小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 超強化が施された機皇神カテドラル∞3の強烈な一撃。

 カグヅチのエスケープ効果を封じた上での一撃は容赦なく遊哉に襲い掛かる。
 完全に光線に飲まれ、その姿は確認できない。

 「終わりね緋渡遊哉!機皇神の前に敵は無いわ!」

 雪花も勝利を確信したかのように嗤う。


 攻撃が終わった状態でも砂煙が立ち込めて遊哉の姿はまだ確認できない。
 どうなったか分らない状況に、会場は静寂に包まれていた…











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel68
 『Over Limit Breaker』











 『き、強烈な一撃が炸裂〜〜!!この攻撃が通っていれば緋渡遊哉のライフは0!!
  だが、余りにも強烈な一撃に、舞いあがった砂煙が未だその結果を見せてはくれない〜〜!!』


 黙々と立ち込める砂煙がもどかしい。
 一刻も早く詳細を知りたいところだ。


 ――キィィィィン…


 そんな会場の気持ちを読み取ったかのようにDホイールの駆動音。
 遊哉のモノで間違いない。

 「だ〜〜〜れが終わったってぇ!?」
 遊哉:LP1900


 ガラの悪さを爆発させ、砂煙の中から遊哉登場!
 ライフは残り、負けては居ない。

 『我が主を甘く見ないでもらおうか?』
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700


 更にはカグヅチも無事。
 この展開に会場の静寂は破られ一気に盛り上がる。

 『何と〜〜〜緋渡遊哉はライフを残し、カグヅチも無事!!デュエルは続行だ〜〜!!!』

 「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」


 が、此れに驚いたのは雪花だ。
 確実に仕留めたと思った一撃。

 だが、遊哉のライフは減少こそしたが残っている。
 カグヅチの生存も謎だ。

 「お前…如何して…!」

 「あぁ?決まってんだろ、トラップを発動したんだよ!トラップカード『ドラゴン・ウォール』!
  デッキから攻撃力1500以下のドラゴン3体を選択して墓地に送り、墓地に送ったドラゴンの攻撃力の合計分の戦闘ダメージを軽減する!
  コイツでデッキから『ジェム・ウィング』『ハイパー・ドラグーン』『フルメタル・ドラグーン』の3体を墓地に送り3700ポイントのダメージを軽減した!」

 ダメージの軽減。
 此れはトラップの効果だったようだ。

 「だが、それでも何故カグヅチは無事だ!ダメージは軽減してもモンスターは守れない筈よ!?」

 「そいつも簡単なこった!手札から『ガード・リンドヴルム』の効果を発動した!
  コイツを手札から墓地に送る事で、俺のドラゴンはこのターン戦闘では破壊されねぇ!!」

 加えての手札誘発。
 この2枚で機皇神の攻撃を受けきったのだ。

 「更に墓地に送ったモンスターは全てチューナー!クリムゾン・ノヴァの攻撃力は1200ポイントアップだ!!」
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK5000→6200


 更にクリムゾン・ノヴァの攻撃力上昇。
 一切の無駄が無い戦術。

 「く…カードを3枚伏せてターンエンド…!」

 必殺の一撃で沈めきる事が出来ず雪花はカードを伏せてエンド。
 ライフは未だ大量にある、機皇神の攻撃力も高い状態。
 状況だけを見るなら雪花の方が有利に思える。

 だが、その強大な一撃を受けきった事で寧ろ流れは遊哉に向いている様にも思える。
 特大の一撃を耐えたと言うのは、それだけで精神面でのアドバンテージになり得るのだ。


 「お前は諦めると言う事を知らないのか?幾ら凌いでも、この圧倒的力を持った機皇神を倒す事は不可能だ。
  下手に足掻かず、大人しく沈んでいれば楽だったものを…足掻けば足掻くほど絶望は深くなるだけよ?」

 「あ゛?馬鹿かテメェは!!絶望が深くなる?笑わせんなアホンダラ!!
  どんなに不利な状況でも、諦めなけさえしなければ必ず活路は開ける!んな事も分らねぇのかテメェは!?」

 「絶望の中での希望など、そんな物は幻想だ、有りはしない!」

 「タコ、あらゆる災厄と絶望がつまったパンドラの箱にだって希望が残ってたろうが!絶望なんぞクソ喰らえだ!
  大体俺は『悪者』だぜ?本当の悪者はなぁ…この世の誰よりも諦めが悪くなきゃ勤まらねぇんだ馬鹿野郎!」

