小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 謎のD・ホイーラーとのデュエルから3日。
 霧恵のコンドミニアムでは、

 「これじゃあ出力が弱ぇな…」
 「だが、これ以上は機体バランスに影響が出る。」

 『アクセルシンクロ』習得の為に、遊哉と遊星が自身のD・ホイールの性能強化に勤しんでいた。










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel33
 『乗っ取りを阻止せよ!』










 「熱心ね2人とも。」

 「ま、当然と言えば当然かな。未知の戦術が相手で、しかも2人で挑んで漸く勝てたとなったら、燃えるに決まってるからね。」

 コンドミニアムのリビングではアキと霧恵がこんな会話。
 ある意味で『デュエル馬鹿』と言える遊哉と遊星がマジ状態の今、霧恵達が何を言おうと無駄。
 己が納得するまでやるだろう。

 と、


 ――Pipipipipi


 霧恵の携帯が着信を知らせる。
 相手は親友の『財前美咲』。

 「もしもし、どったの美咲?」

 『霧恵、大変!辰美財閥が乗っ取られるって!!』

 「…はい?」

 声色から慌てているのが分かるものの、行き成り何の事かさっぱりである。

 『だから辰美財閥がやばいんだって!!』

 必死極まりないが要領を得ない。

 「霧恵、ちょっと此れを見て!」

 そんな状況の中でシェリーが呼ぶ。
 言われて来てみると、テレビでは…

 『本日辰美財閥の株30%が他の会社に買い取られ株価が下落しています。
  辰美財閥は多くの子会社を持つ、日本有数の大企業ですが今回の事で市場関係者は…』

 とんでもないことになっていた。
 辰美財閥は『チーム遊戯王』のスポンサー企業だ。

 「ちょ、何でレンのとこが敵対買収紛いの事されてんの!?」

 驚くほか無い。
 レンの経営手腕は10代とは思えないほどに卓越している。
 故に簡単に株が買われて買収されそうになるなど到底考えられる事ではない。

 『氷雨が言うには、なんでもレンの御爺ちゃん…結構な歳で認知入ってるらしいんだけど、
  其処にテレビで言ってる会社の連中が乗り込んで、詐欺同然に株を買い取ったって。』

 「貴重な情報だけど、何処からその情報を仕入れてくんのよ氷雨は!?」

 『さぁ…?氷雨独自の情報ルートは謎だわぁ…』

 仲間内でも謎は多いらしい。
 まぁ、今はそんな事は如何でもいい。

 「敵対買収……冗談じゃない。スポンサーが変わっちまったら満足できねぇぜ…」

 鬼柳の言う事は尤も。
 レンが全面的バックアップをしてくれているからこそ、チーム遊戯王は大会に向けて万全の準備が出来ている。
 現に、資金的な援助がある為に遊哉と遊星もD・ホイールの性能強化を思う存分行えているのだ。

 それがもし辰美財閥が乗っ取られたりしたら…?
 最悪スポンサーで無くなるかもしれない。
 そうなると相当に厳しいのだ、チームとしては。

 だが、それ以上に、

 「レンは大丈夫かしら…」

 仲間の事が心配になる。

 「ここで考えててもしょうがない。取り合えず…「レンのとこに行くぞオラァ!!」…遊哉!?って扉蹴り壊すな!!」

 扉を蹴破り御登場。
 後から遊星も入ってくる。

 「綺麗に外れるように蹴り飛ばしたから、あとで簡単に直せるから問題ない!」
 「大有りだと思うぞ、主よ…」

 アグニの突っ込みもなんのその。
 既に辰美財閥本社に乗り込む気満々である。

 「扉はあとで直すとして…アンタもニュース「聞いてない!!」…は!?」

 「何となくダチ公に危機が迫ってる気がした!」
 「緋渡の勘は当たるからな。俺も仲間の危機を見逃す事はできない。」

 どれだけ鋭い第六感を持っているのか……それ以前に事実関係を確かめもしないで乗り込み決定とは…
 何気にその勘を信用し、矢張り行く気満々の遊星も大概だ。

 「いや、確かにそうだけどさ…どんな勘してんのよ遊哉…」
 
 「何を今更……俺はデュエル以外では左脳が全く機能してない代わりに勘の鋭さは野生動物の4300倍はある!!」

 「アンタね…」

 THE右脳人間には何を如何言おうと無駄。
 ぶっちゃけ最高の感性が行き着く先は最高の理論と同じではあるのだが…

 「何はともあれ、ダチのピンチに黙ってられっか、行くぜ!!」

 言いながらコンドミニアムを飛び出し、D・ホイールに乗り込みいざ発進!
 遊星も同様に発進!!

