小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 『なななな何と〜〜〜!!チームレックスのラストホイーラー石垣善次郎が召喚したのは『暴虐竜−イビルジョー』!
  シングルデュエルでは先ずお目にかかる事の出来ない、正に『幻のモンスター』だ〜〜〜!!!!!
  様々な強力効果を持つとされているイビルジョーを相手に如何戦う、チーム遊戯王十六夜アキ〜〜!!!』


 チームレックスの3人目、石垣善次郎が召喚してきたのは全くの未知のモンスター『暴虐竜−イビルジョー』
 太古の世界で生態系の頂点に君臨していたであろう事が容易に想像できるその姿に、アキも思わず息を呑む。

 「此れの召喚を狙っていたのね…」
 アキ:LP1000   SC2


 「此れこそが最強の恐竜だ。その力たっぷり見せてやるぜ!!」
 善次郎:LP3500  SC6

 「ガァァァァァァアッァァァァ!!」
 暴虐竜−イビルジョー:ATK?


 太鼓の眠りより覚めた竜の咆哮が会場を震わせる。
 1回戦もいよいよ佳境だ。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel50
 『ノンストップデュエル』











 「暴虐竜−イビルジョーの効果!イビルジョーの攻撃力と守備力はこのカードのレベル×300ポイントアップする。
  イビルジョーのレベルは10、今は攻撃力、守備力共に3000ってところだ。」
 暴虐竜−イビルジョー:ATK?→3000


 「このターンのバトルは終了してるから攻撃は出来ない。カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 攻撃力3000は確かに強力。
 だが、それだけでは複雑な召喚方法を考えるといささか実入りが少ないように感じる。
 尤も未だ他の能力があるんだろうが。

 「私のターン。」


 アキ:SC2→3
 善次郎:SC6→7


 ――攻撃力3000…でもそれなら倒せる!
 「私は『アーマード・ローズ』を召喚。」
 アーマード・ローズ:ATK1000


 「アーマード・ローズの効果発動。
  1ターンに1度、私のフィールド上の『ブラック・ローズ・ドラゴン』か『ローズ』と名の付くモンスターに装備カードとして装備できる。
  そして装備モンスターの攻撃力は600ポイントアップする。
  更に『ブラック・ローズ・ドラゴン』がこのカードを装備した場合、バトル中に2回攻撃できるわ!」
 「ショアァァァァ!!」
 ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400→3000(2回攻撃可能)


 アキも新たなモンスターの効果でブラック・ローズを強化して攻撃力を同じにしてきた。
 双方のフィールドに攻撃力3000のモンスターが並ぶと言うのも中々に迫力があるものだ。

 「バトル!ブラック・ローズ・ドラゴンで暴虐竜−イビルジョーを攻撃!」

 そして攻撃。
 此れだけならば相打ち狙いの一撃だが、当然そんな事は無い。

 「そしてこの瞬間、墓地の『リバイバル・ブラック・ローズ』の効果発動!
  墓地のこのカードを除外することで、このターンのみブラック・ローズは破壊されないわ。
  よってこの戦闘では攻撃力が同等の場合、一方的に戦闘破壊が出来る!焼き尽くせ『ブラック・ローズ・フレア』!」

 破壊耐性を得たブラック・ローズ・ドラゴンの黒い炎がイビルジョーを焼く尽くさんと襲い掛かる。
 しかし、複雑な召喚条件を満たして現れた暴虐竜とてただでやられはしない。

 「流石にやるな十六夜アキ!だが、イビルジョーの効果発動!
  イビルジョーは戦闘では破壊されず、1ターンに1度だけ相手のカードでは破壊されない!」

 こちらも破壊耐性を発動。
 攻撃力は互角で互いに破壊耐性となればバトルは引き分け。
 ブラック・ローズの黒い炎と、イビルジョーの赤黒い息吹は相殺しバトルは終了だ。

 「破壊耐性持ち…流石に苦労して召喚しただけのことはあるわ。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!」