 其れを示すかのような絶好調の『悪役モード』。
 そのせいか、言っている事に妙な説得力がある。




 「絶好調。大満足の悪役モードだな。」

 「あぁなった以上、遊哉の負けは先ず無いわ。」

 チーム遊戯王のピットでもチームメンバーが納得。
 更に、

 「その意気だ緋渡!」

 医務室に運び込まれた遊星が!
 治療中に意識を取り戻し、そのままピットに下りてきたのだ。

 「遊星!?大丈夫なの?」

 「大丈夫だアキ。其れにこのデュエルの結末を見逃す事は出来ないさ。」

 手当てをしたと言っても身体はまだ痛むだろう。
 だが、其れを押して遊星は来たのだ…友のデュエルを見届ける為に!

 「ファントムを倒すんだ…行け、緋渡!」

 力の限り、叫ぶ。




 其れが聞こえたのだろう、ピット前を通過する時に遊哉はサムズアップして見せた。
 ついでにそのまま『首を掻っ切る仕草』も。

 「ダチ公のエール受けたとあっちゃ余計に負けられねぇ!…まぁ、ハナッから負ける気なんぞねぇがな!!俺のターン!!」


 遊哉:SC10→11
 雪花:SC8→9


 「手札からスピードスペル『Sp−神速の宝札』発動!俺のスピードカウンターが10個以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローする!」

 先ずは手札増強。
 スピードカウンターが溜まっていればこその効果だが、2枚もドローできるのは強力だ。

 「さてと…更にスピードスペル『Sp−死者蘇生』を発動!俺のスピードカウンターが5個以上あるとき、墓地のモンスター1体を特殊召喚する!
  俺がこの効果で蘇生させるのはコイツだ!蘇れ『神水霊魔導師−エリア・ヘカーテ』!」
 『復活〜〜!!ありがと遊哉君♪』
 神水霊魔導師−エリア・ヘカーテ:ATK3200


 更にエリア・ヘカーテを蘇生。
 此れにより並んだ4体ものシンクロモンスター。
 その4体全てが、凄まじい力を持った最上級クラスのシンクロモンスター……圧巻と言うに相応しい光景だ。

 「エリア・ヘカーテ…!!」

 逆に雪花にとっては何ともありがたくないモンスターが現れたことになる。
 エリア・ヘカーテのモンスター効果封じは厄介極まりないのだ。

 「でもって、此処で3枚目のリバースカードを発動するぜ!永続トラップ『輪廻独断』!」

 「そのカードは!!」

 「おうよ、コイツの効果で互いの墓地のモンスターの種族は俺が宣言した種族になる。俺は魔法使い族を選択!!」

 更に墓地のモンスター種族を変更する永続トラップ。
 選択したのは魔法使い族――此れは極めて有効な一手だ。

 「墓地のモンスターが魔法使い族になったって事は、当然チューナーも魔法使い族になったって事だ。
  つーことで、俺の墓地の9体のチューナーは魔法使い族になり、エリア・ヘカーテの攻撃力は6300ポイントアップする!」
 『うん、力が漲ってきた!』
 神水霊魔導師−エリア・ヘカーテ:ATK3200→9500


 墓地のチューナーが魔法使い族になればエリア・ヘカーテの攻撃力は爆発的に上昇する。


 『出た〜〜!!緋渡遊哉の十八番、一瞬での攻撃力の爆増!!機皇神の攻撃力を上回ったぞ〜〜!!』


 お得意の戦術に会場も盛り上がる。
 だが、雪花はこの戦術の更に先に気付いていた。

 「只の攻撃力増強じゃない…その裏に隠された目的は、私の墓地から機械族を排除する事…!」

 「正解!機皇神は不死身だが、その不死身効果を使うには墓地の機械族を除外しなくちゃならねぇ。
  だが、『輪廻独断』で墓地のモンスター種族を書き換えられた今、墓地に機械族は存在しなくなりその効果は使えねぇ!」

 そう、攻撃力の強化の裏に隠された更なる戦術。
 墓地の種族の書き換えによる機皇神の破壊耐性封殺だ。
 『輪廻独断』を処理しない限り、機皇帝の破壊を防ぐ事は不可能になった事になる。