 「ちょ…あのデュエル絆バカ共は〜〜〜!!もう、あたし達も行くよ!!」

 「それが良さそうね。」
 「相変わらず、仲間の事になると凄まじいわ…」
 「だが、それでこそ遊星と遊哉だ。むしろこれ位じゃないと満足には程遠いぜ。」

 霧恵達も其々自分のD・ホイールで発進した。








 ――――――








 ――辰美財閥本社・社長室



 「くくく、別に難しい事ではないでしょう辰美レン社長。我が社が持つ貴社の株30%分の子会社の経営を任せていただきたいだけですよ?」

 「ふざっけるんじゃないよ!半分寝たきりのじっちゃんのとこに押しかけて、だまくらかして株を買い取ったんじゃないか!!
  そんな連中にあたしが子会社の経営権を譲渡すると思ってんのかい!?」

 レンと、株を買い付けた敵対企業社長とのトップ会談。
 いや、会談とは言えないだろう。

 感情を出来るだけ抑えてるとは言え、レンからは誰が見ても分かるほどに『怒りのオーラ』が立ち昇っている。
 普通なら卒倒しそうなものだが、相手は涼しい顔……連れてきた護衛のせいもあるだろうが。

 「其れは其れは…ですが譲渡したほうが身のためですよ…元ノーバディのレアハンターである辰美レン社長?」

 「!!!」

 相手はなんとも下劣な笑いを浮かべ、レンがレアハンターで有る事をネタにしてきた。

 如何に強い相手を求めていたとは言え、レアハンターとして活動していたのは事実。
 この事が公表されたら、レンは、引いては辰美財閥全体に大きな影響が出る。

 尤も、其れを立証する証拠は無いので噂程度で済むだろうが、企業のイメージダウンは避けられない。

 「さて、如何します?」

 「こんの……「真正面からこんにちわ〜〜〜!!!」うおう、遊哉っち!?」

 社長室の扉を殴り飛ばした遊哉を筆頭に『チーム遊戯王』参上。

 「ほほぉ、扉を自体は壊さず蝶番部分を外すとは器用だね?」

 レンも感心するところがちょいとおかしい。
 無論敵対企業の連中は行き成りの事に硬直中。

 「其処の小悪党…」
 「おい、デュエルしろよ。」

 行き成りのW主人公。

 「な、何だ君達は!私は辰美社長と…」

 「インペリアル・ストライク・バスター!」
 「シューティング・ソニック!」


 ――ゴバァァアァン!!


 容赦なし。
 反論してきた相手に対して遊哉と遊星のエースの一撃。

 「もう1度言うぞ小悪党。」
 「おい、デュエルしろよ。」

 「だから私は…!」

 「セイン・エクリプス!」
 「アブソリュート・パワー・フォース!」


 ――ガッシャーン!


 更に1発。
 最早、手加減何其れ美味しいの状態である。


 「もう1度だけ言うぞ、ヤラレ専門のモブザコ。」
 「おい、デュエルしろよ。」

 尋常ではない。
 ハッキリ言って怖い、怖すぎる。
 見たまんま怒りMAXの遊哉と、静かに怒りのオーラを発する遊星のコンビは最恐と言うに相応しい。

 「止める?」
 「無駄。あぁなった遊哉はあたしでも、美咲でも絶対止まらない。多分遊星もでしょ?」

 「そうね。遊星は仲間の為になら修羅になれる男よ…」
 「遊哉は悪鬼羅刹ってとこだな…」


 こんな事が言われていようが関係ない。
 W主人公はやる事をやるだけだ。

 「テメェとレンがデュエルして、テメェが勝ったら好きにしろ。」
 「だが、辰美が勝ったら、巻き上げた株は全て返してもらう。」

 「何を馬鹿な…私がそんなモノを受けるとで「受けないとテメェ等の違法経営の実態世界中にネットで流すぞ?」なっ!?」

 まさかの反撃。
 おまけに

 「此処に来るまでにD・ホイールのコンピューターで調べ上げさせてもらった。」
 「さて、如何する?」

 遊星が確りと裏を取っていた。
 大凡主人公がやる事ではないが、基本『敵対滅殺』の遊哉と、『仲間第一』の遊星に体裁など関係ない。
 やるとなったらとことんやるのだ。

