小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 嵐が吹き荒れ、雷鳴轟くサーキット。

 「マダマダだ…もっと満足させてくれよ?」
 鬼柳:LP0   SC7
 煉獄龍 オーガ・ドラグーン:ATK3000
 煉獄神 ナハトヴァール:ATK3000


 「ぐぬぅ…」
 ダンカン:LP4000   SC3
 大和神−スサノオ:ATK3500


 対峙するのは怒れる神と、煉獄の支配者たる龍と女神。


 煉獄の執念で続行されているデュエル。
 その結末や如何に…











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel54
 『神と煉獄と満足と』











 『何と言うことだ〜〜!一度はライフ尽きた鬼柳京介、恐るべき執念でデュエルは続行〜〜!
  ライフが0になっても戦い続けるとは、凄まじい決闘本能だ〜〜〜!!!』


 ライフが尽きて尚、デュエルを続ける鬼柳のハンドレス究極コンボに会場はざわめいている。
 『神』を相手取っての、この大胆な戦術は確かに驚きだろう。

 「俺のターン!」


 鬼柳:SC7→8
 ダンカン:SC3→4


 「ドローフェイズにナハトの効果発動!
  カードをドローする代わりに、デッキから『インフェルニティ』又は『煉獄』モンスター1体を特殊召喚、
  或いは、魔法か罠1枚を選択してフィールドに伏せる事が出来る!」

 「な、其れは…!」

 「そうだ!ナハトが居る限り、俺は無手札状態を完全に維持したままフィールドを整える事ができる!
  俺はナハトの効果で、デッキから罠カードを選択しフィールドにセットするぜ。」

 煉獄の女神の恐るべき効果。
 ハンドレスを完全に維持したままの戦術拡大。

 ハンドレスの数少ない弱点『ドローフェイズには無手札状態が崩れる』は此れで消え去った事になる。

 「更に墓地の『インフェルニティ・クィーン』の効果。
  手札0でこのカードが墓地に存在する場合、俺のフィールドの『インフェルニティ』
  或いは『煉獄』と名の付くモンスター1体は直接攻撃が出来る!この効果をナハトに適用!」

 「攻撃力3000でダイレクトアタックだとぉ!?」

 更なる攻勢。
 手札0限定とは言え、このコンボは強烈無比と言う他無い。
 どんなモンスターを出そうとも簡単にその壁は越えられてしまうからだ。

 「行くぜ!煉獄神 ナハトヴァールでダイレクトアタック!吹き飛ばせ『ブルーティガーエミッション』!」

 「そう易々と…!トラップ発動『古の魔鏡』!
  私のフィールドに『大和』と名の付くモンスターが存在する場合に、相手が攻撃宣言をした時発動!
  その攻撃を無効にし、相手フィールド上のモンスターを全て破壊しゲームから除外する!
  神に触れることは何人にも敵わず!これで、亡者の如き貴様の戦術も此処までだ!!」

 古めかしい鏡が現れ、ナハトの攻撃を跳ね返さんとする。
 オーガ・ドラグーンが破壊されたらその時点で鬼柳の負けだが…

 「甘いんだよ!オーガ・ドラグーンの効果発動!
  手札が0枚の時、1ターンに1度、相手の魔法、罠カードの発動を無効にして破壊する!
  そしてこの効果を使った場合、オーガ・ドラグーンの攻撃力はエンドフェイズまで500ポイントアップする!」
 煉獄龍 オーガ・ドラグーン:ATK3000→3500


 「何だとぉ!?」

 現れた鏡も、煉獄の龍が放った炎で粉砕され、その力は発揮できない。
 つまり、ナハトの攻撃は止まらない事になる。


 「Blutiger Emission」



 ――ドォォォン!!



 「むおわぁぁぁぁぁ!!!」
 ダンカン:LP4000→1000


 一気にライフが削り取られる。
 神を従がえていても、それがまるで意味を成さないダイレクトアタックは凄まじいものがある。

 「ハッ、神召喚で勝った気で居たかぁ?残念だったな、ついでのその神とやらにも退場してもらうぜ!
  殺れオーガ・ドラグーン、スサノオを焼き尽くせ!『煉獄混沌劫火(インフェルニティ・カオス・バースト)』!!」

 「自滅する気か!?攻撃力は互角…オーガ・ドラグーンが破壊されたら貴様は負けるはずだ!」

 「ハンドレスを舐めるなよ?墓地の『インフェルニティ・ビショップ』の効果!
  俺の手札が0の時、『インフェルニティ』又は『煉獄』と名の付くモンスター1体は破壊されねぇ!
  この効果の対象は当然『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』!この意味が解るよな!?」

 「破壊不能のオーガ・ドラグーン……な、まさか!!」



 ――ゴォォォォォォ!



