小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「頼むぞ十六夜ー!!」
 「アカデミアの誇りを見せ付けてくれ〜!」
 「アキ様頑張って〜〜!!」
 「十六夜姉さま〜〜!!」

 1回戦最後のデュエル、アカデミア最後の生徒とあってアキへの声援はものすごい。
 そこには単純な応援だけでなく先程のデュエルの後味の悪さを払拭して欲しいという願いも含まれているように見える。

 「にゃはは…凄い人気だねアキっち。あたしは悪役だね〜。」

 「…偶には静かにデュエルしたいと思うようになるわ。何時もこうだと…」

 戦う2人はそれどころではなかった…







 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel17
 『薔薇と超能力』〜アキvsレン〜








 「さて、如何なるかな…」

 「遊哉?」
 「緋渡?」

 簡単には終わらない…そう言ったニュアンスを含んだ遊哉の呟きに遊星と霧恵が反応する。
 特に遊星はアキの実力を知ってるだけに余計だ。

 「俺は此処でのデュエル、一番最初にレンと闘っている。あいつの実力は相当なもんだぜ。
  其れに、さっきの戦跡を見る限り俺以外には負けてないみてぇだし…どっちにしろ此のデュエル面白くなりそうだぜ。」

 此のデュエルへの歓声に飲まれたのか遊哉達の怒りはかなり沈静化している。
 そして遊哉、遊星、霧恵の3人もさっきの後味の悪さを払拭してくれることを期待していた。






 「それでは1回戦最終試合、十六夜アキvs辰美レン!デュエルスタートォ!!」



 「「デュエル!!」」


 アキ:LP4000
 レン:LP4000



 「あたしの先攻!『サイコ・イーバ』を守備表示で召還。」
 「ウガ…」
 サイコ・イーバ:DEF1900

 「ターンエンドだよ。」


 様子見だろうか?
 守備表示モンスターが1体のみのレン。
 無論アキは迷わない。


 「私のターン。フィールド魔法『漆黒の花園』を発動。此のカードがある限り植物族を召還するためのリリースは1体少なくなる。
  此の効果でレベル5の『薔薇の天使(ローズ・エンジェル)』をリリース無しで召還するわ。」
 「ハァ!!」
 薔薇の天使:ATK2400

 フィールド魔法とのコンボでいきなり攻撃力2400の上級モンスターを召還してきた。

 「薔薇の天使でサイコ・イーバを攻撃、『ローズ・サンクション』!」


 ――バシュゥ!


 強烈な一撃がレンのモンスターを切り裂く。
 大凡ソリッドビジョンとは思えないような衝撃が発生する。


 「うわっと…凄いねぇ!流石はサイコデュエリストってとこだね。
  でも、サイコ・イーバが戦闘で破壊されたときデッキからレベル4以下のサイキック族を特殊召還できる。2体目のサイコ・イーバを特殊召還!」
 「ウガ?」
 サイコ・イーバ:DEF1900

 「(リクルーター…となるとシンクロか上級モンスター。それなら…!)カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「(上級モンスターを警戒したね?)あたしのターン、『サイコ・チェイサー』を守備表示で召還してターンエンド。」
 サイコ・チェイサー:DEF1500


 アキの予想とは裏腹にシンクロもアドバンス召還も行わずに新たな守備モンスターを出してターンエンド。
 だが、レンの表情からは焦りは伺えない。
 むしろ何かを誘っているかのように感じる。


 「(又守備モンスター?如何言うつもり?)
  私のターン、薔薇の天使の効果発動。カードをドローしたときそのカードが植物族モンスターだった場合互いに確認することでもう1枚ドローできる。
  私がドローしたのは植物族の『ロード・ポイズン』よってもう1枚ドロー(いい引きだわ)そしてチューナーモンスター『薔薇園の守護者』を召還。」
 「フッ…」
 薔薇園の守護者:ATK300

