小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 『決着〜〜〜〜!!Winner緋渡遊哉〜〜!圧倒的な力を更なる力でねじ伏せた〜〜!!
  これこそ究極攻撃力!!相性の不利をものともせず、寧ろひっくり返しての完全勝利!!
  WRG1優勝はチーム遊戯王!!コングラチュレイショ〜〜〜〜〜ン!!!』


 カグヅチの一撃が機皇神を粉砕し、激闘も遂に決着。
 MCの実況で優勝決定が会場全体に伝わり、凄まじい歓声が起きる。


 「やったな緋渡。」

 「流石の攻撃力馬鹿…レギアスも機皇神もアンタの敵じゃなかったか。」

 「ったりめーだ。俺に攻撃力勝負挑もうなんざ一千万年早ぇッつーんだよ。
  ま、お前等のカードに助けられたってのもあるけどよ。」

 ピットから出てきたチームの仲間。
 その中の遊星と霧恵に、遊哉はカードを返す。

 遊哉1人ではなくこの2人のカードがあればこその勝利だった。
 カグヅチとエアトスのみではきっと勝つ事が出来なかっただろう。

 「俺達の絆が機皇帝と機皇神を倒した、そう言う事さ。」

 「だな。」

 会場に沸き起こる『遊戯王コール』。
 最大の熱気が、会場を包み込んでいた。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel70
 『優勝・陰謀・そして…』











 「と…大丈夫かアイツ?」

 表彰式までは準備ができるまでまだ時間がある。
 遊哉が気になったのは、対戦相手の雪花。

 止めの一撃が炸裂し、ライフ0による強制停止を喰らったDホイールが未だにそのままだ。
 合体状態も維持されピクリとも動かない。

 此れは流石に心配もするだろう。


 「おい、大丈夫か?」

 近づき触れるが反応が無い。

 「オイコラ、マジで大丈夫かお前!?」

 更に揺する。
 矢張り反応は無いが…


 ――ゴトリ…


 「「「「「「!!!」」」」」」

 突然頭の部分が取れて落ちた。
 驚くなと言うのが無理だろう・

 イキナリ頭が取れれば誰でも驚く。
 更に中に生身の人間が入っていることを知っているなら尚更だ。


 「いや、まて……居ない。もぬけの殻だ。」

 流石に其れはおかしいと、遊星が取れた首の部分から内部を見ると何も無い。
 此れを纏っていたはずの雪花の姿が無いのだ。

 見ればチームEXALのピットにも誰1人居ない。
 誰にも気付かれる事なく会場を出たのだろうか?
 ピットクルーと他のチームメンバー2人ならば其れも可能だろうが、雪花だけは無理。
 一切の物音を立てずに内部から出て、誰にも気付かれずに会場を出るなど不可能だ。

 「もぬけの殻って…まさか!!サイコパワーか?」

 だが、遊哉がアル可能性に気付く。
 確か雪花は『サイコデュエリスト』であった筈だ。
 少なくとも遊星と共にアクセルシンクロを体得した時に現れた雪花はその力を使っていた。

 「サイコパワーって、瞬間移動?そんな事出来るのアキ?」

 「有り得ないとは言い切れないわ。
  サイコパワーは私のソリッドビジョン実体化の様なものから特定人物との視界の共有、デッキトップのカード透視と様々よ。
  その中に場所と場所の瞬間移動のような能力が有ったとしても不思議じゃないわ。」

