小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 WRG1の1回戦も今行われているデュエルで最終戦。
 其れを戦うのチームの1つは『チームEXAL』だ。

 間も無くそのデュエルも終わりを迎えるのだが…

 「オ〜ホッホッホ!!機皇帝ゼリエルでダイレクトアタックよ〜ん♪」

 「うおわぁぁぁぁ!!」
 LP1900→0


 戦っていたのは全身タイツの変態。
 あろう事かこの変態、此れで3人抜き達成だ。

 「ぐふ、ぐふふふふふ…決勝戦で待っててね〜ん、遊星ちゅわ〜〜ん!」


 「「死ね」」

 妄想全開の変態に向かって、客席からは遊哉が、チームEXALのピットからは簪が夫々金属バットを投擲したのは当然。
 ついでに客席からは黒い炎も放たれていたりした。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel51
 『神を従がえし者達』











 『フィニ〜ッシュ!勝者フレディ・ゴーン!準決勝進出を決めた最後のチームは、『チームEXAL』!
  見事なデュエルだったが、何だかとても気持ちが悪いぞフレディ・ゴーン!
  それからチームメイトの簪と客席の緋渡遊哉、金属バットを投げ込むのは危ないぞ〜?
  十六夜アキも、ブラック・ローズ・ドラゴンで攻撃するのは非常に危険極まりないから控えてくれ〜!』


 中々どうしてMCも会場を良く見ている。
 確かに危険な行為では有るだろう。(金属バットはコンクリート製のサーキットに突き刺さっている)


 「ちょ、コンクリの地面に突き刺さるってドンだけの力で投げてんの!?」

 「其れよりも味方からも攻撃されるあいつって一体…」

 「只の…変態ね。」

 遊哉に突っ込みが入るも、フレディ=変態は覆りそうに無い。
 本日、この会場にいる人間全員がそう認識しただろう。

 「あいつ等……絶対に決勝で打っ倒す。」

 「おぉ、やる気だね遊哉っち!」

 「で、大会終了後に変態は9割殺し!」

 「寧ろ殺る気全開!?」

 物騒である。
 まぁ、『全殺し』と言わないだけ、未だマシなのだろう。

 「やる気充分だな緋渡。だが、あいつ等と戦うには2回戦を勝たないとな。」

 で、こんな状態であっても平静を保つ遊星は流石だ。
 霧恵も落ち着いていは居るがこっちは『悪者モードにゃ何言おうと馬耳東風』と言った具合。

 付き合い長いと、ベクトルは違えどなれてしまう物らしい。

 「2回戦…『チームYAMATO』か。チームレックス以上に満足させてくれるんだろうな?」

 「『神のカード』を従がえたデュエリストって事だけど…如何だろうね?」

 2回戦の相手は、中々どうして凄そうな連中のようだ。
 尤も、1回戦のデュエルではその『神』とやらは姿を現さなかったのだが…








 ――――――








 『チームYAMATO』

 女性1人、男性2人の計3人のデュエリストからなるチームで、ピットクルーも一流所の整備士が集まっている。
 勿論、デュエリストも一筋縄では行かない連中だ。


 井沢・ダンカン・総一郎。
 チームのファーストホイーラーで、予選1回戦共にこの男1人で勝ち抜いてきた。
 圧倒的なパワーで攻める攻撃型のデュエリストだが、決勝トーナメント1回戦では神も召喚せずに3人抜き。
 チームYAMATOに所属する前は、ラスベガスでカジノの用心棒デュエリストだった。




 石沢影虎
 セカンドホイーラーを勤める、自称『世界最高のストリートダンサー』
 軽薄な見た目とは裏腹に、デュエルタクティクスは高いらしいが、未だ出番が無い為実力は未知数。
 チームYAMATO所属前の経歴についてもストリートダンサーであったらしい事意外は一切不明。
 趣味はナンパ。




