小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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―殺せ

―殺せ

 声の主達は言う。
 誰かに常に訴えている。

―殺せ
―なぜまだ生かしている
―殺せ

 ずっと、ずっと聞こえていた声。
 7年間、2556日、61344時間。ずっと聞こえていた声。
 男も女も無く、音として、常に聞かされ続けた声。

―殺せ!!
―殺せ!!
―殺せ!!
















「……なんだ、ムッツリか」
「お前は僕を怒らせたいんだな?もしくは殴られたいんだな?」
「やめてくれ」

 休みの日に珍しく来たのは黒髪の管理局員。
‐どうした局員、暇なのか?
‐暇なのはイイ事だ

「で、何用だ?俺も読みかけの本があって忙しいんだ」
「友人が遊びに来たというのに存外な態度だ」
「ソレを言うか。言ってしまうのか友人」
「言うね、今言わなければいつ言うと言うんだ友人」
「来世にでもとってな」

 扉を開けて、彼を家に招き入れる。
‐ショタキタァァァアアアアアアアア
‐これは、つまり、えっと、ハァハァ
‐落ち着け、まずは縛って吊るして
‐アンコウの処理だな
‐人にやるには少しマズイな
 カット。

「飲み物は珈琲でいいか?」
「出されるのか」
「今ので出す気がなくなった…が、仕方ないので淹れてやろうと思う。思い知れ」
「おい、ちょっと待て何をする気だ!!」
「ナンデモナイヨー」
「まぁ君が何もしないのはわかってるがね」
「それはドウモ、フヘヘ」
「よし、待て」
「おいおい、流石に杖を取り出すのはどうかと思うぞ」
「友情とは時に苛烈で無ければ成り立たないものさ」
「苛烈とは時に友情がないから成り立つものなのか」

 結局何もイタズラ出来ずにカップを渡す。
‐どうせするつもりも無かった
‐ミルクがウッ
‐まじでやめろ
‐カット
 カット。

「で、管理局の方はどうなんだ?」
「事務仕事だからな。早々に終わらせてきた」
「ほぅ、それは何故に?」
「君に会いたかった」
「…………」
「いや、なぜ引くんだ?」
「お前って天然だったのか。落ち着いて自分の言った言葉を思い出せ、そして俺に謝れ」
「………アー、すまない。言い方が悪かった」
「わかってくれるならいい」

 落ち着いて椅子に深く腰掛ける。
‐告白キタ!!
‐ショタから告白キタ!!
 カット。男色の趣味はねぇよ。

「俺に用って…?」
「ァー……なんだ、…」
「エラく言い淀むな。言いにくいことか?」
「言いにくいと言われればそうなんだが。アレだ、なぜ君に言おうとしたか頭の中で思い出しているところだ」
「そこからかよ」
「あぁ…」
「俺とお前に接点があまりない、多少の信頼関係はある、俺なら絶対に他言しないと思った、俺の持つ知識を使おうとした」
「全部だな」
「全部か」
「強いて言うなら、最後がイラナイ」
「俺的には最後のモノがある方が楽だったな」

 溜め息を吐いて、カップに口を付ける。
 珈琲の苦味が舌に乗り、香りが口内に溢れる。

「実は、好きな人ができたんだ」
「ブッ」
「おい!!こっちにかかったぞ!!」
「ゲホッ、今のはお前が、いや、悪かった」

 洗面台からタオルを取り出してクロノに渡す。
‐机が悲惨な状態に!!
‐机が珈琲に汚されてる!!
‐黒板とチョークみたいにいうんじゃありません

「好きな人ねぇ」
「君ならいいアドバイスをくれると思ってね」
「俺よりスメラギ君に聞いたほうがいいだろ、こう言う内容は」
「彼に聞いても具体的なアドバイスは貰えないと思ったんだ」
「俺も似たようなモノだぞ、なんせ動くのはお前だし」
「それは…わかってるさ」
「ふむ、俺も恋愛経験豊富とは言えないのだけどな」
「……それは、僕を馬鹿にしてるのか?」
「どうしてそうなった」
「……気づいてないのか?」
「俺に好意を寄せて、尚且つまるで恋人の如く振舞ってる人間がいると?どこにだよ」
「…あれか、君は筋金入りというやつか」
「針金的なモノは入ってるが、筋肉は残念ながら金じゃない」
「あの子らも苦労するな…」
「いや、だから誰だよ」
「それは君が自身で知る内容だ。僕の口からは言えないさ」
「そうかい…まぁどうでもいいがね」