 自身が『サイコデュエリスト』であるアキの説明は何とも信憑性が高い。
 其れと状況を照らし合わせると、確かにサイコパワーを使って離脱したと考えるのが妥当に思える。

 「その力で逃げたって訳か…満足できないぜ。」

 尤も土壇場でこの場からエスケープと言う結果に確かに不満は残る。
 不満は残るが…

 「だが、このチームで優勝出来た事は最高に満足だ!そうだろ!?」

 「ったりめーだ!」
 「当然よ。」
 「勿論だ。」
 「それはそうね。」
 「異議は無いわ。」

 鬼柳の言う事に、遊哉も霧恵も遊星もアキもシェリーも同意。
 ファントムを取り逃がしたとは言え、大会の優勝に満足出来ない筈はない。


 『さぁ、表彰式の準備が出来た〜〜!チーム遊戯王のメンバーは表彰台の前に集まってくれ〜〜!』


 「準備できたみてぇだな。」

 「行こうか?」

 表彰式の準備が済んだこの状況では、ファントムの事を考えても意味は無い。
 気になる事は有るが、大会最後の大イベント『表彰式』を行わない訳には行かないのだ。


 ピットクルーも含め、チーム遊戯王全員が表彰台へ。



 直ぐに表彰式は開始され、優勝トロフィーとクリスタルグラスの盾が送られる。
 トロフィーはチームリーダーの鬼柳が、盾は優勝を決めた遊哉が夫々代表する形で受け取る。

 其れと同時に用意される祝勝のシャンパン。
 寧ろ此処からが表彰式最大の醍醐味だろう。


 『WRG1優勝はチーム遊戯王!数々の素晴らしいデュエルを見せてくれた〜〜!!
  君達のデュエルは、デュエルの歴史に新たな一ページを刻んだ!改めてコングラチュレイショ〜〜ン!!!』

 「「「「「「「わぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」


 MCの実況、観客の歓声、其れが合図だった。


 「おらぁ、喰らいやがれぇぇ!!」

 遊哉が勢いよく振ったシャンパンの栓を飛ばし、その中身を仲間に撒き散らす。
 表彰式の後の優勝者のイベント『シャンパンファイト』の幕開けだ。

 「やったな?だが、そうこなくっちゃ満足できねぇ!!」

 「やられっぱなしは性に合わないな。」

 鬼柳と遊星も反撃。
 何と言うか遊星の回復力が凄まじい。

 そして、女性陣とて大人しくはしない。

 「ノリが悪いわよ2人とも?勝利の美酒はこうして味わうものよ?」

 意外にもノリノリなのはシェリー。
 次から次へとシャンパンを撒き散らしている。

 「確かに…此れは楽しまなければ損だわ!」

 「それ、お返しよ!」

 アキと霧恵も其れに乗っかりノリノリ。
 レンと3人娘も同様だ。

 世界最高峰のライディングデュエル大会『WRG1』は最大の盛り上がりの中でその幕を閉じたのだった。








 ――――――








 表彰式が行われている頃、チームEXAL――ファントムは雪花のサイコパワーでアジトヘと戻ってきていた。
 あのままで居たら警察組織に逮捕されていたかもしれない事考えると、雪花の判断は的確だったのだろう。


 「負けはしたが、ある意味で目的達成の為の鍵は全て揃った。」

 そのアジトにて、ディックは光学ディスプレイを見ながら言う。
 矢張り何かしらの目的があるのだろう。

 「鍵が…じゃあいよいよね?」

 「うむ。必要なエネルギーは充分だ。寧ろアクセルシンクロとダブルチューニングのお陰で余りが出るくらいの量だ。」

 「そう…ご苦労様。」

 そう言った瞬間、ディックの身体が金縛りにあったかのように動かなくなった。
 雪花がサイコパワーで拘束したのだ。

 「!?何の心算だ…!」

 「何の心算?安心しなさい、お前の目的は達成してあげるわ『私の主導』でね。」

 「裏切る気か…!」

 「裏切る?心外ね…本より仲間に成った心算などないわ。お前の目的と私の目的が一致していた…それだけよ。」

 「貴様…!!」

 ディックにとっては思いもよらない事態だ。
 よもや己が目的達成直前で寝首をかかれる事態になろうとは…

 「けど、此処までのお前の功績は賞賛に値するわ…だから使ってあげるわよ?手駒としてね。」

 「!!!」

 瞬間、電撃音のような一瞬の音がしてディックは完全に動かなくなった。
 雪花のサイコパワーがディックの意識を刈り取ったのだ。

 「他愛ない……お前もご苦労様。もう戻って良いわ。」

 「あらそう?此れは此れで衝撃的なキャラだったんだけど〜………いい加減変態のふりも疲れたぞぉ…?」

 話しかけられたフレディは、突然として雰囲気が変わる。
 今までの『救いようのない変態』ではなく、その巨体に見合った重々しい雰囲気へと。

 「むぁさか自分が引き込んだ2人が知らぬところで繋がっていたなど思いもしぬぁいはずどぅあ。」

 「そうなる様に動いてたし、ましてや事有る毎に手加減無しで撃沈していれば其れなりに親しいとも思われないからな。」

 どうやらこの2人はファントムに加入する以前からの知り合いだったらしい。
 更にフレディの気持ちの悪い『変態』は演技で、雪花の暴行も作戦(?)の内だったらしい。

 「それにしても、毎回本気で攻撃していたわけだが…頑丈ね?」

 「流石ぬぃ、レギアスに投げ飛ばされた時と今日の回し蹴りは可也効いとぅあ。
  だが、それ以上にぃ緋渡遊哉からの喰らった消火器の方が決行やばかっとぅあ。」

 「アイツは割と本気で殺しにかかっていたからなぁ…其れだけお前の演技が凄かったんだろうが…流石は若本ボイス設定…
  まぁ、其れは良い……首尾はどう?」

 まだ何か企みが有るらしい。
 ファントムの乗っ取り以上に何を考えているのか?