 そしてチームリーダーの天津撫子
 古くから神事を執り行ってきた由緒ある神社の一人娘で神のカードは元々この神社に安置されていた。
 厳重な封印が施されていたが、彼女が触れた途端にその封印が解け、カードの所持者となった。
 その後、神が選んだ2人と共にチームを結成してWRG1に参加。
 参加目的は不明。
 話し方が古風であり、其れだけを聞いているととても17歳の少女とは思えない。






 以上が氷雨の調べたチームYAMATOの情報である。
 2回戦の相手が決まったと同時に、携帯端末(+独自情報網)を使って情報収集をした結果だ。

 「たった数時間で…相変わらず凄まじいまでの情報網ね。」

 「この情報網には流石に脱帽だな。」

 相変わらずの見事な情報収集力に霧恵と遊星も只感心するばかり。
 他のメンバーも勿論脱帽ものだ。

 「紙のカード?」

 「違う!」

 「…髪?」

 「其れも違う!」

 「もう可美さんで良いんじゃね?」

 「良くねぇ!誰だよ!?そんな相手じゃ、満足できねぇぜ!!」

 しかしながら、神が相手と聞いても遊哉は余裕綽々。
 寧ろ『神って何?』とでも言い出しそうな雰囲気だ。

 「神とか言ってる時点で不満足確定だろ。つーか『神のカード』は遊戯さんの『三幻神』以外には認めねぇ!!」

 「其れについては諸手を挙げて賛成だ!」

 突っ込みつつも鬼柳も意外と余裕な様子。


 というよりもこのチームの面子、誰が相手であっても恐れる事など有りはしない。
 己のデッキとデュエルタクティクスを信じているゆえ『何処から誰でも来い』状態なのだ。



 しかし、矢張り発言というものには気を付けるべきだろう。


 「ほう、中々吠えるのう御主等。ワシ等に勝つ心算か?」

 会場を後にしようとした一行の前に現れた古風な喋り方の少女。
 寄寓にも、今話していたチームYAMATOのリーダー天津撫子が、何時の間にか目の前にいた。

 いや、彼女だけではない。
 総一郎と影虎の2人も一緒だ。


 「はぁ?心算じゃねぇ、勝つんだよ!俺達『チーム遊戯王』がな。
  神だかなんだか知らねぇが、優勝までの道程に立ち塞がる奴は誰であろうと打っ倒すだけだぜ?」

 が、突然の登場にも驚かず、寧ろ逆挑発ともいえる一言を遊哉は言い放つ。

 「神のカード…本当に俺を満足させてくれるのか?」

 「アタシの霊魔導師達の相手になるのかな?神の力だって絶対とは言えないからね。」

 其れに続くように鬼柳と霧恵も追従挑発。
 勝負は明日だというのに、早くも火花が散っているようだ。


 「口だけは達者だのう。悪い事は言わぬ、明日のワシ等とのデュエルは棄権せい。
  1回戦は見事なデュエルであったが、幾ら主等が優れたデュエリストであろうと神には勝てぬ。
  棄権すれば神の逆鱗に触れ、無駄に傷つくこともないぞえ?」

 「ハッ、寝言は寝て言え、戯言はラリってから言えだぜ婆さんギャル。
  神に選ばれて最強のデュエリスト気取りかよ?そんなんじゃ俺達のデュエリスト魂には何一つ響かないぜ!」

 毒舌と挑発ならば遊哉の方が遥かに上手。
 会ったばかりの相手によくもまぁこれだけの事を言えるものだと、遊星達も微妙に感心してしまっている。

 「大体にして、神のカードだろうとも操るデュエリストは人間だろうが。
  幾ら強力なカードだって、デュエリストの腕前がヘッポコじゃ糞の役にも立たないんじゃねぇのか?」

 ハッキリ言って遊哉は、否遊星や霧恵達もこの手の相手は余り好きじゃない。
 強い力を手にした事で『自分は特別だ』と思っている者は…

 「主等…神を冒涜するか?…良かろう、ならば明日、神の裁きで主等を滅してくれる!」

 流石に言われて怒ったのか、撫子はチーム遊戯王の面々を睨み付けそう告げる。
 だが、その睨みも数多のデュエルを経験し、様々なデュエリストと戦ってきた遊哉達には全く無意味。


