小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ファントムが引き起こした暴動と言うべきバトルロイヤルも各地で鎮圧され、残るはこのレーンの3つのデュエルのみ。
 その内1つは…

 「シンクロフライトコントロール、リミッター解放レベル5、ブースター注入120%、リカバリーネットワークレンジ修正!
  オールクリア!GO、シンクロ召喚!カモン、『TGパワー・グラディエーター』!」
 TGパワー・グラディエーター:ATK2300


 数の差など物ともせずに謎のDホイーラーがファントム軍団を圧倒。
 流石は遊哉と遊星が2人がかりで倒しただけの実力者だ。

 残る2つのデュエルは…


 「手札のヴォルケイノ・ドラゴンを墓地に送り『ヘブンズ・ドラグーン』を特殊召喚!更にチューナーモンスター『ジェム・ウィング』を通常召喚!」
 ヘブンズ・ドラグーン:ATK1900
 ジェム・ウィング:ATK1500


 「ボルト・ヘッジホッグを墓地に送り、チューナモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚。そして『ロードランナー』を通常召喚。」
 クイック・シンクロン:ATK700
 ロードランナーDEF:300


 遊哉、遊星共に先行を取り、1ターン目からシンクロの準備が完了。
 このデュエルを…先ずは遊星の方から見て行く事にしよう。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel43
 『進化の時〜覚醒〜』











 「行くぞ!レベル1のロードランナーに、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング。
  集いし絆が、更なる力を紡ぎだす。光射す道となれ!シンクロ召喚、轟け『ターボ・ウォリアー』!」
 「ムゥゥゥ…フアァァァァ!」
 ターボ・ウォリアー:ATK2500


 現われたのはターボ・ウォリアー、攻撃力は平凡だがレベル6以下のモンスター効果の対象にならない優秀なモンスター。
 つまりターボ・ウォリアーならばレベル1の機皇帝に吸収される事は無い。
 自分の持ち味を出しつつ、相手への対策も怠らないのは見事だ。

 「カードを3枚伏せてターンエンド。」

 3枚のリバースカード…此れで遊星の手札は0だが悪くない出だしだ。
 対して、

 「成程、考えているな…ならばその力見せてもらおう!行くぞ不動遊星、私のターン!」


 遊星:SC0→1
 ディック:SC0→1


 「私は『ウルズ・コア』を守備表示で召喚。」
 ウルズ・コア:DEF0


 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 ディックは機皇帝の機動パーツである『コア』を召喚し、伏せ2でターンエンド。
 完全に遊星を誘う体勢だ。

 勿論遊星もそれは分かっているが、だからと言って序盤でペースを握っておきたいのも事実。
 故に此処は『攻め』の姿勢を貫く。


 ――機皇帝のコアは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されず、効果破壊された時に機皇帝と他のパーツを呼び出す効果がある…ならば!
 「俺のターン!」


 遊星:SC1→2
 ディック:SC1→2


 「スピードスペル『Sp−エンジェルバトン』。スピードカウンターが2つ以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。
  2枚ドローし、チューニング・サポーターを墓地に捨てる。そして、チューナーモンスター『ターボ・シンクロン』を召喚。」
 ターボ・シンクロン:ATK100


 「レベル6、ターボ・ウォリアーにレベル1、ターボ・シンクロンをチューニング!
  砕けぬ絆が集うとき、その絆は鋼の剣となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、切り裂け『ターボ・ブレイダー』!」
 「ムォォォォォォォォ!!」
 ターボ・ブレイダー:ATK2500


 又してもシンクロで新たなモンスターを呼び出す。
 この速攻は凄いものだ。

 「ほう…新たなモンスターか。だが機皇帝の効果を受けないターボ・ウォリアーを下げたのはミスだったな?」

 「其れは如何かな?ターボ・ブレイダーは相手のレベル6以下のモンスターの効果を一切受け付けない!
  更に守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!
  バトル!ターボ・ブレイダーでウルズ・コアに攻撃!『アクセル・クラッシュ・ソード』!」

 「純粋にターボ・ウォリアーの進化形態と言うわけか…だが!トラップ発動『ツイン・ボルテックス』!
  自分と相手のモンスターを1体ずつ破壊する!破壊するのは当然ウルズ・コアとターボ・ブレイダー!」