 「抜かり無い。尤も明日のニュ〜〜スには如何あっても流れてしまう事態になるどぅあろうがな。」

 「其れは仕方ない。服役囚が『消えたように脱獄した』と成れば手配せざるを得ないのだから。」

 少なくとも間違い無く碌な事ではないだろう。


 「さて、緋渡遊哉、不動遊星、私達に勝ったのだから約束通りその目的を教えてあげるわ。
  今からだと恐らくは明日の昼頃、童実野埠頭の沖にその答えは現れる……その時お前達はどうするのかしらね?…楽しみだわ。」

 次の瞬間、部屋の中に有った全ての物がその場から消えた。
 雪花、フレディ、そして意識を刈り取られたディックもだ。


 恐らくは此れで会場から離脱したのだろう。
 一切の気配を残さず、まさしく『幻影』の如くその場から消えた…

 この部屋に誰か入ったとしても、『只の廃墟の空き部屋』としか思わないだろう。








 ――――――








 決勝戦から一夜明けて、しかしチーム遊戯王のメンバーはさりとて忙しくは無かった。
 理由は簡単、報道陣の殺到を予測したメンバーはレンの会社が経営するホテルに泊まっていたのだ。

 勿論、レンの計らいでこのホテルは『報道関係者立ち入り禁止』と成っているので問題ない。
 それでも昨日の夕刊、今朝の朝刊にニュースまでもが『チーム遊戯王優勝』で持ち切りだ。


 「自分の顔ながらいい加減見飽きたなオイ…」

 「其れを言ったらお終いでしょ…」

 流石に会場でのインタビューまでは断れないので、表彰式後のインタビューが各局で流れている。
 其れだけではなく大会のダイジェストもいたるところで放送されているのだ。

 「ま、良いだろ?1週間もすれば熱も冷めるぜ。」

 「だろうな。」

 確かにそうだろう。
 何時までも同じニュースばかりも流して入られないのだから。


 『…番組の途中ですが、此処で臨時ニュースをお伝えします。』


 と、番組が中断されての臨時ニュース。
 テロップでのニュース速報でない辺り、重要な事なのだろう。

 遊哉達も『何事か?』と画面に見入る。


 『警視庁は、今日未明童実野刑務所に服役中の『アギト=アルツベイン』が刑務所から脱走したと先程発表しました。』


 「「「「「「!?」」」」」」


 『脱走したアギト=アルツベインはカードの強奪や違法複製を行っていた『ノーバディ』のリーダーで…』


 「アギトって…俺が闘いの王国の決勝でぶちのめした誇大妄想の銀髪ロン毛だよな?」

 「あぁ、間違いない。」

 「アイツが脱走って…」

 そのニュースの内容は驚愕するに値するものだった。


 無理も無い。
 遊哉が『闘いの王国』の決勝戦でパーフェクト勝利した『ノーバディ』の首領『アギト=アルツベイン』。
 大会後に逮捕され数々の罪で『懲役5年8ヶ月』の実刑判決を受けていたはずだ。

 其れが脱走したとは驚くなと言うのに無理がある。


 更に、


 『い、今入ってきたニュースです!たった今童実野埠頭の沖合に謎の建造物が出現したと…!』


 臨時ニュースの最中に更なる新ニュース。
 内容だけ聞けばなんともオカルトチックな内容だ。

 だが、其れを切って捨てることはできない。


 『霧恵!』

 『主よ!!』


 エリアとアグニが何かを感じ取っていたから。


 勿論全員がニュース内容を聞いてホテルのテラスに出ている。
 レンガ用意してくれたこのホテルの最上階のこの部屋には童実野町を一望できるテラスが有る。


 当然此処からならば童実野埠頭も海も見える。


 「嘘…!!」

 「アレは一体…!」


 其処から見えた光景に『アギト脱獄』を聞いた時以上の驚きを覚える。

 海から離れた場所のホテルからでもハッキリと確認できるその姿。

 水面から僅かに離れて浮く巨大な建造物。

 紀元前の様式を思わせるその外観。



 ――神殿



 そう言って差し支えない巨大な建造物が、童実野埠頭の沖に不気味に佇んでいるのだった…

















   To Be Continued… 



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