 「遊哉に挑発されてマジギレ?まぁそれくらいじゃなきゃアタシ等には絶対勝てないけどね。」

 「明日出るのは、俺と霧恵と遊哉だ。精々、俺に3タテされないようにしてくれよ?」

 恐れるどころか、明日のオーダーまで曝して言い放つ。
 例え舌戦であっても、チーム遊戯王は強かった。


 「オノレ、ワシ等を愚弄した事、後悔させてくれるぞ!…行くぞ総一郎、影虎!」

 「御意に。…我等を愚弄した事、精々悔やまぬようにな…!」

 「ま、神の一撃で吹っ飛ばされんなよ?俺達ゃ、神様の使いだからよ♪」

 捨て台詞とも、挑発とも取れるような取れないような一言を残し、チームYAMATOの面々は会場を後に。





 当然だが、この騒ぎは嗅覚鋭いマスコミが聞きつけ、即座にその日の夜のニュースで『壮絶なる前哨戦』として報道していた。

 これで明日の準決勝も、会場は超満員札止めは確実だろう。








 ――――――








 翌日――童実野中央レーン


 『レディ〜ス&ジェントルメン!WRG1もいよいよ準決勝だ〜〜!!
  その第1試合は、皆も知っている通り、昨日壮絶な舌戦での前哨戦を行ったチーム遊戯王vsチームYAMATO!
  1回戦で会場全体を大いに盛り上げるデュエルをしてくれたチーム遊戯王と、神のカードを持つチームYAMATOの対決!
  デュエルファンなら、この戦いは絶対に見逃せない〜〜!俺も力の限り実況しちゃうぞ〜〜!!』


 毎度お馴染み、MCの名物司会は今日も絶好調。
 大会の成功の一つがこの人の司会であることは先ず間違いないだろう。




 そして会場は予想通りの超満員!
 観客はデュエルが始まるのを今か今と待っている。


 『チーム遊戯王のファーストホイーラーは『無手札の鬼神』鬼柳京介!
  対するチームYAMATOのファーストホイーラーは『怒れる神を従がえた男』井坂・ダンカン・総一郎!』


 ファーストホイーラーの2人はスタートラインで準備を完了。
 後はシグナルの点灯を待つだけだ。


 「精々俺を、満足させてくれよな?」

 「ふん、ほざいていろ。神の力…見せてくれる!!」


 既に臨戦態勢。
 昨日の前哨戦は、思った以上に効いている様だ。


 『果たして怒れる神が煉獄を叩き潰すのか?それとも煉獄の鬼神が神をも喰らうのか!
  さぁ、鬼柳京介、井坂・ダンカン・総一郎、2人とも準備は良いか〜〜!?』



 ――ピッ、ピッ…



 MCの司会に合わせるようにシグナルが点灯し、スタートまでのカウントダウンが開始される。
 会場も、この一時だけは静寂に包まれる。



 ――ピーーーッ!!



 シグナルグリーン点灯。
 2台は同時にスタートし、ライディングデュエルお決まりのデッドヒートが開始。


 会場の静寂は破られ、一気に大盛り上がりだ。

 マシン性能は略互角。
 だが、Dホイーラーとしてのテクニックと度胸は鬼柳の方に分が有る。

 第1コーナー直前で、急加速して略直角に折れるようにしてコーナーを走破。
 一歩間違えれば転倒しかねない強引なコーナーリングだったが、其れが又会場を沸かせる。


 『何と言うライディングテクニックだ、鬼柳京介〜〜!デュエルよりも先に凄まじいものを見せてもらったぞ〜〜!
  さぁ、此れで先攻は、チーム遊戯王・鬼柳京介に決定だ〜〜!
  それじゃあ行ってみようか〜!?ライディングデュエル、アクセラ〜〜〜レ〜ショ〜〜〜〜ン!!』



 「「デュエル!!」」


 鬼柳:LP4000   SC0
 ダンカン:LP4000   SC0




 空が、少し曇り始めていた…















   To Be Continued… 

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