 「このターンで終わらせるぜ!カグヅチの効果発動、手札のドラゴンを墓地に送ってその攻撃力を吸収!
  俺は手札の『シルバー・ドラグーン』を墓地に送り、カグヅチの攻撃力を2000ポイントアップする!」
 『うむ…さぁ、終焉だ!』
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700→5700


 「更にエリア・ヘカーテの効果!相手モンスターの効果を無効にするぜ!」
 『行っけ〜〜!』


 カグヅチの強化に加え、エリアでの効果無効。
 パーツ効果が無効になれば機皇神も大幅に弱体化する。

 「させるか!トラップ発動『下級兵の全力抵抗』!私の場のレベル4以下のモンスターを全て守備表示にする!
  そして、このターン私の場のレベル4以下のモンスターは相手のカード効果を受けない!!」
 カテドラルカノン:ATK1500→DEF1200
 カテドラルヘルム:ATK1200→1600


 だが、雪花とて簡単にやらせはしない。
 トラップでパーツモンスターを守備にし、完全効果耐性を付与。

 「更にカテドラルシールドの効果で機皇神は1ターンに1度だけ相手のカード効果を受けない!」

 更に機皇神も護る。
 デュエルはいよいよ大詰めだ。

 「其れがどうしたぁ!!だったら先ずはパーツから潰すだけだぜ!!
  バトル!守護女神−エアトスでカテドラルカノンに攻撃!『聖剣のロンド』!」
 『消え去れ、邪念の徒よ!』


 無数の剣がカテドラルカノンを粉砕。
 カード効果を受けないならば戦闘で破壊するのみ……攻撃ありきの遊哉らしい選択だ。
 だがその効果は絶大。
 カテドラルカノンが場から居なくなれば機皇神はその力を大きく減衰する事になる。


 機皇神カテドラル∞3:ATK9200→4000


 「貴様…!」

 カテドラルカノンは守備表示であった為に雪花のライフに変化は無い。
 しかし、これで遊哉の残る3体のシンクロモンスターは全て機皇神の攻撃力を上回った事になる。

 「マダマダ行くぜ!クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンで機皇神カテドラルに攻撃!『クラッシュ・オブ・バーニングフォース』!」
 『バォォォォォォォ!!』


 其れを逃さず追撃。


 「カテドラルシールドの効果で機皇神は戦闘で破壊されない…!」

 「だが、戦闘ダメージは通る!」

 「く…!!」
 雪花:LP8700→6500


 戦闘耐性があろうとも、戦闘ダメージまでは無効に出来ない。
 一気にライフを削り取る。

 「クリムゾン・ノヴァの効果!戦闘を行ったダメージステップ終了後、デッキトップのカードを墓地に送り効果発動!
  …墓地に送ったのはモンスターカード『イクシード・パワード・ドラゴン』!よってテメェのモンスターを全破壊だ!!」

 「その効果にチェーンしてトラップ発動『機皇結界』!
  このターンのエンドフェイズまで私のフィールドの『機皇』と名の付くモンスターは効果では破壊されない!」

 モンスターの完全抹殺に対しては罠で防ぐ。
 この辺は中々の戦術だ。

 「生き残りやがったか…だが、俺のモンスターには攻撃権利のあるモンスターが2体も残ってるぜ!
  頼むぜエリア・ヘカーテ、機皇神を攻撃!『激流のダイヤモンド・スプラッシュ』!!」
 『任せて遊哉君!吹きとべぇ!!』


 だが其れでも遊哉の攻撃は止まらない。
 爆発的パワーアップを果たしたエリア・ヘカーテで機皇神を攻撃する。

 「ぐ…ああぁぁぁぁ!!」
 雪花:LP6500→1000


 その猛攻に、遂に雪花のライフは1000ポイントに。
 1万以上あったライフが僅か数ターンで1000ポイント……遊哉の攻撃の凄まじさが伺える結果だ。

 「コイツで終わりだ!真炎龍皇−カグヅチで機皇神カテドラル∞3に攻撃!『バーン・オブ・ディストラクション』!!」
 『此れで仕舞いだ、愚物が!』


 止めとなる龍皇の一撃。
 だが、その攻撃に雪花は不気味な笑みを浮かべている。

 「終わりはお前だ緋渡遊哉!トラップ発動『機皇解放』!エンドフェイズまで私の場の『機皇』と名の付く機械族モンスターの攻撃力を2倍にする!」
 機皇神カテドラル∞3:ATK4000→8000


