小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「久しぶりだぜ…4年ぶりの日本か。」

 空港のを出て少年は呟いた。
 年の頃は17、8位だろう。

 彼は、空港のターミナルからバスに乗り込み、目的地へと向かった。


 バスの表示板に記されている行き先は…『童実野(どみの)町』







 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel1
 『伝説の始まり』







 遊城十代(ゆうきじゅうだい)によってダークネスの本体が倒されてから5年。
 世界は平穏の中にあった。

 アカデミア卒業生達の活躍があり、デュエルのプロリーグは各地で大盛況。
 デュエルモンスターズの人気は世界中で上り調子を続けていた。

 其れは、此処童実野(どみの)町も例外ではなく、連日のように大小様々なデュエル大会が行われていた。





 ――――――





 「ねぇ、霧恵。今日の大会は出るの?」

 とあるカフェのテラスにて寛いでいる、4人の少女。
 どうやら、今日行われるデュエルの大会について話しているようだ。

 「ん〜、今回はパス。少しデッキの調整したいしね。」

 霧恵と呼ばれた少女は、少々申し訳なさそうに言った。

 「え〜残念。霧恵のデュエル見たかったのに〜。」

 如何やら、彼女がデュエルするのを楽しみにしていたようだ。

 「御免ね、次の大会には出るからさ。」

 「約束ね?」

 「ん、了解。」

 彼女達の談笑は続く。

 「そう言えばさ、今回アイツも出るらしいよ?此の前霧恵に言い寄ってたアイツ。」

 「…マジで?あの程度の実力じゃ1回戦で負けるわよ?」

 「『優勝して、霧恵ちゃんと付き合ってもらう〜』とか言ってたらしいよ?」

 どうやら、霧恵にはストーカー紛いの追っかけが居るらしい。

 「「「「…はぁ。」」」」

 実に見事なタイミングで4人同時に溜息を吐く。

 「一応見に行ってみようか?」

 「大会?」

 「ん…一応ね。」

 どうやら、今回は観客になる方向で一致したらしい。

 「それじゃ、行こうか。」

 霧恵の号令で、彼女達は大会の会場へと向かった。
 いや、向かおうとした時だった。

 「霧恵姉ちゃん!」

 1人の少年が慌てた様子でカフェに駆け込んできた。

 「君は…如何したの?大会に出るんじゃなかったの?」

 「それどころじゃないんだ!
  会場にハンターKって名乗る奴が現れて、大会が始まる前に出場者達をデュエルでコテンパにしちまったんだ!」

 「何ですって!?」

 「それで、『出場者を倒したのは俺だ、大会の優勝賞品を渡せ』って。渡さないなら会場を完全に破壊するって。」

 其れを聞いた、霧恵の顔が一気に怒りの表情へ変わる。

 「何て奴なの…皆、会場に急ぐわよ!そんな無法者はあたしが叩きのめしてやるわ!」

 今度こそ、彼女達は少年と共に会場へと向かった。





 ――――――





 「…何なの此の人だかり?」

 会場に着いた霧恵の最初の一言が此れだった。
 大会は、ハンターKによって無茶苦茶にされたはずである。
 しかし、今の状況はまるで、大会の決勝戦でも始まろうかという状況にある。

 此れには、先程の少年も目を丸くしている。

 「なぁ、如何したんだ?ハンターKは?」

 少年は近くに居た自分の友人に問いかけた。

 「今からデュエルが始まるんだ。お前が霧恵さん呼びに行った直後に知らない兄ちゃんが現れてさ、
  『俺も大会に出場する。優勝賞品は俺を倒さなきゃ手に入らないよな?』って言ってデュエルを申し込んだんだ。」

 霧恵達は、人ごみを掻き分けて最前列までやってきた。

 フィールド上で対峙する2人の男。
 一方は長身で横幅もあるごつい感じの男。
 恐らく、こいつがハンターKと言うのだろう。

 もう1人は、残念ながら霧恵達からは顔が見えない。
 たが、霧恵は大体自分と同じくらいの年だろうと考えていた。


 「ふん、何処の馬の骨か知らねぇが、俺様にデュエルを挑んだことを後悔させてやる。」

 「そうかい。ま、精々楽しませてくれよな。」

 荒っぽいハンターの言葉に、あくまで冷静に返す少年。
 2人の間に見えない火花が散っているようだ。

 「生意気言いやがって。行くぜ!」
 「来い!!」

 「「デュエル!」」

 謎の少年・LP4000    ハンターK・LP4000


 「先攻は貰うぞ、小僧。ドロー。…デーモンソルジャーを攻撃表示で召喚!」

 ソリッドビジョンがモンスターを実体化させる。

 デーモンソルジャー:ATK1900

 「カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 「俺のターン、ドロー。俺はツインヘッド・ワイバーンを攻撃表示で召喚!」
 ツインヘッド・ワイバーン:ATK1700