 アキ:SC3→4
 善次郎:SC6→7


 「『スピードワールド2』の効果発動!スピードカウンターを7個取り除いてデッキからカードを1枚ドローするぜ!」
 善次郎:SC7→0


 スピードカウンターの減少で、善次郎のDホイールが減速し、アキとの距離が離れる。
 だが、1ドローでの戦術増加は強力だ。

 「俺は『ポイズン・レックス』を攻撃表示で召喚!」
 ポイズン・レックス:ATK1300


 「バトル!ポイズン・レックスでブラック・ローズ・ドラゴンを攻撃!」

 「また自爆特攻!?」

 チームレックスが度々見せた『自爆特攻戦術』。
 つまりこのモンスターも戦闘破壊されることが前提のモンスターなのだろう。

 当然の如く、ブラック・ローズ・ドラゴンの反撃でポイズン・レックスは破壊される。

 「ポイズン・レックスが攻撃することで発生する、互いのプレイヤーへのダメージは0になる。
  そして、ポイズン・レックスを戦闘破壊したモンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする!」

 「何ですって!?」
 ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK3000→2000


 自爆特攻によって一気に弱体化。
 もとより、攻撃力が互角であっても、戦闘耐性が無くなったブラック・ローズはイビルジョーに一方的な戦闘破壊を喰らっていただろう。
 だが、弱体化したことでアキにも戦闘ダメージが入る。

 「追撃だ!イビルジョーよ、ブラック・ローズ・ドラゴンを喰らい尽くせぇ!!」
 「グガァァァァ!!」


 イビルジョーの巨大な口がブラック・ローズ・ドラゴンを丸呑みにし消し去る。
 アキに発生するダメージは1000、終わりだが…


 アキ:LP1000→0
 「く…!未だよ!トラップ発動『ロスト・スター・ディセント』!この効果で墓地からブラック・ローズ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!」
 ブラック・ローズ・ドラゴン:DEF1800→0   LV7→6


 「更にトラップ発動『シンクロ活性液』。手札から植物族のチューナー1体を特殊召喚するわ!
  この効果で手札からチューナーモンスター『ウィード』を特殊召喚!」
 ウィード:ATK1200


 転んでも只では起きない。
 ラストホイーラーの遊星の為にフィールドを整えておく。

 だが、善次郎の方もモンスター効果発動だ。

 「やるな。流石だぜ?だが俺にもイビルジョーの効果がある!
  イビルジョーが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、破壊したモンスターのレベル分自身のレベルをアップさせる!
  ブラック・ローズのレベルは7!よってイビルジョーのレベルは7つ上がって17!
  そしてイビルジョーの攻撃力は自分のレベル×300ポイントアップ!これで攻撃力は2100ポイントアップだ!!」
 「ウガァァァァ!!」
 暴虐竜−イビルジョー:ATK3000→5100   LV10→17


 恐るべき効果だ。
 元々の攻撃力が高い上に、モンスターを戦闘で破壊するたびに攻撃力が増していく。
 正に最強の捕食者にふさわしい能力だ。

 「なんて効果…!でも、遊星は強いわよ?」

 「望むところ。不動遊星、相手にとって不足は無い!」

 やるべき事をやったアキはそのままピットイン。



 「やられたわ。まさかあんなモンスターを召喚してくるなんて…。一応フィールドは整えておいたわ…お願いね遊星。」

 「あぁ、任せておけ。」

 アキからバトンを受け取り、遊星はすぐさま自分のDホイールに。

 「トンでもねぇ奴が出てきたがよ、遊星少し楽しんでるだろ?」

 「まぁな。あの最強の恐竜を前に、心が躍ってる。アレの前では俺は逆に挑戦者だ!」

 遊哉にそう答え、最強のモンスターを相手にすべく飛び出していく。
 その姿に迷いは感じられない。

 寧ろ、デュエリストととしての楽しむ姿勢が見て取れるくらいだ。

 「大丈夫なの?」

 「大丈夫だって。遊星は強えぇ。特に楽しんでる時の遊星は天下無敵のデュエリストだぜ!」

 イビルジョーの凶悪さを文字通り肌で感じたアキは心配そうだが、遊哉に言わせれば問題なし。

 遊星も一気に善次郎に並び、最終デュエルが開始される。





 『さぁ!チーム遊戯王もラストホイーラーの不動遊星が登場だ〜〜〜!!
  十六夜アキの残したモンスターを如何使う!?そしてこの最強のモンスターを相手に如何戦う!?
  大注目のラストホイーラー同士のデュエル!俺も観客も、この興奮はもう留まる所を知らないぞ〜〜〜!!!』