 此処で迎撃系のトラップ。
 攻撃力が倍加した機皇神の攻撃力は8000、対するカグヅチは5700
 発生する差分ダメージは2300――返り討ちで終わりだ。

 「そいつは如何かなぁ!?」

 だが、怯まない。
 伏せカードは此れで互いに0の状況だ。
 其れでいて尚、遊哉には切り札――否、決着の為の『鬼札』が存在していた。

 「言ったはずだぜ、俺は勝つってなぁ!!攻撃力8000?舐めんじゃねぇ!!
  見せてやるぜ俺の切り札!!スピードスペル『Sp−セメタリー・タスク』発動!!」

 「な…バトルフェイズ中にスピードスペルだと!?」

 此れには驚く。
 スピードスペルはスタンディングで言うところの『通常魔法』であるのが殆どだ。
 其れをバトルフェイズに発動するとは…?

 「このカードの発動に必要なスピードカウンターは8。
  だが、スピードカウンターが10個以上ある時、このカードは『速攻魔法』としての発動が可能になる!!」

 「なんだと!?」

 つまりはそういう事だ。
 『サイクロン』等の速攻魔法は、スピードスペル化する際に発動条件とは別に一定数のスピードカウンターがあれば速攻発動できるように調整された。
 遊哉は此れを利用したのだ。

 「速攻発動ならバトルフェイズでの発動も可能だろ!?
  『セメタリー・タスク』は俺のスピードカウンターが8つ以上ある時に発動できる!
  ライフを半分払い、墓地の罠カードを除外してその効果を発動させるぜ!」
 遊哉:LP1900→950


 ライフを半分失いながらも墓地の罠の効果を発動させる効果。
 発動するカードは、言うまでもない。

 「俺はこの効果で墓地の『ドラゴン・インパクト』を除外してその効果を発動する!!」

 「そんな…馬鹿な…!!」

 除外して発動するのは『ドラゴン・インパクト』。
 正に遊哉の為に存在しているかのような、必殺の1枚。

 「ドラゴン・インパクトは俺の場のドラゴン1体の攻撃力を倍にする!この効果を適用するのは、言うまでもねぇ!当然『真炎龍皇−カグヅチ』!」
 『我が炎に陰りは無い!』
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK5700→11400


 最後の最後まで『超攻撃力馬鹿』の名に恥じない、高攻撃力戦法。
 1万を超えたカグヅチの攻撃の前に、雪花はもう打つ手は無い。

 如何に機皇神の攻撃力が倍になったと言えど、その差分ダメージは3400。
 残りライフ1000の雪花にはどうしようもなかった。



 ――ゴォォォォォォォ!!



 カグヅチの猛る炎が機皇神を燃やし、雪花のライフをも焼き尽くす。


 「ぐ…うわぁぁぁぁぁぁ!!」
 雪花:LP1000→0


 戦闘耐性を得ているので破壊こそされないが、機皇神はボディ部分を撃ち抜かれ活動停止。
 そして其れを操る雪花のライフも0。

 WRG1決勝戦――遂にその決着が付いたのだった…

















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sp−神速の宝札
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが10個以上ある時に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。



 Sp−死者蘇生
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが5個以上ある時に発動できる。
 自分、または相手の墓地のモンスター1体を選択し、選択したモンスターを任意の表示形式で自分フィールド上に特殊召喚する。



 Sp−セメタリー・タスク
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが8個以上ある時に発動できる。
 自分の墓地の罠カード1枚を除外し、その効果を発動する。
 自分のスピードカウンターが10個以上あるとき、このカードは「速攻魔法」として発動できる。



 下級兵の全力抵抗
 通常罠
 自分フィールド上のレベル4以下のモンスターを全て守備表示にする。
 エンドフェイズまで自分フィールド上のレベル4以下のモンスターは相手のカード効果を受けない。



 機皇結界
 通常罠
 発動ターンのみ自分フィールド上の「機皇」と名の付くモンスターは効果では破壊されない。



 機皇解放
 通常罠
 自分フィールド上に表側表示で存在する「機皇」と名の付く機械族モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで2倍にする。
 このカードを発動した次の自分のターンのスタンバイフェイズに自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。



 輪廻独断
 永続罠
 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、互いの墓地のモンスターの種族は自分が宣言した種族になる。


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