小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 「準決勝に続いて直焼きでとは…まぁ、ぶっちゃけ戦闘で倒せってのが無理な注文な布陣だったけどよ。」

 「あんな変態に負けるなんて私の人生最大の汚点よ…!」

 ピットに戻ってきた霧恵は極めて微妙な気持ちの様子。
 一応置き土産的にライフを削りはしたが、かのド変態に負けたのは非常に重いらしい。

 「けど、フィールドは整えたし、アイツはカード出さないでアタシを倒したからリバースは0。
  エリア・ヘカーテの効果使えば瞬殺できると思うわ……頼むわよ遊星!」

 「あぁ、お前が残してくれたカードはありがたく使わせてもらう。」

 霧恵からバトンを受け取り遊星はスタンバイ。
 ピットクルーの手際も素晴らしい。

 「行くぞ!」

 そして飛び出す遊星。
 マシンの仕上がりは上々――此れならば何も問題無さそうだ。

 「…いっその事殺ッちまっても良いからな遊星。」

 遊哉がボソッと言った事はチーム全員が思った事でもあった。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel64
 『遂行せよ完全滅殺!』











 ピットを飛び出した遊星はぐんぐんスピードを上げ一気にフレディに追いつく。
 当然のようにフレディは世界一気持ちの悪い熱視線を送るが効果は無い。

 不動遊星と言う男には一切合切の状態異常効果は通用しないのだ。


 『やっぱり気持ち悪い。サクッとやっつけちゃおう?』

 「其れが良いかも知れないな。」

 それどころかエリア・ヘカーテと話してる始末。
 一応フレディもデュエル相手なので視界には入れているがそれだけ。
 相手のやることを一々気にする事も無いだろうと切り捨てているようだ。


 『さぁ、チーム遊戯王のセカンドホイーラーは不動遊星!迦神霧恵が残してくれたカードを如何使う〜〜!?
  と言うか頼む、いい加減に精神的な限界が近いから早いところそいつを何とかしてくれ〜〜!!』

 「頼むぞ遊星〜〜〜!!」
 「変態を倒せ〜〜!!」
 「寧ろ滅殺しろ〜〜!!」

 ハイテンションは維持しつつ、MCもこの変態には精神的にきついものがある様子。
 観客も同様らしい。

 「グフフフフ…変態だなんてそんなに褒めないで〜〜♪」

 「「「「「褒めてねぇよ!!」」」」」

 「…準備は出来ている。始めようか…?」

 「「「「「普通に流した!?」」」」」

 『流石遊星…』

 変態及び遊星の声が何で観客に聞こえたかは謎だが、遊星は完全に変態を流している。
 エリアも感心だが、ともあれサードデュエルは開始される。

 尤も結果などフィールドを見る限りでは火を見るよりも明らかだが。


 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000   SC9
 フレディ:LP1000   SC7


 「俺のターン!」
 ――迦神がフィールドを整えてくれたが…さて、如何するか?


 それでも遊星は考える。
 相手の場には機皇帝とパーツ、そして表側表示の永続罠が2枚と言う状況。


 ――俺の手札には『ロード・ランナー』が居る。迦神の残してくれたモンスターを使えばすぐにアクセルシンクロが出来るが、どちらを呼ぶか…


 霧恵が残したカードのおかげで即時アクセルシンクロは可能。
 だが、だからこそ『シューティング・スター・ドラゴン』か『クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン』で迷う。
 其れは単に、フレディを倒してもラストホイーラーの雪花が待ち受けているからだろう。

 フレディで最後ならどちらを召喚しても良い、其処で勝ちなのだから。
 だが、その後も続くのであれば出来るだけアドバンテージを維持したいのは道理だ。


 ――機皇帝の恐ろしいところはシンクロモンスターを吸収する効果だけじゃなく、パーツを換装して強化されていくところにもある。
    次々パーツを換装して特殊能力とステータスを上げられると流石にきついものがあるな。
    それに、俺のデッキの魔法使い族のチューナーは少ない。エリア・ヘカーテも爆発的な攻撃力は出し切れないか…


 機皇帝の最大の特徴のみに囚われず、その能力の全容を理解しているのは流石。
 遊哉が『論理的思考をさせたら遊星の右に出るものはいねぇ』と言うのも頷ける。


 ――加えてこれはチーム戦…俺1人で勝手な事はできないな。ならば!
 「俺は『ロード・ランナー』を守備表示で召喚。」
 「ぴよっ」
 ロード・ランナー:DEF300


