小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「デュエルレーンにファントムが現われたぞ!!」

 此れに会場は騒然となる。
 巷を騒がせている無法デュエリスト『ファントム』が現われたのだから仕方ないが。

 「…?遊哉と遊星は?」

 霧恵達が行動しようとしたときには、遊哉と遊星の姿は会場から消えていた。










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel31
 『未知の戦術』










 「ちょ、何処行ったのよあいつ等は!?」

 突然姿を消した2人に霧恵は焦る。
 声にこそ出さないがアキもシェリーも鬼柳と三人娘とレンも同様だ。

 と言うか何時の間に居なくなったのか?
 ファントム出現を聞いた時には既に居なかったように思う。

 「そうだわ霧恵、通信機で連絡は取れない?」
 「其の手が有ったわね!」

 アキに言われ、すぐさま通信機(勿論遊星製)で遊哉に連絡を取る。

 『お〜如何した!』

 コール3回で遊哉が出る。
 全く何時もの調子だ。

 「如何したじゃないわよ!あんた今何処に居るの!?」
 『今公道に出たとこだ。遊星も一緒だぜ。』
 「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」

 なんと此の僅かの間に遊哉と遊星の2人はD・ホイールで公道に出ていたのだ。
 恐るべき速さ、正に電光石火だ。

 『んで今から遊星とファントムのしてくっから通信切るぜ、じゃな!』
 「ちょ、待ちなさいコラ!……切れた。」

 再度発信してみるが通信機の電源が切られたようで繋がらない。

 「ファントム倒すって…何考えてるのよ、あの馬鹿!付き合う遊星も遊星で〜!!!」

 ご尤も。
 だがしかし、デュエリストの誇りを汚すようなデュエルを許すなどと言う選択肢は主役2人には存在しない。

 故に誰よりも先に飛び出しファントムを倒そうと向かったのだ。
 勿論霧恵達も同じ気持ちだ。

 続けて会場から飛び出そうとするが、


 『落ち着いてくれ〜!たった今レーンでの安全が確保されるまで来場者は会場から出さないように通達が来た〜!
  気持ちは分かるが、少しの間我慢してくれ〜〜〜〜!』


 MCの言う事に動きを止める。
 タッチの差で自分達は此の会場から出ることが出来なくなってしまったのだ。

 「そんな…」
 「だが、仕方ねぇ…こうなったらあいつ等が負けないことを祈るしかないぜ…!」

 結局霧恵達は会場で足止めを喰らう事になったのだった。








 ――――――








 一方デュエルレーンでは、

 「何だよ…何なんだよこいつはぁぁぁ!?」

 「そうだ、恐れ慄け。此れが機皇帝だ。終わりだ『機皇帝ウリエル』でダイレクトアタック!」

 「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
 LP4000→0


 一方的な虐殺としか言いようの無い戦いが行われていた。
 相手のシンクロモンスターを吸収し、パーツのレベルを限界まで上げた機皇帝での明らかなオーバーキル。
 遊哉や遊星が見たらそれだけでブチ切れそうな光景だ。

 「ふっふっふ…最大の障害であるシンクロを封じる此の効果、そして相手のシンクロの強制召喚…
  これだけの力が有れば如何にペガサスから託された力があろうと我等の勝利に揺るぎは無い!
  WRG1では我等の野望成就の為の礎となってもらうぞ『チーム遊戯王』!」

 対戦相手のD・ホイールを大破させ、ファントムはその場から走り去る。
 後に残ったのは炎上するD・ホイールと重傷のDホイーラーだけだった。









 レーンの一画で一方的な虐殺的デュエルが終結したとは知らない遊哉と遊星は、今尚ファントムを探していた。


 「クソッタレが、一体何処に居やがる!」
 「それ以前にデュエルレーンに居るのか?俺達以外のD・ホイールの反応は無いぞ?」
 「マジか!?消えたってのかよ幻影(ファントム)だけに!」

 いくら探しても見つからないファントムにイライラが募る。
 既にデュエルは終わり、ファントムはレーンから離脱したあとなので見つかる筈は無いのだが…




 ――キィィィィン…




 そんな2人の耳に入ってきたエンジン音。
 D・ホイール独特の其れは遊哉と遊星のD・ホイールの後ろからやってくる。

 「あん、誰だ?」

 そして音の主は遊星と遊哉の2人を少しばかり追い越し其の姿を現す。


 「此れはD・ホイールなのか…?」
 「後輪1つで先端はまるで槍…ドンだけ速度重視にしやがったんだ!?」

 濃いダークブルーの異様なD・ホイール。
 極端に尖って伸びた先端に、巨大なタイヤが1つだけ。
 速度と馬力を出すにはこの上ない設計だが、一歩間違えばマシンコントロールを失いクラッシュしかねない代物だ。