 ディックもまた巧い。
 相手モンスターを除去しつつコアの効果を発動させるカードだ。
 しかし、遊星のモンスターの効果は少しだけその上を行く。

 「成程な。だがターボ・ブレイダーの効果、このカードはデュエル中に1度だけカード効果で破壊されない!」

 「むぅ…チューナー指定のレベル7は伊達ではないという事か…だが此れでウルズ・コアは破壊された!
  ウルズ・コアの効果発動!効果で破壊された時自分フィールド上のモンスターをすべて破壊し、デッキ、手札から、
  『機皇帝ウリエル∞』『ウリエルA』『ウリエルG』『ウリエルC』『ウリエルT』を特殊召喚する!」
 機皇帝ウリエル∞:ATK100
 ウリエルA:ATK1200
 ウリエルG:DEF1000
 ウリエルC:DEF800
 ウリエルT:ATK300


 ウルズ・コアが砕け散り、代わりに機皇帝のパーツ全てが揃う。
 シンクロキラー降臨の準備は完了だ。

 「機皇帝ウリエル∞の効果発動。合体せよ『機皇帝ウリエル』!」
 機皇帝ウリエル:ATK2500


 パーツが変形して合体し、1体の巨大な人型ロボットへとその姿を変える。
 合体した際の金属音が宛ら戦場の兵士の雄叫びの如く響き、何とも言えない不気味さが漂う。


 「来たか機皇帝。攻撃力は互角だが、ターボ・ブレイダーは機皇帝のパーツの効果も受けない!
  ターボ・ブレイダー、ウリエルTに攻撃!『アクセル・クラッシュ・ソード』!」

 新たなモンスターが現れた事で戦闘の巻き戻しが発生し、今度は機皇帝の頭であるウリエルTを攻撃し粉砕。
 ウリエルGの効果を使うつもりでの攻撃表示だったのだろうか?
 だとしたら愚かとしか言いようが無いが…


 ディック:LP4000→1800
 機皇帝ウリエル:ATK2500→2200
 「うむ、やってくれる。この瞬間ウリエルTの効果発動。
  このカードが破壊された時、デッキか手札から機皇帝のパーツを特殊召喚できる。来い『ウリエルT2』!」
 ウリエルT2:ATK800
 機皇帝ウリエル:ATK2200→3000


 パーツの効果ですぐさまパワーアップ。
 どうやらこの効果を見越しての攻撃表示だったようだ。
 目論見は成功だろう、失ったライフは大きいが。

 「機皇帝のパワーアップを考えての布陣だったか…ターンエンド。」

 「私のターン!」


 遊星:SC2→3
 ディック:SC2→3


 「トラップ発動『機皇服従』!このターン、相手フィールド上のモンスターの効果を無効にする。
  そしてウリエルの効果発動、1ターンに1度相手のシンクロモンスター1体を吸収する!」

 機皇帝の効果を成立させるためにターボ・ブレイダーの効果を無効にしてきた。
 そしてウリエルのボディパーツから光の縄が現われターボ・ブレイダーを捕えんとする。
 が、捕えようとした瞬間ターボ・ブレイダーの姿が消え去る。
 代わりに、


 ターボ・ウォリアー:ATK2500
 ターボ・シンクロン:DEF500


 シンクロモンスターとチューナが。

 「ふ、トラップ発動『シンクロ・デモリション』!
  俺のフィールド上のシンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻し、そのシンクロモンスターの素材となったモンスター1組を特殊召喚する。
  この効果でターボ・ブレイダーをエクストラデッキに戻し墓地のターボ・ウォリアーとターボ・シンクロンを特殊召喚した。
  そして此れにより対象を失った機皇帝の効果は不発だ!」

