小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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「よう文学少女」
「あぁ理系男子。えぇところに来た、狙ったなら私の王子様になってほしいわ」
「生憎、貴女の下へ駆ける白馬は道路交通法、貴女を守る白刃は銃刀法、格好は個人的に嫌いな故、勘弁して下さい」
「そこまで嫌なんかい!」
「はい」
「即答ありがとう、足刀でも食らわせたろうか」
「車椅子少女の足刀って」
‐あれか、座りながらちょこちょこ蹴ってくるのか!
‐膝さえ動けば出来るしな
‐ポカポカ叩かれるぐらいに楽しみだ

近づいてきた八神が横を向く。そのままハンドルを左右対称に回す。
左手は前に、右手は後ろに。かなりのスピードに乗って足を置く部分が俺の足を狙う。

「とうッ!」
「脛っ!」







いつもの座席に座り、涙目で脛を擦る。
いっそ折れてるんじゃね?折れたんじゃね?

「慰謝料を請求する」
「私の精神的苦痛に比べれば大したことないって」

‐結構楽しみながら相手してるクセに
‐それが勘違いだったって?
‐ちょっと絶望してくる

「そうか、なんかごめんなさい」
「いや本気にされても困るんやけど」
「頭の中でずっと八神さんをバカだバカだと罵ってた事がバレてるとは知らずに…ごめんなさい」
「おら、そこで誠心誠意を表す土下座しよか?鉄板はないから楽勝やろ」
「その年齢で焼き土下座強要とか…お兄さん将来が不安で仕方ないんだが」
「お兄さんが嫁にもらってくれるんやろ?」
「ないわ」
「じゃあお兄さんが嫁やね」

‐やったねユウ君!家族が
‐おいやめろ!
‐家族が増えても面倒なだけさ
カット。

少しだけ嫌な事を思い出した。
家族だとか、親だとか。
‐全面的に思考した俺が悪いんだけどな
カット。至極どうでもいい。
バレないように少しだけ息を吐いて、椅子に深く座る。

「で、今日は何しに来たん?いつもなら本とかあるやろ?」
「………あ」
「なんや忘れて来たんか」

本気で呆れたような視線が此方に向く。
‐本はあるよ
‐本の形をした何か、だけどな
‐周りにも本はあるんだけどな
図書館だからな。

「オススメの本とか持ってきてもらおうと思ったけど…大丈夫か?」
「正常だ。洗浄されても清浄にはなれないと自負はしてるけど」
「変な自負はせんでええけど、戦場にでも行けば戦士にでもなれるんちゃう?」
「戦士の後も戦史になれるし戦死も夢じゃないな」

‐言葉遊びと言うか
‐語呂遊びだな
カット。会話を楽しもう。

「ところで、王子様」
「残念、貴女の王子様は公僕の方々に捕まりました」
「…ちなみに罪状は?」
「このご時世に南瓜パンツにマントをしてて、職務質問を受けたところで抜剣。ちなみに模造刀。警棒で胴一閃された後捕縛されました」
「弱い!いや、警察の方が強いんか…余計なことしおって」
「王子様の所持品からは何故か白く汚れた幼女の写真や明らかに成人男性のモノではないだろう下着が発見されました」
「警察いい仕事した!さすがや!」
「王子様は
『私を倒しても第二、第三の御蛆様が』
と言っており、現在捜索中だ」
「完全に悪役やね、御蛆様」

姫を助ける為に頑張る王子様なんて絶対に変な趣味を持ってるに決まってる。
‐死姦嗜好とか
‐勘違いとかな
‐声と髪フェチもいたな
‐是非とも一緒にされたくない
‐向こうも願い下げだろうさ
カットカットカット。

「で、話を戻すが何か用か?文系少女」
「あぁそうそう。今日は暇か?」
「急に忙しくなった」
「暇か。ちょっと本を借りすぎてなぁ」

見たくなかった隣の座席をチラリと見れば、数冊…と言わずに十冊近く並べられた本の山。
‐よく図書館側も貸したな…
‐結構な頻度で利用してるだろうし
‐それに今日は館長さんか
‐なんか納得した