 「レベル5の薔薇の天使にレベル1の薔薇園の守護者をチューニング。
  紅き闇が世界を覆う。冥府より咲き誇れ、シンクロ召還!現れよ『ブラックローズ・ケルベロス』!」
 「フゥゥゥゥ…」
 ブラックローズ・ケルベロス:ATK2400


 大輪の薔薇を思わせる鬣を持った冥府の番人たる三つ首の獣が姿を現す。
 低い唸り声は外敵に対しての威嚇のようにも見える。


 「ブラックローズ・ケルベロスが攻撃するとき攻撃対象になったモンスターは攻撃表示になる。
  バトル、ブラックローズ・ケルベロスでサイコ・イーバを攻撃、『ブラックローズ・トライデント』!」
 サイコ・イーバ:守備→攻撃   DEF1900→ATK900


 ――ゴォォォ!


 3つの頭がそれぞれ強烈な炎でサイコ・イーバを焼き殺す。

 「うわっと!でもサイコ・イーバの効果で新たにサイコ・チェイサーを召還!」
 レン:LP4000→2500
 サイコ・チェイサー:DEF1500


 大ダメージを受けながらもモンスターは途切れさせない。
 展開力はすばらしい。


 「やるわね。でも、ブラックローズ・ケルベロスの効果はまだあるわ。此のカードが戦闘でモンスターを破壊した場合続けてもう1度だけ攻撃できる。
  追撃よブラックローズ・ケルベロス!サイコ・チェイサーに攻撃、『ブラックローズ・トライデント?』!」
 サイコ・チェイサー:守備→攻撃   DEF1500→ATK1500


 ――ゴガァァァ!!


 「わわ!これは流石に強烈だね!」
 レン:LP2500→1600


 「でもサイコ・チェイサーの効果!攻撃表示の此のカードが破壊されたときあたしのフィールドにサイコ・トークンを2体守備表示で特殊召還するよ!」
 「「…ムニョ…」」
 サイコ・トークン(星1・光・サイキック):ATK0×2

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 大幅にライフを削られはしたものの上級モンスターへの布石となるトークンを2体生成したレン。
 そして、現アカデミア最強の名に恥じないデュエル・タクティクスを見せるアキ。
 すでに観客から先程のデュエルの後味の悪さなど消えてしまっている。


 「激しい攻撃だねアキっち。そうでなくちゃ面白くないよ。あたしのターン!サイコ・トークン2体をリリースし『命の冒涜者』をアドバンス召還!」
 「ガァァァァァ!!」
 命の冒涜者:ATK2800

 「更に永続魔法『禁じられた研究−生命の再生−』を発動。此のカードがある限りサイキック族の効果を発動する為のライフコストは『ライフを500回復する効果』に変わるよ!」

 「ライフダメージが、ライフゲインに!?」

 上級モンスターの召還から一気に体制を整えるレン。
 いよいよエンジン全開である。

 「命の冒涜者の効果発動。ライフを2000払うことですべての墓地からモンスターを可能な限り特殊召還する!
  そして此のライフコストは生命の再生の効果で500ポイントの回復となるよ!
  あたしは自分の墓地からサイコ・イーバを2体とアキっちの墓地からチューナーモンスター薔薇園の守護者を召還!」
 レン:LP1600→2100
 サイコ・イーバ:ATK900
 薔薇園の守護者:ATK300


 「さぁ行くよ!レベル3のサイコ・チェイサーとレベル4のサイコ・イーバにレベル1の薔薇園の守護者をチューニング!
  おいでませ!シンクロ召還、『メンタルスフィア・デーモン』!」
 「ウガァァァァ!」
 メンタルスフィア・デーモン:ATK2700

 そして1度エンジンが掛かるとレンは凄まじい。
 1ターンでレベル8の強力モンスターを2体もそろえてきた。

 「バトル!メンタルスフィア・デーモンでブラックローズ・ケルベロスを攻撃!『サイキック・デモン・フレア』!」



 ――ゴアァァァ!