 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000   SC4
 善次郎:LP3500  SC0


 「俺のターン!行くぞ!レベル6のブラック・ローズ・ドラゴンに、レベル2のウィードをチューニング。
  集いし鼓動が、破壊の炎を巻き起こす。光指す道となれ!シンクロ召喚、滅ぼせ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
 「バォォォォォォォォ!!」
 レッド・デーモンズ・ドラゴン:ATK3000


 開始早々のシンクロ召喚。
 呼び出したのは究極の破壊の力を秘めた紅き魔龍。

 悪魔の如きその風貌は、イビルジョーの前でも霞む事が無い。
 とはいっても、レッド・デーモンズの攻撃力は3000。
 最高クラスの攻撃力ではあるが、5100のイビルジョーには及ばない。

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 此処は伏せ2でエンドだ。

 「俺のターン!」


 遊星:SC4→5
 善次郎:SC0→1


 「攻撃力3000のドラゴンか。だがイビルジョーには及ばないぜ!」

 「確かにそうだが、それはその効果があればこそ!手札から『エフェクト・ヴェーラー』の効果発動。
  手札からこのカードを捨て、相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!」
 「此れが僕の力!」


 効果が強いなら無効にすれば良い。
 バトル前にエフェクト・ヴェーラーの効果を発動し、イビルジョーの攻撃力を0にしようと試みる。
 この効果が成立すれば、イビルジョーの攻撃力は0になり、エンドフェイズ時に効果が復活しても攻撃力は最初の3000まで下がる。
 それならばまだ対処のしようもある。

 「効果無効だと?だが、永続トラップ『古生代の遺伝子』!このカードが存在する限り、俺の場の恐竜族の効果は無効にできないぜ!」

 しかし、此処はトラップで逆に対処される。
 効果が健全ならばイビルジョーの攻撃力は下がらない。

 「読んでいたのか?やるじゃないか。」

 「まぁな。俺達チームレックスは野生動物の凶暴さと冷静さを併せ持ったデュエリストだ。負ける気は無いぜ!
  行くぞ遊星!レッド・デーモンズもイビルジョーが喰らってくれるぜ!バトル、喰らい尽くせイビルジョー!」

 先程と同様、イビルジョーが眼前の敵を捕食せんと迫る。
 此れが決まるとまたしてもパワーアップ。
 手がつけられない化け物に成長してしまう。

 「そうは行かない!トラップ発動『ダブル1サモン』!手札と墓地からレベル1のモンスターを1体ずつ攻撃表示で特殊召喚する。
  手札から『ロード・ランナー』を、墓地から『エフェクト・ヴェーラー』を特殊召喚する!」
 「ぴよ。」
 ロード・ランナー:ATK300

 「ただいま〜!」
 エフェクト・ヴェーラー:ATK0


 「未だだ!トラップ発動『緊急同調』!この効果でバトルフェイズ中にモンスターをシンクロ召喚する!
  俺はレベル1のロード・ランナーに、レベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!」

 2枚のトラップを発動させ、相手ターンでのシンクロ召喚を発動。
 エフェクト・ヴェーラーの発動はレベル1のモンスターを墓地に置くのが本当の目的だったようだ。

 「集いし絆が、新たな速度の地平へ誘う。光射す道となれ!シンクロ召喚、希望の力、シンクロ・チューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」
 フォーミュラ・シンクロン:DEF1500


 そして呼び出されたのはシンクロチューナー。
 誰も聞いたことがないシンクロモンスターのチューナーに、会場は騒然となる。


 『ななな、何だ此れは!?シンクロモンスターのチューナーだと!?一体何者だ〜〜〜!?』


 チーム遊戯王のピットでも。

 「シンクロチューナー!?」
 「一体アレは…」

 皆一様に疑問が沸く。


 遊哉を除いて。

 ――アレをやる気か遊星。しかも新たにレッド・デーモンズを進化させるのか?魅せてくれるぜ全く!
 「よっしゃ!行け、遊星ぇぇぇ!!」

 遊星が何をするのか分かった遊哉は腹の底から力いっぱい叫ぶ。
 其れに呼応するように、Dホイールが速度を上げ遊哉と善次郎の距離は開く。



 「シンクロチューナー!?しかもその速度…遊星、お前何をしようとしてるんだ!?」

 予想外の事に善次郎も流石に動揺する。

 「イビルジョーの召喚は見事だった。ならば俺も、限界を超えた力で相手をする!クリアマインド!」


 ――ピキィィィン!