少しだけ顔が引きつるような気がした。

「顔が引きつってるで」

気のせいじゃなかったようだ。







図書館から結構な距離を歩いて到着したのは姫様がお住まいの離宮である。
‐平凡な一軒家
‐地下室とかあるんじゃね?
‐そういった用具とか
カット。至って平凡だろう。

「誰も居らんから上がって」
「なんだ一人暮らしだったのか」

‐こんな一軒家に?
‐えらく金持ちだな
‐あれだろ、誘われてるんだよ
‐今日、私一人なの
カットカットカットカット。
車椅子のタイヤを雑巾で拭い、彼女を後ろから押してやる。

「なんやすまんなぁ」
「おばあちゃんそれは言わない約束だよ」
「なんやウザイなぁ」
「それも言わない約束だ」

前からため息が聞こえたが気にしない。
玄関を抜けて、キッチンへ。整理されてて非常に使いやすそうだ。

「ほな本はその辺に置いといてな」
「あいよ」

テーブルの上に不自然に膨れ上がった手提げ袋が置かれる。手提げ袋は限界を越えている。
俺…もう、ゴールしていいよね。と言わんばかりの手提げ袋である。
‐ゴールしてるけどな
‐人生…というか手提げ袋生のゴールじゃね?
‐はやてに直されそうだな
手提げ袋の戦いはまだ始まったばかりだ!

「その左手、普通に力仕事も出来るんやね」
「ん?いつも使ってるだろ。本読む時とか」
「まぁそうやねんけどさ。結構な重さの手提げ袋を持ち上げられると違和感が凄い」
「まぁ怪我してる訳じゃないからな」
「そうなんか」
「そうなんです」

左腕を肘から指先まで隠すように巻かれた包帯に注視する八神。
何か思い付いたように顔を上げて口を開く。

「実はその左手に世界を壊せるほどの生物が封印されてる…とか?」
「惜しい!」
「なんや全く違っ……なんやて?!」
「嘘だよ。信じるなよ」

ドウドウ。落ち着け。
髪の毛を逆立てていいのは金髪かとある映画監督の作る映画のキャラクターだけで十分だ。


「そういえば、御影君は結構いろんな本を読んどったよな?」
「神話関係と物理数学書。あとは各種小説程度だぞ?」
「本の虫やなぁ」
「失礼な。紙を食べる虫と同じにしないでくれ」
「なら、本中毒者」
「褒めるなよ」

まったく誉めてないねんけどなぁ、なんて呟きは無視しよう。
‐なんせわかってるからな

「で?」
「あぁそうそう。この本やねんけど」

八神が持って来たのは黒い表紙に金の十字架が描かれた…というか埋められた本。ちなみに鍵付き。

「……なんだ黒い方の魔術に関心があったのか」
「魔法少女!マジカル☆ヤガミン!」
「……………」
「私が悪かったからそんな目で私を見んといて。ホンマにごめんなさい」


‐可愛いから何も言わなかっただけなんだけどな
‐変身シーンは規制対象ですか?
‐お供のペットに変態はいかがですか?
‐タラバだ!フーッハッハッハッハッ!
カット。
本を掴んでくるりと回してみる。裏側にも何もなし。

‐微量ながら魔力反応あり
‐解析
‐解析魔法弾かれました
‐鍵での結界と本自体の結界が面倒だな
‐いっそ引きちぎるか?
‐否、危険過ぎる
‐様子見だな
‐マジカル☆ヤガミンが危険じゃね?
‐これ自体に危険があるかはわからない

「八神、この本どうしたんだ?」
「ん〜私もよくわからんねんけど、足長オジサンからの贈り物って言えばいいんかな?」
「足長オジサン?また人間らしからぬ存在と交友関係をお持ちで」
「何でリアルに足がやたらと長いオッサンを想像してるか知らんけど、それほど愉快な交友関係は残念ながらないわ。
一応、私にこの家と更には食費やらなんやらを提供してくれてる人なんやけど」