 そして、相手企業の社長もこう来られては受けるしかない。

 「良いでしょう。もしレン社長が勝てば、株は全てお返ししましょう。
  ですが私が勝ったら、30%どころか経営権すべてを譲渡していただく!!」

 トンでもない事を言ってきた。
 だが、デュエルで決着付くならレンとしては簡単なこと。

 「やってやるっさ!あたしが勝ったら、大人しく引き下がってもらうっかんね〜〜!」

 やる気は充分。
 其れを見た遊哉と遊星はこっそりとガッツポーズ。
 どうやら思ったとおりに誘導できたようだ。


 「…凄いわね遊哉と遊星。」
 「正統派最強と、悪役最強って組むとはた迷惑の凄さよね…」

 チームメイトとしても驚くほか無い。
 改めてこの2人は『味方ならこの上なく頼もしい存在』であると認識したようだ。





 「「デュエル!!」」


 レン:LP4000
 悪社長:LP4000



 其れはさておきデュエルスタート。
 …ソリッドヴィジョンが展開できてると言うだけでこの部屋の広さは相当なものだ。



 「先攻は貰うよ、あたしのターン!魔法カード『手札断殺』を発動。互いにプレイヤーは手札を2枚捨て、其の後デッキからカードを2枚ドローするよ。」
 ――よっし、良い引きだね!


 先ずは手札入れ替え。
 良いカードを呼び込めたらしい。

 「魔法カード『超念動同調』を発動!あたしのエクストラデッキのサイキック族シンクロモンスターを2体まで選択して発動。
  選択したモンスターのレベル合計×200のダメージを受ける事で、そのモンスターを特殊召喚っさ!
  あたしは2体の『マジカル・アンドロイド』を選択!2体のレベル合計は10、2000ポイントのダメージを受けてこの2体を特殊召喚!!」
 マジカル・アンドロイド:ATK2400(×2)
 レン:LP4000→2000


 「カードを1枚セット。そしてエンドフェイズにマジカル・アンドロイドの効果発動。
  自分の場のサイキック族モンスター1体に付きライフを600ポイント回復するよ。!」
 レン:LP2000→4400


 「ターンエンドっさ。」


 行き成りのレベル5シンクロが2体に、ライフは初期値よりも増大。
 サイキックの特性をうまく使った一手のレン。
 対して、


 「私のターン!くくく迂闊ですねぇ辰美社長、私は2体のマジカル・アンドロイドをリリースし、『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』を特殊召喚!」

 「んな!?」
 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム:ATK3000


 敵もさる者でバーン効果を持った上級モンスターをレンのフィールドに出してきた。
 一気に2体のシンクロを除去したのは流石に大きい。



 「ゴーレム主体のバーンか…」
 「てことは手札にお決まりの罠が揃ってるよな。」

 「お決まり?」
 「『ギフトカード』『シモッチ』『洗脳解除』辺りだろうな…つってもさっきの手札入れ替えでレンに隙はねぇだろうけどな。」

 観戦してるチーム遊戯王の面々は既に展開が読めている。
 レンもラヴァ・ゴーレムには驚いたものの、それ故に相手の戦術は看破しているはずだ。


 「更に魔法カード『死者蘇生』発動。先程の手札断殺で墓地に送ったプロミネンス・ドラゴンを守備表示で特殊召喚。」
 プロミネンス・ドラゴン:DEF1000


 更なるバーンカード。
 此れはもう確定だ。

 「カードを2枚セット。」
 ――くくく…セットカードは『シモッチによる副作用』と『ギフトカード』…ラヴァ・ゴーレムとプロミネンスの効果で私の勝ちだ!