 その意味に気付くと同時に、スサノオがオーガ・ドラグーンに焼き尽くされる。
 攻撃力は互角だが、完全破壊耐性をその身に宿したオーガ・ドラグーンは一切の無傷。

 「そのまさかだ!オーガ・ドラグーンが零門(ゼロ・ゲート)によって呼び出され、ナハトが降臨しクィーンとビショップが墓地に蠢く。
  この状況が完成した時、何者の…其れこそ神の支配すら受け付けない『無の煉獄』が完成する。
  此れこそが究極のゼロ…『無手札必殺零式(ハンドレスコンボ・ゼロ)』だ!ターンエンド!」


 正に神をも恐れぬ煉獄の力。
 この布陣が完成した暁は、確かに神ですら其処に干渉する事は出来そうに無い。

 「何と言う…だが、神は不滅!スサノオは破壊された場合、エンドフェイズに復活し相手フィールドのカード1枚を破壊する!」
 大和神−スサノオ:ATK3500


 「だが、どのカードを破壊する?オーガ・ドラグーンは破壊不可!ナハトもまた不滅!この伏せカードを破壊する事しか出来ねぇ!」

 更に、この状況は神の効果をも操作する。
 確かにこの状況では、伏せカードを破壊するしか有効な手になりそうはない。

 「神の効果は強制ゆえ、必ず破壊せねばならぬ…ならば望み通りその伏せカードを破壊してくれる!」

 スサノオの矛がリバースカードを突き刺し霧散させる。



 だが、そのカードは表になった状態で再び現れた。

 「残念だがそいつは悪手だ!お前が破壊したのは『ハンドレスミラージュ』!
  手札0の時にセットされたこのカードが破壊された時墓地の『インフェルニティ』か『煉獄』を特殊召喚する!
  俺が墓地より呼び戻すのは『イフェルニティ・デス・フェニックス』!」
 インフェルニティ・デス・フェニックス:ATK3000


 再び現れた黒き不死鳥。
 神の効果を逆手にとっての見事な一発。

 鬼柳は無手札の力で、完全に神を手玉にとっている様だ。


 「く…貴様…!私のターン!」


 鬼柳:SC8→9
 ダンカン:SC4→5



 そして逆に、神を従がえたダンカンは焦りまくっていた。


 ――馬鹿な…ありえん、ありえんぞ!!神の力が及ばぬなど……神は絶対の存在のはずだ!
    だが、如何する?オーガ・ドラグーンの破壊は不能、ナハトヴァールは不滅、削るべき奴のライフは既に0…



 最強と信じた神の力が及ばぬこの状況では焦るのも仕方ないだろう。
 更には、この煉獄を突破する手立てが思いつかない事も、焦りに拍車を掛けていた。



 ――だが、私の手札に対抗策は…
 「…くぬ…ターンエンド…」

 そして本当に何も思いつかなかったのだろう。
 何もせずにターンを消化。

 カードを伏せる事すらしないでだ。


 「万策尽きたか?俺のターン!!」


 鬼柳:SC9→10
 ダンカン:SC5→6



 「ナハトの効果で、デッキからトラップを選択しフィールドに伏せる。そして墓地のクィーンの効果をオーガ・ドラグーンに適応!」

 再度の究極コンボ。
 防ぐ手立ては……無い。

 「バトルだ!オーガ・ドラグーンでプレイヤーにダイレクトアタック!焼き尽くせ『煉獄混沌劫火(インフェルニティ・カオス・バースト)ォ』!」



 ――ゴォォォォォォォ!



 「ぬおわぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ダンカン:LP1000→0


 煉獄の劫火がダンカンを襲い、残るライフを焼き尽くす。
 ルール上、神はセカンドホイーラーに受け継がれるが、兎に角先手を取ったのはチーム遊戯王だ。


 『決まった〜〜!!なんとライフ0からの逆転劇〜〜!無手札の鬼神が神を屠った〜〜〜!!
  ファーストデュエルを制したのはチーム遊戯王・鬼柳京介〜〜!!』


 大歓声。
 予想外の逆転劇に、神を寄せ付けなかった戦術がデュエルファンを興奮させたようだ。


 「…神ってのに少しは期待したが…まるで期待外れだ。こんなんじゃ満足できねぇな。」

 「く…クソ…!だが、影虎は強いぞ…簡単に勝てると思わぬことだ…!」

 「ふん、その手のセリフは聞き飽きたぜ!」

 勝った鬼柳はDホイールのスピードを上げ、反対にダンカンはピットイン。
 勢いと流れは完全にチーム遊戯王が掴んだ形だ。








 ――――――








 「凄い…!」

 「殆ど攻略不能の煉獄…此れが鬼柳の最終奥義…」

 そのチーム遊戯王のピットでは、初めて見る鬼柳のコンボにアキと霧恵が驚いていた。
 いや、過去に見たことがある遊哉と遊星、シェリーも『相変わらずとんでもない』と言った表情だ。