 「ファントムは既に此処には居ない。」

 そして其れを駈るサングラスで顔を隠したD・ホイーラーは既にファントムは此の場に居ないと告げる。

 「マジで消えやがったてのか!?」
 「やるだけやって離脱したのか……気に入らねぇな…」

 好き放題暴れてとんずらとは正に無法者。
 普段はクールな遊星も思わず口調が荒くなる。

 だが、正体不明のD・ホイーラーは其れに満足そうに僅かに笑みを浮かべる。

 「ふ、見込んだとおりだ。だが、今の君達ではファントムを倒すことは難しい!」

 「んだとぉ!?」
 「如何言う事だ?」

 「君達が持てる力のすべてを駆使してもファントムは既に対策を練っている。
  今のままの君達とペガサスから託されたカードだけでは奴等には勝てない。」

 「「!!!」」

 「付いて来い、私が教えてやろう。君達の持つシンクロの可能性と言う物を!」

 そう言うと一気にスピードを上げホイールを疾走させる。
 無論行き成りのスピードアップに反応しない遊哉と遊星ではない。

 「野郎…上等だオラァ!」
 「其の勝負受けて立つ!」

 此方もエンジンを噴かせ一気に加速し後を追う。

 自身で特別にチューンしたD・ホイールは一般に出回っているものとは一線を画す。
 其れは例え相手がスピードに重点を置いたものでも引けを取らない。
 差はグングンと縮まって行く。

 「此のスピードに付いて来るか。尤もそれくらいでなくては進化は望めない。
  良いだろう、かかって来い!フィールド魔法『スピード・ワールド2』セットオン!」

 今度はD・ホイールをデュエルモードにシフトさせデュエルを挑んできた。
 真意は全く読めないが、デュエルを売られたとなれば買うが礼儀のW主人公。

 「ライディングデュエルか…」
 「ハッ、俺達を相手にしようってのか?面白ぇ…やってやるぜ!!」



 「「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」」


 遊哉&遊星:LP4000
 Unknown:LP4000


 「先攻は貰う。私のターン。」

 如何に追い上げようとも最初の差が大きく、其のまま第1コーナーは取られてしまった。
 とは言え2対1の変則デュエルゆえ、先攻を取られたくらいではディスアドバンテージとは考えられない。

 「私はチューナーモンスター『TG(テック・ジーナス)サイバー・マジシャン』を召喚。」
 TGサイバー・マジシャン:ATK0


 「サイバー・マジシャンは『TG』と名の付くシンクロモンスターをシンクロ召喚する場合、手札の『TG』を素材にする事が出来る。」

 「手札でシンクロだと!?」
 「実質、其のチューナーを召喚できれば速攻でのシンクロが可能になるのか…」

 「其の通りだ。私は手札のレベル5、TGアサルト・ブレーダーにフィールドのレベル1サイバー・マジシャンをチューニング。
  リミッター解放レベル6、ブースターランチ出力最大、ネットワークドライブレンジ安定、オールクリア!
  Go、シンクロ召喚!カモン『TGツイン・ランサー』!」
 「ムゥゥン!」
 TGツイン・ランサー:ATK2500


 「更に私のフィールドに『TG』と名の付くシンクロモンスターが存在する場合、
  手札の『TGガリアンビースト』と『TGボルテックワーム』を特殊召喚できる!」

 「1ターンで3体のモンスターだと?」
 「それだけじゃねぇ、今召喚された内の1体はチューナー…又シンクロする気だぜ!」

 速攻を得意とする2人でも驚くほどの速攻。
 手札こそ消費するが此れは強い。

 「レベル3のガリアンビーストにレベル1のボルテックワームをチューニング。
  リミッター解放レベル4、スピードコンポジットパワー注入120%、
  ブーストドライブ進路確定、オールクリア!Go、シンクロ召喚!カモン『TGウィンド・ガードナ』!」
 TGウィンド・ガードナ:DEF2300


 「私はこれでターンエンド。」

 ステータス的には其れほど高いモンスターではない此の2体だが、恐るべきは其の速攻性だ。
 遊哉と遊星も速攻シンクロを得意としているが1ターンに2体は早々出来る事ではない。