 珈琲を飲んでると思いっきりジト目で見られて溜め息を吐かれた。

「まぁ話を戻そう」
「……なんだムッツリか」
「どうしてソコまで戻した?やはり殴られたいのか?」
「お前の杖の先は尖ってて痛いんだ、突きつけるな」
「わかった、このまま刺せばいいんだな」
「スイマセン、本当にごめんなさい」
「わかればいい。わかっててワザとなら刺すけどね」
「ワザとに決まってるだろ」
「刺されたいのか?」
「なんだ、指したいのか?盤がないから口頭で言う事になるぞ」
「将棋はまだ覚えてなくてね」
「チェスでも負ける気はしないさ」
「ほぉ…僕に勝てるとでも?」

 やけにムキになるな。
‐子供如きが私に勝つと?
‐笑止!!
‐片腹が激痛だわ
‐盲腸じゃね?

「では先手を貰おう、e4」
「e5」
「d4」
「exd4」
「そうだな、ふむ、ただゲームをするのは面白くない、そうは思わんか?Qxd4」
「何を言い出すんだ、Nc6」
「タダでアドバイスをやるのもなんだから、俺に勝てたらアドバイス、俺に負けたら…そうだな。Qe3」
「僕に何をさせる気だ?Be7」
「そうさな。少し情報の提供をお願いするかな、Bd3」
「Nf6。情報?」
「Qg3。そう情報。無限書庫にも無くてな」
「そんな情報を僕が持ってるとでも思うのか?d5」
「思わん」
「おい」
「戯れ程度だよ、e5。別段急ぎじゃないから、ゆっくり探してくれても構わんよ」
「Ng4、何を探せと言うんだ、君は」
「Nf3。……管理局に所属するレアスキル所持者、及びその能力」
「……」
「どうした、お前の番だぞ」
「君は、何をする気なんだ?」
「知りたいか?勝てば簡単に教えてやるよ」
「……その賭けに乗らないといえば?」
「別段どうもしないさ。言ったろ?戯れだって」
「遊戯にしても冗談がすぎるぞ」
「虚ろな戈を持って、遊ぶのさ」
「……残念ながら、僕も立場がある」
「そらそうだ。ご尤も」
「すまないな」
「いや、いいさ…大して変わらんよ」

 少しだけ眉間を寄せられたが、無言を貫かれた。
‐相手の一手を予想
‐予想の場から最善手を選択
‐次の相手の一手を予想
‐予想の場から最善手を選択
‐分割思考の使用は計画的に、ってね














「チェックメイト、だな」
「どうして君はノータイムで指してくるんだ!!」
「思考時間なんて普通いらんだろ」
「いるだろ!!普通は!!どういう思考回路をしてるんだ!!」
「まぁ落ち着け、クロリン。僕に勝てると思うなよキリッ」
「この野郎ぉ。これ見よがしに言うなぁ、君はぁ」
「ハッハッハッ。まだまだ予測が成ってないな」

 こっちもチート持ちだけどなぁ。
‐シー
‐チートじゃないもの
‐曰く、鍛錬すれば誰でも手に入るらしいし
‐空戦魔導士は所持済みなんだろ?

「まぁ色恋沙汰に興味は出ないが、アドバイスになるかわからん事を一つ」
「ん?」
「恋を目で見るなよ。アレは心で見るものらしい」
「……わかってるさ」
「ならいい。恋人と書いて愚者とも呼べる程度に失恋してこい」
「酷いな、君は」
「酷いよ、俺は」

 まぁなんにせよ、彼の言葉が真実かは知らない。知りたくもない。
‐暇つぶし程度にはなったさ
‐さてさて、誰に恋してるのかね?
‐母親じゃね?
‐き、近親そ
‐言わせねぇよ
 カット。
 どうしようもないさ。どちらにせよ。





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〜クロリンの恋
 半分嘘で半分本当の恋愛情事。お相手はあの人なのだけど、ユウリンが知るわけもない

〜恋を目で見るな、心で(ry
 おなじみ、悲劇が有名な作家様のお言葉

〜e4,e5〜
 チェスの棋譜表記内容。詳しく知りたい方はグーグル先生を活用してね!
 分割思考持ちと思考戦争なんて恐ろしくて出来ない

〜鍛錬すれば誰でも持てるチート
 チラッ、とそれっぽいことは書いたけど、ユウは『分割思考』と『マルチタスク』を混同してます。ちなみに三話程度前の最初で落ち込んでたのはそれが原因。
 以前も書きましたが、全くの別物です

〜ゴメンナサイ
 猫毛です。
 なんか何も考えずに書いてたらダラダラと長くなってしまった。ユウ編を進めながら書きたいところを書こうとするとこんな感じになっちゃいます。
 書きたいところまでの繋ぎが難しい。かと言って書きたいところだけ書くと時系列がががggg

-70-
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