小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 遊哉と遊星が『アクセルシンクロ』を習得し、2体の機皇帝を倒した直後に現われた第3の機皇帝『機皇帝レギアス』。

 そして其れの操り主と思われる女性――簪・J・雪花。
 ファントムの実質的リーダーと名乗るこの女性に対し…

 「お前がファントムのリーダー?…おい、一つ聞いていいか?」

 「何?」

 「リーダーって事はだ…その腐れ脳の変態はお前が入れたのか!?」

 「私の名誉の為にもそれだけは絶対違うって言っておくわ!」

 遊哉がしたのは重要なような如何でも良いような質問であった…











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel45
 『襲撃鎮圧、謎と謎』











 「オメェじゃないとすると…遊星と戦ってたそっちのおっさんか!?」

 「正解。まったく、こいつはデュエリストを見る目はあるのに人を見る目はからきしなんだ。
  緋渡遊哉、お前が『闘いの王国』で倒したアギトもディックが探し出した奴で、アレをそそのかしてノーバディを組織させたんだってさ。」

 「なんとね……あの誇大妄想の引き篭もりもそうだったのか…あ〜〜〜…言っちゃなんだがその変態は捨てた方が良くねぇか?」

 「そうしたいんだけど、今から腕の立つデュエリストを探し出して引き込むのも骨が折れる。WRG1終了までは置いとくつもり。」

 「終わったらどうすんだ?」

 「とりあえず半殺し。」

 「良し、そん時は俺も呼んでくれ。」

 「承知、同盟締結。」


 「……一体何を話しているんだ?」

 「「変態抹殺計画!」」

 話の方向性が何やらおかしくなってきた所で遊星が控えめに突っ込んでみるものの返ってきたのは見事なユニゾン!
 一応敵対関係であるはずなのに、遊哉と雪花は『変態撲滅』の方向では考えが一致しているらしい。(謎)


 「…まぁ冗談は此れくらいにしておいてだ。変態抹殺はガチで本気だけど。テメェ等は一体何をしようとしてやがるんだ?」

 「変態滅殺の算段は又後でするとして…おふざけは此れくらいにして…何をしようと、か…」

 「ちょっとぉ!2人で不穏な事考えてんじゃないわよ!!」


 「「黙れ変態!!」」

 再びユニゾンで変態を黙らせる。
 矢張り妙に息が合っている。

 「お前が居ると話が進まないわ…レギアス!」
 「ギュイィィィン…!」


 「え?…いやぁぁぁぁぁん!!」

 雪花がレギアスに命じ、フレディは何処かへと投げ飛ばされてしまった。
 とは言えこの手の変態は、死んでも生き返るだろうから問題は無さそうだ。


 「役に立たない馬鹿ほど疲れるモノは無いわ…」

 「リーダーってのも楽じゃ無さそうだな。」
 「鬼柳みたいな奴だったら楽にリーダーを務めそうだが…」

 「チーム遊戯王のチームリーダーは優秀らしいね。…と本題。何をしようとしている…だったか?」


 変態を除外した事で漸く話が進みそうだ。
 この雪花と言う女性、ファントムでありながら必要なら話しに応じる柔軟性もあるようだ。


 「目的…言うと思う?」

 「思わねぇよ。だがな、卑劣な手段でデュエルを汚す連中はゆるさねぇ!それだけは憶えておけ固羅!」
 「俺達のデュエルに掛ける思いを、お前達の好きにはさせない!」


 遊哉も遊星も、相手の目的がなんであろうともデュエルを楽しむのを邪魔されるのは我慢ならなかった。
 ならばその諸悪の根源『ファントム』は何よりも優先して滅すべき存在だったのだ。


 「熱いな2人とも…なら勝ち上がってきなさい!私達もWRG1にはエントリーして決勝トーナメントへの出場権は得ているわ。
  大会で会うのを楽しみにしている…それじゃあね。」

 次の瞬間、レギアスは雪花諸共その姿を消した。


 「待てオラァ!!」

 すぐさま遊哉が追いかけようとも既に姿は無い。
 まるでこの場から消えたように…


 「緋渡…」

 「大丈夫だ遊星。ここで駄目なら次があるぜ!誰が相手だろうと俺達『チーム遊戯王』に敵はねぇ!
  つーか、アイツ何モンだ?さっきの機皇帝、明らかに実体化してたよな?」

 「あぁ、若しかしたらアキと同じような力を持っているのかもしれないな…」

 レギアス共々消えた後で湧いた疑問。
 確かに雪花はレギアスの肩の部分に乗っていた事から、モンスターが実体化していたのは間違いない。


 「それで間違いではない。だが、彼女の場合は十六夜アキとは違い後天的に得た力ではあるが…」

 で、その答えは意外にも、あの謎のDホイーラーから齎された。
 バイザー型のサングラスのせいで表情は分からないが、機皇帝が居た場所を睨みつけているように見える。

 「そうなのか?」

 「彼女は『超能力開発機構』と言う、今は無い研究機関に居た。機皇帝と共に消えたのも彼女の力だろう。」

 「よく知ってんな!?」

 「ファントムの事は可能な限り調べ上げている。」

 「成程…それでアンタは一体何者なんだ?」

 今度の疑問はDホイーラーに向けて発せられた。
 目の前のこの男は敵では無いだろうが、味方とも言い切れないような部分があり正直判別がつかない。

 「俺と緋渡にアクセルシンクロを授けたお前の目的は一体…」

 自分達に有益な事を教えてくれたところを見る限り、敵対するという事は無さそうだが怪しい感じがするのは否めない。


 「…君達2人ならばアクセルシンクロを体得する事ができると私のデュエリストの勘が告げていた、其れに従ったまでの事。
  ファントムは私にとっても倒すべき相手だが、私1人では限界と言うものが有る。平たく言えば奴等に対抗できる者が欲しかった。」