 「更に魔法(マジック)カード『竜の怒り』、
  此の効果でツインヘッド・ワイバーンの攻撃力は此のターンのみ500ポイントアップする!」

 「何だと!」

 「バトル!ツインヘッド・ワイバーンでデーモンソルジャーを攻撃!」

 基本攻撃力はデーモンソルジャーが上だが、魔法の効果で強化されたツインヘッド・ワイバーンの攻撃力は2200。
 当然、デーモンソルジャーを戦闘で破壊する。

 「デュアル・フレイム!」

 「ぬおぉ!!」
 ハンターK・LP4000→3700

 「ぬぅ、トラップ発動!『暗黒の復活』此のターンに破壊された闇属性モンスターを攻撃表示で特殊召喚する。
  舞い戻れ、デーモンソルジャー!」

 「ぬぅぅん!」ATK1900

 「中々やるじゃん、カードを1枚伏せてターン終了だ。」


 「アイツ、結構やるわね。」

 霧恵は少年に対しての感想を正直に述べた。
 先手を取ったのは勿論の事、恐らく今のトラップの発動まで予想してたのではないか?
 そう思わせる何かが少年にはあった。


 「俺様のターン、ドロー!行くぞ小僧。デーモンソルジャーをリリースし、レジェンド・デビルを召喚!」
 「シャァァァ!!」
 レジェンド・デビル:ATK1500

 「更に、魔法(マジック)カード『ダーク・ソウル』。場の闇属性モンスター1体の攻撃力を此のターンのみ800ポイント上昇!」
 レジェンド・デビル:ATK2300

 「行け、レジェンド・デビル!ツインヘッド・ワイバーンを攻撃。」

 「甘い!伏せカード、オープン!」

 少年は焦りもせずに攻撃に対処する。

 「『攻撃の無力化』!此の効果で、攻撃を無効にしバトルを終了させる。」

 「くぬぅ、小癪な…カードを1枚ふせてターン・エンドだ。」


 「おい、アイツ強いぞ。」
 「あぁ、何手も先を読んでる感じだ。」
 「もしかしたら、勝つんじゃないか?」

 周囲のギャラリーは、少年のデュエルの腕前に舌を巻きつつあった。
 未だ始まったばかりだが、デュエルの主導権は完全に少年が握っていたからだ。


 「俺のターン、ドロー。ツインヘッド・ワイバーンの効果、ドラゴン族をアドバンス召喚する場合、
  こいつ1体で2体分のリリースとすることが出来る。」

 「何だと!?」

 「ツインヘッド・ワイバーンをリリースし…出でよフェルグラント ドラゴン!!」
 「ギョォォォ!!」
 フェルグラント ドラゴン:ATK2800

 「こ、攻撃力2800だと!?」

 「バトルだ!フェルグラント ドラゴン、レジェンド・デビルを攻撃、『シャイニング・ブラスト』!!」

 「ぐぁぁぁぁ!!」
 ハンターK・LP3700→2400

 「舐めるなぁ!!トラップ発動、『ダークチャージ』!俺の場の闇属性モンスターが戦闘で破壊されたとき
  デッキから『ダーク』と名の付くカード1枚を手札に加える。俺は『ダークフュージョン』を手札に加える。」

 「案外、しぶといな。2枚カードを伏せてターンを終了する。」



 「…圧倒的ね。まるで、勝負になってないわ。」

 「でも、ハンターがこのまま終わるとは思わないよ。」

 少年の言葉に、霧恵は軽く頷いた。

 「そうだと思うけど、ハンターとやらが勝つことは無いわね…」

 「分かるの?」

 霧恵はデュエルフィールドを見やり…

 「分かるわよ…見ていればね。」


 「俺様のターン。魔法(マジック)カード『ダークフュージョン』。手札の『デーモンの召喚』と『磁石の戦士γ』を融合!
  来い!E-HERO ダーク・ガイア!!」
 「フゥゥゥ…」
 E-HERO ダーク・ガイア:ATK?

 「攻撃力不明のモンスターか…」

 「その通り、こいつの攻撃力は融合素材モンスターの攻撃力の合計値。つまりこいつの攻撃力は4000!」
 E-HERO ダーク・ガイア:ATK4000

 「さらに魔法(マジック)カード『地砕き』、てめぇの場の守備力が一番高いモンスターを破壊するぜ。
  もっとも、モンスターは1体しか居ないけどなぁ!!」

 ピシ、バリィン!!

 「く…フェルグラント ドラゴン…」

 「へっへ〜、此れで終いだな。」

 「そいつは如何かな?トラップ発動!!『竜の逆襲』。俺の場のドラゴンが破壊されたときに発動。
  手札を1枚墓地に送り、墓地のレベル4以下のドラゴンを特殊召喚する。
  俺は、ツインヘッド・ワイバーンを守備表示で召喚。」
 ツインヘッド・ワイバーン:DEF1600

 「ふん、何を出そうが無駄なことよ。バトルだ、ダーク・ガイアの効果発動!
  ダーク・ガイアが攻撃するとき、相手のモンスターは全て攻撃表示となる!」

 「ちぃ…!」
 ツインヘッド・ワイバーン:ATK1700

 「消えちまいな、ダーク・ガイアの攻撃『ダーク・カタストロフ』!!」

 「墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果!此のカードを除外することで相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。」

 ―ビシィィィ!