 「けど、鬼柳のキャラがコンボ完成してから変わった気がするんだけど…アタシの気のせい?」

 「いんや、実際変わってる。アレはな…『鬼柳京介・煉獄モード』!又の名を『満足戦士サティスファクションΩ』と言う!」

 「うん、意味解らん。」

 鬼柳のキャラ変動が気になった霧恵だが、遊哉から返ってきた答えはなんとも…言わんとすることは解るが。

 「つまり今の鬼柳はテンションが最高に上がってるんだ。」

 「私達も見るのは久しぶりだけど、あの状態の京介は何時もよりも更に強いわ。」

 で、遊星とシェリーで補足説明。


 確かにテンションが上がってる今の鬼柳が負ける姿は想像し辛い物がある。
 だからと言ってもデュエルに油断は禁物だが…

 「成程ね。けど、2人目は全くの未知数。神の力も…油断は禁物ね。」

 アキの言う事ももっともだった。








 ――――――








 一方でチームYAMATOのピット。


 「申し訳ありません撫子様。神を従がえながらこの様な無様な…」

 「なに、主を戦わせすぎたワシにも責はあろう。研究する機会を相手に与えたようなものじゃからのう。
  しかし、煉獄の力とは……本当に神の力を恐れぬ輩じゃ…油断するなよ影虎?」

 「ま〜かせろって撫子ちゃん。俺の『神』なら、あのロン毛野郎を倒すくらいは訳無いぜ!」

 素早いピットワークでセカンドホイーラーの『石沢影虎』にバトンが渡されている。
 スサノオはそのまま受け継がれた状態だ。

 「すまぬ影虎…我が神も存分に使ってくれ!」

 「任せな総一郎!こっから3タテしてやるぜ!見てろよ俺様の華麗なダンスを!」

 吠え、一気にピットを飛び出す。
 ファーストホイーラーのダンカンとはある意味真逆の人間のようだ。

 「我が同胞ながら軽いのう…アレが神の好みだったんじゃろうか?」

 「其れについては言わぬ方が良いかと…」

 撫子とダンカンも、影虎という男は良く分らない様だった。








 ――――――








 『さぁ、素早いピットワークでチームYAMATOのセカンドホイーラー『石沢影虎』が登場だ〜〜!
  この大会、初めての登場となる実量未知数のデュエリスト〜〜!果たしてその実力は!?
  そして、この煉獄を突破する事はできるのか〜〜〜!!!?』



 飛び出した影虎のDホイールはスピード重視なのか、あっという間に鬼柳に並び並走状態に。
 ライディングテクニックはまずまずと言ったところだ。

 「…お前は俺を満足させてくれるんだろうな?さっきのデュエルじゃ全然足りないぜ!」

 「おうよ、この『天才ダンシングデュエリスト』石沢影虎様の華麗なデュエルで存分に満足させてやるぜ!」

 「なら期待させてもらおうか?」


 並走しながら既に火花。
 従がえたモンスター達でさえ、闘気をぶつけ合せているかのようだ。


 『このままチーム遊戯王が突っ走るのか?それともチームYAMATOがタイに持ち込むのか〜〜!?』



 「「デュエル!!」」


 鬼柳:LP0    SC10
 影虎:LP4000    SC6



 其れに呼応するように会場も熱気が高まる。



 セカンドデュエル――開始!



















   To Be Continued… 






 *登場カード補足





 ハンドレスミラージュ
 通常罠
 自分の手札が0枚で、セットされたこのカードが破壊された時、
 自分の墓地から「インフェルニティ」又は「煉獄」と名の付くモンスター1体を選択し、
 自分フィールド上に特殊召喚する。



 古の魔鏡
 通常罠
 自分フィールド上に「大和」と名の付くレベル5以上のモンスターが存在する時に、相手の攻撃宣言時に発動できる。
 その攻撃を無効にし、相手フィールド上のモンスターを全て破壊しゲームから除外する。



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