小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 WRG1開催の前日。

 「おんまたせ〜〜!!やっとこさ、納得の行くのが出来たよ!」

 辰美財閥社長のレンが、社員と共に霧恵のコンドミニアムに何かを持ってきた。

 「やっとかよ!待ってたぜレン!」
 「満足出来るやつに仕上がってるよな?」

 「ふっふっふ、そいつは見てのお楽しみっさ!!」

 遊哉と鬼柳もレンが持ってきたモノにはなにやら期待しているらしい。

 逸る気持ちを抑えられずに箱を開ける。

 出てきたのは『Team Yu-Gi-Oh!』のロゴステッカーと同様のロゴが入ったライダースーツとスタッフジャンパー。

 「此れは悪くないな。」

 「お褒めに預かり光栄だよ!」

 Dホイールの最終調整も終わり、準備は万端。
 チーム遊戯王…いざ出陣!!










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel35
 『WRG1開幕!!』










 WRG1開幕となる本日、童実野町は嘗て無い賑わいと熱気に包まれていた。
 道には露天が軒を連ね、街のあちこちに大会の幟や横断幕が上がり、ビルに備え付けられたオーロラヴィジョンも大会一色。

 デュエルモンスターズが世界的に有名になり、更に初めての『ライディング・デュエル』の世界大会故にこの盛り上がり。

 最早、伝説となった『バトルシティ』をも上回る盛り上がりである事は間違いない。


 そして、その中でも最大級の盛り上がりを見せている場所がある。


 『童実野中央スタジアム』


 町中に張り巡らされた、デュエルレーンを使って行われる予選リーグだが、このスタジアムでも予選リーグが行われる。
 レーンでのデュエルと違って、スタジアムでのライディングデュエルはオーロラヴィジョンを介さない『生』のデュエル。

 それが見れると言うことで、スタジアムには人が押しかけ、入場率は何と120%超!
 全てのシートを埋め尽くし、尚且つ通路での立ち見客まで居るのだ。

 そんな会場に、毎度おなじみの声が響き渡る。


 『レディース&ジェントルメン!皆〜〜盛り上がってるか〜〜〜〜!?
  ようこそ童美野中央スタジアムへ!この会場で、ど迫力の生のライディングデュエルを楽しんでくれ〜〜!』


 今日も今日とて、テンションMAX。
 毎度御馴染、名物MCの登場に、会場は一気に沸き、熱気も更に急上昇!

 『さぁ、世界中から集まった猛者揃いの中からWRG1優勝の栄冠を手にするのは一体どのチームなのか!?
  先ずは大会を始める前に、WRG1の大会ルールのおさらいだ〜〜!!』

 あくまでテンションは高いままで、大会のルールを説明。
 WRG1に於けるチームライディングのルールは以下の通りである。

 ・対戦形式は3vs3の勝ち抜き方式(但し、1デュエル終了時に他のメンバーとの交代は可能)で3人全てを倒したチームの勝ち。
 ・ライフが0になっても、ピットインするまでの間はフィールドに存在するカードのみ効果その他の発動はOK。
 ・メンバーを交代した場合、フィールドのカードとスピードカウンターは引き継がれる。
 ・敗北以外でメンバー交代をした場合、フィールドのカードは引き継ぐが、スピードカウンターは−1されライフはリセットされる。
 ・マシンがクラッシュしてピットに戻れなかった場合はその場で負け。

 大体こんなものである。


 さて、チーム遊戯王の面々はと言うと、既にピット入りしてスタンバイ。
 予選リーグの組み合わせ抽選会で、このスタジアムでのライディングデュエルに望む事になったのだ。