 戦術は決まったらしい。
 ならば、後は突っ込むのみだ。

 「うふふ…良い感じよ遊星ちゃ〜〜ん。貴方の鼓動をビンビンに感じるわぁ♪」

 「お前は少し喋りすぎる。デュエリストならカードで語った方が良い。」

 変態の一言も一刀両断で受け付けない。
 遊星の『デュエルオーラ』は既に最高に高まっているのだ。

 「行くぞ!レベル5の次元魔導師ガイツに、レベル3の星砕く魔導師をチューニング!
  集いし鼓動が、破壊の炎を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、滅ぼせ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
 「バオォォォォォ…!!」
 レッド・デーモンズ・ドラゴン:ATK3000


 呼び出したのは究極の『破壊の龍』。
 スターダストではなく此方を呼び出したのはチーム戦である事を考えてだろう。
 更に、

 「レベル1のロード・ランナーに、レベル1の不屈の魔導少女をチューニング!
  集いし絆が新たな速度の地平へ誘う。光射す道となれ!シンクロ召喚、希望の力『フォーミュラ・シンクロン』!」
 フォーミュラ・シンクロン:DEF1500


 シンクロチューナーを呼び出し準備完了。
 霧恵がフィールドを整えていたとは言え、此れは早い。
 託されたフィールドを生かす、生かせる手札を呼び込んだ遊星の引きの強さゆえだろう。

 「シンクロチューナー…グフフ…良いわ!最高よ遊星ちゃん!さぁ、私と踊りましょう、エクスタシ〜なダンスを!」

 「ダンスは…苦手だな。」

 このド変態の発言をこうまでいなせるのは最早才能だ。
 尤も、其れは遊星が既に『揺るがぬ境地』に至っているからだが。

 「悪いが俺とお前の道は交わらない。今の俺の道はチームの勝利と共にある。身勝手なデュエルをするお前では追いつけないぞ!」

 「んな!?」

 「チームで戦う以上は優先すべきはチームの勝利。
  だが、さっきの迦神とのデュエルを見る限り、お前はチームの勝利など考えず独り善がりなデュエルをしてたとしか思えない。」

 「ぐ…!」

 言われた事が正論ゆえに何も言えない。
 …遊星を引っ張り出そうとデュエルをしてたのは事実なのだから。

 「それじゃあ俺には、俺達『チーム遊戯王』には到底勝つことなんか出来ない!
  フォーミュラ・シンクロンの効果で俺はカードを1枚ドロー。
  更に、墓地の魔法使いチューナーが増えた事で、エリア・ヘカーテの攻撃力も上昇する。」
 『うん、良い感じ♪』
 神水霊魔導師−エリア・ヘカーテ:ATK3200→4600


 フレディの身勝手さを指摘した遊星はそのまま速度を上げ一気に前に出る。
 このターンでこのサードデュエルを終わらせる心算なのだろう。

 「悪いがお前とのデュエルはこのターンで終わりにさせてもらうぞ!揺るがない境地、クリアマインド!!」

 真紅のオーラが溢れ出し、揺るがぬ境地に至った者のみが扱う事が許される独特のフィールドが出来上がる。

 「レベル8シンクロモンスター、レッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル2シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!
  集いし焔を纏いし炎魔が、進化の道を翔け上がる!光射す道となれ!アクセルシンクロォォォォ!!」


 ――シュンッ!


 そして遊星の姿は掻き消える。
 光速の末の進化は既に完了だ。

 「轟来せよ、『クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン』!!」
 「ゴォォォォォォ…!」
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK3500


 光と共に光来した真紅の悪魔龍。
 その咆哮が機皇帝の巨体すら震わせている。

 『近くで見ると凄い迫力…!一緒に頑張ろうね♪』
 「グルルルルル…」

 すぐさまエリアが近づき、その顔を一撫で。
 最上級クラスが2体というのも中々壮観だ。

 「クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンは全ての墓地のチューナー1体に付き攻撃力が300ポイントアップする。
  お前の墓地にチューナーは居ないが、俺の墓地には3体のチューナーが存在する。よって攻撃力は900ポイントアップする!」
 「ガォォォォォォォ…!!」
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK3500→4400


 エリアに続き、クリムゾン・ノヴァもパワーアップ。
 攻撃力4000オーバーが2体という大盤振る舞いに、びみょ〜なテンションだった会場も一気に回復してきた。

 「オーバー4000が2体ですってぇ!?」

 「お前の目的は俺とのデュエルだろうが、其れを達成する為に暴走しすぎたみたいだな。
  迦神を倒す事に躍起になって、止めを刺す前にカードを出すのを忘れただろう?」

 「……あ〜〜〜!!そう言えば〜〜〜!!」

 本気で忘れていたようだ。
 この変態、暴走の末の自滅である。

 「チームの戦術を無視し、己の目的だけに走った奴に俺は負けない!
  エリア・ヘカーテの効果!相手フィールド上のモンスターの効果を無効にする!」
 『いっそ解体業者でも始めようかな?』