 「ターンエン…「エンドフェイズにトラップ発動!永続トラップ『リビングデッドの呼び声』!!」ぬわにぃ!?」

 エンドトラップ、相手に邪魔されない良い方法だ。

 「この効果で墓地のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚するよ!蘇れ『人造人間−サイコ・ショッカー』!」
 「ムオォォォォォ!!!」
 人造人間−サイコ・ショッカー:ATK2400


 「さ、サイコ・ショッカー!?」

 罠の完全封殺効果効果を持った上級機械族モンスターが登場。
 此れはつまり、相手の戦術は封殺された事になる。

 「え、エンドフェイズにプロミネンスの効果!500ポイントのダメージを受けてもらう!」

 「この程度蚊に刺された程にも感じないっさ!」
 レン:LP4400→3900


 「ぐぬ…ターンエンド!」

 「あたしのターン!!この瞬間ラヴァ・ゴーレムの効果で1000ポイントのダメージを受けるよ。」
 レン:LP3900→2900

 削られるライフ、だがもうそんな事は関係ない。

 「チューナーモンスター『クレボンス』を召喚!」
 「くけけけけ」
 クレボンス:ATK1200


 「行くよ!レベル6のサイコ・ショッカーにレベル2のクレボンスをチューニング!
  おいでませ、究極のサイキック戦士!シンクロ召喚『人造人間−サイコ・ソルジャー』!!」
 「Wryyyyyyyyyyy!!!」
 人造人間−サイコ・ソルジャー:ATK2800


 現われたサイキック戦士。
 機械族からサイキック族へと変化し、攻撃力も強化されている。

 「このモンスターはサイコ・ショッカーの効果を受け継いでるから罠は無力さ!
  バトル!サイコ・ソルジャーでプロミネンスに攻撃!『サイバー・エナジー・キャノン』!」

 「く…だがプロミネンスは守備表示…」
 「甘い!!ケーキに蜂蜜ぶっ掛けたくらいに甘いっさ!サイコ・ソルジャーは貫通能力持ちだよ!」

 「ぬな!?」
 悪社長:LP4000→2200


 まさかの貫通攻撃。
 これでモンスターは0の上罠は発動不能…ゲームエンドである。


 「止め!ラヴァ・ゴーレムでダイレクトアタック!それでは皆さんご一緒に!!『『『城之内ファイヤー!!』』』…ありがとう!!」

 レンと一緒に遊哉と鬼柳がノリノリで攻撃宣言。


 「…何で?」
 「伝説の大会バトルシティで、伝説のデュエリスト・城之内さんがラヴァ・ゴーレムで攻撃する時に言ったらしい。」
 「そうらしいわね。」

 意外と語り継がれている伝説であったらしい。
 ともあれ、


 「むぎょああぁぁ!!」
 悪社長:LP2200→0


 デュエル決着。
 戦術を読まれ、挙句の果てに自分のモンスターで止めを刺されるとは間抜け極まりない。

 だが負けても其処は小悪党。

 「お前達、株券を持って脱出しなさい!」

 約束破りの逃走を企てるが…相手が悪すぎる。

 「そうはさせない!」

 逃げる護衛の1人を遊星が回し蹴りで蹴り倒し、

 「んなふざけた真似なんざ、させるわけねぇだろ!」

 鬼柳が別の1人を殴り飛ばし、

 「大人しく往生せいや!」

 遊哉が残る1人をタックルでダウンさせ…

 「この小悪党未満が!!」

 明らかにオーバーキルのタコ殴り。
 此れには相手社長も顔が真っ青……逃げ道なし。

 「負けたら逃走とは中々にふざけてるねぇ〜…」

 おまけに暗黒笑顔のレンが…

 「すこしお灸をすえた方が良さそうね?」
 「見下げ果てた下衆だわ。」
 「無慈悲な炎を味わってもらいましょうか?」

 霧恵、アキ、シェリーもいつの間にやらやる気満々。

 「ひ、ひぎゃぁぁぁ!ご勘弁を〜〜〜!!」

 その日、辰美財閥本社最上階の社長室からは奇妙な叫び声が絶えなかったとか…





 ――翌日



 『昨日辰美財閥の株30%を保有したと発表した会社ですが、実はそれが企業価値向上の為の嘘である事が発覚し、近く特捜部の捜査を受ける事になりました。
  更にこの会社は、同様の手口で、過去にも企業価値を高めていた疑いがあるとして…』


 テレビ各局がトップでこのニュースを報道するのだった。













  To Be Continued… 

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