 これまでのお返しといわんばかりにレンの反撃の1発がブラックローズ・ケルベロスを葬る。

 「メンタルスフィア・デーモンの効果で破壊したモンスターの攻撃力分あたしのライフが回復!」
 レン:LP2100→4500
 アキ:LP4000→3700

 「更に命の冒涜者で直接攻撃!『ライフ・ジェノサイダー』!」



 ――ゴシャァァァ!



 「きゃぁぁぁぁぁ!」
 アキ:LP3700→900

 「…罠(トラップ)発動『死地に咲く薔薇』!私が1000ポイント以上のダメージを受けたとき、デッキからレベル4以下の植物族モンスター1体を特殊召還する。
  来なさい、チューナーモンスター『薔薇水晶』!」
 「…にゅ?」
 薔薇水晶:ATK500

 「更に罠発動『ロスト・スター・ディセント』。
  私の墓地のシンクロモンスター1体の効果を無効にしレベルを1つ下げ守備力0で守備表示で特殊召還する。
  舞い戻りなさい『ブラックローズ・ケルベロス』!」
 「グルルル…」
 ブラックローズ・ケルベロス:DEF1800→0    LV6→5

 ライフを大幅に失いながらも次への布石を打ったアキ。
 そして、一気にライフ面で有利に立ったレン。
 これは面白い展開といえる。

 「やるねぇ…ターンエンド。」

 「私のターン。さっきのお礼をさせてもらうわ。
  レベル5となったブラックローズ・ケルベロスにレベル2の薔薇水晶をチューニング!
  冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の華よ開け、シンクロ召還!現れよ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!」
 「ショォォォォ!」
 ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400

 「ブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動!此のカードのシンクロ召還に成功したときフィールド上のカードを全て破壊する。『ブラック・ローズ・ガイル』!」



 ――ゴォォォォ!



 凄まじい暴風が吹き荒れフィールドの全てを消し去る。
 だが、それすら此の2人の前では更なる戦術の布石に過ぎない。

 「漆黒の花園の効果発動。此のカードが破壊されたとき墓地の植物族シンクロモンスター1体を特殊召還できる。
  さぁ、舞い戻りなさい『ブラックローズ・ケルベロス』!」
 「ウォォォォォン!」
 ブラックローズ・ケルベロス:ATK2400

 「やるねぇ…でもあたしも禁じられた研究の効果を発動するよ。此のカードが破壊されるときライフを半分払うことで破壊を無効に出来るのさ!」
 レン:LP4500→2250

 「でも、これであなたを守るモンスターは居ないわ。ブラックローズ・ケルベロスで直接攻撃(ダイレクトアタック)、『ブラックローズ・トライデント』!」

 レンを守るモンスターは居ない。
 そしてライフは2250。
 此の攻撃が通ればアキの勝ちが確定するが、無論そんなに甘くは無い。

 「此の瞬間手札の『サイコ・ミーティア』の効果発動!相手が直接攻撃してきたとき此のカードを手札から特殊召還しバトルを終了させるよ!」
 「ムニョン。」
 サイコ・ミーティア:ATK0

 手札からのモンスター効果でダメージを0にしバトルを強制終了させてきた。

 「一筋縄ではいかないわけね…カードを2枚伏せてターンエンド。」

 アキも此のデュエルは相当に楽しいのだろうその顔には笑みが浮かんでいる。

 「あたしのターン!魔法(マジック)発動『禁断の秘術−人体練成』!あたしのフィールド上のモンスター1体をリリースし
  墓地のサイキック族のシンクロモンスター1体を特殊召還するのさ!サイコ・ミーティアをリリースし復活『メンタル・スフィア・デーモン』!」
 「フシュゥゥゥ…」
 メンタル・スフィア・デーモン:ATK2700

 「更に『融合』を発動!メンタル・スフィア・デーモンと手札のハイパー・サイコ・ガンナー/バスターを融合!
  さぁ出番だよっ!『アルティメット・サイコ・ブレイカー』!」
 「ゴォォン!」
 アルティメット・サイコ・ブレイカー:ATK4300