 機皇帝の効果を理解し、更に相手の戦術を予想しての一手、実に見事だ。
 自分のデッキの最大の敵と対峙しつつも遊星からは微塵の焦りや恐れは感じられない。

 「貴様は…良かろう!叩き潰してくれる!ウリエルAをリリースし『ウリエルA5』を特殊召喚!」
 ウリエルA5:ATK1800
 機皇帝ウリエル:3000→3600


 其れを見てディックも機皇帝を更に強化。
 一撃級の攻撃力を出してきた。

 「バトル!ウリエルでターボ・シンクロンを攻撃!」

 「トラップ発動『チューナーズ・バリア』。この効果で俺のフィールドのチューナーは次のターンのエンドフェイズまで破壊されない!」

 「だがウリエルA5の効果で機皇帝は貫通能力を得ている差分ダメージ3100ポイントは受けてもらうぞ!」

 「なに!?うわぁぁぁあぁ!!」
 遊星:LP4000→900


 圧倒的な攻撃力の一撃で遊星のライフはあっという間にセーフティラインである1000ポイントを下回ってしまう。
 一撃で此れとは、矢張り機皇帝は侮れる相手ではない。

 「一気に状況が代わったな?ターンエンド。」

 「俺のターン。」


 遊星:SC3→4
 ディック:SC3→4


 「トラップ発動『シンクロンレイズ』!この効果でデッキから『シンクロン』と名の付くチューナー1体を特殊召喚する!
  俺はデッキからレベル2の『ニトロ・シンクロン』を特殊召喚!」
 ニトロ・シンクロン:ATK300


 「レベル6のターボ・ウォリアーに、レベル2のニトロ・シンクロンをチューニング。
  集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「ショォォォォォォ!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500


 現われた星屑の龍。
 ライフでは下回ってもエースを召喚した遊星の戦術は一気に加速する!


 「リバースカードオープン、永続トラップ『エンジェル・リフト』!
  この効果で墓地のレベル2以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。蘇れ『チューニング・サポーター』!」
 チューニング・サポーター:ATK100(エンジェル・リフト)


 「レベル1のチューニング・サポーターに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング。
  集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光射す道となれ!シンクロ召喚、希望の力、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」
 フォミュラ・シンクロン:DEF1500


 「シンクロモンスターのチューナーだと!?何だ其れは…!」

 新たに現われた未知のモンスターに驚きを隠せない。
 だが、此れこそが進化の鍵なのだ。

 「チューニング・サポーターはシンクロに使用されて墓地に送られた時デッキからカードを1枚ドローする。
  更にフォーミュラ・シンクロンはシンクロ召喚に成功したときデッキからカードを1枚ドロー出来る。2体の効果で俺は2枚ドローする!」

 「何と言う…不動遊星、貴様はこの機皇帝が怖くないのか?己のデッキの天敵であるこのモンスターに恐れはないのか!?」

 余りにも落ち着いた遊星の様子にディックは問う。
 普通ならば、己のデッキの天敵ともなれば少なからず恐れを伴うものだ。
 だが、遊星からは其れがまるで感じられないのだ。

 「恐れか…確かに初めて戦ったのなら少し怖かったかもしれないな。だが機皇帝との戦いは初めてじゃない。
  例えシンクロキラーの能力が有ろうと俺は俺のデッキを信じて戦うだけだ!」

 つまりはそう言うことだ。
 端ッから遊星に機皇帝に対する恐れはない。
 否、だからこそ辿り着いたのだ――新たな進化の可能性に。








 ――――――








 少し時を巻き戻して今度は遊哉の方を見てみよう。

 「レベル4のヘブンズ・ドラグーンに、レベル4のジェム・ウィングをチューニング!
  燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神『炎龍皇−アグニ』!!」
 「行き成り我の出番か…うむ、存分にやらせてもらおう!」
 炎龍皇−アグニ:ATK2900


 「ジェム・ウィングがレベル8以上のドラゴン族シンクロの素材となった事でデッキから2枚ドロー。
  カードを2枚伏せてターンエンド。かかってきやがれ、この下等生物未満の変態野郎!」

 自身のエースを召喚して更に2枚ドロー。
 毒舌も冴え渡り、正に絶好調といった所だ。
 普通ならドン引きしそうな相手だが、其れが逆に遊哉の『殺る気』に火を付けている様子。
 …この手の手合いは基本的に完膚なきまでに滅殺するのが遊哉なのだ。


 「二言目には変態って…そんなに誉めなくてもいいじゃない?」
 「誉めてねぇよ、アホンダラ!!其処まで脳味噌腐ってんのかテメェは!!」

 デュエル以上に舌戦が凄まじい模様。
 変態の相手は疲れるものだ…

 「まぁいいわ…アタシのターン!」


 遊哉:SC0→1
 変態:SC0→1


 「『ゼルス・コア』を守備表示で召喚よ!」
 ゼルス・コア:DEF0


 矢張り此方も機皇帝の機動パーツである『コア』を出してきた。
 狙いは勿論此処からの機皇帝だろう。

 「ぐふふふふ…行くわよ〜?手札の『マシンスレイヤー』の効果発動!
  このカードを手札から捨てて、フィールド上の機械族モンスター1体を破壊するわ!この効果でゼルス・コアを破壊よ!」