 最早決勝戦においては『機皇帝の分解』が仕事になっているエリア。
 此れで4度目の分解だが、今度はもう防ぎようが無い。

 「オノレ魔導師の小娘が〜〜!遊星ちゃんとの一時を〜〜〜!!」
 機皇帝ゼリエル:ATK3000
        ↓
 機皇帝ゼリエル∞:ATK0
 ゼリエルT:ATK600
 ゼリエルA:ATK1400
 ゼリエルG:DEF800
 ゼリエルC:ATK700


 暴走した結果なのだから逆恨みも甚だしい。
 しかし、幾ら恨み言を言おうとも此れが現実。

 分解された機皇帝には遊星の攻撃を防ぐ術はない。

 「カードを2枚セット。バトルだ。クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンで機皇帝ゼリエル∞に攻撃!『クラッシュ・オブ・バーニングフォース』!」
 「ゴォォ…ガォォォォォォォ!!」


 放たれた灼熱の炎が機皇帝を粉砕。
 更に機皇帝の効果でパーツも全てが吹き飛ぶ。

 更に効果を無効にされたゼリエルの攻撃力は0。
 対するクリムゾン・ノヴァの攻撃力は4400……終わりだ。

 「ムオォォ…熱いわよ遊星ちゅわ〜〜〜〜〜ん!!」
 フレディ:LP1000→0


 やられるときすら気持ち悪い。

 「くぅ…でも今の一撃で無限霊機にカウンターが溜まるわよ〜〜。」
 無限霊機:カウンター59→103


 「更に手札を1枚捨てて無限牢の効果発動。『機皇帝ゼリエル∞』を永続魔法扱いでフィールドに置くわ〜〜。」

 それでも敗者が出来る事をするあたりマダマダ救いは……いや、ド変態の時点で既に無いだろう。

 「グフフフフ…負けちゃったけど、去り際に遊星ちゃんへの愛だけは〜〜!!」


 ――ゴイン!


 「ぶべらぁ!?」

 最後の最後までやらかそうとした変態にチーム遊戯王のピットから消火器が投擲されクリーンヒット。
 その衝撃でコースを外れて変態は自チームのピットに。

 消火器を投げ込んだのは誰かなどは言うまでもない。


 更に…

 「死ね変態。」

 ピットの入ってきたところに雪花の回し蹴りが炸裂。
 Dホイールがまだ止まりきっていなかった事で変態は何時もよりも派手に吹っ飛んだ。
 ダメージは甚大だろうが多分すぐ復活するだろう。

 「この役立たず…まぁ、予定は狂ったけれど準備は出来たか…」

 この間にもピット作業は行われているのだが…

 「行ってくるわ。」

 何を思ったのか、雪花はDホイールに搭乗する事無く生身でサーキットに繰り出しそのまま全力疾走。
 そのスピードが凄まじい。

 恐らく何らかの肉体強化や装置を使っているのだろうが遊星のDホイールに迫る勢いだ。

 此れには会場も吃驚。
 驚きの余りMCですら実況を忘れるほどである。

 「…来なさい『エスカドラ13』…」

 其れを尻目に、雪花が何かを呟いたと同時にチームEXALのピットから何かが光速で飛び出す。

 …Dホイールだ。
 遠隔操作か自動操縦機能か定かではないが、此れもまた凄いスピードでコースを疾走してくる。
 そして…

 「はっ!!」

 近づいてきたDホイールに飛び乗る。


 ――ギュル…


 其れと同時にDホイールから幾つもの太いコードが現れ、雪花のライディングジャケットのプラグのような部分に差し込まれる。


 「…此れは一体…?」

 何が起きているのかは遊星でも分らないようだ。
 だが、プラグが結合した瞬間に更なる変化が起きる。

 Dホイールが変形し、まるで雪花の体の一部のようになったのだ。


 雪花の腰より下はDホイール。
 神話の幻獣『ケンタウルス』をサイボーグ化したらきっとこんな姿になるのだろう。

 「Dホイールと合体した…!?」

 「流石に驚いたか?言っておくが私は生身の人間だ、だが…文字通り私はDホイールと一体になった。
  そして一体となった事で、このDホイールは私の意志どおりに動く事が出来る。」

 瞬間遊星と雪花を『∞』の形が囲む。

 「此れは…」

 「私はサイコデュエリスト……このフィールドの中ではデュエルダメージは全て現実のものになる!」

 「…何だと!?」

 「不動遊星…先ずはお前を血祭りに挙げるとするわ!」


 決勝戦の4thデュエルは危険なものになりそうだ。

 其れを示すように、空は雲行きが怪しくなってきていた…















   To Be Continued… 






-64-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える