします」

 ペコリと頭を下げて、顔を上げて笑顔が見える。
 ワーキャー騒ぐ子供達。
‐うっせぇな
‐おいおい、子供にイラつくなよ
‐スメラギも騒いでるのはどういう事だよ
 カット。見てて微笑ましいのだからいいじゃないか。













「なるほどなぁ、なんか面倒な人と都合のいい人を詰め込まれた感じのクラスやねんなぁ」
「そういうこった。よかったな面倒側」
「夕君も面倒側やろ?」
「おいおい、俺みたいに教師の言うことをイエスで応える生徒はいねぇよ」
「ユダで答えそうやけど?」
「銀貨でもくれればそうするさ」
「誰が張り付けられるんやろなぁ」
「アンタら、食事中の話題じゃないわよ?」
「あはは…」

 翠屋にて昼食に誘われたのでのんびりと珈琲を飲む。
‐あれを誘われたと言うのだろうか
‐感覚的には、おいお前ちょっと来いよみたいな感じだったぞ
 カット。そんな事実なかった。
 バニングスさんは裏表のない素敵な人です。

「というか、どうしてお前は珈琲しか飲んでないんだよ」
「うまいだろ、珈琲」
「うまいか?珈琲」
「特にココの珈琲は美味しいよ。詳しくはわからんが飲みやすい」
「オレにはイマイチわかんねぇよ」
「お前にもいつかわかるさ」
「ゆぅ君ってよく珈琲飲んでるよね。好きなの?」
「……好き、なんだろうな。うん、好きだ」
「なんで微妙に言い淀むのよ」
「改めて自分の好みを知ったらこんな感じになった。他意はない」

 カップに口をつけて、残っていた珈琲を飲み干す。
‐随分と影響されている
‐まったくだ
‐依存だな
‐異論はない
 カットカットカット。

「というか、アンタら管理局とやらの仕事はないの?」
「今日はお休みなの」
「私達は嘱託の人間だから、呼ばれないと動けないんだ」
「私は研究員だからねー。今は新しい研究レポート書いてる途中だから」
「ご苦労なこって」
「うん、このレポート内容の大半はユウちゃんが出した内容なんだけど?私は今、とても人を殴りたいわ、殴りたい。眼鏡を掛けて珈琲を飲んでる奴を至極、殴りたい」
「泣くまで殴られるのは勘弁だ」
「オレも今日は休みだぜ!!」
「ん?確かお前って正規の管理局員だろう」
「リンディさんに言われてな。少しの間お前のふごふご」
「ヤダナーライトクンナニイッテルノー」
「……まぁ、休みならいいか」

 お前の、その言葉の後に続く言葉はなんとなくわかる。
‐監視、が妥当か
‐一応敵だったし
‐ロストロギア所持者だからなぁ
‐というかコイツにそんな事喋って良かったのか?
‐ロストロギア持ちだとかは思われてないのか

「ホッ……ライト君何言ってるの…」
「いや、悪い……」
「監視相手に知られるなって言われてたよ?」
「大丈夫だろ。アイツもなんか納得してたし」
「アンタら、なに二人でゴニョゴニョ喋ってるのよ」
「いや!何でもナイゼ!!」
「そ、そうだよ!あ、シュークリーム美味しいんだよ!!」

 本当に大丈夫か?管理局。
‐気にはせんが、内情がボロボロと出てるぞ
‐子供に任せる事じゃないもんなぁ
 まぁ、どうでもいいか。













「……」

 帰宅してようやく一人になった。
‐最近人の出入りが多かったからな
‐まったく、幸せな人生だよ
‐シアワセソウダナ
 本当に、幸せだ。

「ゲホッ……ゲホッ…ッ、…」

 出てきた咳がなかなか止まらず、玄関で座り込む。
 止まらない。
 止まらない。
 止まらない。
 夜天の事件の後に度々起こる喘息に似た症状。
 体感出来る程、自分に忍び寄るアレ。

「ケヒッ……フフ、アハハ……」

 手に付いた液体を見て思わず嗤ってしまう。
 口を拭い、洗面台に向かい、蛇口を捻る。

 流れる透明に混ざる赤を無視して、頭から水を被る。
 ダラダラと背中を伝う水も無視して、目の前にいる眼鏡の少年に忠告する。

「時間が無いぞ。ユウ。お前の願いを守らなければ……急げよ、ユウ」

 目を瞑り、深呼吸する。
 何度も何度も反芻する、あの時の記憶。

 どうしても見えない、太陽の前にいた影。
 降り注ぐ武器達。
 回避方法を選択、選択、選択、選択選択選択選択選択選択選択選択。

「ゲホッ、ゲホッ、ケヒッ、ヒヒ……チクショウめ。わかってるよ。わかってるんだ。早く殺さないと、殺さないと。早く殺したいのはわかってるが、少し待ってくれ、少し、ほんの少しだゲホッ、ゲホッ、」

 もう一度口を拭って、深呼吸する。
 まだだ。
 まだ。









***********************

〜皆一緒のクラスだねッ!
 オヤクソクです。転生者と原作グループが集まる事なんて予定調和ですネ!!

〜イエス→ユダ
 銀貨30枚で売られた聖人の話。売った本人の思惑を詳しく論じる気にはならないが、彼は彼で色々とあったのだろう

〜バニングスさんは裏表のない素敵な人です
 裏表のない素敵な人です!!

〜泣くまで殴る
 君がッ!泣くまで殴るのをやめない!!



〜アトガク
 前回とはネタの入れようのない回です。
 今回から先、ユウ編が始まります。ユウが強盗的なフェイトと仲良くした理由、襲撃犯の正体()、ユウの復讐、どうしてユウがアンヘルを手に入れたのか、できる限り書きたいと思います。
 というか書かないと消化不良ですよね。
 ここから先シリアスばかりですが、ユウ編お付き合いいただける事を願います。

-69-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのは 全5巻セット [マーケットプレイス DVDセット]
新品 \84600
中古 \16979
(参考価格:\)