 超満員のスタジアムで、しかも大会最初のデュエルともなれば少しは緊張…

 「ごっそーさんでしたぁ!!」

 「吉○家のメガ盛牛丼弁当を……50個か。流石だな緋渡。」
 「遊星、それ感心するとこと違う!てか今日は何時も以上に食うわね…」

 「腹が減ってはデュエルは出来ねぇ!……さて食後のデザート(スペシャルジャンボパフェ)行きますか。」
 「嘘だろ、オイ!?」

 「見てて胸焼けが…シェリーは平気なの?」
 「…アメリカで一緒だった時に慣れたわ。」


 …少しも緊張していなかった。
 だが逆にそれが良いとも言える。
 実際に戦うデュエリスト達が、変な緊張をしていないおかげでピットクルーも肩の力が抜けているのだ。


 『さぁ、いよいよWRG1の予選リーグ開幕だぁぁ!!その最初を飾るデュエルは『チーム遊戯王』vs『チームギアーズ』!!
  最強クラスのデュエリストが集うチーム遊戯王は優勝候補の筆頭として上がっている〜〜!
  そのチーム遊戯王にチームギアーズは如何挑むのか〜〜〜!?』


 MCの司会にスタジアムの興奮は最高潮!
 このデュエルでファーストホイーラーを務める遊星は自身の真紅のDホイールをスタート地点に。
 相手チームのファーストホイーラー……大神ヤマトもスタート地点でスタンバイ。

 その瞳には既に闘志が漲っている。


 『両チームとも、ファーストホイーラーは準備万端だ〜〜!さぁ皆準備はいいか〜〜!?』


 シグナルの赤ランプが点灯する。


 ――ピッピッピ…



 『ライディングデュエル……アクセラレーショ〜〜〜ン!!』


 ――ピーーーッ!!!


 シグナルのグリーンが点灯し、2台のDホイールが一気に飛び出しその速度を上げて行く。
 どちらのマシンも高性能だ。

 しかし、エンジンから自分の手で組み上げられている遊星の、と言うかチーム遊戯王のDホイールは根本からして既存のDホイールとは性能が違う。
 その性能を示すように、遊星のDホイールはコーナー直前で更に加速し、ファーストコーナーは遊星が取った。


 『凄まじいスピードだぁ!!先攻はチーム遊戯王、不動遊星だ〜〜!』



 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000/SC0
 ヤマト:LP4000/SC0


 「俺のターン…『チューニング・サポーター』を守備表示で召喚。カードを3枚伏せてターンエンド。」
 チューニング・サポーター:DEF300


 先ずは守備モンスターと伏せカード3枚。
 守りから入るのは遊星のお決まりのスタイルの1つ。
 対して


 「俺のターン!」


 遊星:SC0→1
 ヤマト:SC0→1


 「俺は『ギア・ハウンド』を攻撃表示で召喚!」
 ギア・ハウンド:ATK1900


 「ギア・ハウンドは、攻撃時に相手のカード効果の発動を封じる効果がある!
  いけ、ギア・ハウンド。チューニング・サポーターをその鋼鉄の牙で噛み砕けぇ!!」

 レベル4では高い攻撃力に強力な効果を備えたモンスターで先手を打ってきた。
 効果の発動を封じられてはどうしようもなく、チューニング・サポーターは破壊される。

 「ギア・ハウンドは攻撃した場合守備表示になり、次の俺のターンのエンドフェイズまで表示形式は変更できない。
  カードを1枚伏せてターンエンド。」
 ギア・ハウンド:ATK1900→DEF200


 「俺のターン。」


 遊星:SC1→2
 ヤマト:SC1→2


 「チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 「ジャンク・シンクロンの効果発動。このカードの召喚に成功した時、自分の墓地からレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚できる。
  来い、『チューニング・サポーター』!」
 チューニング・サポーター:DEF300


 「更に、俺のフィールドに『ジャンク』と名の付くモンスターが存在する時、手札の『ジャンク・サーバント』を特殊召喚できる。」
 ジャンク・サーバント:ATK1500


 先手を取られても、返しのターンでこの展開力。
 守りから攻めに移ったときの遊星は炎の様に一気に攻め立ててくるのだ。

 「レベル1のチューニング・サポーターとレベル4のジャンク・サーバントに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 そして得意のシンクロ召喚。
 レベル合計は8……勿論呼び出されるのは…

 「集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ、シンクロ召喚!飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「クァァァァァァァ!!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500