 「1ターンに2体のシンクロか…如何思うよ遊星?」

 「あぁ、確かに此れなら機皇帝の効果を受けてもシンクロモンスター1体は自分のフィールドに残るが…」
 
 「『進化』とは言いがてぇよな?そいつを見極めてやんぜ!俺から行くぞ遊星!」
 「ふ、任せるぞ!」

 其の速攻召喚に舌を巻きながらも、其の先を見据える2人。
 此方は遊哉からだ。

 「俺のターン!」


 遊哉&遊星:SC0→1
 Unknown:SC0→1


 「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合手札の『シルバー・ドラグーン』を特殊召喚できる!」
 シルバー・ドラグーン:ATK2000


 「そしてチューナーモンスター『ブロンズ・ドラグーン』を召喚!」
 ブロンズ・ドラグーン:ATK1400


 「行くぜグラサン野郎!レベル5のシルバー・ドラグーンにレベル3のブロンズ・ドラグーンをチューニング!
  深淵より生まれし漆黒の爪牙よ、真実の闇で眼前の敵を砕け!シンクロ召喚、暗黒の化神『邪龍皇−ヴァリアス』!」
 「某の出番か…行かせて貰おう!」
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK2800


 「ブロンズ・ドラグーンを素材にしたことでヴァリアスの攻撃力は300ポイントアップする!」
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK2800→3100


 現われたるは闇の龍皇。
 チューナーの効果で強化されての御登場だ。

 「ヴァリアスの効果発動。1ターンに1度、手札のドラゴンを捨て異なる効果を発動できる。
  此のターン発動するのは『相手のモンスター1体のコントロールを得る』効果!ツイン・ランサーは貰うぜ!」

 「やるな緋渡。此の効果なら擬似的に機皇帝の効果を再現できる。」

 「おうよ!さぁ見せてみろ、テメェの言うシンクロの可能性ってやつをなぁ!!」

 あくまで攻撃的に、其れで居て相手の戦略を見極めようとする。
 此れこそがデュエリストとしての強さを分ける要素の1つといって良いだろう。

 「いい判断だ。私の言った事から最大限の情報を得ようとしている。ならば見せてあげようシンクロの可能性を!
  レベル6のTGツイン・ランサーにレベル4のTGウィンド・ガードナをチューニング!」

 「んだとぉ!?」
 「相手のターンでシンクロ召喚をするというのか!?」

 まさかの展開に驚く。
 恐らくは2体のシンクロモンスターのうち1体が『相手ターンでシンクロ召喚を可能』にする効果が有るのだろう。


 「リミッター解放レベル10!シークエンスシステム計算、ピットイオン濃度正常、ブースター臨界、パワーフロー正常、
  全システムオール・クリア!Go、アクセル・シンクロ!!」


 ――バシュン!



 「「消えた!?」」

 強烈な閃光を放ったと思った瞬間、謎の男の姿が掻き消える。
 即座に探してみるが其の姿は何処にもない。

 「何処行きやがった!……!?」
 「後ろから?此れは…!」


 「カモン!『TGストライク・ブレイカー』!」
 「オォォォォォ!」
 TGストライク・ブレイカー:ATK3300



 「何だ、此のモンスターは?」
 「其れもそうだけどよ…あの野郎、俺達の前を走ってたのに後ろから来やがった。まさかレーンを一周して来たってのか!?」
 「そんな馬鹿な、それじゃあ光の速さ、否それ以上だぞ?」

 確かに普通では考えられない事だが、其れが目の前にこうしてある以上は認めるほか無い。

 「ふ、驚いているようだな。此れがシンクロモンスターとシンクロ・チューナーモンスターによるシンクロを超えたシンクロ。
  己の限界を超え、光の速さを突破した者のみが使うことが許される『アクセルシンクロ』だ!」


 「「アクセルシンクロ…」」

 見たことも聞いたことも無い未知の戦術。
 疑問はあるが、そんなものを見せられて黙っていられる2人ではない。


 「面白れぇ…見せてもらうぜ其の力!」
 「其の力、見極めてやる!」


 「其の意気だ!遠慮無くかかって来い!」

 未知数の『アクセルシンクロ』…其の出現は肌寒い夜のデュエルレーンの温度を一気に加熱させる要因となった…

 そして遊哉と遊星は其の力の凄まじさを知る事になる。


















  To Be Continued… 

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