 「其れで俺と遊星か?別に良いけどよぉ…だがな俺達『チーム遊戯王』を甘く見るなよ?
  機皇帝だろうがファントムだろうが、俺達の前に立ち塞がるならデュエルで打ち倒すだけだ!
  俺と遊星だけじゃねぇ、霧恵も十六夜もシェリーも京介もデュエルで暴力働く奴等なんぞに負けはしないぜ!」

 「ふ…そうだな。私が見込んだだけの事はある。緋渡遊哉、不動遊星、又会おう。」

 吼えた遊哉に満足そうに笑うと、Dホイーラーは特徴的なDホイールを起動させ凄まじいスピードでその場から去っていった。


 「…アクセルシンクロは会得したが、如何にもめんどくせぇ事になりそうだな遊星よぉ…?」

 「あぁ…だが、俺達の絆の前に敵は無い。そうだろ緋渡?」

 「ったりめーだ!大体にしてなぁ、この俺の前に『悪役』として立ち塞がるのが大きな間違いだぜ!
  真の悪役はこの俺!そして真の正統派はお前だぜ遊星?最強の悪役と最強の正統派が組んだらその前に敵はねぇ!」

 何時も以上にとんでもないことをぶちまけてくれた。
 如何にも『アクセルシンクロ』を体得した事で、良い感じにテンションが上がっているらしい。

 だが、遊哉の『悪役モード』は特に実害は無い上に、絶好調の証でもあるので遊星の対処もなれたものだ。

 「ふ、そうだな。俺とお前の新たな力と、俺達『チーム遊戯王』の絆でファントムを倒そう!」

 「おうよ!」


 カツンと拳を合わせ、改めてファントム打倒を誓う2人だった。








 ――――――








 ――その夜・霧恵のコンドミニアム



 『…大会出場者を狙った正体不明のDホイーラー軍団の襲撃でデュエルレーンが被害を受け、
  大会運営側は補修の為に決勝トーナメントを10日間延期する事を決定しました。
  また、襲撃犯の詳細と行方は警察が全力を上げて操作中ですが、今の所有力な手掛かりは無いという事です。
  では次のニュースです。本日…』



 ――プツッ



 「やっぱり延期になっちゃったか。エリア達が戻ってきたってのにちょっと残念。」

 「仕方ないわ霧恵。レーンが万全でなくてはライディング・デュエルは出来ないもの。」


 リビングに集結したチーム遊戯王のメンバー&ピットクルーはテレビで今日の襲撃事件のことを見ていた。
 破損したレーン修復の為に決勝トーナメントは10日間延期。

 霧恵が言うように少しばかり残念だが、此れは仕方の無い事だ。
 シェリーの言うようにレーンが万全でないと『公式なライディング・デュエル』は行う事ができないのだ。(破損したレーンでは公平さを欠く為)

 なので決勝トーナメントに駒を進めたチームは10日間の空き時間が出来た事になる。
 そうなれば当然…


 「おし、遊星!10日間使って皆のDホイールの性能をパワーアップさせようぜ!」

 「良いな。決勝トーナメントともなれば予選よりも更に強いDホイーラーが出てくるはずだ。性能を向上させておいて損はないな。」


 チームの2トップによるDホイール強化プラン始動!
 遊哉が直感で全員のDホイールの強化すべき長所を見抜き、遊星が其れを理論的に組みなおして強化する。
 この方法で既製品では到達する事の出来ない性能へと機体を進化させて来たのだから驚く他ないだろう。


 「満足を超えた満足に出会える気がするな…」

 「まぁあの2人だからね。よっし!だったらアタシ等は決勝に上がってきた他のチームの事を調べて、どのチームの時に誰が出るかを決めよう。」


 で、霧恵達は決勝トーナメントでのあらゆる相手チームを想定しての出場メンバー決め。
 この辺の役割の分担もチームの強さなのだろう。








 ――――――








 ――同刻・童美野埠頭・ファントムアジト



 「アクセルシンクロ…対機皇帝の力を有したシンクロモンスターか…厄介な。」

 「自業自得よディック。お前と変態が出しゃばらなければ、あの2人が覚醒する事は無かったかもしれないのよ?」

 「むぅ…」

 昼間の襲撃の事で、ディックは雪花に手痛い駄目出しを食らっていた。
 確かにトドメを刺すつもりで出て行ったのが、結果として遊哉と遊星の強化に繋がってしまったのだから駄目出しもしたくなるだろう。

 因みにレギアスに投げ飛ばされた変態は、此処に戻ってきた瞬間に雪花の『延髄切り』で意識を刈り取られ部屋の隅で放置状態だ。

 「まぁ良いわ。決勝トーナメントの、それも決勝戦で戦う事が出来れば最高。…さぁ楽しい事が始まるわ…」


 邪悪に歪んだ雪花の笑顔は、決勝トーナメントでの波乱を予感させた…








 ――――――








 ――童美野町郊外・開発地区



 新たに開発が決まっているこの地区に不気味に佇む朽ちた洋館がある。
 その内部、エントランスで…



 ――ボウ…



 1枚のエクシーズのカードが瘴気を纏った状態で浮かんでいた。


 そしてその瘴気はドンドン強くなり、洋館全てを覆い尽くしてしまう。


 瘴気が館の全てを覆った頃、エクシーズのカードは闇に溶け込むように消えた。

 後に残るのは静寂のみ。
 それだけならば夜の廃洋館ですむだろう。






 そう、エントランスに有るひび割れた大鏡に『邪悪に染まった霧恵の姿』が映りこんでさえ居なければ…




















  To Be Continued… 

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