 『ででで出た〜〜〜!不動遊星のエースモンスター『スターダスト・ドラゴン』だぁぁぁ!!!』


 自身のエースモンスターを高速召喚。
 更に遊星の攻める手は止まらない。

 「チューニング・サポーターの効果でカードを1枚ドロー。更にトラップ発動『シンクロサモンマテリアル』。
  俺がモンスターをシンクロ召喚した場合、ライフを1000ポイント払う事で、召喚したシンクロモンスターの素材となったモンスター1組を攻撃表示で特殊召喚する。」
 遊星:LP4000→3000


 「但し、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力と守備力は0になり、効果は無効となる。」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300→0
 ジャンク・サーバント:ATK1500→0
 チューニング・サポーター:ATK100→0


 大幅に弱体化したモンスターたち。
 しかし、遊星のフィールドには再びレベル8の素材が!


 「行くぞ!レベル1のチューニング・サポーターとレベル4のジャンク・サーバントに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし鼓動が、破壊の炎を巻き起こす。光射す道となれ、シンクロ召喚!滅ぼせ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
 「バォォォォォ!」
 レッド・デーモンズ・ドラゴン:ATK3000


 今度は絶対破壊効果を秘めた真紅の悪魔龍が降臨!
 レベル8のシンクロドラゴンが2体も並ぶとその迫力は相当なものだ。

 「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー。…カードを2枚伏せる。」

 遊星には珍しく、攻撃前にカードをセットした。
 この辺もチーム戦を意識しての事だろう。

 「バトル!レッド・デーモンズ・ドラゴンでギア・ハウンドを攻撃!『アブソリュート・パワー・フォース』!」

 「く……1ターンで☆8とか流石だぜ…だが、トラップ発動『ギア・シールド』!
  こいつは発動後装備カードとなり『ギア』『歯車』『マシン』と名の付いたモンスターに装備される。
  そして装備モンスターは戦闘では破壊されない!」

 遊星の攻撃に対し、ヤマトは戦闘無敵の戦術で対抗する。
 しかし、遊星はそれを勿論見越しているわけで…

 「やるな。だが、レッド・デーモンズの効果はその上を行く!
  レッド・デーモンズが守備モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算後に相手フィールドの守備表示モンスターを全て破壊する。
  行け、レッド・デーモンズ・ドラゴン『デモン・メテオ』!」


 ――ガッ…ドォォォン!!!


 レッド・デーモンズより放たれた無数の火球が降り注ぎ、ヤマトのフィールドを一掃する。

 「ぐわっ!!」

 「スターダストの攻撃前にトラップ発動『シンクロ・パワー・エクステント』。
  俺のフィールドのシンクロモンスター1体をリリースし、リリースしたモンスターの元々の攻撃力の半分を他の他のシンクロモンスターに上乗せする。
  俺はレッド・デーモンズをリリースし、その攻撃力の半分…1500ポイントをスターダストに上乗せする。」
 「キョォォォォォォ!!!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500→4000


 レッド・デーモンズが真紅の光の粒となり、それがスターダストに降り注いでその力を飛躍的に上昇させる。


 「ま、まさか…これって…」

 「スターダスト・ドラゴンでダイレクトアタック!『シューティング・パワー・ソニック』!」


 ――ドォォォォォォン!!


 レッド・デーモンズの力を受けてパワーアップしたスターダストの一撃がヤマトを強烈に打ち付ける。


 「おわぁぁぁぁぁ!!!!」
 ヤマト:LP4000→0



 『決まった〜〜〜!!!!ななな何と、WRG1の最初のデュエルはまさかの1ターンKillで決着が付いた〜〜!!!』


 まさかまさかの1ターンキル。
 更に言うなら、遊星のライフはコストで支払った1000ポイントしか減っていない…つまり実質的にはノーダメージ。



 「おっしゃ、先ずは1勝!しかも1ターンキルとか、流石だぜ遊星!」
 「観客も満足してるみたいだな。」

 「魅せてくれるわね遊星。尤も『魅せる』なんて事は意識していないでしょうけど。」
 「本気のデュエルは自然と『魅せる』モノになるでしょ。」
 「さすがだわ遊星…」


 WRG1の開幕、その予選の第1試合のファーストデュエルは、遊星が見事な1ターンキルを決めて先ずは1勝。
 幸先の良いスタートを切った。















  To Be Continued… 

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