 そして、お約束的にコアの破壊。
 此れで機皇帝はその姿を顕現させる事になる。

 「ゼルス・コアの効果よ!コアが効果破壊された時、アタシのモンスターを全部破壊してデッキか手札から、
  『機皇帝ゼリエル∞』『ゼリエルA』『ゼリエルG』『ゼリエルC』『ゼリエルT』を特殊召喚するわよ〜〜!」
 機皇帝ゼリエル∞:ATK0
 ゼリエルA:ATK1400
 ゼリエルG:DEF800
 ゼリエルC:ATK1000
 ゼリエルT:ATK600


 一気に大量展開。
 そして、

 「お〜ほっほっほ!ゼリエルちゃんの効果発動よ〜ん!変形合体、『機皇帝ゼリエル』!」
 機皇帝ゼリエル:ATK3300


 パーツの強化無しではウリエルを上回る機皇帝が登場だ。
 だからと言って、この攻撃力では遊哉が怯む事などないのだが…変態は飛ばす、変態だから!

 「うふっ…ウフフフ!ゼリエルの効果発動よ!アンタのアグニは頂くわ!!」

 即効果発動でアグニを奪おうとするが、幾らなんでも相手が悪い。
 寧ろ悪すぎる。

 「そうは行くかドアホ垂れ!俺がそう簡単にアグニ奪われると思ってんのかボゲェ!
  手札から『ドラコ・ヴェーラー』の効果発動!このカードを手札から捨てることでドラゴンを対象にした効果を無効にするぜ!
  機皇帝の効果は無効だ。1度戦った相手の効果を何度も受けるなんざ馬鹿のする事だぜオイ?」
 「残念でした〜!」

 きっちりと対策。
 とは言え、対象効果無効では機皇帝の効果そのものは生きている。
 攻撃力はゼリエルの方が上だ。

 「舐めんじゃないわよ!このデュエルは勝ってアンタを『ピーーー』するのよ!!ゼリエルちゃんでアグニに攻撃よ!!」

 「音声修正かかる事ばっか言ってんじゃねぇ!永続トラップ発動『皇の秘術〜絆〜』!
  このカードが存在する限り、俺のフィールド上の龍皇の攻撃力は墓地のドラゴン1体に付き300ポイントアップする!
  俺の墓地のドラゴンは3体!よってアグニの攻撃力は900ポイントアップする!」
 「返り討ちにしてくれる、下郎が!」
 炎龍皇−アグニ:ATK2900→3800


 だが、攻撃に関しては遊哉は他の追随を許さないほどに凄まじい。
 特にモンスターの攻撃力を上げる事に関しては一級品だ。

 「ぐげ!手札から『マシンセイバー』の効果発動よ!このカードを手札から捨ててこのターン機械族の戦闘破壊を無効にするわ!」

 「でも戦闘ダメージは有効だ。500ポイントだが大人しく喰らえ!」

 「ミぎゃん!」
 変態:LP4000→3500


 実に単純ながら深い攻防だ。
 攻撃に対してカウンターで攻撃力を上げ、そのカウンターに対しては戦闘耐性を付ける事で耐える。
 本人達には不本意であろうが、意外なほどに噛合ったデュエルだ。

 「やってくれるわね!ターンエンドよ!」

 「殺ってやるぜ!つーかテメェ如き速攻で打ち倒す!俺のターン!」


 遊哉:SC1→2
 変態:SC1→2


 「トラップ発動『チューナーリバイブ』!墓地のチューナー1体を効果を無効にし攻撃表示で特殊召喚する。舞い戻れ『ドラコ・ヴェーラー』!」
 「頑張るぞ〜〜!」
 ドラゴ・ヴェーラー:ATK0


 「んでもって『ドラゴンガール』を通常召喚!」
 ドラゴンガール:DEF300


 この時、並走する遊星はシンクロモンスターのチューナーを既に呼び出していた。
 其れを見て遊哉もまた進化の準備を整える。

 「行くぜ!レベル1のドラゴンガールに、レベル1のドラコ・ヴェーラーをチューニング!
  進化を促す光速の翼よ、その力を今こそ解き放て!シンクロ召喚、奇跡の化身シンクロチューナー『フォーミュラ・ドラゴン』!」
 フォーミュラ・ドラゴン:DEF1200