‐その足長オジサンとやらがこの本を?
‐魔導士なら八神の自衛力を高めるため
‐もしくは厄介払い
‐一般人なら普通に譲渡が考えられるんだけど
‐内包された魔力自体は弱い
‐大丈夫か?はやてに危険は及ばないか?
その時は、その時だ。


「さっぱりわからん」
「私としては、この中から私を守る騎士とか王子様とか、或いはこの本に導かれて悪を倒すとかそんな事を願ってるねんけど」
「どれもねぇよ。マジカル☆ヤガミンの方が確率としては上だ」
「その時は、サポートしてな」
「………微力を最大限に尽くすさ」

その答えに八神は少しだけ停止して満足したように頷いた。









夕方も少しだけ過ぎてご飯時。
八神宅から出て急いで帰る時にソレを聴いてしまった。

【どうか、フェイトを】

よく知っている声が脳内に響く。彼女が願ったのは主の守護。
‐よく出来た願いだ
‐叶えたのは全知全能を謳う神様だからな
‐厄介な能力だけどな
‐相応の力を得たがな
‐俺自身には不相応な力さ

人通りの少ない路地へ入って壁に左手を当てる。
‐転移位置確定
‐魔力循環
‐開放

壁に少しヒビが入り、赤黒い縦に長い楕円が出来上がる。
楕円の中は朱色に染まり、楕円の縁は鼓動するようにビクンビクンと蠢いている。

「相変わらず、グロいなぁ」

呆れたように呟いてから深呼吸をする。
二度目ながらこの中に入るのは緊張…というか怖いのだから仕方ない。一度目は無我夢中だったし。

‐さて向かおう
‐帰れば夕飯を用意しなくてはいけない
‐これだから関わりは嫌いだ
‐自分が望んだクセに
‐自分から突っ込んだクセに
カット。
等身大程ある朱色の円の中へとゆっくり足を踏み入れた。




「あー、今晩はマダム。生憎と招待状が届かなくてね。無断で失礼した事を詫びさせていただくよ」

そんな俺の言葉がかなり広い空間に響いた。


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忘れていて指摘されたのも含めたネタ関係

〜分割思考・分割処理
複数の思考でモノを考える能力。基本的には自己否定して選択肢を増やし、可能性を全て考えたり計算できたり妄想できたりする素敵能力。否定を無視して自己を通す意思を持ってたり、計算できる頭脳を持っていなければ宝の持ち腐れ

〜白馬と剣と王子スタイル
今では犯罪になる。王子スタイルで歩けば職質を受ける

〜焼き土下座
本当に謝る意思があるなら、ただ頭を下げるだけじゃ物足りない筈だ。それこそ焼けた鉄板の上で土下座できる筈だ

〜やったね!家族が増えるよ!
おいやめろ!

〜王子様
マントにふっくら膨らんだカボチャパンツで股間を隠した幼い姫様を救う犯罪者…いや、乙女の夢と浪漫の塊

〜死姦
〜勘違い
〜声と髪フェチ
上から、毒リンゴで死んだ姫、ガラスの靴を落としてしまった町娘、魔女により塔に入れられた野菜娘の相手をした王子達の話

〜髪を逆立てるのは〜
野菜人か【隣の土地神】や【少女的神隠し】や【飛べる豚】や【仮暮らし小人】で有名な映画会社の主人公達

〜変身シーンの規制
愛知には期待している

〜魔法少女・マジカル☆ヤガミン
とある惑星からやって来た喋れる動物っぽい何か(ミー君)と契約して魔法少女になってしまった八神×××ちゃん(個人情報により規制)の話。
出会いが目的で地球に降り立てばよくわからない悪役と敵対してしまったとしたミー君と、そんな事は全く知らずに悪を打ち倒すヤガミン。
ヤガミンは出会いと強制的な別れに涙しながら成長する。
変身シーンが規制されてない事や、そろそろ実写化する事に大きな大人達は不安以上に『日本オワタ』と騒いでいる。



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