 「攻撃力4300!」

 此の局面で攻撃力4300のモンスターを召還。
 此のデュエルもいよいよ大詰めのようだ。

 「これで終いさ!アルティメット・サイコ・ブレイカーでブラックローズ・ケルベロスを攻撃!『ファイナル・サイコ・クラッシャー』!」

 「く…伏せ(リバース)カードオープン、『命繋ぎの薔薇』!此のターン私の場の植物族モンスターは破壊されずプレイヤーのライフは1ポイント残る!」
 アキ:LP900→1

 「まだよ!更に速攻魔法『服従の薔薇鐘(ローズベル)』を発動!此のターン戦闘を行ったモンスターを全て守備表示にする。」

 「おぉう?」
 アルティメット・サイコ・ブレイカー:攻撃→守備  ATK4300→DEF3000


 ライフを1ポイントだけ残し更に相手のモンスターの表示形式の変更。
 どこまでも先が読めない。

 「粘るねぇ…ターンエンドさ!」

 「私のターン此のターンで終わらせるわ!チューナーモンスター『青薔薇の妖精』を召還!」
 「…?」
 青薔薇の妖精:ATK1000

 「レベル6のブラックローズ・ケルベロスにレベル3の青薔薇の妖精をチューニング!
  魔性の薔薇が全てを包む、その力で世界を覆いつくせ!シンクロ召還、天上界より現れよ『魔天使−ローズ・ヴァルキリー』!」
 「ふぅぅ…覇ぁ!!」
 魔天使−ローズ・ヴァルキリー:ATK3200

 「攻撃力3200…やるねぇアキっち!」

 「黒薔薇の魔女の二つ名は伊達じゃないわ。ローズ・ヴァルキリーの効果発動!
  1ターンに1度墓地の植物族のシンクロモンスターかブラック・ローズ・ドラゴンを除外しその効果を得る。
  私はローズ・ヴァルキリーにブラック・ローズ・ドラゴンの効果を与えるわ。」

 「ブラック・ローズ・ドラゴンの効果…まさか!!」

 此の効果の意味を理解したのだろう、レンの顔が驚愕に染まる。

 「そのまさかよ。
  墓地の植物族モンスターをゲームから除外することで相手の守備表示モンスター1体を攻撃表示にし攻撃力を0にする『ローズ・リストリクション』!」

 「あはは…こりゃ参ったね…」
 アルティメット・サイコ・ブレイカー:守備→攻撃   DEF3000→ATK4300→0

 「此れで決めるわ!魔天使−ローズ・ヴァルキリーでアルティメット・サイコ・ブレイカーに攻撃!『サンクチュアリ・ローズ・ブレイク』!」



 ――ゴガァァァァァァァ!



 魔天使の名に恥じない強烈な一撃がレンを襲う。
 その衝撃は凄まじくもしアキがその力を使っていたらどうなるのかは考えたくも無い。


 「にょわわ〜〜!」
 レン:LP2250→0



 「Winnner、十六夜アキ!」



 レンのライフが0となりアキの勝利が告げられると会場は大いに盛り上がる。


 「やったぜ十六夜!!」
 「その調子で次も頼むぜ!」
 「十六夜姉さま流石ですぅ!」



 アカデミア最後の砦だけあってアキへの声援は更に高くなる。
 そんな声援を隔てるようにアナウンスが入る。


 「コホン…此れにて1回戦は全て終了した。1時間後に準決勝を開始する。それまで解散とする。」


 鮫島のアナウンスが流れ、それと同時に人が少しずつ動き始める。
 そしてデュエルリング上では…


 「たはは…参ったよアキっち。」

 「あなたも凄かったわレン。こんなに楽しいのは久しぶりだったわ。」

 アキとレンが健闘をたたえあっていた。

 「あたしも楽しかったよ。…アキッち次はアギトっちだからね…頑張って。」

 「えぇ…分かっているわ。」

 2人は握手を交わす。
 『闘いの王国』決勝トーナメントの1回戦は此れで終了した。
 続く準決勝…果たしてどんなデュエルが待っているのか…




















  To Be Continued… 

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