 「やるじゃねえか、だが…速攻魔法『ダーク・ストライク』。
  此の効果で、ダーク・ガイアは此のターン、もう1度攻撃できるぜ!」

 「何ぃ!?」

 「喰らいな!『ダーク・カタストロフ』!!」

 ―ズガァァ!!

 「うわぁぁぁ!!」
 謎の少年・LP4000→1700



 「そんな、一瞬で逆転されちゃった。」

 僅か1ターンでの状況の逆転。
 だが、霧恵は少年がピンチになっているとは思わなかった。

 「大丈夫よ。見ていなさい、アイツはきっと勝つから。」



 「リバース、オープン『魂の綱』此の効果で、ライフを1000ポイント払い、
  デッキからレベル4以下のモンスターを特殊召喚。出ろ、ストライク・ドラゴン!」
 「ショォォォォ!」
 ストライク・ドラゴン:ATK2000
 謎の少年・LP1700→700

 「往生際の悪い。ターンエンドだ。」

 「俺のターン、ドロー!」

 「諦めろや、手札1枚じゃどうしようもねぇだろう。サレンダーしたほうが身のためだぜ?」

 勝利を確信しているのだろう。
 ハンターは挑発的に言い放つ。

 「俺は最後まで諦めない。このターンでお前を倒す!」

 「は、何言ってやがる。残りライフ700ぽっちでどうやって勝つってんだ?
  そもそも、俺のフィールドには攻撃力4000のダーク・ガイアが居るんだぜ。」

 状況だけ見れば、少年の圧倒的不利だろう。
 だが、彼は不敵な笑みを浮かべたままだ。

 「魔法(マジック)カード『竜の宝札』。墓地のドラゴン族モンスター1体をゲームから除外し、
  デッキからカードを2枚ドローする。俺はツインヘッド・ワイバーンを除外し、新たに2枚ドロー!」

 「け、悪あがきを。」

 「そいつは如何かな?」

 「あぁ!?」

 「チューナー・モンスター、サーヴァント・ワイバーンを召還!」
 サーヴァント・ワイバーン:ATK1500

 「行くぜ!レベル4・ストライク・ドラゴンにレベル4・サーヴァント・ワイバーンをチューニング!」

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 「な、何だ?」

 少年のデッキから、巨大な力があふれ出そうとしている。
 無論ハンターは其れを感じ取ったことだろう。

 「燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神、『炎龍皇−アグニ』!!」
 「オォォォォォォ!!」
 炎龍皇−アグニ:ATK2900



 「す、凄い。1ターンで上級モンスターを召喚した。」

 「(アグニって、アイツまさか!)勝負はついたわね。」



 「炎龍皇えんりゅうおう−アグニ、モンスター効果発動!手札のドラゴン族を墓地へ送ることでこのターンのみ
  墓地へ送ったドラゴンの元々の攻撃力分自身の攻撃力を上昇させる!」

 「そ…そんな…」

 「俺は手札のミラージュドラゴンを墓地へ送り、アグニの攻撃力を1600ポイントアップする!」
 炎龍皇えんりゅうおう−アグニ:ATK2900→4500

 「馬鹿な…攻撃力4500だとぉ!?」

 「バトル!炎龍皇(えんりゅうおう)−アグニでダーク・ガイアを攻撃!」

 アグニがその翼を広げ攻撃態勢に移る。

 「燃え尽きろ!『インペリアル・ストライク・バスター』!!」

 ―ゴォォォォォォ!!!

 強烈な炎が、ダーク・ガイアを消滅させ、ハンターのライフを削り取る。

 「ぐぬぅ…だが、500ポイント程度のダメージなど、次のターンで…」
 ハンターK・LP2400→1900

 「次のターンは無い。言ったはずだぜこのターンで終わらせると。炎龍皇(えんりゅうおう)−アグニのもう1つの効果。
  戦闘で相手モンスターを破壊した場合、相手に破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。」

 「そ、そんな効果が…」

 「あばよ…」
 「ショォォォォ…」

 「お、俺様が負けるなど…」
 ハンターK・LP1900→0




 「す、凄ぇ。」
 「アイツ何者だ?」
 「半端じゃねぇぞ。」

 ギャラリーの疑問の声と驚愕は次第に歓声へと変わっていく。

 ―オォォォォォ!



 「クソッタレ…何者だ貴様!?」

 ハンターは吐き捨てるように自らを倒した少年に問いかける。

 「見ての通りデュエリストさ。この町も久しぶりでな。」

 「いけすかねえ野郎だ。名前くらい名乗りやがれ!」

 「俺の名前か?俺の名は…」

 一旦言葉を切り、

 「遊哉。緋渡遊哉だ!」


 デュエリスト達の聖地、童実野町。
 今、此処から新たな伝説が始まろうとしていた。









 To Be Continued… 

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