 「レベル8シンクロモンスター、レッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル2シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

 「なに!?緊急同調を使わずに俺のターンでシンクロ召喚だと!?」

 更に驚く効果が。
 だが、それでも止まらない!

 「集いし焔を纏いし炎魔が、進化の道を翔け上がる!光射す道となれ!アクセルシンクロォォォォォォォォ!」



 ――バシュン!!



 「消えた!?」


 『何と〜〜!行き成り消えたぞ不動遊星!一体何処に行った〜〜!!』


 更に眼前から突然消えた事で会場は、もう大騒ぎ状態だ。


 そして何処に行ったのかの答えは直ぐに出る。



 ――ヒィィィィン…!



 善次郎の背後から光が射し、其れはどんどん強くなる。

 「この光…ま、まさか!!」

 「轟来せよ、『クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン』!!」

 光が弾け、遊星と共に新たなモンスターが姿を現す。

 炎の如き真紅の身体に、4枚もの巨大な翼、そして赤みを帯びた銀の鬣と、3本の巨大な角は宛ら『魔王』だ。



 「グゴァァァァァァ!!!」
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK3500



 光の速さを受けて進化した破壊の魔龍の新たな姿。
 威風堂々たるその姿でイビルジョーの前に立ち塞がる。


 『す、凄まじい光景だ!!未知のシンクロ召喚で現れた見たことも無いドラゴン!
  此れは地獄より顕現した悪魔か、それとも天界すら打ち滅ぼした魔王なのか〜〜〜!?』



 「グルルルル…」

 「グゥゥゥゥ…」


 MCの解説に併せるように、2体のモンスターは低い唸り声を上げ、まるで威嚇しているようだ。


 「す、凄い!まさかこんなモンスターを召喚してくるなんて!イビルジョーの相手として不足無いぜ!」

 「望むところだ善次郎!俺も、お前が、お前達が召喚した最強の恐竜を必ず倒してみせる!」

 ラストホイーラー2人も退く気は毛頭無い。
 互いに最上級クラスのモンスターを従え、ライフの差は僅かに500ポイントしかない。

 状況的にはどちらが勝ってもおかしくは無いだろう。


 「バォォォォォォォォ!!」

 「ガァァァァァァァァ!!」


 魔王龍と暴虐竜の咆哮が、会場にこのチーム遊戯王vsチームレックスの最終決戦が始まったことを告げた。


 「行くぞ遊星!」

 「来い、善次郎!!」















   To Be Continued… 






 *登場カード補足




 暴虐竜−イビルジョー
 レベル10    闇属性
 恐竜族・効果
 このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側表示で存在し、
 効果でレベル5以上の恐竜族を10体以上除外している「化石保管室」と、表側表示で存在する「戦闘本能」と「恐獣裂破」、
 表側表示で存在するレベル7以上の恐竜族モンスターを墓地に送った場合にのみ特殊召喚出来る。
 このカードの攻撃力と守備力はこのカードのレベル×300ポイントアップする。
 このカードは戦闘では破壊されず、1ターンに1度、相手のカード効果では破壊されない。
 このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った場合、このカードのレベルは破壊したモンスターのレベル分アップする。
 このカードは相手がコントロールする永続魔法と永続罠の効果を受けない。
 ATK?    DEF?




 ポイズン・レックス
 レベル3    闇属性
 恐竜族・効果
 このカードが攻撃することで発生する戦闘ダメージは互いのプレイヤーとも0になる。
 このカードが戦闘で破壊され墓地に送られたとき、このカードを破壊したモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる。
 ATK1300    DEF800




 シンクロ活性液
 通常罠
 手札から植物族のチューナー1体を特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になる。




 ダブル1サモン
 通常罠
 自分の手札と墓地からレベル1のモンスターを、1体ずつ攻撃表示で特殊召喚する。




 古生代の遺伝子
 永続罠
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上の恐竜族モンスターの効果は無効にならない。

-50-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える