 「し、シンクロチューナー!?遊星ちゃんと言い、アンタと言いなんなのよ一体!?」

 「あぁ?何なのかだと?決まってんだろうが!俺と遊星は天下無敵の主人公だ!テメェ等の機皇帝は此処で叩き潰すぜ!」

 遊哉も機皇帝に恐れなどない。
 その闘気は、敵に牙を剥くドラゴンそのものだった。








 ――――――








 さて、この2つのデュエルを、ファントム軍団を撃滅した謎のDホイーラーは後ろからしっかりと見ていた。
 遊哉も遊星も戦術的には素晴らしい。

 遊哉の方は舌戦も凄まじかったせいで遊星よりもデュエルの展開は遅かったが、シンクロチューナーを呼び出したターン数では勝っている。


 ――2人とも見事なものだ。まさかこの短時間で進化の道を見つけるとは。
    だが妙だな…遊星は兎も角、遊哉の精神はお世辞にも落ち着いてるとは言いがたい。
    寧ろドンドン闘気が高まっているようだが、其れでクリアマインドの境地に達する事ができるのか?


 生じた疑問。
 確かに2人を比べると、遊星の精神は落ち着き研ぎ澄まされた『明鏡止水』とも言うべき状態だ。
 だが遊哉の方は闘気が漲り、触れたモノを全て打ち崩さんばかりの状態。

 クリアマインドには程遠いと感じるが…


 「行くぞ緋渡!」
 「応よ!ぶっちぎるぜ遊星!!」


 「「クリアマインド!」」



 「何だと!?」

 そんな事はお構い無しに何とクリアマインドを発動した。
 一瞬見間違いかとも思ったが、遊哉も確かにアクセルシンクロ独特のフィールドを作り出している。


 ――此れは一体…?まさか!私の考えが間違っていた?そうか、純粋な闘気もまた揺るがぬ意思には違いない。
    燃え滾るような純粋な闘気と迷わぬ心…此れもまた1つのクリアマインドか!


 その通りだった。
 揺ぎ無い意志と曇りなき心は人によって異なる。
 遊哉も遊星も夫々の『クリアマインド』に開眼したのだ。

 そして…


 「レベル8、シンクロモンスター炎龍皇−アグニに、レベル2、シンクロチューナーフォーミュラ・ドラゴンをチューニング!
  燃え滾る轟炎の双眸、そして焦熱の牙よ万物を焼き尽しその姿を示現せよ!」

 「レベル8、シンクロモンスタースターダスト・ドラゴンに、レベル2、シンクロチューナーフォーミュラ・シンクロンをチューニング。
  集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く。光射す道となれ!」


 「「アクセルシンクロォォォォォォォォォ!!!」」



 ――バシュン!!



 「なに!?」
 「消えたデスってぇ!?」


 限界を超えた速度で遊哉と遊星が姿を消す。
 だが、此れこそが進化の時!


 「爆炎の化神『真炎龍皇−カグヅチ』!」
 「限界を超えた我が力…受けてみるか!?」
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700→5200(皇の秘術〜絆〜、効果)


 「生来せよ『シューティング・スター・ドラゴン』!」
 「ショァァァァァァァ!」
 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300


 光と共に現われた2人と2体の龍。
 シンクロを超えたシンクロ…アクセルシンクロが今此処に覚醒した!






 *補足



 皇の秘術〜絆〜
 永続罠
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「龍皇」と名の付くモンスターの攻撃力は、
 自分の墓地のドラゴン族モンスター1体に付き300ポイントアップする。



 シンクロ・デモリション
 通常罠
 自分フィールド上のシンクロモンスター1体を選択して発動する。
 選択したモンスターをエクストラデッキに戻し、そのモンスターの素材となったモンスター1組を自分の墓地から特殊召喚する。



 シンクロンレイズ
 通常罠
 自分のデッキから『シンクロン』と名の付くチューナーモンスター1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効になる。



 チューナーリバイブ
 通常罠
 自分の墓地からチューナーモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になる。



 機皇服従
 通常罠
 自分フィールド上に「機皇帝」と名の付くモンスターが表側で存在する場合に発動できる。
 エンドフェイズまで相手モンスターの効果を無効にする。




















  To Be Continued… 

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